舘野 浩章/Hiroaki Tateno
細胞分子工学研究部門
Cellular and Molecular Biotechnology Research Institute
総括研究主幹
- 1細胞グライコーム解析技術の開発と応用
- 糖鎖創薬標的・マーカー探索
- 次世代モダリティー(細胞・エクソソーム)の製造・品質管理技術開発
糖鎖プロファイリング技術の革新とその医療応用に取り組んでいます。最近では、1細胞ごとの糖鎖と遺伝子発現を同時に解析する新技術「scGR-seq」を開発し、新たな創薬標的や幹細胞マーカーの同定に成功。細胞の個性を糖鎖で捉えることで、新たな生命現象の解明と次世代医療技術の開発に挑んでいます。
1細胞グライコーム解析技術
新たな生命現象や疾患メカニズムを解明し、革新的な医薬品を創出するためには、単一細胞レベルでのオミクス情報の取得が極めて重要です。私たちは、DNAバーコード化したレクチンと次世代シーケンサーを組み合わせることで、1細胞ごとの糖鎖プロファイルと遺伝子発現を同時に網羅的に解析できる単一細胞糖鎖・RNAシーケンス(scGR-seq)法を開発しました。 scGR-seq法を用いて膵癌をはじめとする腫瘍組織を解析した結果、新規の創薬標識候補や早期診断につながるマーカーを見いだすことに成功しています。さらに、iPS細胞由来細胞をscGR-seq法で解析することで、細胞集団内の多様性を可視化するとともに、目的とする細胞のみを高精度に分離するための技術開発にも成果を挙げています。 このように、scGR-seq法は新たな創薬標的の同定や、再生医療用細胞の製造プロセスおよび品質管理の高度化に大きく貢献することが期待されています。
- PCT/JP2021/010385(2021/03/15):糖鎖を解析する方法
- H. Odaka et al., Stem Cell Reports, 2025, [doi/10.1016/j.stemcr.2025.102631]
- S. Keisham et al., Small Methods, 2024, [doi/10.1002/smtd.202301338]
- F. Minoshima et al., iScience, 2021, [doi/10.1016/j.isci.2021.102882]
免疫チェックポイント分子の新規探索技術
近年、がん細胞表面のタンパク質などに結合した糖鎖が、免疫細胞上に発現するレクチンと結合することで、がん細胞が免疫回避する免疫チェックポイントとして機能することが分かってきました。この糖鎖-レクチン相互作用による免疫制御機構は、膵がんをはじめとする難治性がんに対する新たな治療標的となる可能性があります。 私たちは、腫瘍組織内における糖鎖-レクチン相互作用を網羅的に探索する新手法GlycoChat法を開発しました。また、本手法を用いて膵がん患者の腫瘍組織を解析した結果、マクロファージに発現し、膵がん細胞の糖鎖と相互作用して免疫抑制に関与する内在性レクチンの同定に成功しました。 本技術により、膵がんをはじめとする難治性がんにおける糖鎖免疫チェックポイント分子の同定を可能とし、それを標的とした新規機序による阻害剤の開発に向けた基盤の提供が可能になります。
- 特願2025-280366(2025/12/24):細胞上糖鎖及び細胞上レクチンの相互作用検出方法
- D. Anh et al., Advanced Science, 2025, [doi/10.1002/advs.202514735]
エクソソーム分離・制御技術
エクソソームは、各種疾患のバイオマーカーや治療用製剤としての応用が期待されています。しかし、一般的に用いられる超遠心法には、純度や品質のばらつき、処理量の制限といった課題があり、高純度エクソソームを効率的に分離する新たな技術の開発が求められています。 私たちは、エクソソーム表層に存在する糖鎖に特異的に結合するタンパク質を利用した、新規のエクソソーム単離技術「糖鎖アフィニティー法」を開発しました。本手法により、エクソソームマーカーが強陽性で、miRNAを豊富に含むエクソソームを非破壊的かつ高純度に分離することが可能となりました。 さらに、エクソソーム糖鎖を改変することで、特定の組織に選択的に送達させる技術の開発にも成功しています。これらの成果は、エクソソームを基盤とした新たな治療製剤や診断技術への応用を大きく前進させるものです。
- PCT/JP2024/043415(2024/12/09):細胞外小胞の分離方法、及び細胞外小胞を分離するためのキット