陶山 哲志/SUYAMA Tetsushi
モレキュラーバイオシステム研究部門
Molecular Biosystems Research Institute
バイオアナリティカル研究グループ 主任研究員
- 好気性光合成細菌の飢餓ストレス応答
- 核酸標準物質の整備と核酸による実験室環境の汚染対策
- W/Oドロップレットを利用した微生物スクリーニング
微生物の環境ストレス応答、特に休眠や飢餓生残に関わる遺伝子発現制御について研究している。また核酸標準物質の整備や、遺伝子定量・微量遺伝子検出において偽陽性の原因になる核酸増幅産物による汚染とその対策、W/Oドロップレットを用いて特定の機能を持つ微生物や遺伝子、有用な遺伝子を取得する研究を進めている。
好気性光合成細菌の飢餓ストレス応答
生分解性プラスチック(脂肪族ポリカーボネートおよび脂肪族ポリエステル)の分解細菌として単離した好気性光合成細菌 Roseateles depolymerans は飢餓条件により光合成器官形成を行うユニークな特徴を持っている。このバクテリアの飢餓耐性や長期生残能力、遺伝子発現制御について研究を進めている。これまでに解明された成果としては、飢餓における光合成遺伝子クラスターの転写制御はRpoHホモログであるシグマ因子の制御下にあり、飢餓条件にさらされることによりその転写量が500倍以上に増幅されること、またそのシグマ因子をノックアウトした欠損株は光合成器官形成をしなくなるだけでなく、熱や光酸化ストレスへの耐性が極端に低下することが分っている。またこの遺伝子の欠損株では温度条件の変化に応答した鞭毛形成関連遺伝子の転写量の増減も見られなくなることから、トータルで様々な遺伝子発現制御に関与していることが推定される。現在このバクテリアに関する複数のテーマの検討を、いくつかの大学と連携しながら進めている。
- T. Suyama et al., Microbes and Environments, 2023, [doi/10.doi: 10.1264/jsme2.ME22072.]
- T. Suyama et al., Applied and Environmental Microbiology, 2002, [doi/10.doi: 10.1128/AEM.68.4.1665-1673.2002.]
- T. Suyama et al., International Journal of Systematic Bacteriology, 1999, [doi/10.doi: 10.1099/00207713-49-2-449.]
核酸標準物質の整備と核酸による実験室環境の汚染対策
NMIJ等と連携して国内外での核酸定量の共同測定実験に参加したり、非天然の配列で特定の遺伝子をコードせず偏りのない塩基構成やSNPを含む配列、様々なGC含量からなるDNAやRNAの核酸標準物質の設計・製作を行ってきた。またPCR増幅産物による試験環境の汚染が定量を不正確にする問題から、PCR増幅産物を拡散させない方法や、汚染が発生する前にDNAやRNAが付着した容器・器具・サンプル等を不活化処理する方法について研究してきた。PCR増幅産物の不活化は遺伝子定量の他にも遺伝子検査や特定の環境に紐づいた遺伝子の検出や取得に正確を期したり、漏洩した核酸分子から特定の遺伝子配列を読み取られる情報セキュリティ上のリスクを低減する技術としても期待される。PCR産物を汚染を拡散することなく処理するために、レトルトパウチに封入して酸素が共存する条件で長時間湿熱処理する方法を考案した。コンプレッサーを備えたオートクレーブ(レトルト製造機を再設計したもの)を利用し、120℃では2時間、130℃では1時間弱の加熱時間で検出限界まで処理できることを確認した。現在は社会実装を目指した連携先を探している。
- 2008-295338(2008/11/19):核酸標準物質
- 2013-090178(2013/04/23):非脱気式の高温高圧水蒸気処理装置を用いて汚染を漏らさず高速にDNAを分解除去する方法
- 2020-192351(2020/11/19):汚染物質の分解除去方法及び分解除去装置
- Suyama T et al., Biotechniques, 2013, [doi/10.doi: 10.2144/000114113.]
- Shibayama S et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 2019, [doi/10.doi: 10.1007/s00216-019-01992-y. Epub 2019 Jul 9.]
W/Oドロップレットを利用した微生物スクリーニング
当研究グループでは、フッ素オイル中に分散させた微小液滴(W/Oドロップレット)内で微生物を培養したり、試験管内で行っていたような生物反応(例えば接合やファージの感染)、シングルセルからPCRを行い特定の遺伝子の有無を判定する実験を行い、蛍光等の検出技術と組み合わせたソーティングや分取によって特定の形質を持つ微生物細胞やその遺伝情報を取得する様々なアプリケーションを研究している。この方法を使えば、従来法に比べて高いスループットでの自動化したスクリーニングが可能である他、従来の技術では出来なかったプラスミドやファージの天然宿主を同定する実験などにも応用が可能である。その他、新しいレポーターのシステムなどW/Oドロップレットを利用した微生物スクリーニングを高度化するための様々な技術開発を行っている。
- 2022-121246(2022/07/29):微生物増殖検出方法、微生物取得方法、微生物増殖検出用キット、微生物取得用キット及び色素の微生物増殖レポーターとしての使用
- Hoshino M et al., Frontiers in Microbiology, 2023, [doi/10.doi: 10.3389/fmicb.2023.1282372. eCollection 2023.]
- Masumoto M et al., Environmental Microbiology, 2026/99/99, [doi/10.xxxxxxxxxx]