塩田 裕介/SHIOTA Yusuke
健康医工学研究部門
Health and Medical Research Institute
細胞機能解析研究グループ 主任研究員
- 鼻以外の嗅覚受容体を介したヘルスケア技術開発
- 嗅覚受容体の生理活性物質・評価技術の開発
- 匂いのセンシング技術の開発
嗅覚は五感のなかでも研究の進んでいないとされる分野ですが、匂いはヒトや動物・植物にとって必要不可欠な情報です。世界・日本で唯一の解析技術を駆使して、『生物を知り、応用する』ことによって、生物が持つ優れた嗅覚や脳のメカニズムを利用した、ヒトの健康に資する技術の開発を行っています。
包括的な生体の生理計測技術
ヒトを含む生物を理解し研究するには、なるべく自然な状態に近い生体の計測が必要です。蛍光計測によるライブイメージングや特に生物が直接扱う電気信号の電気生理計測が用いられますが、これらは極めて熟練の技術です(特に後者)。これまで、生きた神経や脳での生理計測によって生物の脳機能・知能を明らかにしてきました。専門である昆虫に限らず、哺乳類のような脊椎動物(ヒト・マウス等)から昆虫のような無脊椎動物(ガ・ハエ等)、皮膚やヒト細胞などあらゆる生体・生体組織での蛍光計測・電気生理計測の技術を持ちます。嗅覚単一神経の標識と計測の同時計測法、さまざまな嗅覚受容体の生体でのin vivo計測法など、世界で唯一、日本で唯一の技術も保有し、生体の機能解析を行っています。培養細胞の蛍光応答を自動で検出し、波形解析を行うなどのプログラミング開発技術も行っています。
- Yusuke Shiota et al., Scientific Reports, 2018, [doi/10.1038/s41598-018-31978-2]
- Yusuke Shiota et al., iScience, 2021, [doi/10.1016/j.isci.2021.103334]
モデル・非モデル生物での遺伝子組換え・ゲノム編集技術
基礎・応用のいずれにおいても、標的の生体組織・遺伝子のリアルタイムな応答性を調べることは、メカニズムの理解を土台とした製品開発に強力に貢献します。これら技術によって、標的の生理活性の強力なエビデンスが取得できます。あらゆるヒト生体細胞、ヒト生細胞や哺乳類などの脊椎動物、衛生害虫や農業害虫、有用昆虫、などモデル生物での遺伝子組換えによる分子標識や生理計測用の生物作成、ゲノム編集による標的遺伝子の機能解析などを行うことができます。特に、非モデル生物でのゲノム編集技術は難易度が高いですが、非モデル生物(農業害虫)でのゲノム編集技術として、日本で唯一の経験と技術も持っています。新しい非モデル生物での遺伝子組換え・ゲノム編集技術の開発にも取り組んでいます。
- Yusuke Shiota et al., Methods in Enzymology, 2020, [doi/10.1016/bs.mie.2020.05.009]
生体機能を活用したバイオエンジニアリング・人工知能
生物を理解し、その上で生物の優れたセンサや知能などの機能をヒトに有用な技術として工学応用することが出来ます。例えば、ヒトの感じることが出来ない危険なガス臭を検知するような匂いセンサは工学的に作れません。しかしヒト以外の生物は、爆発物の匂い・がんの匂い・麻薬の匂い・火事の匂いなどを感じることが出来るセンサを持っています。これらの機能を解明し、工学応用するための研究を行っています。また、匂いはあるなしに加えて、どこが匂い源かがカギです。しかしヒトにとって、ガスが漏れているとわかっても、どこから漏れているかを見つけるのは難しい問題です。匂い源を探すことが得意な生物の戦略と脳情報処理をモデル化し、匂い源を探す新しい人工知能(AI)の研究や、生物にヒントを得た新素材、機能性物質、アルゴリズム、センサ技術の開発を行っています。
- Yusuke Shiota et al., Advanced Robotics, 2025, [doi/10.1080/01691864.2025.2501026]