坂上 弘明/SAKAUE Hiroaki
細胞分子工学研究部門
Cellular and Molecular Biotechnology Research Institute
分子細胞マルチオミクス研究グループ 研究員
- 糖ペプチドの多検体比較解析による疾患バイオマーカー探索
- 結合型D-アミノ酸の大規模解析技術(キラルプロテオミクス)の開発
- 糖鎖とアミノ酸の同時異性化解析によるタンパク質異性化の実態解明
質量分析を用いてタンパク質の糖鎖解析および異性化タンパク質の解析を行っています。糖鎖解析ではこれまで産総研で培われた技術を用いてバイオマーカー探索に応用しています。異性化タンパク質は未だ生体内のどこに、どれくらい存在しているのか分かっていません。異性化タンパク質の大規模解析技術を開発しています。
異性体タンパク質の網羅的探索技術(キラルプロテオミクス)
タンパク質中のアミノ酸の異性化は、加齢や疾患に伴って生じることが知られており、タンパク質の立体構造を変化させることで機能に影響を及ぼす。なかでもアスパラギン酸残基(Asp)は異性化を受けやすく、Lα-Asp、Lβ-Asp、Dα-Asp、Dβ-Aspの4種の異性体が生成する。近年では、抗体医薬品の製造過程においてもAsp異性化が確認され、その活性低下との関連が報告されており、タンパク質異性化解析はバイオマーカー開発のみならず、バイオ医薬品の品質管理においても重要性を増している。しかし、Asp異性化は分子量変化を伴わないため、従来は標的タンパク質を個別に精製し、多段階の工程を経た詳細解析が必要であった。本研究では、Asp異性体のうちLβ-Aspを特異的に標識化して質量変化を導入することで、プロテオミクス手法を用いたノンターゲットかつ網羅的なLβ-Asp含有ペプチド解析技術を開発した。
- 2023-115213(2023/07/13):イソアスパラギン酸(Lβ-アスパラギン酸)残基を標識する方法
- H.Sakaue et al., The Journal of Biochemistry, 2024, [doi/10.1093/jb/mvae071]
タンパク質上の糖鎖の網羅的詳細構造解析(グライコプロテオミクス)
糖鎖修飾は、タンパク質の機能制御や細胞間相互作用、疾患発症に深く関与しており、その網羅的解析は生命科学および医療分野における重要課題である。質量分析を用いたグライコプロテオミクスは、糖鎖の結合部位と構造を同時に解析可能な強力な手法であるが、酵素消化後の試料中では糖ペプチドは存在量が低く、ノーマルペプチドによるイオン化抑制の影響を強く受ける。このため、糖ペプチドを選択的に濃縮する前処理技術が不可欠である。近年、HILICカラムを用いた糖ペプチド精製法が発展しているものの、カラム操作には時間を要し、ハイスループット解析への適用には課題が残されている。本研究では、試料中から糖ペプチドを選択的に捕集可能な磁性アミドビーズを開発し、リキッドハンドラーによる自動精製に対応した前処理法を確立した。従来のカラム法では1時間あたり1サンプル程度の処理に限られていたのに対し、本技術は磁気分離を利用することで大幅な処理時間短縮を可能としている。
- 2025-085980(2025/05/22):糖ペプチド捕集用ビーズ及び糖ペプチドの捕集方法
- H.Sakaue et al., bioRxiv, 2025, [doi/10.1101/2025.07.10.664079]