大島 良美/OSHIMA Yoshimi
バイオものづくり研究センター
Biomanufacturing Process Research Center
植物機能制御研究チーム 主任研究員
- 植物の細胞壁-クチクラ連続体形成制御による植物の改変
- 根の疎水性バリア形成制御による植物の改良
- 種子の単為発生及び種子寿命の研究
植物特有の脂質性物質が蓄積される仕組みの解明と種子の発生について研究しています。特に、ワックス、脂質性ポリエステル、多糖類を含む表面クチクラに関わる転写制御機構を解明・利用することで、有用脂質の増産やストレス耐性植物作出、表面構造の改変、種子の長寿命化のための技術開発を目指しています。
植物の細胞壁-クチクラ連続体形成制御による植物の改変
植物表面を覆うクチクラは、乾燥・病害・紫外線などの陸上環境から植物を保護する重要なバリアであり、同時に産業利用される植物性ワックスの主要な供給源でもあります。そこで、クチクラが細胞壁と連続的に構築される仕組みに着目し、ワックス、脂質性ポリエステル、細胞壁多糖類から成る複雑な構造を生きたまま解析できる赤外分析技術を開発しました。さらに、脂質成分組成の分析、表皮細胞特異的な遺伝子発現解析、転写制御ネットワークの解明を統合的に進めています。これまでに、シロイヌナズナの葉、花、トマトの果実など多様な器官で解析に成功しました。これらの成果をもとに、有用脂質の増産、ストレス耐性植物作出、表面構造の改変、種子の長寿命化などの応用研究を進めています。クチクラの構造制御は、農業・バイオマス産業・化粧品素材など幅広い領域で新たな価値の創出につながる技術です。
- 特許6659060(2017/03/09):種子の劣化を抑制する方法
- Y. Oshima et al., The Plant Cell, 2013, [doi/10.1105/tpc.113.110783]
- Y. Oshima et al., Plant Signaling and Behavior, 2013, [doi/10.4161/psb.26826]
- Y. Oshima et al., PLANT BIOTECHNOLOGY, 2016, [doi/10.5511/plantbiotechnology.16.0627a]
種子の単為発生の研究
食糧生産やバイオマス植物の栽培において、安定した種子の供給は収量と生産性向上の要となります。特に穀物では、種子の増産が収量向上に直結します。通常、植物は受粉・受精を経て種子を形成しますが、受精なしに種子をつくる「単為発生」を人工的に誘導できれば、優良形質をもつF1ハイブリッド種子を大量生産でき、煩雑な人工交配が必要なくなります。気候変動による高温不稔の影響を回避できる点でも重要です。私たちは、イネを対象に、受精なしに種子の肥大を誘導する新規遺伝子を発見しました。この知見を応用し、胚乳の単為発生を誘導することで、受精なしに穀物を実らせる技術の確立を目指しています。本技術は、食糧供給の安定化、エネルギー作物、バイオマス資源の増産など、将来の農業基盤を支える新たなアプローチとなります。
- 特許7453657(2019/03/05):受精を介さず種子植物の胚乳発生を誘導する核酸分子及びベクター、並びに受精を介さず胚乳を発生しうる組換え種子植物及びその作製方法