森山 実/Minoru Moriyama
モレキュラーバイオシステム研究部門
Molecular Biosystems Research Institute
バイオシステム多様性研究グループ 企画主幹
- 昆虫と微生物の共生相互作用の実体解明
- マルチオミクス解析を利用した新たな生物機能の探索
- 昆虫がもつ微生物操作技術の模倣
有用微生物と共生し、その機能を巧みに利用するしくみを獲得した昆虫類に着目。個体から分子レベルに至るまで広範な実験アプローチを駆使し、微生物共生の成立、機能強化、制御原理について包括的な理解を深めることで、微生物の高度な生物資源生産技術や微生物操作技術を向上させることを目指している。
生物共生システムを基盤とした微生物生産・制御技術の研究開発
微生物を用いた物質生産は、食品、化学、医薬、環境、エネルギーなど、幅広い産業分野において中核技術として活用されています。近年は、新規な生物資源の探索に加え、微生物の生産性を安定的かつ高効率に引き出す技術や、用途に応じて活性を制御したり、微生物を保管・輸送する技術の重要性が高まっています。 私たちはこの課題に対し、自然界で長年にわたり微生物と相利的に共生してきた昆虫に着目しています。これらの昆虫は、自身に有益な微生物を体内あるいは体外に保持し、その代謝能力を制御し、巧みに利用する技術を有しています。私達は昆虫-微生物共生系における独自のモデルシステムを確立し、共生微生物が有する新規な生理活性物質の探索だけでなく、微生物の代謝活性を制御し、保存や輸送を行う技術の研究開発を行っています。特に近年は、体外で微生物を保管する仕組みや、特定の物質を効率的に生産させるための代謝制御、目的に応じた微生物群を選択的に培養する技術の原理解明に注力しています。 これらの成果は、微生物生産プロセスの高度化、有用微生物のポータブル化、省コスト化につながるだけでなく、新規素材・機能性物質の創出や、既存プロセスのブレークスルーにも貢献できると考えています。
- T. Nishino et al., Science, 2025, [doi/10.1126/science.adp6699]
- S. Oishi et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America , 2023, [doi/10.1073/pnas.2304879120]
- M. Moriyama et al., Scientific Reports, 2022, [doi/10.1038/s41598-022-11895-1]
昆虫類が有する多様な生物機能の利用および害虫制御技術
昆虫類は地球上で最も繁栄している生物群であり、圧倒的な種多様性を誇る。そのため、遺伝子資源の宝庫としても注目されている。広範な環境に適応可能な昆虫類がもつ多様な生物機能は、産業応用にもつながる技術として注目されています。特に私達は多様な色素合成能や、さまざまな温度帯への適応機能、廃棄物を資源へと変える能力に着目し、研究開発を行っています。 また、同時に昆虫類は農業害虫や衛生害虫として、防除の対象ともなっていました。近年、殺虫剤耐性を持つ系統が勃興するなど、次世代の害虫防除技術の開発が求められています。私達は、カメムシやトコジラミ、ゾウムシなど、多くの非モデル昆虫の飼育系を確立し、その生態から遺伝子機能まで、最先端技法を用いて包括的に解析する技術を有しています。また、必須共生微生物をターゲットした新規防除技術への展開も検討しています。
- M. Moriyama et al., mBio, 2015, [doi/10.1128/mbio.01732]
- H. Anbutsu et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2017, [doi/10.1073/pnas.1712857114]
- T. Nishino et al., Science, 2025, [doi/10.1126/science.adp6699]