久野 敦/KUNO Atsushi
細胞分子工学研究部門
Cellular and Molecular Biotechnology Research Institute
分子細胞マルチオミクス研究グループ 研究グループ長
- 生体内の糖タンパク質の見える化
- 糖鎖バイオマーカー・糖鎖標的の探索・橋渡し
- 汎用型全自動糖鎖プロファイリング技術の実用化
レクチンアレイと質量分析を組み合わせた独自グライコプロテオミクス技術により、からだの状態と糖鎖の関係を調べる。それをもとに、がんや炎症疾患などの病気の診断や治療に資するバイオマーカーや標的分子を探索する。大学院生や非糖鎖研究者でも簡単に使える汎用型全自動糖鎖解析システムの実用化を積極的に推進する。c
糖鎖に特化した空間オミクス解析技術
糖鎖は「細胞の顔」とも称され、細胞種や状態に応じてその総体(糖鎖オミクス)が大きく異なります。組織中のどの細胞に、どのタンパク質に、どのような糖鎖が付加されているかを網羅的かつ空間的に解析することは、生命現象や疾患メカニズムの理解において重要な情報を提供します。 本技術では、糖鎖情報を空間情報として取得し、その変化を高解像度で捉えるとともに、機能的意義の解釈までを可能にします。これにより、基礎研究にとどまらず、創薬や診断薬開発につながるバイオマーカー探索といった産業応用への展開が期待されます。 私たちが開発する糖鎖空間オミクス解析技術は、タンパク質のどの部位にどの糖鎖が付加されているのかを詳細に解析し、その変化を組織内で空間的にマッピングする点に特長があります。複数の解析手法を統合したアプローチにより、従来技術では捉えきれなかったより深層の糖鎖情報を可視化する、差別化されたプラットフォーム技術です。
- X. Zou et al., Scientific Reports, 2017, [doi/10.1038/srep43560]
- C. Nagai-Okatani et al., Journal of Proteome Research, 2021, [doi/10.1021/acs.jproteome.0c00907]
- P. Boottanun et al., BBA advances, 2025, [doi/10.1016/j.bbadva.2025.100146]
糖鎖バイオマーカー・糖鎖標的の探索・橋渡し
私たちは20年以上にわたり糖鎖バイオマーカーの開発に取り組んできました。これは、糖鎖を基盤としたバイオマーカー研究分野において、世界的にも有数の経験と実績を有していることを意味します。これまでに蓄積してきた技術基盤、データ、知的財産および論文はいずれも独自性が高く、臨床的価値と商業的価値の双方を備えた情報を提供します。 本開発はすべて臨床機関との協業により進められており、実際の医療ニーズに直結した「橋渡し研究」として展開されています。その一例が、約10年前に保険収載された肝線維化診断薬 M2BPGi です。本マーカーは、他の指標では代替が困難な情報を提供できる診断薬として、現在もアジアを中心に高頻度で臨床現場において利用されています。 これまで積み上げてきた実績を基盤として、私たちは臨床機関や診断薬・治療薬開発企業といった顧客のニーズに応じ、糖鎖バイオマーカーの探索から、探索後の候補分子情報の提供、さらには開発用抗体の提供までを一貫して支援することが可能です。また、私たち自身が顧客と直接ヒアリングを行うことで、研究目的や開発フェーズに即した、的確かつ柔軟な協業提案を実現します。
- 特許第5031928号(2009/07/14):糖タンパク質の測定方法、肝疾患の検査方法、糖タンパク質定量用試薬および肝疾患病態指標糖鎖マーカー糖タンパク質
- A. Kuno et al., Scientific Reports, 2013, [doi/10.1038/srep01065]
- K. Angata et al., Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-General Subjects, 2022, [doi/10.1016/j.bbagen.2021.130020]
- Y. Kitazume et al., Pathology International, 2026, [doi/10.1111/pin.70070]
汎用型全自動糖鎖プロファイリング技術の実用化
私たちは、世界初となる全自動糖鎖プロファイリング技術の開発に成功しました。本技術により、従来は困難であった1,000サンプル規模での横断的・並列解析を容易に実施することが可能となります。糖鎖解析はこれまで高い専門性と労力を要する領域でしたが、本技術はその技術的障壁を大きく低減します。これにより、糖鎖を「評価指標(物差し)」として用いる必要があるバイオマーカーのバリデーションや、バイオ医薬品の品質管理などの場面において、専門家に依存せず、誰でも利用可能な汎用的ツールの提供を実現します。 実際に本技術を用いて、すでに複数(約5件)のバイオマーカーおよび医薬品候補に対するバリデーションが進行しています。本技術は企業との連携により開発され、昨年7月より企業側から製品として販売が開始されている実用化技術です。製品としてご購入のうえご利用いただくことはもちろん、診断薬や治療薬の開発において本技術をより深く、かつ効率的に活用いただくためのコンサルティングや共同研究にも対応しています。 研究目的や開発フェーズに応じて、単独利用からパートナーシップ型の活用まで、柔軟な連携が可能です。
- PCT/JP2025/031649(2025/09/08):ウイルス学的著効を達成したC型肝炎ウイルス感染対象における肝細胞がんの発症リスクを判定するための方法、および当該リスクを低減させる化合物のスクリーニング方法
- H. Shimazaki et al., Molecules, 2024, [doi/10.3390/molecules29235640]
- S. Fuseya et al., JoVE, 2024, [doi/10.3791/66571]
- H. Shimazaki et al., Analytical Chemistry, 2019, [doi/10.1021/acs.analchem.9b01876]