小阪 亮/Ryo Kosaka
健康医工学研究部門
Health and Medical Research Institute
副研究部門長
- 動圧軸受を用いた動圧浮上遠心血液ポンプの開発
- 体外で移植臓器の保存と評価が可能な体外臓器灌流装置の開発
- 直管の管路歪を利用した超小型血流量計の開発
重度心疾患患者に対し、安心・安全技術を有する人工心臓の実現を目指し、動圧軸受を用いた動圧浮上遠心血液ポンプや、超小型血流量計などを開発しています。併せて、臓器移植におけるドナー不足の改善に向け、移植臓器を体外で長期間保存し、機能を評価する体外臓器灌流装置を開発しています。
動圧浮上遠心血液ポンプの開発
本技術は、重度心疾患患者の心機能補助を目的として使用される血液ポンプ技術です。近年、補助人工心臓や循環補助用途において中長期使用が可能な血液ポンプへの需要が高まっている一方で、血液適合性(溶血・血栓)が大きな課題となっています。これまで産総研では、企業との共同研究により、一点接触式軸受を用いた低溶血な手術用血液ポンプを製品化してきました。 現在、血液ポンプのさらなる高性能化を目指し、血液自身の潤滑効果を利用した非接触の動圧軸受を用いることで、中長期使用が可能な血液ポンプを開発しています。動圧軸受とは、次第に狭くなる動圧溝に血液を押し込むことで生じる局所的な圧力を利用し、インペラを非接触で支持する仕組みです。同じ非接触軸受である磁気軸受と比べ、インペラの変位センサや制御回路を必要とせず、安価かつセンサレスで安心・安全な人工心臓を実現できます。 本技術は、20年以上にわたる血液ポンプ研究の知見を有する産総研ならではの技術であり、医療機器への応用に加え、インペラを非接触で浮上させることでコンタミを回避したポンプを求める産業機械分野への応用も期待されます。
- 2019-126943(2019/07/08):血液ポンプ
- 2019-149898(2019/08/19):再生血管の耐久試験装置
- 2019-158322(2019/08/30):血液浄化装置
- R. Kosaka et al., Journal of Artificial Organs, 2021, [doi/10.1007/s10047-020-01240-6]
- Harada T et al., Heart Vessels, 2021, [doi/10.1007/s00380-021-01809-y]
体外臓器灌流の開発
本技術は、重度呼吸不全患者に対する唯一の治療法である肺移植の実施数拡大を目的とした体外肺灌流(EVLP)技術です。国内の肺移植は年間約80例にとどまっており、米国においてもドナー肺の保存時間の制限や機能不全により、移植に活用される割合は約20%に過ぎません。近年、EVLPを用いてドナー肺を体外で保存・評価し、マージナル肺の活用を目指す取り組みが欧米で進められていますが、信頼性の高い長期保存法や定量的な機能評価手法は未だ確立されていません。 産総研では、人工心臓で培った計測・制御技術を活用し、灌流の自動制御を備えた体外肺灌流システムを開発しています。さらに、灌流中に非侵襲で移植可否の判断に資する評価を行うため、肺表面温度、酸素化能、肺重量の連続計測などの機能評価技術を開発しています。 本技術は、肺移植医療への応用に加え、体外臓器灌流装置の高度化、評価技術の標準化、さらには他臓器灌流への展開など、企業との共同開発による幅広い応用が期待されます。
- R. Kosaka et al., Transplantation, 2023, [doi/10.1097/TP.0000000000004380]
- R. Kosaka et al., Artificial Organs, 2022, [doi/10.1111/aor.14219]
- D. Sakota et al., Biomedical Optics Express, 2021, [doi/10.1364/BOE.445021]
超小型血流量計の開発
本技術は、体内埋込型人工心臓における血流量を高信頼かつ長期に計測することを目的とした超小型血流量計です。人工心臓治療では、在宅療養を含む長期使用において、患者の生理状態や人工心臓の駆動状態を把握するため、血流量の計測が不可欠であり、生存率やQOL(Quality of Life)の向上に直結する重要な情報となります。従来用いられている電流値から血流量を推定する流量推定法は、血液粘度の影響や血栓形成時の精度低下、軸流型人工心臓への適用が困難といった課題を有しています。また、市販の超音波流量計や電磁流量計は構造が複雑で小型化が難しく、体内埋め込みには適していません。 そこで産総研では、人工心臓の出口部の直管そのものをセンサとして利用する新たな流量計を考案しました。本技術では、直管に施した薄肉加工部の微小な変形を利用することで、血液に接触することなく血流量を計測します。人工心臓の種類に依存しない点が特長です。人工心臓への高い実装性に加え、小型・低侵襲・高信頼な流量計測技術として、医療機器のみならず産業機械分野への応用も期待されます。
- 2015-172675(2015/09/02):流量計
- 2014-259224(2014/12/22):流量計
- 2013-255778(2013/12/11):圧流量計
- R. Kosaka et al., Journal of Artificial Organs, 2011, [doi/10.1007/s10047-011-0569-5]