一色 理乃/ISSHIKI Rino
バイオものづくり研究センター
Biomanufacturing Process Research Center
微生物生態工学研究チーム 研究員
- 微生物によって廃水処理を高度化する技術の開発
- アンモニア酸化菌を中心とした微生物の凝集機構の解析
- ファージを活用した微生物制御
微生物による廃水処理は技術者の経験や勘により制御されている部分が多く、微生物叢やその機能を活用する技術が求められています。私は、窒素除去を担う難培養な硝化菌の凝集体形成機構を解明する研究を中心に、廃水処理の高度化を目指して研究を進めています。
微生物によって排水処理を高度化する技術
工業プロセスから発生する高濃度かつ難分解性成分を含む廃水は、従来法では処理効率やコスト、設備規模が課題となっている。本技術は、嫌気性微生物群集の機能を最大限に引き出すプロセス設計やバイオスティミュレーションを組み合わせ、これら難分解性廃水を高効率に処理するものである。特に、エチレングリコール等を用いたバイオスティミュレーションによる微生物群集の機能強化や、反応槽下部での可溶化撹拌と上部での固液分離を一体化したABCSリアクターを適用することで、芳香族化合物の分解とメタン生成が同時に促進できる。これにより、連続運転試験において有機物除去率80%以上を維持しつつ、従来法と比べてメタン生成速度の顕著な向上を達成した。プロセス全体の省エネルギー化・二酸化炭素排出削減に貢献できる点が大きな強みである。化学工場廃水、PET原料・リサイクル工程廃水、バイオ生産プロセス廃水などへの応用が期待され、実スケールでの実証・共同研究を通じた社会実装を目指している。
- 2025-207254(2025/11/27):固形有機物を含む廃水の処理装置および処理方法
- 2025-065818(2025/04/11):PETリサイクルで生じる有機性残渣の処理方法
アンモニア酸化菌を中心とした微生物の凝集機構の解析
アンモニア酸化菌をはじめとする硝化微生物は、下水処理、産業廃水処理、水産養殖の飼育水管理といった多様な分野に共通して、水中アンモニアの除去と水質安定化を担う中核的存在である。一方、これらの現場では、水質・負荷・温度変動などの環境ストレスにより硝化活性が不安定化し、運転管理上の課題となっている。本技術では、硝化微生物が形成する「凝集体」に着目し、凝集進行度、関連遺伝子発現、ファージ感染や遺伝子伝播との関係を多角的に解析する。研究データから、凝集体形成により非増殖細胞が減少し、高い代謝活性と耐環境安定性が維持されることを見出している。微生物の凝集性を指標・操作軸とする本知見は、下水・産業廃水処理の高度化に加え、養殖水槽やバイオフィルターの安定化・立ち上げ迅速化にも応用可能であり、水処理分野横断的な基盤技術となる。
- R. Isshiki et al., FEMS Microbiology Letters, 2024, [doi/10.1093/femsle/fnae013]
- R. Isshiki et al., Microbes and environments, 2020, [doi/10.1264/jsme2.ME19148]