ナノデバイス研究チーム
ナノデバイス研究チームでは、カーボンナノチューブ (CNT)を用いたデバイス応用の研究開発をしています。具体的には、Carbon Nanotubeを用いた不揮発性メモリであるCNT
Random Access Memory(RAM)デバイスの研究開発、Carbon Nanotubeネットワーク膜を用いた蓄電デバイス、特にLi
Ion Battery(LIB)デバイスの研究開発を行なっています。
チーム長ひとこと
森本崇宏 ナノデバイス研究チーム長
「いよいよ社会実装のステージをむかえたナノカーボン材料、
社会を変えるデバイスを一緒に作り上げましょう。」
研究テーマ一覧(主担当)
(2)LIBデバイスの研究開発 (周、森本)
研究テーマ紹介
CNT‐RAMデバイスの開発
メモリ駆動する、最適なCNT素子開発のため、実験用のテストデバイス開発を行い、デバイスの特性やメカニズム解明、動作性能の向上に寄与していきます。
企業との共同研究において、専用のクリーンルームを新たに所内に設置し、テストデバイス作製用の専用のプロセスラインである電子線描画装置、レーザー描画装置、スパッタ装置、CVD装置、エッチング装置、ALD装置、セミオートプローバーを導入し、短期間でデバイスを作製・評価し、CNT-RAMの開発を行なっていきます。
LIBデバイスの研究開発
電池の正極、負極や電解質に使われる最適な材料を見つけ出し、CNT本来の優れた特性をそのまま引き出すことにより、容量密度、出力、電池寿命や安全性を飛躍的に向上する次世代電池の開発に取り組みます。例えば、高い比表面積と空隙率を有するCNTシートを活用し、Liデンドライトの成長を抑制する大容量のLi金属負極の実用化を目指しています。また、現行LIBの軽量化・小型化に加え、高い柔軟性と伸縮性を備えたLIBや全固体電池の開発も行っています。
プレスリリース
電流密度、寿命を飛躍的に改善し、大容量のリチウム金属電極を実現
過去の研究成果
CNTマイクロキャパシターの開発
NEDO事業「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」の下、技術研究組合単相CNT融合新材料研究開発機構(TASC)に参画し、大きな批評面積を有するCNTの膜構造体を基板上で微細加工し、キャパシターの電極としてAlの電解コンデンサーと同等の容量を有する、CNTマイクロキャパシターをSi基板上に作製しました。
1) Lithographically Integrated Microsupercapacitors for Compact, High Performance,
and Designable Energy Circuits K. Laszczyk, K. Kobashi, S. Sakurai, A.
Sekiguchi, D. N. Futaba, T. Yamada, K. Hata Adv. Energy Mater. 5, 1500741
(2015). DOI: 10.1002/aenm.201500741. Citations: 56, ISI WoS
CNTロバストランジスタの開発
NEDO事業「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」の下、技術研究組合単相CNT融合新材料研究開発機構(TASC)に参画し、CNT及び衣服と同等の力学特性を有する柔らかい材料だけで構築した、CNTロバストトランジスタの開発を行いました。作製したCNTロバストトランジスタは、ハンマーで叩いても、ハイヒールや車で踏んでも、曲げても、さらには洗濯機で洗濯してもトランジスタ動作することを実証しました。
1) Robust and Soft Elastomeric Electronics Tolerant to Our Daily Lives
A. Sekiguchi, F. Tanaka, T. Saito, Y. Kuwahara, S. Sakurai, D. N. Futaba,T. Yamada, K. Hata
Nano Lett. 15, 5716. (2015). DOI: 10.1021/acs.nanolett.5b01458
Citations: 47, ISI WoS
CNT銅複合材料の開発
NEDO事業「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」の下、技術研究組合単相CNT融合新材料研究開発機構(TASC)に参画し、疏水製であるCNTに有機溶媒を用いためっきと水を用いためっきの二段階のめっきを行うことでCNTと銅との複合化に成功し、銅の100倍電流を流せ、Siと同等の熱膨張率を有するCNT銅複合材料を開発しました。
1) One hundred fold increase in current carrying capacity in a carbon nanotube-copper
composite
C. Subramaniam, T. Yamada, K. Kobashi, A. Sekiguchi, D. N. Futaba, M. Yumura, K. Hata
Nat. COMMUN. 4, 2202 (2013). DOI: 10.1038/ncomms3202. Citations: 330, ISI WoS
2) Carbon nanotube-copper exhibiting metal-like thermal conductivity and
silicon-like thermal expansion for efficient cooling of electronics
C. Subramaniam, Y. Yasuda, S. Takeya, S. Ata, A. Nishizawa, D. N. Futaba, T. Yamada, K. Hata
Nanoscale 6, 2669, (2014). DOI: 10.1039/c3nr05290g. Citation: 109, ISI Wos
3) Electrical performance of lightweight CNT-Cu composite wires impacted by surface and internal Cu spatial distribution
R. Sundaram, T. Yamada, K. Hata, A. Sekiguchi
Sci. Rep. 7, 9267, (2017). DOI: 10.1038/s42598-017-09279-x. Citation: 53,
ISI Wos
4) Copper/carbon nanotube composites: research trends and outlook
R. Sundaram, A. Sekiguchi, M. Sekiya, T. Yamada, K. Hata
R. Soc. Open Sci., 5, 180814, (2018). DOI: 10.1098/rsos.180814. Citation: 69, ISI Wos
CNTストレッチャブルセンサーの開発
FY2008年からのCRESTプロジェクトにおいて、CNTを用いた歪みセンサーや、捩れセンサーを開発しました。これらのセンサーは、配向したCNTを基材に転写し、CNTの配向方向以外に引っ張ることで生じる、配向CNT構造体の構造変化に伴う抵抗値の変化を検出し、歪みや捩れの測定を達成しました。CNTはナノ材料であり、機械的に柔軟なため、繰り返し耐久性にも優れ、配向構造の変化という大きな変化を行えるため、それまで困難だった人の動きのような大きな変異の測定を可能とし、人体計測を可能とする大歪みセンサーへ応用することができ、2011年にNature Nanotechnology誌に掲載された論文は引用数が2,450回を越え、フレキシブルデバイスの先駆的な成果となりました。
1) A stretchable carbon nanotube strain sensor for human-motion detection
T. Yamada, Y. Hayamizu, Y. Yamamoto, Y. Yomogida, A. Izadi-Najafadadi,
D. N. Futaba, K. Hata
Nat. Nanotech. 6, 296 (2011). DOI: 10.1038/NNANO.2011.36 Citations: 2,450, ISI WoS
2) Torsion-Sensing Material from Aligned Carbon Nanotubes Wound onto a
Rod Demonstrating Wide Dynamic Range
T. Yamada, Y. Yamamoto, Y. Hayamizu, A. Sekiguchi, H. Tanaka, K. Kobashi,
D. N. Futaba, K. Hata. ACS Nano 7, 3177 (2013). DOI: 10.1021/nn305593k
Citations: 17, ISI WoS
CNTキャパシターの開発
水添加気相成長法で作製したカーボンナノチューブをキャパシタの電極として利用し、カーボンナノチューブの電気化学的安定性と、大きな批評面積により、4Vでの駆動が可能なハイパワーで高エネルギー密度を有するスーパーキャパシターを開発しました。
1) Extracting the Full Potential of Single-Walled Carbon Nanotubes as Durable
Supercapacitor Electrodes Operable at 4V with High Power and Energy Density
A. Izadi-Najafadadi, S. Yasuda, K. Kobashi, T. Yamada, D. N. Futaba, H.
Hatori, M. Yumura, S. Iijima, K. Hata
Adv. Mater. 22, E235 (2010). DOI: 10.1002/adma.200904349. Citations: 523, ISI WoS
2) High-Power Supercapacitor Electrodes from Single-Walled Carbon Nanohorn/Nanotube
Composite
A. Izadi-Najafabadi, T. Yamada, D. N. Futaba, M. Yudasaka, H. Takagi, H.
Hatori, S. Iijima. K. Hata
ACS Nano 5, 811 (2011). DOI: 10.1021/nn1017457. Citations: 226, ISI WoS
CNTロバストランジスタの開発
高集積・複合MEMS製造技術開発プロジェクトにおいて、基板に線状にパターニングした触媒から、CNTを基板に垂直には移行させて成長させた配向CNT膜を作製し、その配向CNT膜を基板上に倒してCNTが基板と水平に配向させ、CNTの基板を作製した。そのCNT基板をMEMSの技術を用いて微細加工し、世界で初めて配向したCNTだけで構成されるカーボンナノチューブのカンチレバーを作製した。当該成果はNature
Nanotechnology誌に掲載され、表紙を飾りました。
1) Integrated three-dimensional microelectromechanical devices from processable
carbon nanotube wafers
Y. Hayamizu, T. Yamada, K. Mizuno, R. C. Davis, D. N. Futaba, M. Yumura, K. Hata
Nat. Nanotech 3, 289. (2008). DOI: 10.1038/nnano.2028.98. Citations: 236, ISI WoS
2) Mechanical Properties of Beams from Self-Assembled Closely Packed and Aligned Single-Walled Carbon Nanotubes
Y. Hayamizu, R. C. Davis, T. Yamada, D. N. Futaba, S. Yasuda, M. Yumura, K. Hata
3) Hierarchical Three-Dimensional Layer-by-Layer Assembly of Carbon Nanotube Wafers for Integrated Nanoelectronic Devices
T. Yamada, N. Makimoto, A. Sekiguchi, Y. Yamamoto, K. Kobashi, Y. Hayamizu, Y. Yomogida, H. Tanaka, H. Tanaka, H. Shima, H. Akinaga, D. N. Futaba,K. Hata
Nano Lett. 12, 4540 (2012). DOI: 10.1021/nl3016472. Citations: 25, ISI
WoS
スーパーグロース法の水添加効果の解明
単層カーボンナノチューブの効率的な合成法である水添加化学気相成長法において、合成雰囲気にわずかな水を添加することにより、触媒を覆い失活させていたアモルファスカーボンを除去し、失活した触媒を復活させることを透過型電子顕微鏡の観察及びEELS解析により明らかにし、スーパーグロース法における水の添加効果を明らかにしました。
1) Revealing the Secret of Water-Assisted Carbon Nanotube Synthesis by Microscopic Observation of the Interaction of Water on the Catalysts
T. Yamada, A. Maigne, M. Yudasaka, K. Mizuno, D. N. Futaba, M. Yumura, S. Iijima, K. Hata
Nano Lett. 8, 4288 (2008). DOI: 10.1021/nl801981m. Citations: 175, ISI WoS
二層カーボンナノチューブの合成
単層カーボンナノチューブの効率的合成法である水添加気相成長法(スーパーグロース法)を用いて、CNTの成長に用いる鉄触媒の厚みを制御することで、2層カーボンナノチューブの合成を可能としました。この結果はNature
Nanotechnology誌に掲載され、表紙を飾りました。またスーパーグロース法に用いる基板に、Si基板を用いていましたが、量産の礎になり大面積化が可能な、SUSフォイルを用いても、単層や2層カーボンナノチューブが合成可能であることも確認しました。
1) Size-selective growth of double-walled carbon nanotube forests from engineered iron catalysts
T. Yamada, T. Namai, K. Hata, D. N. Futaba, K. Mizuno, J. Fan, M. Yudasaka, M. Yumura, S. Iijima
Nat. Nanotech 1, 131 (2006). DOI: 10.1038/nnano.2006.95. Citations: 317, ISI WoS
2) Synthesis of single-and-double-walled carbon nanotube forests on conducting
metal foils
T. Hiraoka, T. Yamada, K. Hata, D. N. Futaba, H. Kurachi, S. Uemura, M.
Yumura, S. Iijima
J. Am. Chem. Soc. 128, 13338 (2006). DOI: 10. 1021/ja0643772. Citations: 151, ISI WoS
過去に携わったプロジェクト
NEDO委託・助成事業「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」
「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」(事後評価)分科会
(FY2008-2013)
科学技術振興機構CREST 「プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創生」
プロジェクト事後評価書
(FY2006-2008)
NEDO委託・助成「高集積・複合MEMS製造技術開発事業」高集積・複合MEMS製造技術開発プロジェクト
事業原簿(公開版)
(FY2002-2005)
NEDOナノカーボン応用製品創製プロジェクト
チームの構成メンバー
所属・役職・氏名 | 専門分野 | 業績 |
---|---|---|
研究チーム長
森本崇宏 |
物性物理、半導体物性、低次元伝導物理 | |
主任研究員
陳国海 |
材料工学 | |
招聘研究員 村川惠美 |
||
研究チーム付(兼務)
山田浩之 |