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ナノカーボンデバイス研究センター紹介

センターのミッション

ナノカーボンデバイス研究センターでは、産業技術総合研究所材料・化学領域の目標である「ナノマテリアル技術開発」の中で、ナノカーボンに注力し、その社会実装を目指した研究開発に取り組みます。具体的には、日本発のナノカーボン産業創出により我が国の素材・化学産業の競争力強化と、ナノカーボンを用いてカーボンニュートラルの社会変革に貢献するために、(1) ナノチューブ不揮発性メモリ(CNT-RAM)の開発を進めるとともに、(2)ナノカーボン社会実装の支援について実施します。

センター長あいさつ


センター長 畠賢治


「ワイワイ、ワクワクする研究を」というのが、当センターの運営方針です。本来、研究とは楽しくて仕方ないものであり、研究者が楽しくて没頭することによって、最大のパフォーマンスが発揮され、最高の成果が得られるというのが私の経験から確信していることです。研究者の「研究すきすきー!」という気持ちは、成果に結晶化されるのです。それがワクワクする研究です。

   


現代の研究は、一人で戦うにはあまりにも厳しいものとなっています。研究の世界は高度化・専門化が進んでおり、社会課題の解決やDXドリブンの研究など、多岐にわたる技術の集積が求められています。そのため、仲間を作り、チームプレイをする必要があります。一人ひとりが主体性を持ちながら、お互いに助け合う「one for all, all for one」の精神で光輝く姿が、ワイワイなのです。

   

当センターのマネジメントとは、研究者一人ひとりがどのような研究にワクワクするのかをよく知り、そのような研究をワイワイしながら行える環境を提供することです。そうすることで、素晴らしい結果が自然と得られるのです。間違いありません。
ワイワイ、ワクワクしながら自然の真理を解き明かし、同時に社会に貢献する研究をすることで、自分自身だけでなく周囲も成り立つのです。

センターの概要

1985年、1991年にそれぞれ発見された球状のフラーレン、筒状のカーボンナノチューブ、2004年に初めて単離されたシート状のグラフェンなどの新しい炭素同素体(炭素原子のみでできている物質)は、そのナノメートル(10億分の1メートル)サイズに由来して「ナノカーボン」と呼ばれています。

特にカーボンナノチューブは1991年に日本で飯島澄男博士によって発見され、それまでの材料ではなし得ない電気伝導性、熱伝導性、機械的強度を持つことが実証されたため、熾烈な研究開発が始まりました。当センターの前身である、ナノチューブ応用研究センター(飯島澄男研究センター長:2008/4/1~)、ナノチューブ実用化研究センター(畠賢治センター長:2015/4/1~)では、その研究開発において中心的な役割を果たし、日本発のナノカーボン産業の創出支援というミッションの実現に向けて取り組んできました。

ナノチューブ実用化研究センターには、ナノカーボン開発の国家プロジェクト(技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構:2017/3/31終了)を終えたばかりの研究者や技術者をはじめ、革新的な材料創出に欠かせない研究装置を多数揃えており、さらに次世代の商業カーボンナノチューブ合成技術の開発、用途開発の基盤となる分散・成形加工・塗布・紡糸・微細加工技術の開発、生産管理のための分散液評価技術の開発、革新的用途を創出するゴム・樹脂・金属との複合化技術の開発、材料の技術を支える標準化のための活動などを行うことで、長年かけて開発に必要なリソースを蓄積させて来ました。

そして、2022年4月1日に、これらの集大成として、ナノカーボンデバイス研究センターが設立されました。グリーン社会の実現とナノカーボン社会実装の支援を目指し、多くの共同研究者たちと共に、新たなミッションを推進して行きます。


センター沿革

  2022年 ナノカーボンデバイス研究センター 設立
(センター長:畠 賢治)
 今までに培った世界トップレベルのナノカーボン技術を活用して、
従来通り企業の実用化を支援しながら、半導体や人工知能など
アカデミアのフロンティアでムーンショットイノベーションを目指します。 
 
  経済産業省未来開拓研究プロジェクト 設立
光に適合したチップ等の高性能化・省エネ化:「不揮発メモリ開発」
(FY2022-FY2032)
  日本ゼオン等とともに、CNTを用いた不揮発性メモリの開発を開始
しました。10年間の長丁場で、不揮発DRAMを目指します。
 
  新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト 設立
次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発設立
(FY2022-FY2026/予算:10億円)
 ファインセラミックス製造プロセスの可視化技術の開発に取り組み、
微構造形成メカニズムの解明およびプロセスシミュレーションの開発に貢献します。 
 
  2018年 CNT/ゴム複合OリングSGOINT🄬販売開始
 
世界初、スーパーグロース法で量産された単層カーボンナノチューブ応用製品が販売開始されました。
  2017年 「日本ゼオン・サンアロー・産総研CNT複合材料研究拠点」(TACC) 設立
(FY2017-) 
 日本ゼオン・サンアロー・産総研CNT複合材料研究拠点を設立し、オープンプラットフォーム型共同研究を開始しました。
  2016年  NEDOプロジェクト設立
「超先端材料超高速開発プロジェクト」
(FY2017-FY2021/予算:2.6億円) 
 人工知能の分野に進出。ABCIスパコン上で、深層学習をベースにGAN等の最新技術を活用し、材料開発のためのマルチモーダルAIを実現しました。
  「日本ゼオン・産総研カーボンナノチューブ実用化連携研究ラボ」 設立
(FY2016-FY2019)
 日本ゼオンと冠ラボを設立し、次世代の量産化技術の開発を行いました。 
  2015年  世界初 スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場が稼働
 日本ゼオンとの長年の共同研究の成果が結実し、世界初の単層CNT製造構造が竣工しました!NATURE誌に経緯の記事が掲載されています。  
  ナノチューブ実用化研究センター 設立
(センター長:畠 賢治) 
 長年に渡り我々を指導してくださった飯島澄男先生が勇退し、後継者として畠がセンター長に就任しました。 
  2014年  NEDOプロジェクト 設立
「低炭素社会を実現する超軽量・高強度融合材料プロジェクト」(TASC)

(FY2014-FY2016/予算:41.25億円) 
 TASCのプロジェクトが再編され、当初5年の予定が前後半で計7年になりました。
 
  2012年 低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト「グラフェン基盤研究開発」(TASC-グラフェン) 設立
(FY2011-FY2016/予算:5.56億円) 
 ロールtoロール・プラズマCVD装置による連続成膜技術や透明導電フィルムを開発しました。
 
  2010年  最先端研究開発支援プログラム(FIRST)
「グリーン・ナノエレクトロニクスのコア技術開発」

(FY2010-FY2014/予算:1.3億円(総:45.8億円)) 
 
  経済産業省プロジェクト 設立
「低炭素社会を実現する超軽量・高強度融合材料プロジェクト」(TASC)

(FY2010-FY2014/予算:83.5億円)
 日本にアルバニーやIMECのような研究拠点をということで発足したTIA(Tsukuba-Innovation-Arena)。コア領域の一つにCNTが選ばれ国家プロジェクトが始まりました。我々は技術研究組合(TASC)を設立し、企業群とともに、CNTの用途開発を行いました。 
 
  2009年 産総研にて日本ゼオンとのスーパーグロース法CNT剛性実証プラントを設立
 TIAの事業として、スーパーグロース合成法の実証プラントを日本ゼオンとともに設立・運用し、日本中の用途開発企業にサンプル提供しました。 
  2008年  戦略的創造研究推進事業CREST
「自己組織プロセスにより創製された機能性・複合CNT素子による柔らかいナノMEMSデバイス」 設立

(FY2008-FY2013/予算:2.67億円)
 我々には珍しい文科省のプロジェクト。CNTの様々なデバイス応用を模索し、人体の動きを計測できる絆創膏型CNT大ひずみセンサー。この分野の先駆けとなりました。 
  ナノチューブ応用研究センター 設立
(センター長:飯島澄男)
 
  2007年 NEDOプロジェクト 設立
「研究題目」ナノテク・先端部材実用化研究開発(21世紀ナノテクチャレンジプログラム) カーボンナノチューブFEDによる停電時駆動可能な多機能情報表示装置の開発

(FY2007-FY2010/予算:3000万円)
 
  2006年  NEDOプロジェクト 設立
「高集積・複合MEMS製造技術開発プロジェクト」

(FY2006-FY2008/予算:2.39億円)
 CNTの自己組織化を微細加工で誘導し、複雑な3D形状を持つ、CNT-MEMSを開発しました。このデバイスは日の目を見ませんでしたが、技術は現在のGI基金プロジェクトに引き継がれています。
  NEDOプロジェクト 設立
「カーボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」

(FY2006-FY2010/予算:17.48億円)
 日本ゼオン・荒川公平氏(PL)と運命の出会いをし、スーパーグロース合成法の量産技術を供に開発しました。日本ゼオンはいまも良きパートナーです。
 
  2004年  ナノカーボン研究センター 設立
(センター長:飯島澄男) 
 
  「スーパーグロース」カーボンナノチューブの合成法を発見
 極微量の水分を添加し、従来の1000倍の効率で単層CNTを製造するスーパーグロース合成法を開発しました。以後20年間我々を支えるコア技術です。右図の単層CNT構造体は、実は失敗作なのですが、女性記者が気に入って、朝日新聞の第三面に写真が掲載され、”ナノテクの花”と呼ばれるようになりました。 
  2003年 NEDOプロジェクト 設立
「カーボンナノチューブFEDプロジェクト」

(FY2003-FY2005/予算:24億円) 
 
  2002年 NEDOプロジェクト 設立
「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト」

(FY2002-FY2005/予算:42.3億円)
 CNTの合成技術と用途開発を行う巨大国家プロジェクト。このプロジェクトで我々の基盤となる技術が生み出されました。
 
  2001年 新炭素材料開発研究センター 設立
(センター長:飯島澄男) 
 CNTの発見者であり、日本を代表する研究者の飯島澄男博士が産総研のセンター長に赴任しました。右は、電顕の神様、飯島先生が産総研のおんぼろTEMをわざわざ見てくださった時の写真。電顕を覗く飯島先生の姿は神々しかったです。 
  1998年 フロンティアカーボン
「炭素系高機能材料技術の研究開発」 設立

(FY1998-FY2002/予算:2400万円) 
 

組織

研究チーム


研究設備

ナノカーボンデバイス研究センターには、ナノカーボン産業創出により我が国の素材・化学産業の競争力強化と、ナノカーボンを用いてカーボンニュートラルの社会変革に貢献するため、専門的な設備や最新の装置が整備されています。

研究設備ギャラリー


連絡先

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 ナノカーボンデバイス研究センター

〒305-8565 茨城県つくば市東1-1-1 中央第5
Eメール: sgt-info-ml*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)


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