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化学評価研究チーム

化学評価研究チームでは、ナノカーボン社会実装の共通基盤となる粉体、分散液や複合材料の品質、物性、粒子サイズ・形状、ネットワーク構造などの評価技術を開発しています。上流(粉体)から中流(分散液、ドープ)、下流(膜、糸、デバイス等への成形加工、複合化)に至るまで、ナノカーボン実用化のために重要でありながら分析・解析が容易でなかったスポットの評価に取り組んでいます。また、他のナノ材料への水平展開も図り幅広く、ナノ材料の社会実装を支援していきます。



チーム長ひとこと


小橋和文 化学評価研究チーム長


ナノ材料の機能発現や物性向上のメカニズムに興味のある方、一緒に研究をしてみませんか?
実際に世の中で使われる製品の開発に役立つ評価技術を探求しています。」


研究テーマ一覧(主担当)

  1. CNTの品質・分散状態評価 (小橋、中島、藤井、岡崎)
  2. CNT近赤外イメージングプローブの開発 (岡崎)
  3. ファインセラミックス製造プロセス可視化技術の開発 (中島、藤井、岡崎)

研究テーマごとの紹介

1. CNTの品質・分散状態評価

CNTをはじめとしたナノカーボン材料において、CNTの特性評価技術や、溶媒中の粒子サイズや形状など分散状態を定量評価する技術、官能基分布など表面状態をナノスケールで可視化する技術などの開発を行っています。
それら技術を通して、材料の特徴を分析し溶媒、ゴム、樹脂等との親和性を明らかにするとともに、性能、機能を発現させるデバイス共通基盤技術の開発に取り組んでいます。

(1)遠赤外分光によるCNT長さ評価
CNTは遠赤外領域に光吸収ピークを示すことが知られていましたが、その起源については明らかではありませんでした。我々は、CNTの長さに依存した共鳴現象が原因であることを系統的な実験によって示しました。さらに、観測されるピーク位置からCNT長さを見積もることができることを示しました。見積もられたCNT長さは、CNT糸の物性、特に導電率との相関が高いことを見出しています。


参考文献
ACS Nano, 8, 9897-9904 (2014).
Appl. Phys. Exp., 8, 055101 (2015).
Phys. Rev. B, 93, 195409 (2016).
J. Phys. Chem. C, 125, 19362-19367 (2021).

J. Phys. Chem. C, 120, 20419−20427 (2016).
Appl. Phys. Exp., 10, 055101 (2017).
Carbon, 152, 1-6 (2019).
Nanomaterials, 12, 593 (2022). (Selected as Editor’s choice)






(2)遠心沈降法による分散液中のCNT粒度分布および解繊度評価
分散液中のCNTサイズ分布は非常に広いため、動的光散乱法やレーザー散乱法などの手法では、その全体をうまくとらえることができません。我々は、サイズによる分級と粒子計測を組み合わせた遠心沈降法が有効であることを見出しました。さらに、遠心加速度を変化させて測定することで、CNT凝集体の解繊度も定量評価することができます。

参考文献
J. Phys. Chem. C, 123, 21252−21256 (2019)
Powder Technol., 407, 117663 (2022).





(3)CNT表面状態評価法の開発
CNT材料開発では、機能性を付与するためにCNT表面に官能基を導入する技術開発が盛んに行われているため、CNTの表面官能基の分布を高い空間分解能で迅速に評価する技術が求められていました。
我々は、試料の支持基板を工夫し、観察時のエックス線信号検出の安定性を飛躍的に改善することで、SEM/EDSにより、CNT表面の元素分布を空間分解能10ナノメートル以下でイメージングすることに成功しました。また、本手法をはじめとする11種類の手法をもちい、酸化処理によるCNT表面状態変化を明らかにしました。

 参考文献
 Nanoscale, 11, 21487-21492 (2019).

 産総研プレスリリース
 
J. Phys. Chem. C, 124, 25142-25147 (2020)
 ACS Appl. Nano Mater., 4, 5273-5284 (2021).



(4)ロックイン式発熱解析によるナノ材料品質評価
CNT複合材へ電流を流し、そこからのジュール熱を顕微サーマルスコープで観察することで、複合材料中のCNTネットワーク構造を、実空間・非破壊で観測することに成功しました。同手法によってグラフェン上の構造欠陥を大面積かつ短時間で評価することにも成功しました。

  参考文献
  Science Advances, 5, eaau3407 (2019).

  産総研プレスリリース
  Sci. Rep., 9, 14572 (2019).





2. CNT遠赤外イメージングプローブの開発

表面を酸化処理した酸化CNTは生体透過性の良い近赤外光で励起、発光します。我々は酸化CNTの新規合成法を開発し、近赤外蛍光イメージングプローブとして応用することに成功しました。

参考文献
Sci. Rep., 8, 6272 (2018).

産総研プレスリリース
Bioconjugate Chem., 30, 1323-1330 (2019) (Cover Article).
Langmuir, 38, 1509-1513 (2022).









3. ファインセラミックス製造プロセス可視化技術の開発

ファインセラミックス部材の製造プロセスでは、原料セラミックス粒子のみならず、バインダーや分散剤などの有機物、分散媒などが原料として用いられ、各要素プロセス中にそれぞれが複雑に変化しながら最終部材の微構造が形成されます。我々はナノカーボン評価技術開発の経験と知見を活かし、各要素プロセス前後の微構造変化と、要素プロセス中に微構造が形成されていく過程の可視化技術の開発に取り組んでいます。

  

参考情報  NEDO「次世代ファインセラミックス製造プロセスの基盤構築・応用開発」事業


過去の研究紹介

分子内包カーボンナノチューブの創製と物性探索

CNTはその内部にナノメートルスケールの空間を有し、様々な分子を内包することができます。当研究チームでは様々な分子を内包したCNT作製技術を確立しました。さらに、拡張近赤外発光測定システムや近赤外ラマン分光システムを構築し、分子を内包することによるCNTの物性変化を詳細に調べました。

参考文献
Nanoscale, 8, 7834-7839 (2016).
Nanoscale, 6, 13910-13914 (2014).
J. Phys. Chem, C, 116, 23844-23850 (2012).
Angew. Chem. Int. Ed, 50, 4853-4857 (2011).

J. Am. Chem. Soc., 132, 15252−15258 (2010).
Phys. Chem. Che,. Phys., 12, 8118-8122 (2010).
Chem. Commun, 46, 1293-1295 (2010).
Phys. Rev. Lett., 103, 027403 (2009).
J Phys. Chem. C, 113, 571-575 (2009).
J. Am. Chem. Soc., 130, 4122-4128 (2008).
Phys. Rev. B,74, 153404 (2006).
JSTさきがけ「構造制御と機能」



チームの研究成果

原著論文(2023年)

"Step-by-step characterization of a series of polyamidoamine dendrimers on carbon nanohorn surface”
H. Nakajima,* K. Kobashi, C. Stangel, T. Morimoto, M. Zhang, N. Tagmatarchis and T. Okazaki*
Appl. Surf. Sci., 624, 157077 (2023).

ナノカーボンの化学修飾の反応収率算出は、一般的に非常に難しいことです。本論文では、SEM/EDS分析によって、カーボンナノホーンの化学修飾反応の反応収率を見積もることに成功しました。





“Size Distributions of Cellulose Nanocrystals in Dispersions Using the Centrifugal Sedimentation Method”
Y. Sato, Y. Kato, Y. Iizumi, T. Morimoto, K. Kobashi, T. Sugino, H. Tateno,* T. Okazaki*
Int. J. Bio. Macromol., 233, 123520 (2023).

堀場製作所-産総研粒子計測連携研究ラボでおこなった成果が論文になりました。遠心沈降式粒度分布計測法により、分散液中のセルロースナノクリスタルの粒度分布を約10 nm~1 μmにわたって定量評価できることを示しました。

参考情報
「堀場製作所・産総研 粒子計測連携研究ラボ」を設立


原著論文(2022年)

“Micro and macroscopic structure evolution of few-walled carbon nanotube bundled network by high temperature anneal”
K. Kobashi,* S. Yamazaki, K. Michishio, H. Nakajima, S. Muroga, T. Morimoto, N. Oshima and T. Okazaki
Carbon, 203, 785-800 (2023).(IF=11.307)


堀場製作所-産総研粒子計測連携研究ラボでおこなった成果が論文になりました。遠心沈降式粒度分布計測法により、分散液中のセルロースナノクリスタルの粒度分布を約10 nm~1 μmにわたって定量評価できることを示しました。


“Elevated Myl9 reflects the Myl9-containing microthrombi in SARS-CoV-2–induced lung exudative vasculitis and predicts COVID-19 severity”
C. Iwamura, K. Hirahara,* M. Kiuchi, S. Ikehara, K. Azuma, T. Shimada, S. Kuriyama, S. Ohki, E. Yamamoto, Y. Inaba, Y. Shiko, A. Aoki, K. Kokubo, R. Hirasawa, T. Hishiya, K. Tsuji, T. Nagaoka, S. Ishikawa, A. Kojima, H. Mito, R. Hase, Y. Kasahara, N. Kuriyama, T. Tsukamoto, S. Nakayama, T. Urushibara, S. Kaneda, S. Sakao, M. Tobiume, Y. Suzuki, M. Tsujiwaki, T. Kubo, T. Hasegawa, H. Nakase, O. Nishida, K. Takahashi, K. Baba, Y. Iizumi, T. Okazaki, M. Y. Kimura, I. Yoshino, H. Igari, H. Nakajima, T. Suzuki, H. Hanaoka, T. Nakada, Y. Ikehara, K. Yokote and T. Nakayama*
Proc. Nat. Acad. Sci., 119, e2203437119 (2022).

千葉大学医学部中山先生、平原先生、池原先生らとの共同研究がPNASに掲載されました。コロナウイルスなどのSEM観察を担当しました。

千葉大のプレスリリース


“Liquid Crystalline Behaviors of Single-Walled Carbon Nanotubes in an Aqueous Sodium Cholate Dispersion”
K. Kojima, M. Aizawa, T. Yamamoto, S. Muroga, K. Kobashi and T. Okazaki*
Langmuir, 38, 8899-8905 (2022).

界面活性剤をもちいたCNT分散液について、その液晶相挙動を詳しく調べました。ネマティック相において、きれいなシュリーレン組織が観察できました。また、液晶相中のCNT配向を直接観察することに成功しました。


“Porosity and size analysis of porous microparticles by centrifugal sedimentation with and without density gradient”
Y. Kato,* T. Morimoto, K. Kobashi, T. Yamaguchi, T. Mori, T. Sugino and T. Okazaki*
Powder Technol., 407, 117663 (2022).

遠心沈降法をもちいるとCNT凝集体の空隙率を定量的に算出できることを以前に発表しましたが(J. Phys. Chem. C, 123, 21252−21256 (2019).)、今回、株式会社堀場製作所および弊所ナノ材料研究部門と共同で多孔質ポリマー粒子についても同様に空隙率を算出できることを明らかにしました。


“Single-Walled Carbon Nanotube Membranes Accelerate Active Osteogenesis in Bone Defects: Potential of Guided Bone Regeneration Membranes”
Y. Xu, E. Hirata,* Y. Iizumi, N. Ushijima, K. Kubota, S. Kimura, Y. Maeda, T. Okazaki and A. Yokoyama
ACS Biomater. Sci. Eng., 8, 1667-1675 (2022).

CNTが骨再生誘導法用の膜として有望であることがわかりました。CNT膜の作製やラマンマッピング測定などを担当しました。CNTのバイオ応用の一つとして期待しています。本論文は、北海道大学大学院歯学研究院横山敦郎先生、平田恵理先生らとの共同研究成果です。


“Patterning of graphene using wet etching with hypochlorite and UV light”
M. Zhang*, M. Yang, Y. Okigawa, T. Yamada*, H. Nakajima, Y. Iizumi and T. Okazaki*
Sci. Rep., 12, 1541 (2022).

次亜塩素酸ナトリウム中でUV照射することにより、グラフェンを簡便にウェットエッチングできることがわかりました。


“Annealing-induced enhancement of electrical conductivity and electromagnetic interference shielding in injection-molded CNT polymer composites”
T. B. N. Thi, S. Ata,* T. Morimoto, Y. Kato, M. Horibe, T. Yamada, T, Okazaki and K. Hata
Polymer, 245, 124680 (2022).

射出成型して作製したCNTポリカーボネート複合材について、高温熱処理による導電率向上が、複合材中のCNT配向で説明できることを見出しました。我々はロックイン式発熱解析などをもちいた複合材評価について貢献しました。


“Comprehensive Characterization of Structural, Electrical, and Mechanical Properties of Carbon Nanotube Yarns Produced by Various Spinning Methods”
T. Watanabe, S. Yamazaki, S. Yamashita, T. Inaba, S. Muroga, T. Morimoto, K. Kobashi and T. Okazaki*
Nanomaterials, 12, 593 (2022) (Selected as Editor's choice).

6種類の市販CNT線材について、TEM、SEM、ラマン分光、遠赤外分光、WAXD、TGAなどの計測法をもちい、CNT線材の構造および物性と、導電率および機械特性との相関を系統的に調べました。その結果、特に導電率については、遠赤外分光から算出されるCNT有効長と、CNT線材の密度に大きく依存することがわかりました。本論文は超超PJの研究成果です。


“Streptavidin-Conjugated Oxygen-Doped Single-Walled Carbon Nanotubes as Near-Infrared Labels for Immunoassays”
K. Kojima, Y. Iizumi, M. Zhang and T. Okazaki*
, 38(4), 1509-1513 (2022).

CNTとタンパク質の一種であるストレプトアビジンからなる複合体を作製し、標的指向性を持ったCNT近赤外蛍光標識の開発に成功しました。ビオチンとストレプトアビジンの特異的な結合を利用することで、従来約50%であった標的指向性を約80%まで高めることができました。


“Transport property characterization of sparse CNT networksvia AFM images”
T. Inaba, T. Morimoto* and T. Okazaki
Surf. Interface Anal., 2022;1-9.doi:10.1002/sia.7056.

CNTネットワークの電気抵抗について、そのAFM像から推定するモデルを提案しました。本件は超超PJの成果です。



チームの構成メンバー

役職・氏名 専門分野 業績
研究チーム長
小橋和文
高分子化学
研究員
中島秀朗
分光技法・半導体物性・量子光学
研究員
藤井香里
溶液化学、レーザー分光
首席研究員
岡崎俊也
ナノ炭素科学・機能物質化学 バナー画像(220X68)
研究チーム付き(兼務)
森田裕史
産総研特別研究員
児島敬子
ナノ材料化学・液晶化学


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