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第35回 GSJシンポジウム 地圏資源環境研究部門 研究成果報告会【質問への回答】
先日開催した「第35回GSJシンポジウム 地圏資源環境研究部門 研究成果報告会」において、当日回答できなかった質問に対して下記の通り回答致します。
萩原氏への質問 回答 圧入区間は井戸の側壁に穴がたくさん開いているとのことですが、それを閉じて井戸の先端だけから出すことは可能でしょうか。そうすれば貯留層下部にも入るのではないかと思いました。 萌別層圧入井では、全貯留区間に亘って、小さな孔を開けその上にスクリーンを巻付けたケーシングを設置しましたが、この際ケーシングの外側と坑壁間の隙間はセメントで塞がれていません。そのため、この坑井を改修して現在のチュービングをより深部まで届くものに入れ替えても、坑井の下端部から圧入されるCO2はケーシングの外側と坑壁間の隙間を通って上部に流動するものと想定されます。この隙間をセメントで塞ぐ作業は、坑井の傾斜が大きいこともあり非常に困難な作業ですので、新たに坑井を掘削するほうが現実的であると考えます。 CO2の排出権取引と同じような貯留権取引のようなアイデアは世界で生まれていないでしょうか。 欧米や豪州のCCSの法規制では、二酸化炭素を貯留するライセンスを取得するには、単にライセンス料の支払能力だけではなく、技術、財務、実績その他が評価されます。したがってライセンスを付与された事業者が、他の事業者とライセンスを取引することは想定されていないと考えます。 海洋調査(環境調査)ではどのようなことを調査されているのでしょうか。 海水を採水して行う水質の化学的性状調査(pH、塩分、全炭酸、溶存酸素量、アルカリ度等)及びプランクトン状況調査、多項目水質センサーを使った水質の鉛直観測(水温、塩分、溶存酸素量、pH)並びにセンサーを海中に固定して行う連続水質観測(水温、塩分、溶存酸素量、pH)を実施しています。 当該層は十分に連続圧入できる浸透率と広がりがあるようにデータからは見受けられた。例えば海底パイプラインでCO2を送り、海底マニフォールドから圧入するCO2圧入ネットワークを構築すれば、当該海域で数億トンの圧入が可能のように思われるが、その理解でよろしいか。または当該地層はピンチアウトなどして殲滅、または性状悪化していくのか。 萌別層は容積法による推定では億トン単位の貯留可能量が試算されていますが、これは入れ物としての値であり、長期間にわたって安全に貯留が可能かどうか評価するには、圧入井の配置やレートなどの圧入計画に基づいた数値シミュレーションを実施する必要があります。一般的にシミュレーションによる評価では地層圧力の増加やCO2の挙動の影響などで、容積法による評価と比べて貯留可能量は減少します。CO2圧入ネットワークについては、圧入施設、圧入井の本数や配置などを経済性も含めて最適化する必要があると考えます。地質に関しては、これまでの地質解析結果から萌別層は広域に分布していることが期待されますが、このうち貯留対象となる砂岩層は浅海成堆積物であることから、側方へは層厚や岩相が変化し、性状が変化することが予想されます。いずれ何処かで砂岩層はピンチアウトすると考えられますが、現在のモデル対象範囲においては弾性波探査の解析からピンチアウトはしていないと想定しています。 徂徠氏への質問 回答 地下へのCO2貯留量を出来るだけ増大させるために、ただ地下に圧入するだけでなく、何か工夫する必要があると思いますが、何か注目される技術開発はあるでしょうか 限られた空間にできるだけ多くのCO2を貯留するためには、CO2の密度を上げることが有効となります。貯留層の深度が浅いとCO2は密度の低いガスとなるため、より密度の高い超臨界状態となる約800m以深が貯留層として選ばれています。原理的には、ドライアイスや液体のCO2はさらに大きな密度となりますが、地下の温度圧力条件ではそのような状態での存在はきわめて限定されてしまいます。 地熱地域でのCO2の鉱物固定は何かメリットがあるでしょうか。熱で鉱物化が促進されるようなことがあるでしょうか。 ご指摘のとおり、温度が高いと反応速度(特に鉱物化に必要な陽イオンの溶出速度)が大きくなるため、鉱物化が促進されることが期待されます。 上流で溶解して下流で沈殿すると圧入性の低下は生じないのでしょうか。 鉱物化のためにはまずCO2が地層水に溶解する必要がありますが、CO2の地層水への溶解度はきわめて低いことを考慮すると、岩石の空隙が炭酸塩鉱物で完全に充填される可能性は必ずしも高くないと思われます。ただし、鉱物化が起こる場所は地層水の流速と反応速度の兼ね合いによって決まるため、ご指摘のとおり、場合によっては圧入性の低下が生じる可能性もないとは言い切れません。 海底の玄武岩への固定は海洋汚染防止法により規制されると思いますが、地熱発電との組み合わせによる陸上でのCO2圧入について、どのような規制法・推進法が考えられますか。 現行では陸上でのCO2圧入に関する法律は制定されていません。一方で、地熱発電との組み合わせでは、地熱発電に関わる諸規制も関係してくるため、そもそもの安全性の検証に加えて、早い段階で法律の整備・整理が進むことが望まれます。 地化学反応が浸透率や毛細管圧力などの水理特性に及ぼす影響について研究されているとのことですが、鉱物トラップによる貯留可能量を予測する上で、圧入前の時点でこれらの影響が定量評価される必要があると存じますが、現時点において圧入前に取得できるような岩石や貯留層流体の初期性状との相関関係など、モデル化は可能なのでしょうか CO2圧入後の平衡状態や反応の結果生じる空隙率の変化は、初期の岩石および流体組成からある程度モデル化が可能です。一方、反応速度についてはデータが限られており、また水理特性が岩石内の不均質性に強く影響されることもあって、信頼性の高いモデル化にはまだ課題も多く残されています。 堀川氏への質問 回答 SPへのノイズとしては何が想定されるでしょうか。 SPモニタリングでのノイズとして特に大きいものは降雨等が地面に浸透する過程で生じるものであり、実際にサイト観測でも捉えられています。また、地表付近に埋設した電極について、電極設置後、地面との接地状態が安定するまでは電位のドリフトが生じることが分かっています。 SPモニタリングは海底に圧入口がある場合でも使用可能でしょうか。 坑口が海底に存在する場合でも可能です。ただし、坑口に仕掛ける電極や埋設する電極が周囲の海水と接触しないための加工が必要になると思われます。 浅田氏(ポスター発表)への質問 回答 調査対象地の水深は浅いと思います。水深の浅いエリアに賦存していることが実用化に向けた研究のポイントですか。 海洋掘削リグのうち着底型リグやジャッキアップリグの適用水深(約120mまで)に比べると深いですが、中緯度域でメタンハイドレートの安定領域を満たす水深帯(約500m以深)の中では浅い方です。実用化に向けて水深が浅いことは有利ですが,その他に可採資源量、採掘しやすさに関係する地層中でのMHの産状や賦存形態、離岸距離、採掘船の操業に関わる季節毎の海況変化、機器の海底設置に関わる底層流等の海底状況、漁業や環境への影響、消費地への輸送等、多くの条件を検討する必要があります。より深い他の候補海域の方が有望だと判断される場合もあります。 ROVのレーザ光の波長は500nmですか、1500nmですか。 SeaXerocks1で使用しているレーザー光の波長は532nmです。 最上深海長谷に沿って見える高い後方散乱強度は何を示すか。 海底面から海底下数十cm程度の範囲に、周辺の堆積物(遠洋性堆積物)とは異なる物質(露頭や粒径の大きな堆積物、ガスを含む堆積物など)が分布していることを示します。最上深海長谷は、海水準が低下した間氷期には活動していたとされており、間氷期に供給された粒径の大きな堆積物の分布があると考えられます。 ガスはどこからきて、どこへ出ているのか。 東北日本の日本海側に広く分布する炭化水素の根源岩が当該海域下にも分布すると考えられます。地層中で発生して浮力をもったガスを含む流体が、逆断層などを通じて上方へ移動し、海底面付近へ到達して、酒田海丘(仮)のような背斜構造に滞留すると考えられます。
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中央第7
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