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東北歴史博物館で工芸指導所関連の特別展開催 - 美しさは普段づかいの中に-

 東北歴史博物館(宮城県多賀城市)で、平成28 年度冬季特別展「工芸継承-現在から捉え直す国立工芸指導所-」が平成29 年1 月14 日から2 月26 日の会期で開催されました。工芸指導所は産総研東北センターの前身にあたります。1 月14 日に行われた開会式では、産総研理事長 中鉢良治が祝辞を申し上げました。

 中鉢は祝辞のなかで、「工芸品の良さは素地の美しさや、使えば使うほど味が出て来ることにあります。美しさは普段づかいの中にあるものだと思います」と述べました。工芸指導所が目指したのも、伝統技術に新技術を組み合わせた実用のための工芸品づくりでした。

 工芸指導所は昭和3 年、仙台市二十人町通(現:宮城野区五輪)に設置され、日本初のデザイン研究機関として、工芸品の海外輸出の推進と東北地方の産業振興を目指しました。
昭和8 年には、独自の色合いを持つ漆の塗装法「玉虫塗」が発明されました。戦後、産業工芸試験所東北支所として活動を続けましたが、高度経済成長期を経て、昭和42 年に、東北工業技術試験所へ改組され、現在の産総研東北センターにいたっています。そのため、産総研東北センターでは、長らく、工芸指導所の試作品を保存していました。しかし、東日本大震災後、より良い環境で保存するとともに、より多くの方々にご覧いただくことが、先人の偉業を後世に伝えることに役立つと考えました。そこで、平成26 年12 月に、工芸品の専門家である元東北工業大学教授の庄司晃子先生からのご紹介により東北歴史博物館に収蔵いただくことができました。

 産総研東北センターも、工芸指導所の目指した「実用のための工芸」の継承に寄与しています。

 昨年、仙台市で開催されたG7 財務相・中央銀行総裁会議では、「玉虫塗 ワインカップペア」が記念品として採用されました。玉虫塗を傷つきにくくする保護膜には、産総研東北センターで開発された粘土を主成分とする膜材料「クレースト®」の技術が使われています。食洗機にも耐えるコーティングを施すことで、諸外国の幅広い生活様式でも玉虫塗食器を“ 普段づかい” いただけるようになりました。

 東北工業試験所へ改組後50 年となる本年、このような特別展を開催いただけたことは、私たちにとっても大変よろこばしい記念となりました。



祝辞を述べる中鉢理事長の写真

▲祝辞を述べる中鉢理事長。背景は、昭和8年ドイツ人建築家ブルーノ・タウトが来日した際の集合写真。


玉虫塗パフ入れの写真

▲玉虫塗パフ入れ。


高校生らが「玉虫塗」を当時の方法で再現した写真

▲特別展に際し行われた展示ワークショップでは、高校生らが「玉虫塗」を当時の方法で再現しました。


玉虫塗のワインカップペアの写真

▲G7 財務相・中央銀行総裁会議の記念品となった玉虫塗のワインカップペア((㈲東北工芸製作所製作)。耐久性の向上だけでなく、普段づかいでも玉虫塗の艶やかな光沢と華やかな色調を保ちます。


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