産総研トップへ
産総研東北センターロゴ画像

東北は連携できるのか

中鉢仰る通りですね。会長が先程仰った「お互いに助け合おうという意識が少ない」点も、大変当たっていると思います。他の東北の県と仲良くするくらいなら中央や世界に近づいて隣を出し抜こうとする気質が、ある種の後進性の現れかもしれません。今までは世界に通用する人材の東北からの輩出を目指してきましたが、これからの時代はむしろ隣と連携できる人材が重要になると思います。

海輪その象徴的な出来事がありました。例をあげますと各県は震災前から、海外への観光・物産PR 活動を個別に行っていました。台湾にリンゴを売る活動は青森県が非常に成功しており、三村知事は台湾で「リンゴ知事」として有名です。ところが、例えば秋田や山形が台湾へリンゴを売りに行くと、台湾の人からすれば「この前来たばかりなのに、また来たの?」という感じです。
 じゃあ、皆で一緒に行ったらいいじゃないかということで、やっと2016 年8 月末、東北各県知事らが揃って台湾へ観光PR に行こうと、東北観光推進機構等と一緒に代表団を組んだのです。その結果、相手側の受けが非常に良かったですね。一県単独なら会えないような台湾の蔡総統とも会えましたし、各マスコミからの取り上げられ方も全く違いました。連携による効果は非常に大きかったのです。ですから今後これをもう少し観光以外にも広げたいですね。

中鉢それは歴史的な出来事ですね。ひと時、地方分権の話がありましたが、東北は絶対にまとまらないだろうと言われた筆頭で、逆に一番まとまりやすいのは九州ではないかと言われていました。東北には特殊論がそれぞれにあり、特に仙台市は突出した規模を持つので、仙台市を持つ宮城県や隣県の思惑もあって、なかなか連携が取りにくいのです。

海輪今さらにインフラの例で言えば、昨年7月に仙台空港が民営化され、「仙台は栄えて、まわりは疲弊する」という意識を、宮城県以外の皆さんが少なからず持っています。そんな中、外国から来るお客さんはまず「東北ってどこにあるの?」から始まります。「東京の北、北海道の南」くらいしか認識されていない中で、山形だ、秋田だ、青森だと言ってもだめで、連携してプロモーションしなければだめでしょう、ということになるわけです。

中鉢よくわかりますよ。今日は産総研と東北活性化研究センターさんが共同で、「オンリーワン企業 - 次世代産業技術マッチングフェスタ(本誌p.5参照)」を開催しています。このような機会を宮城県だけでなく、東北6県すべての公設試験所と一緒に連携して持ったのは、産総研130 年、東北センター50 年の歴史の中で、実は初めてのことです。 東北として連携する動きがようやく出てきた。この時期がなぜ今来たかと言えば、「このままは続かない」と、我々も含めて、皆が気づいたからだと思います。

海輪本日開催されたこのフェスタも、ひとつの成功事例ですよね。連携することで自分の価値を非常に高めるということを実感できる場づくりが大切だと思います。 私が会長を務める東北経済連合会(東経連)では、新たに策定した長期ビジョンの柱のひとつに「広域連携の場づくり」を掲げています。これは自治体がなかなか先導できないことですので、県境がない民間でやるしかないと。ビジネスを通じた連携ができれば、その上に東北の自治体が加わる場をつくれると考えています。

東北活性化研究センター海輪会長の写真

中央との対等な付き合い方

海輪もうひとつ、東北が挑戦していけばチャンスがあると思っているのが、IoT やAI 等の活用です。これは産業界のみならず、地域社会を維持していく面でも大切だと思います。「地方消滅」と言われていますが、このままいけば、田舎の町や農村どころか、皆、消滅してしまうわけで、それが良いことかと言えば、決してそうではないでしょう。
 東北の魅力は中核的な都市があちこちにあり、それぞれ独自の文化をもって活動していることだと思いますし、それを維持しなければならないと思います。ですから限界集落から人を引き上げて都会に押し込めてしまうような議論はやや極論で、逆に、限界集落のような地域でもビジネスができる環境を整える方が大切だと思います。

▲ ページトップへ