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中鉢理事長と東北活性化研究センター海輪会長の対談写真

東北の特殊さ、どう捉える

中鉢私はもろに東北人ですから、「お前の欠点だ」と言われているかのように、ひしひしと感じます。
 全くの同意見に補強的に付け加えますと、東北の良さは人々が誠実なところだと思います。その誠実さが上手く表現できていないのではないでしょうか。私は人間の全ての徳の中で一番大切なことは、誠実さだと思います。それを感じ取るから、これは極めて誇りだと思うのです。
 「東北人はシャイ」と言うこともありますが、スタンダードというものに対する自信がないのです。東北文化は非常にローカライズされた、標準化されていないものなのです。口には出しませんが、言葉も含めて、どうしても「特殊」という意識が東北人にはあるのです。
 ですから、今までは何を聞かれても黙っていました。それはずっと長い間、東北が中央に対して従属関係にあったからだと思います。「白河以北一山百文」の感覚を自他ともに許しているから、標準化されないことに対する恥ずかしさがある。それで異文化への抵抗感があるのでしょう。だから内向きになるのではないでしょうか。東北人である私自身の気持ちを胸に手を当てて考えると、そう感じますね。

中鉢理事長の写真

海輪同感です。東日本大震災では、東京電力福島第一原子力発電所で事故が発生しました。これは「首都圏vs東北」という意味でかなり象徴的なことだったと思うのです。理事長も仰る通り、東北は首都圏にヒト・モノ・カネも、エネルギーも供給してきました。歴史的に見ても、東北は蝦夷征伐に始まり、幕末には会津藩が征伐される時に、奥羽越列藩同盟を組んで対抗しました。それこそ誠実さの表れだったと思うのです。それを思いますと、東北の人はなぜもうちょっと怒らないの、と感じたわけです。
 私どもの電力事業の歴史で申しますと、電気事業は最初、各地の自治体やお金持ちによるベンチャー事業で、それがだんだん統合されていきました。そんな中、度重なる冷害や飢饉で疲弊する東北地方を救済するために電力事業で経済振興を図ろうと設立されたのが東北振興電力株式会社です。それが戦時中に国策会社の日本発送電株式会社に一社化され、戦後はGHQ の指令で全国9 地域に9電力会社の体制がつくられました。全国9地域体制をつくったのは、地方分権でエネルギーを支える会社をつくろう、という目的があったのです。
 そのような歴史的経緯も踏まえますと、私は社内でも申し上げているのですが、東北地方は「特殊」な歴史を持つ地域ですから、その意味では一般的な電力会社や地方としてでなく、地域というものを特に意識した対応をしていく必要があると思います。
 ただ、理事長も仰ったように、東北の「特殊」さがいつもコンプレックスになっています。逆に「特殊」さを前向きに変えていかなければいけないと思うのです。今まで自分たちは価値がないと思ったものは、実は、よそから見ると価値があるのだと。これまでの「ずれ」をハンディキャップとしてではなく、前向きに捉えるべきではないでしょうか。 また、今回の復興予算に全面的に頼るようではだめで、次の時代の東北が自立して地域経済もまわる社会にするために何をすべきかは、早々に手掛ける必要がある問題です。

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