aist
Newsletter 一覧CONTENTS

研究紹介

研究員

金属酸化物ナノ粒子の合成法は、気相法、液相法、固相法があり、それぞれ特徴があります。一般的に、気相法は高結晶性粒子が得られるものの、反応が制御し得ない瞬時反応であるため、粒子径分布が広くなります。液相法は粒子径制御が可能であるが、結晶性に問題があります。固相法は粉砕技術がベースであるため、微小粒子を得ることは容易ではありません。


年、超臨界水を用いて金属酸化物ナノ粒子を合成できることが報告されています1-3)。この方式は気相法より粒子径制御が可能で、液相法より結晶性が高い粒子が合成できます。図1に実験装置の概略を示します。原料塩1から金属塩水溶液(例えば硝酸塩)を、また複合酸化物を作る場合などは原料塩2のラインも使用します。これらの原料を混合部で高温高圧の超臨界水と直接混合し、瞬時に反応温度まで昇温して合成反応を行います。その後、任意の時間反応を保持し、急冷水を混合して反応を停止し、間接冷却器で常温まで冷却します。装置の圧力は背圧弁で制御します。代表的な反応条件は400℃、30MPa、保持時間1〜2s程度です


図1図1超臨界水熱合成 試験装置


方式で様々な金属酸化物ナノ粒子が合成できることが分かってきていますが、粒子径制御に課題が残されていました。コンパクトシステムエンジニアリングチームは、この課題を解決する手段として急速昇温を担うマイクロミキサー、マイクロリアクターの開発が重要であると考え検討を行っています4)。結果の一例を図2に示します。400℃、30MPa、滞留時間2s、反応場原料濃度5mM/Lと同じ反応条件でベーマイトの合成を行い、マイクロミキサーの構造による粒子径への影響を調べました。


図2図2ベーマイト微粒子 粒子径分布

Mixer Aは従来から超臨界水熱合成の研究で用いられてきたものです。これは昇温速度が遅いため、昇温される過程で微粒子の核が生成・成長するため粒子径は大きくなります。Mixer Bは瞬時に反応温度まで昇温されるため、粒度分布が狭く、かつ粒子径の小さな微粒子が合成されます。このように超臨界水反応を制御するためには、反応条件の最適化検討と並行して、マイクロミキサーやマイクロリアクターなどの構造最適化などのエンジニアリング開発が重要となると考えています。

のマイクロミキシング技術は、超臨界水反応のみならず、流体混合を行うケースであれば非常に汎用性が高い技術であるため、色々な分野への波及が期待されます。現在、耐食材料との組み合わせも含めて、複数種のミキサーを開発しており、反応系への適用を進めたいと考えております。



参考文献:

1)“Hydrothermal synthesis of metal oxide fine particles at supercritical conditions”, T. Adschiri, et al., Ind. Eng. Chem. Res., 39 (2000) 4901-4907.

2)“Continuous production of BaTiO3 nanoparticlesby hydrothermal synthesis”, Y. Hakuta, et al., Ind. Eng. Chem. Res., 44 (2005) 840-846.

3)“Size-controlled synthesis of metal oxide nanoparticleswith a flow-through supercritical water method”,K. Sue, et al., Green Chem., 8 (2006) 634-638.

4)“Development of Novel Mixing Device for Continuous Hydrothermal Reaction ?Nanoparticlesynthesis-”,S. Kawasaki, et al., Proceedings of 8th International Symposium on Supercritical Fluids, PA-1-52, Kyoto, (2006).



http://unit.aist.go.jp/tohoku/ UP