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産業技術総合研究所 東北センター

産総研の地域拠点を考える

独立行政法人産業技術総合研究所 コンパクト化学プロセス研究センター長 水上富士夫


立行政法人の頭上がまた、喧しくなってきた。見直しとのことである。この折に、わが国最大級の公的研究機関である産総研並びにその地域拠点について、2002年4月の仙台への異動以来、私が感じ考えたことを述べてみたい。先ず、産総研と他の独法との最大の違いは、北は北海道から南は九州まで日本全土を遍く網羅する地域拠点を有することである。勿論、農水省傘下の独法など地域に支所を持つところは多々あるが、全土を網羅する形とはなっていない。全土を遍く網羅する地域拠点が、産総研の最大の特徴であり、これが無ければ、他の独法と似たり寄ったりで、特に文科省傘下の独法と何ら変わらず、産総研が独立して、しかも経産省傘下にいる意味が希薄となる。したがって、現在の地域拠点は、他の独法との差別化を際立たせるものであり、産総研が将来に渡って存続し生き残るための最大の強みであり武器となるはずである。

方、地域に拠点があるが故に、その存在意義、地域への貢献が問われている(そして、これが地域にある研究ユニットにおいては通常の研究成果の評価に加えて、第二の評価となって脅威を与えている)。為に、この貢献次第で、地域拠点は産総研の弱み・お荷物ともなりかねない。では、地域拠点はどうあるべきか。

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年、種々の格差拡大が叫ばれているが、産業技術面においても歴然とした地域格差がある。この是正は、経産省傘下である限り、産総研の重要な責務であろう。したがって、第一には、地域拠点は、中央の最新の技術・情報を提供すると同時に、地域のシーズ・ニーズを収集するネットワーク中継拠点となるべきで、この任務は極めて重要である。第二には、地域の研究ユニットが中心となって、地域における実際的な技術開発面での支援・協力を行うことである。ただ、注意しなければならないことは、研究ユニットの既に所有する知識・技術が一企業の利益目的のための単なる応用に終始することになってはならないことであろう。それは公的機関の研究者の本来の責務であるオリジナルな手法、概念、技術の創出をなおざりにし、次代への準備を疎かにしかねないからである。研究・技術面での直接的支援に際しては、公的研究者の本来の責務と合致した技術開発要素を内包し、しかも、地域の最大公約数的なニーズに応え得る開発課題を探し出し、取り組むことが重要であろう。かくして、地域拠点は最強の武器となり、産総研は永続しよう。




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