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文部科学大臣賞受賞
特異場制御計測チーム 主任研究員 松永英之
材料プロセッシングチーム チーム長 鈴木敏重
■ 平成 17 年度文部科学省科学技術賞を受賞して
  この度、思いがけず平成17年度の文部科学省科学技術賞(技術部門)を 標記 の課題でいただけるという栄誉に恵まれました。本賞(技術部門)は、科学技術の分野で「中小企業、地場産業等において、地域経済の発展に寄与する優れた技術を開発した個人若しくはグループ又はこれらの者を育成した個人」を対象に文部科学 大臣より授与される賞とのことで す。 本件は、 私共 が開発した微量金イオン濃縮回収材料に基づき、郡山市に本社を置くアサカ理研工業(株)が実用化した 「 希薄金含有産業廃水等からの金イオン連続回収技術の開発」に関して、地域産業の発展に対する寄与を高く評価していただいた結果、幸いにも受賞に結びつくこ と になりまし た ( 写真1 ) 。
写真1
写真1: 副賞の盾 ( 図らずも金のレリーフ入り )
 今回の受賞のきっかけとなった基本技術である「金イオン回収材」の開発自体は、遡ること10数年も前のことで、当センターが東北工業技術試験所から研究所へと名称変更された時期と重なり、先端研究開発と地域への貢献とが業務の両輪として推奨されていた状況下で行われたものでした。そのため、当時としては基 本技術の実用化が東北地域の企業により行われたことに大きな意義があるものと評価されておりました。とは言うものの、今回の受賞は実用化開始から相当の年数が経過してからのものであり、少々 カビ 臭くなってきていたところでしたので、申請時には同様な評価を受けるものかという心配もありました。結果として見 ますと、アサカ理研工業(株)に長期にわたってコンスタントに本技術を適用して金回収システムを実施し続けていただいたことが受賞の大きな要因になったのではないかと思っております。同社の開発に携わって 下さった 方々には、これまで同様大変感謝をいたしております。何かのCMではないですが、「継続は力なり」、 技術が利用され続けることの大切さを感じさせていただきました。さて、技術的な内容にも少し触れさせていただきますと、本技術は以下のような特徴を持ち、例えば金めっき工程における廃水等に含まれる金イオンの回収に大変効果がある回収法です。

 水溶液からの金の回収は、従来、ビーズ状高分子に金を 吸着濃縮するイオン交換樹脂法や、有機溶媒への分配現象 を 利用する溶媒抽出法が用いられていました。しかしながら、水洗水レベルの金濃度 ( 1ppm 以下 ) の廃水から金を回収する要求には、回収後の吸着材の再生ができないなどが欠点となり、技術的かつ経済的理由から必ずしも十分には応えられませんでした。そこで、本技術では、陰イオン類の抽出に用いられる有機系陽イ オンを担持した見かけ上の陰イオン交換体を開発し、金イオンに選択的な試薬や担体の組み合わせにより、濃度 1ppb レベルの溶液からでも金イオンを吸着し、かつ吸着した金を有機溶媒により容易に溶出回収可能な材料を得ることができました。開発した材料は、イオン交換樹脂と外観や取り扱いがほぼ同じで、一般的な カラム方式の連続吸着回収装置の充填材として利用することができるため、実用化 が容易な 材料となりました( 写真 2) 。
写真2
写真2: 連続吸着回収装置
 以上、今回評価をいただいた技術は、社会的に必要とされる資源リサイクル技術の一つとして、例えば金めっき工程等から金を効率良く回収する手段を提供することで、省資源・省エネルギーによる持続可能な社会の構築の一翼を少しでも担うものとなりました。最後になりましたが、本技術の開発・実用化から受賞に 至る過程におきまして、水上富士夫コンパクト化学プロセス研究センター長、板橋 修東北センター所長代理はじめ研究グループと企画本部の皆様、さらにアサカ理研工業(株)の皆様に多くのご支援とご指導を賜りましたことを、この場をお借りして感謝申し上げたい と 思います。 大変ありがとうございました。
(松永英之 記)


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