【 変位分布計測技術 】
画像計測による変位分布計測技術は構造物の安全性を確保するために、設計段階あるいは使用中における評価・リモートモニタリング技術として注目されている。当グループでは縞画像の位相解析を用いた画像計測による形状変位計測装置の開発、ならびに大型構造物の健全性評価技術への適用に関する研究を行っています。

【サンプリングモアレ法について】
サンプリングモアレ(SM)法は撮影した1枚の格子画像に対してサンプリングのスタート点を変えながら一定の間引き間隔でダウン・サンプリングと輝度補間処理により、得られる複数枚の位相がシフトされたモアレ縞が像から格子の位相分布を求める空間的な位相解析手法(図1)です。この手法は、もとの画像の拡大現象であるモアレ縞の位相を解析することにより、これまでの画像処理手法より1桁高い変位計測精度を実現できます。既存の変位分布計測手法に比べて、広範囲の領域を、高精度、高速、簡便に測定でき、低コストなのが特徴です。

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図1 サンプリングモアレ法の原理

【SM法を利用した大型構造物の変位計測】
この手法を大型構造物の健全性評価に適用しています。図2にサンプリングモアレ法による変位分布計測の一例を示します。構造物表面にある周期構造をデジタルカメラで撮影した画像(図2左)に対して、サンプリングモアレ法を適用すると、位相が異なる複数枚のモアレ縞が像(図2中央)を得ることができます。これらのモアレ縞画像から、位相シフト法とフーリエ変換より位相情報を示す格子の位相分布(図2右)を高精度に算出できます。変形前後の格子の位相差を算出することで、構造物表面の周期格子のパターンピッチの1/500以上の精度で物体の微小変位を瞬時に計測することができます。

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図2 サンプリングモアレ法による大型構造物の全視野変位分布計測

【今後の応用展開】
任意の規則性格子模様を活用した二次元の変位分布計測から、複雑な変位挙動を解析できる三次元変位計測へ発展させ、大型機器・構造物の簡便な健全性評価手法の確立を目指します。

 

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