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研究トピックス

有機分子修飾による白金触媒の活性向上

燃料電池

固体高分子形燃料電池(PEFC)の空気極に使用されている白金触媒量の低減が求められています。そのためには白金の原子当たりの活性を向上させる必要があります。さらに、白金量の低減だけではなく、より高電位で作動し燃料電池の発電効率を高める触媒技術が求められています。このためには白金の活性を高める、従来の延長上に無い新しい概念や技術シーズが必要になっています。従来、白金表面に有機物や不純物が吸着すると活性が低下するのが常識で、白金表面は清浄に保つことが必要でした。産総研では白金触媒の表面に特殊な有機分子を修飾することにより、白金触媒を高活性化することに成功しました。これは白金の活性を外表面からの修飾により高める新しい技術の方向性を見出すもので注目されています。

■有機分子修飾した白金触媒表面の酸素還元反応促進

Promotion of oxygen reduction on a porphyrazine-modified Pt catalyst surface
山崎眞一, 朝日将史, 五百蔵勉
ELECTROCHIMICA ACTA, 297, 725-734 (2019)

Electrochemical analysis of the porphyrazine-induced enhancement of ORR activity of Pt catalysts for the development of porphyrazine-adsorbed Pt catalysts
山崎眞一, 朝日将史, 田口 昇, 五百蔵勉
JOURNAL OF ELECTROANALYTICAL CHEMISTRY, 848, 113321

固体高分子形燃料電池の空気極に用いる白金触媒の表面を修飾することにより、白金触媒を高活性化することを試みました。白金ナノ粒子触媒に有機物を吸着させ、活性に対する影響を検討しました。ほとんどの有機化合物は吸着させても活性は下がる方向でしたが、ある種の含窒素大環状化合物(テトラtブチルテトラアザポルフィリン, tBuTAP)を白金触媒に吸着させると、白金の有効表面積が低下するにもかかわらず、白金触媒の酸素還元活性が上昇することを見出しました。白金表面は水由来の吸着種によって覆われておりそのために酸素還元反応(ORR)活性が阻害されていることが指摘されており、この化合物は水由来吸着種の生成を抑制し、ORR活性を上昇させたと考えられます。

■メラミンを修飾した白金ナノ粒子触媒の酸素還元活性向上

Facile Approach to Enhance Oxygen Reduction Activity by Modification of Platinum Nanoparticles by Melamine-Formaldehyde Polymer
朝日将史, 山崎眞一, 田口 昇, 五百蔵勉
JOURNAL OF THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY, 166, 8, F498–F505 (2019)

白金触媒に吸着させることで白金の酸素還元活性を向上させる有機分子について、含窒素有機化合物を中心に検討を行い、メラミン (2,4,6-triamino-1,3,5-triazine)およびその類縁体にもORR活性向上効果があることを見出しました。メラミンはメラミン樹脂の原料として幅広く使用されており、低コストという利点があります。また、メラミンは、アミノ基に種々の側鎖を導入することができ、比較的容易に目的に応じた分子設計ができるという利点もあります。メラミンは樹脂(高分子)にできる特徴がありますが、この樹脂を白金触媒に被覆すると、白金の上に良好に吸着し、メラミンのモノマーに比べて安定的に吸着できることもわかりました。

説明図

図1 有機物吸着白金触媒の概念図とメラミン樹脂吸着白金触媒の電子顕微鏡写真
メラミン由来の窒素原子と白金原子が近接していることが分かる。

説明図

図2 メラミン樹脂吸着前後の白金触媒の酸素還元活性

次世代燃料電池研究グループ