研究トピックス
新規なCO除去装置の基本技術を開発
新しいタイプの一酸化炭素(CO)除去装置の開発を進めています。固体高分子形燃料電池(PEFC)の燃料極触媒の白金はCOにより被毒されます。都市ガスなどを改質して水素を製造するとCOが混入するため、定置用PEFCシステムにおいてはPEFCの前段でCO濃度を減少させるCO改質器が置かれています。このCO改質器が定置用PEFCシステムのコストや体積を押し上げる原因となっております。
産総研ではこれまでCOを電気化学的に酸化できるロジウムポルフィリン触媒、および、この触媒を利用した耐COアノード触媒の開発に取り組んでまいりました。本研究では、この触媒技術を生かした非常に簡便なCO除去装置を考案し、従来とは異なる観点から、燃料電池システムにおけるCO被毒の改善を目指しております。
■ポルフィリン錯体と水溶性電子受容体を用いた一酸化炭素(CO)含有水素ガスからのCO除去
Removal of CO from CO-contaminated hydrogen gas by carbon-supported rhodium porphyrins using water-soluble electron acceptors
山崎眞一, 城間 純, 朝日将史, 五百蔵勉
JOURNAL OF POWER SOURCES, 329, 88-93 (2016)
カーボン担持Rhポルフィリンと水溶性電子受容体を含む溶液に、COを含む水素を吹き込むと、図で示すような電子受容体によるCO酸化反応が起こり、水素ガス中のCO濃度が減少することを見出しました。閉鎖系においてはわずかなロジウム使用量でCOをほぼ100%除去できることが分かりました。反応に伴い電子受容体が消費されますが、還元型電子受容体を酸素や電極で再酸化すれば、電子受容体を再生することができます。Rhポルフィリンは水素酸化活性がほとんどないので、水素ガス中のCOを選択的に除去することが可能です。この「COを除去する溶液」は非常に簡便であり、CO除去器が簡素化される可能性があります。現在、この反応を用いた新しいタイプのCO除去器の開発に取り組んでおります。一方で、電子受容体に色素を用いれば、COとの反応により色が変化する新しいタイプの光学的COセンサに展開できる可能性もあります。
【関連特許】
・特許第5717155号「一酸化炭素の除去方法及び除去装置」