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研究トピックス

実用電極のイオン伝導度・電子伝導度測定法の研究

キャパシタ燃料電池蓄電池

蓄電池や燃料電池、キャパシター等に用いられる電極は電子伝導体とイオン伝導体(電解質)から成る複合体で、性能向上や劣化要因の解明には電子伝導度やイオン伝導度の測定が有効です。しかしながら実用的な多孔性電極における計測手法は確立されておらず、測定には注意が必要です。電池技術研究部門では種々の系や条件に応じた計測手法の研究開発を行っています。また、電池や燃料電池など電気化学デバイスの開発を行う企業様のご要望に応じて、共同研究を行っています。

■電気化学インピーダンスによるイオン伝導度・電子伝導度測定

"AC impedance analysis of ionic and electronic conductivities in electrode mixture layers for an all-solid state lithium-ion battery"
Zyun Siroma, Tomohiro Sato, Tomonari Takeuchi, Ryo Nagai, Akira Ota, Tsutomu Ioroi
Journal of Power Sources 316 (2016) 215-223.
※技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)との共同研究

有効イオン伝導度と有効電子伝導度を推定するため、「伝送線モデル」と呼ばれる等価回路を用いたインピーダンスの解析方法を発展させた新たな方法を提案し、全固体電池電極合剤層を対象に検証した。

説明図

■多孔性電極のイオン伝導度・電子伝導度同時測定のための「6端子法」の提案

"Simultaneous measurement of the effective ionic conductivity and effective electronic conductivity in a porous electrode film impregnated with electrolyte"
Zyun Siroma, Jumpei Hagiwara, Kazuaki Yasuda, Minoru Inaba, Akimasa Tasaka
Journal of Electroanalytical Chemistry 648 (2010) 92–97.

特許第5062772号
「電池用電極材料のイオン電流または電子電流の分離測定装置および測定方法」
※本特許に基づく測定装置は計測器メーカーより購入可能

電極反応による干渉を排除する測定方法として「6端子法」を提案し、固体高分子形燃料電池の触媒層を対象に原理の検証を行った。

リチウム電池における利用(プレスリリース)

説明図

■電気化学インピーダンスを正しく解釈するための基礎理論・手法

"Mathematical solutions of comprehensive variations of a transmission-line model of the theoretical impedance of porous electrodes"
Zyun Siroma, Naoko Fujiwara, Shin-ichi Yamazaki, Masafumi Asahi, Tsukasa Nagai, Tsutomu Ioroi
Electrochimica Acta 160 (2015) 313–322.

「種々の条件下における多孔質電極の電気化学インピーダンスの伝送線モデル解析解に基づく予測」
城間 純、五百蔵 勉
Electrochemistry 83 (2015) 425–433.
電気化学会論文賞受賞

説明図

厚さのある電極の電気化学インピーダンスを解釈するための等価回路である伝送線モデル(TLM)の考え方に基づき、境界条件を一般化した理論解を提出するとともに、電極内の条件に応じて予想される挙動の分類を行い、さまざまな状況で適用しやすいよう考え方を整理した。

【その他 関連書籍・テキスト】
・城間 「交流法・伝送線モデルの考え方」
 第44回電気化学講習会 電気化学測定の切り札 (2014)p.29~38
・城間 「電気化学インピーダンス (2) 燃料電池 (PEFC)」
 Electrochemistry 78 (2010) 846-851.
・城間 「交流法 固体高分子形燃料電池 」
 第40回電気化学講習会 “みんなで考える”交流インピーダンス法(2010)p.54~63
・城間, 安田 「プロトン伝導率」
 「燃料電池の解析手法」化学同人(2005) 5章 「膜の物性評価法」

次世代燃料電池研究グループ