2023年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 2日目

【分析計測標準研究部門】

  • 光電子スペクトルの面積比を用いた熱力学温度測定

    石井 順太郎、木下 郁雄(横浜市立大学)

    金属のフェルミ準位の近傍の光電子スペクトルの面積比から熱力学的温度を決定する新たな方法を提案・検証した。この温度測定技術は、表面分析やナノスケール測定に使用される超高真空環境条件下で表面選択性、非接触測定、他の表面測定技術との併用性を有する。本研究において、液体ヘリウム、液体窒素、室温の各温度域でAu (110) 表面の光電子スペクトルを測定し、面積比を用いて1 K より良い精度で熱力学温度を決定した。

【分析計測標準研究部門 音波振動標準研究グループ】

  • 光励振を用いたレーザドップラ振動計の校正方法の開発

    野里 英明、穀山 渉、下田 智文、稲場 肇(物理計測標準研究部門)

    レーザドップラ振動計のトレーサブルな校正規格として、参照加速度センサを用いてISO 16063-41で20 kHzまで定められているが、MHz領域では対応できないため、EOMによる光励振を用いた校正原理を提案していた。今回、基準となるレーザ干渉計とレーザドップラ振動計を同一EOMに入射して、レーザドップラ振動計の周波数応答を評価したので、その報告を行う。

  • 地震計の実振動校正技術の開発

    下田 智文、穀山 渉、野里 英明

    広帯域地震計は超低周波数帯(< 0.1 Hz)の振動観測が可能な高感度センサであり、地震観測網などで広く用いられている。しかしセンサの計測特性(感度・遅延・カットオフ周波数等)はメーカー出荷時に付された値が参照され、設置後の正確な特性およびその長期的な変化については十分に分かっていない。本研究では観測の精度・信頼性向上のために地震計を一次校正する技術を開発した。地震計に加振器で実振動を加えレーザー干渉計と比較することで正確な感度特性を測る手法であり、地震計が主な観測帯域とする数mHzから数10 Hzの帯域で計測技術を整備した。本発表ではこの超低周波振動校正技術について紹介する。

  • 高周波域におけるWS3マイクロホンの保護グリッドの影響

    高橋 弘宜、平野 琴、山田 桂輔

    通常コンデンサマイクロホンは保護グリッドを装着して使用するが、空中超音波計測で使用されるWS3マイクロホンの場合、保護グリッドの装着によるマイクロホン感度の周波数特性の平坦さが高周波域で失われる点が懸念されている。本報告では、保護グリッドの有無による自由音場感度の違いを実験的に評価した結果を述べる。

  • 液柱型音圧発生装置によるマイクロホン感度校正法における補正量の検討

    山田 桂輔、平野 琴、高橋 弘宜、野里 英明

    1 Hz未満の超低周波数領域におけるマイクロホン感度の校正法として、液柱型圧力計の原理を応用した音圧発生装置を用いる方法を開発している。本発表では、開発中の校正装置において問題となっていた、音圧発生装置における発生音圧の低下の原因と、校正結果の補正方法について説明する。

  • レーザピストンホン法における音漏れ補正の改良

    平野 琴、高橋 弘宜、山田 桂輔、野里 英明

    大規模自然災害から発生する超低周波音の計測信頼性を担保するため、1 Hz以下における機器校正法の確立が求められている。レーザピストンホン法は20 Hz以下における主要な一次校正法である。本校正法を1 Hz以下に適用するためには、音圧発生部の微細な隙間からの音漏れを補正する必要がある。本研究では圧力計を用い、隙間部を含めた系全体の伝達音響インピーダンスを直接評価する事で、音漏れ補正値のより正確な評価を実現した。

【分析計測標準研究部門 放射線標準研究グループ】

  • 大容量電離箱の校正におけるガンマ線照射の幾何学条件の影響

    加藤 昌弘、石井 隼也、田中 博幸(日本分析センター)、杉山 翠(日本分析センター)、黒澤 忠弘

    環境放射線モニタリング機器の校正に用いる標準電離箱は検出部が大きく、またしばしば校正距離が短い条件で測定が行われる。この場合、校正時のガンマ線と検出器との間の幾何学的条件、例えば校正距離が、校正定数に影響をおよぼすことがある。本研究ではこの影響を実測及びシミュレーションで調査し、校正距離の関数としての補正係数として評価した。

  • 人体CTに対して計算した放射線線量分布を用いた機械学習

    森下 雄一郎、安江 憲治(茨城県立医療大学)、生駒 英明(茨城県立中央病院)、清水 森人、山口 英俊、布施 拓(茨城県立医療大学)、阿部 慎司(茨城県立医療大学)、奥村 敏之(茨城県立中央病院)

    放射線治療では、正確な線量をがん細胞に照射する必要がある。このためには、患者体内での放射線の挙動の計算が必須であるが、すべてを正確に計算するのは時間がかかって実際の治療では現実的ではない。そこで、大型計算機で時間をかけて計算した正確な線量分布を教師データとして、機械学習を行った。

  • 多機能X線測定器の線質依存性の評価

    田中 隆宏、今野 祐治(小国町立病院)、竹田 亜由美(置賜総合病院)、黒蕨 邦夫(日本医療大学)、斎 政博(東北大学病院)、鈴木 隆二

    線量に加えて管電圧や半価層といった線質などの多数の照射パラメーターを同時に測定することができる多機能X線測定器の普及が進んでいる。この多機能X線測定器は主に半導体式であることから、校正結果の線質依存性が予想される。このような背景のもと, 市販の多機能X線測定器について、線量と管電圧の各校正定数の線質依存性を評価した。

  • Flattening Filter Free高エネルギー光子線標準場の線質評価

    清水 森人、本多 央人(東洋メディック株式会社)、加藤 昌弘、荒木 教行(東洋メディック株式会社)、吉岡 秀明(東洋メディック株式会社)

    Flattening Filter Free高エネルギー光子線水吸収線量標準の供給のため、産業技術総合研究所内に新規に最新の医療用リニアック装置を導入し、線質の評価を行ったので報告する。

  • ESR線量測定システムの改良

    山口 英俊

    これまではESR装置を使ってアラニンを手動で測定していたが、最近のニーズでは1000個程度のアラニンペレットを測定する可能性もあり、ESR測定の部分を自動化することが必須であるため、本研究では半自動化に取り組んだ。また、ESR装置の感度補正のためにkGyレベルの大線量ではMn2+、数Gy程度の線量ではCr3+のリファレンス物質をそれぞれ使用していた。しかし、線量ごとにリファレンス物質を付け替えて使用することは好ましくないため、リファレンス物質の扱いについても再検討することにした。

  • Cs-137・ Co-60γ線場を代替する機械式照射装置による次世代線量計校正場の開発

    石井 隼也、加藤 昌弘、黒澤 忠弘、佐藤 大輔(放射線イメージング計測研究グループ)、藤原 健(放射線イメージング計測研究グループ)、田中 真人(放射線イメージング計測研究グループ)

    近年、放射性同位元素(RI)を生産する商用炉の停止や我が国の核セキュリティ関連の規制の厳格化により高強度のRIを搭載する照射装置の維持が困難となっている。放射線標準研究グループでは半減期による強度の減衰のない機械式の線源を用いた新たな線量校正場の開発を目指し、放射線イメージング計測研究グループが独自開発した小型の加速器を用いてCs-137γ線場を模擬する新たな線量計校正場を構築した。開発した線量校正場の特性評価により線量率を絶対測定し、2種類の一般商用電離箱の線量率応答を試験した。その結果、従来のγ線校正場と不確かさの範囲内で同等とみなせる結果が得られた。 それらの結果と今後の模擬Co-60γ線場の開発を含めた将来的な展望についても紹介する。

  • 放射線防護のためのβ線標準の現状と今後の展望

    二木 佐和子

    近年発行されたICRU Report 95において実用量の新しい定義が提唱された。それを踏まえ、国内のβ線線量計測の状況やβ線校正の国際規格を中心に、β線標準の現状と課題についてまとめる。また、任意のβ線源を標準照射場の設定に利用するための技術開発の今後の展望についても述べる。

【分析計測標準研究部門 放射能中性子標準研究グループ】

  • 医療用核種放射能測定の国際同等性確保のための仲介標準器の開発

    下段 千尋、古川 理央、真鍋 征也、佐藤 泰、原野 英樹

    放射能測定の国際同等性確保には仲介標準器が用いられる。医療用核種のような短半減期核種については、線源を輸送できないため、仲介標準器を巡回しての比較測定が行われる。現在運用されている巡回型仲介標準器はBIPMの1台のみで、世界中のニーズを満たすことができず、地域計量組織毎の巡回標準器が求められている。NMIJでは、アジア太平洋計量計画(APMP)で運用するための新しい巡回型仲介標準器を開発している。

  • TESによるPo-210の放射能測定のための線源製作法

    佐藤 泰、菊地 貴大(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)、スミス ライアン、佐藤 昭(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)、平山 文紀(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)、中川 久司(物理計測標準研究部門)、入松川 知也(物理計測標準研究部門)、古川 理央、下段 千尋、原野 英樹、山森 弘毅(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)、高橋 浩之(東京大学)

    鉛は遮蔽材として用いられているが、Pb-210とその子孫核種により鉛からも放射線が発生しており、それもバックグランド放射線となっている。極低温検出器であるTESにより、鉛を溶解せずに、鉛の放射能を測定できると考え、TESで測定するための鉛線源作成法を考案した。

  • 5MeV中性子標準場に使用するDD中性子生成反応の角度分布評価と校正への影響

    松本 哲郎、増田 明彦、真鍋 征也、原野 英樹、谷村 嘉彦(日本原子力研究開発機構)、西野 翔(日本原子力研究開発機構)

    5MeV単色中性子フルエンス標準において、中性子生成に使用されるDD核反応の中性子生成角度分布は傾きが急であり、大きな検出器の校正の際には補正が必要である。しかしながら、DD核反応の過去の評価済みデータには矛盾がある。そこで、産総研中性子標準場及びJAEA放射線標準施設棟におけるガスターゲットを用いた中性子校正場において、角度分布測定を行い、その評価を行った。

  • 中性子医療照射における体幹部被ばく線量評価手法の開発

    増田 明彦、松本 哲郎、真鍋 征也、原野 英樹、熊田 博明(筑波大学)、田中 浩基(京都大学)

    ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)において、治療時に患者が照射範囲外の全身に受ける被ばく線量を実測評価する手法を開発している。BNCT施設において、中性子周辺線量当量を簡便に測定できる中性子サーベイメーター試作機により実測し、その結果をモンテカルロシミュレーションで予想される線量と比較した。さらに、より信頼性の高い評価を行うために、治療強度の中性子のエネルギー分布を測定することでより精密に線量を導出できるボナー球スペクトロメーターの開発を進めている。

  • 放射性希ガス標準のため電離箱の校正

    古川 理央、真鍋 征也、松本 哲郎、下段 千尋、佐藤 泰、原野 英樹

    近年、肺がんリスクで注目されている自然放射性ガスのラドンをはじめ、核実験の検出手法として注目されている放射性アルゴン等、放射性希ガスの正確な放射能測定に関心が集まっている。当グループでは既に標準供給が可能な放射性クリプトン(Kr-85)以外にも対象核種を拡充するべく、標準開発を行っている。本研究では、標準供給のためのワーキングスタンダードとして稼働実績がある通気式電離箱を、ラドン(Rn-222)、アルゴン(Ar-41)に適用した場合の校正定数を評価した。

  • 医療用中性子場への標準供給に向けたトランスファ検出器の開発

    真鍋 征也、原野 英樹、増田 明彦、松本 哲郎、下段 千尋、古川 理央、佐藤 泰

    ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は中性子とホウ素の核反応を利用し、細胞レベルで選択的にガンを破壊する技術であり、我が国では世界に先駆けて治療が開始されている。治療の信頼性担保のため、中性子標準の確立は喫緊の課題となっており、標準開発のためのトランスファ検出器の特性評価及びそれを利用した中性子計測に関する研究を行っている。

  • アクティブ中性子法を用いた燃料デブリ臨界特性測定システムの開発

    原野 英樹、西山 潤(東京都市大学)、真鍋 征也、松本 哲郎、増田 明彦

    廃炉作業において燃料デブリ取出し作業を安全かつ効率的に行うためには、取出し直後の1次スクリーニングにより核分裂性物質の計量を含め臨界安全上のリスクを迅速に測定・評価することが必要であり、そのための燃料デブリ臨界特性測定システムの開発を進めている。中性子標準場にて模擬燃料デブリを用いて実施した性能評価実験について紹介する。

【分析計測標準研究部門 先進ビーム標準研究グループ】

  • 高出力X線源に向けた液体金属フローシステムの開発

    澁谷 達則、黒田 隆之助、大島 永康

    通常、固体であるX線標的は熱負荷と排熱速度によって制限されており、ある一定水準以上のX線出力を発生することはできない。そこで、我々は新たに液体金属を標的材料として採用することで熱制限にとらわれることのない高出力X線源の開発を目指している。本発表では、この液体金属技術が搭載されたX線源の開発状況について報告する。

  • 陽電子寿命測定装置の製品化研究

    山脇 正人、大島 永康

    陽電子寿命測定法は、金属の格子欠陥や高分子の自由体積を分析できるユニークな手法であり、材料の劣化や機能性の評価などに利用されている。我々は、陽電子寿命測定の経験がなくても簡単に操作できる測定方法を提案し、2016年に東洋精鋼株式会社から卓上型陽電子寿命測定システムが上市された。それ以降も改良を重ね、現在はオンサイト測定用ポータブル装置の社会実装を目指して研究を進めている。

  • 水素添加in situ陽電子寿命測定による純鉄の水素誘起欠陥挙動

    山本 航大、山脇 正人、大島 永康、藤浪 眞紀(千葉大学)

    水素添加in situ陽電子寿命測定法により水素環境下延伸純鉄の応力負荷の有無による空孔-水素複合体挙動を比較した。その結果から水素脆化支配欠陥決定を目指す。

  • 小型陽電子ビーム空孔計測装置の開発

    大平 俊行、北村 是尊(フジ・インバック株式会社)、高輪 正夫(フジ・インバック株式会社)、小林 洋一(フジ・インバック株式会社)

    企業や大学の小規模な実験室にも導入可能な汎用型の陽電子ビーム空孔計測装置の開発を行っている。この装置では、エネルギー可変の低速陽電子ビームを用いることにより、厚さμm以下の薄膜材料や材料の表面近傍の特定の深さ領域に限った空孔計測を行うことができる。今回は温度可変測定機能、減速材劣化状態モニタ機能、減速材自動クリーニング機能等について紹介する。

  • 陽電子顕微鏡による微細空孔イメージング技術の開発

    満汐 孝治

    材料中に存在する微細な空孔型欠陥やナノ空隙の空間分布を可視化するために、陽電子顕微鏡の開発を進めている。当顕微鏡を用いた微細空孔イメージング技術の開発状況と各種先端材料への応用事例について報告する。

  • 分析用中性子源(AISTANS)の電子線形加速器の現状報告

    オローク・ブライアン、藤原 健、古坂 道弘(高エネルギー加速器研究機構)、木野 幸一、室賀 岳海、大島 永康

    産総研は、電子加速器ベースの分析用中性子源(AISTANS)を用いて、材料評価を進めている。高強度・安定な電子ビームを供給できるように、加速器の維持や改造に取り組んでいる。本発表は電子加速器の現状報告する。なお、VRによる装置の3次元バーチャル見学を用意する予定である。

  • AISTANSによる中性子非破壊イメージングのCO2固定化コンクリートへの展開

    木野 幸一、藤原 健、大島 永康、田原 和人(デンカ株式会社)

    産総研小型加速器中性子施設(AISTANS)では、非破壊分析法の一つである、パルス中性子を用いたブラッグエッジイメージングを行っている。最近このイメージング手法を、近年世界で注目されている、CO2固定化コンクリートに応用しており、その最新状況を報告する。

  • CO2固定化コンクリート評価のための量子ビーム複合計測技術の開発

    大島 永康、小川 博嗣、加藤 英俊、木野 幸一、黒田 隆之助、藤原 健、安本 正人、田原 和人(デンカ株式会社)

    CO2固定化コンクリートの非破壊評価を目的に、複数の量子ビーム計測技術(X線イメージング、中性子回折、顕微ラマン)の開発を進めている。本プロジェクトの概要と、それぞれの計測技術の特徴と研究上の役割について紹介する。

【分析計測標準研究部門 応用ナノ計測研究グループ】

  • 時間的スペックルの可視化シミュレーションとその応用

    白井 智宏

    時間的スペックルは、ある1点で検出される光の強度のランダムな時間変動を表す概念であり、その特徴は時間的コヒーレンスによって記述される。本研究では、この直感的にやや捉えにくい現象を可視化するシミュレーション法を提案すると共に、その応用として検出器の露光時間に対する時間的スペックルコントラストの変化を評価する方法とその実用上の意義を示す。

  • 温度計イオンによる質量分析装置内の気相イオンの温度計測

    浅川 大樹

    エレクトロスプレーイオン化質量分析法で生成する気相イオンの内部エネルギー分布について、温度計イオンを用いて解析を行った。大気圧下で生成した気相イオンを真空下へと輸送する過程で残留ガスとの衝突が起こり、気相イオンの内部エネルギーが大きくなることを明らかにした。

  • 表面分析用の新規クラスター負イオンビーム源の開発

    藤原 幸雄

    集束性に優れる液体金属イオン源は、正イオンビームは生成できるが、負イオンビームは生成できない。負イオンビームは、絶縁性材料に照射してもチャージアップがほとんど生じないという利点を持ち、正イオンビームよりも有用性は高い。我々は、液体金属イオン源の原理を参考として、プロトン性イオン液体のクラスター負イオンビーム生成技術の研究開発を進めているので、その結果を報告する。

  • 高純度オゾンによる極薄酸化膜の低温原子層成長(ALD):ナノ構造と膜質の評価

    亀田 直人(明電ナノプロセス・イノベーション株式会社)、萩原 崇之(明電ナノプロセス・イノベーション株式会社)、元田 総一郎(明電ナノプロセス・イノベーション株式会社)、〇中村 健、野中 秀彦(分析計測標準研究部門)

    低温酸化膜作製技術確立のため、高純度オゾン(pure O3: PO)を酸素前駆体とした極薄酸化膜の原子層成長(ALD)について成長機構の解明と作製した薄膜の膜質評価を行い、これに基づく材料プロセス開発を進めている。トリメチルアルミニウム(TMA)及びPOを前駆体としたトレンチ構造を有する基板表面でのAl2O3酸化膜のALD成長において、高アスペクト比構造でのPO酸化に特長を見出したので報告する。

  • 産総研独自開発の分析機器・技術の公開:先端ナノ計測施設(ANCF)の活動

    松林 信行、徳宿 由美子 (分析計測標準研究部門)、山本 哲也 (分析計測標準研究部門)、〇中村 健

    分析計測標準研究部門、物質計測標準研究部門、及び量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センターの3ユニットの研究成果物である分析機器・技術を、産総研の共用施設制度の下で「先端ナノ計測施設(ANCF)」の名称で機器公開を行い、産総研内外の研究者・技術者の研究開発活動における種々の課題の解決に貢献してきた。共用施設の制度・運営体制の今年度の変更に合わせて、本施設の紹介を行う。

【分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ】

  • 自由電子レーザー相互作用観測のためのコヒーレントエッジ放射光源開発

    清 紀弘、境 武志(日本大学)、全 炳俊(京都大学)、大垣 英明(京都大学)

    エッジ放射は電子ビームやアンジュレータ放射を損なうこと無く観測できるため、自由電子レーザー発振中の電子バンチ長計測が可能になる。そこで、日本大学量子科学研究所および京都大学エネルギー理工学研究所と共同し、自由電子レーザー装置にてコヒーレントエッジ放射光源を開発した。本発表では、両大学に開発したコヒーレントエッジ放射光源の特性を示すと共に、これまで観測した自由電子レーザー発振とコヒーレントエッジ放射との関係について概説する。

  • 超短パルス高強度レーザーを用いた円偏光フェムト秒軟X線パルス発生

    三浦 永祐

    超短パルス高強度レーザーとプラズマの相互作用を利用した電子加速であるレーザー加速では、加速電子群はレーザーとの相互作用で振動し、同時にX線を発生する。円偏光レーザーを用いたレーザー加速により、磁性体の分析、評価を可能とする円偏光フェムト秒軟X線パルス発生が可能である。このレーザー駆動円偏光フェムト秒軟X線源開発の現状について報告する。

  • インフラ診断高度化のためのX線非破壊検査技術の開発

    加藤 英俊、藤原 健、佐藤 大輔、木村 大海、鈴木 良一(分析計測標準研究部門)

    効率的なインフラ診断を可能にするため、我々は小型X線源、大面積高感度検出器、ロボット・AI技術を組み合わせて3次元的な画像診断を行うことができるX線検査システム、X線源と検出器を同じ側に配置して後方散乱X線により内部を画像化する技術、鉄部の残留応力を検査する技術などの開発を行っています。

  • X線回折格子を用いたイメージング法に関する研究

    安本 正人、藤原 健

    ラボタイプのX線源と透過型X線回折格子を利用したX線干渉イメージング法は位相コントラスト画像が撮影できるなど既存のX線検査装置とは異なる特長を持っている。本発表では、食品検査装置などへの応用を目指したより高エネルギーX線によるX線干渉イメージング装置の研究開発について報告する。

  • インフラ診断の高度化に向けた放射線検出器の開発

    木村 大海、藤原 健、加藤 英俊

    近年、高エネルギーX線を用いた非破壊検査による高効率なインフラ診断が検討されている。一方現状のX線検出器は低エネルギーX線を対象としたもののみであり、高エネルギーX線に対する検出効率は約0.01%と非常に小さく、測定時間が長くなることや空間分解能が低いことが課題である。本研究では高エネルギーX線に対して感度の高い重元素で構成された新規シンチレータを開発し、評価した。

  • 量子ビーム源の小型化・省電力化に向けた誘電体加速管の開発

    佐藤 大輔、阿部 哲郎(高エネルギー加速器研究機構)

    誘電体アシスト型加速(DAA)管は、金属筐体内に誘電体セルを周期的に装荷した誘電体加速管で、既存の常伝導加速管の5倍以上高い電力効率を有する非常に高効率な加速管である。本発表では、DAA管の電力効率をさらに改善し、高い加速電界の実現による加速器の小型化を目指した、11.424 GHzの高周波で駆動するX-band DAA管の研究開発の進捗状況について報告する。

  • 内殻ホール寿命を利用した有機光伝導体の非占有伝導帯に励起した電子のアト秒分光計測

    池浦 広美

    有機光伝導体は、太陽電池材料や人工光合成材料などに利用され、エネルギーや電子移動を行う上で、鍵となる機能を有している。内殻電子を非占有準位の伝導帯に励起した場合、その分子構造によって、励起された電子が内殻ホールに束縛されずにアト秒で隣に移動、自由電子的にふるまうことを見出した。この計測手法によって得られる結果とバンド分散との関係について議論する。

【分析計測標準研究部門 非破壊計測研究グループ】

  • デジタルホログラフィによる非対称高速流体の3次元計測

    夏 鵬、李 志遠

    デジタルホログラフィによる非対称高速気流の内部情報を3次元計測できるシステムを開発した。本システムでは、レーザー光を複数の光路に分けて異なる方向からの物体光と参照光を干渉させ生成されるホログラムを同時に記録する。再生した各方向の位相情報を用いてCTの計算アルゴリズムによる物体の内部3次元情報を再構成することで、ジェット気流や空気温度などの3次元計測が可能である。

  • ドローン空撮によるたわみ計測と橋梁検査への応用

    李 志遠、叶 嘉星、夏 鵬、遠山暢之(分析計測標準研究部門)

    ドローン空撮による橋梁インフラのたわみ計測法を開発した。この技術は規則性模様を有する基準マーカを導入し、マーカ模様の位相情報を活用することで、ドローン空撮の動画撮影において1/100画素の精度で高精度な画像ブレ補正に成功した。人間のバランス感覚に近い本画像ブレ補正技術により、ドローン空撮で橋の高精度なたわみ計測を実現できる。従来の変位センサと同様に、橋梁の健全性評価で求められるミリオーダーの変位を測定することができた。その有効性を実橋での検証実験で確認した。

  • 超音波伝搬映像における欠陥の自動検出に関する研究

    叶 嘉星

    レーザー超音波可視化欠陥検査技術において、物体内部の欠陥を検出するためには専門的な技能を有する人が分析と判断を行う必要がある。この技術をより広く応用可能なものにするために、深層学習などの統計学的手法を導入することにより、超音波伝搬映像内の欠陥を自動的に識別する方法を開発した。本発表では、この方法の基本原理と関連する応用例を紹介する。

  • 異種材貼合せ接着試験のFEM解析

    永井 英幹、島本 一正(ナノ材料研究部門)、秋山 陽久(ナノ材料研究部門)

    異種材料を接着剤で接合する異種材接合部のシミュレーション技法の開発において、接着剤の硬化を表現するモデルの妥当性を検証するために、エポキシ接着剤による異材接合試験片の硬化時の残留変形(反り)について、FEM解析を実施した結果を報告する。

  • 炭素繊維の異方性発達の評価

    岩下 哲雄、永井 英幹、藤田 和宏

    異方性成分を有するメソフェーズピッチから調製された炭素繊維の各種の材料力学的性質を計測したところ、熱処理によってその異方性が発達することが見出された。 比較として、等方性ピッチから得られた炭素繊維の特性も試験した。 各種試験から異方性発達を評価した。

【サステナブルインフラ研究ラボ】

  • インフラ診断技術研究チームの紹介

    豊川 弘之、加藤 英俊、福田 伸子、横田 俊之、野里 英明、吉岡 正裕、松川 沙弥果、倉本 直樹、他24名

    インフラ診断技術研究チームは、従来の技術では難しかったインフラ構造物の検査を可能にするため、X線、赤外分光、物理探査、振動計測、超音波、マイクロ波、動的荷重計測などの新規要素技術の開発、診断結果の信頼性やトレーサビリティ確保のための技術開発、および社会実装に向けた取り組みを行っている。

  • インフラ診断省力化研究チームの紹介

    遠山 暢之、李 志遠、竹井 裕介、寺崎 正、神村 明哉、岩田 昌也

    インフラ診断省力化技術研究チームは、インフラ点検時の手間とコストの削減、検査員の安全確保、熟練検査員の減少といった様々な課題を解決するための効率的なインフラ維持管理システムを開発している。具体的には、非破壊検査、AI、ドローン・ロボット、センサ・無線化に関する要素技術を融合したインフラ点検の省力化、自動化に資する技術を開発し、産学官連携体制の下での社会実装を目指している。

  • インフラ長寿命化技術研究チームの紹介

    豊川 弘之、野本 淳一、土屋 哲男、穂積 篤、浦田 千尋、他25名

    インフラ長寿命化技術研究チームは、材料・物性計測技術を活用して防錆・防汚・着氷防止を目的とした表面改質や新材料によるインフラ構造物の長寿命化を目指す。また構造物において損傷しやすい部位や損傷形態をシミュレーションする技術を確立する。構造・物性評価技術と材料創生技術を融合して材料開発速度を加速し、産学官連携体制の下での社会実装を進める。

【工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ】

  • 低コヒーレンスタンデム干渉計による透明基板の厚さ測定技術の開発

    平井 亜紀子、川嶋 なつみ、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)

    半導体等の基板の幾何学的厚さを高精度で信頼性高く測定する需要が高まっている。光源に対して不透明な試料の幾何学的厚さ測定のために表面反射光のみを利用する両面干渉計を開発した。しかし、透明な試料は測定に不要な透過光や内部反射光が重畳し測定できなかった。透明試料の厚さを高精度に測定するために開発している低コヒーレンス光源を利用した両面干渉計について報告する。

  • 球面度校正システムの高度化と測定不確かさ評価

    川嶋 なつみ、近藤 余範、平井 亜紀子、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)

    産業界において高精度な光学素子が製造されるようになり、理想形状からの形状偏差(球面度)の高精度測定が求められている。球面度測定に広く用いられているフィゾー干渉計の主要な不確かさ要因はアライメントエラーと参照球面形状の不確かさである。理論と実験からアライメントエラーに起因する不確かさの正しい評価方法を提案し、ランダムボール法による参照球面形状補正を適用した測定不確かさ評価の結果を報告する。

  • µ-CMMを用いた球の2点直径校正

    近藤 余範、川嶋 なつみ、平井 亜紀子、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)

    球は、三次元測定機をはじめ、さまざまな形状測定機の基準として使用される。そして、基準球の直径校正精度は、それら測定機の測定精度に直結するため、球の直径校正精度の向上は非常に重要である。我々は、T型微小スタイラスを搭載したµ-CMMを用いて、両面干渉計で校正したシリコン製ブロックゲージを参照標準とした球の2点直径校正を20 nm以下の拡張不確かさで校正することを実現したので報告する。

  • 自由曲面形状の非接触高精度計測技術に関する調査研究

    増田 秀征

    種々の光学システムの高度化により、自由曲面光学素子の高精度形状計測技術が重要となってきている。本発表では、自由曲面形状の高精度非接触計測技術とその動向を整理し、その調査結果を報告するとともに、NMIJにおける自由曲面形状計測の今後の方針を示す。

  • 数ピコメートル周期誤差を実現したホモダイン干渉計の測長範囲拡大

    堀 泰明

    一次元変位計測を目的としたホモダイン干渉計の周期誤差低減に取り組んでいる。これまでの研究で光学素子の表面反射抑制及び数値補正により、数pmの周期誤差実現に成功した。しかし、これはごく短い測長範囲(約15 µm)で評価したものであり、より長い測長範囲における周期誤差は評価していなかった。今回、ビームウエスト位置の改善による測長範囲拡大と、約600 mmの長ストローク周期誤差評価装置を用いた評価に取り組んだので、その結果を報告する。

  • 距離計(トータルステーション)の校正

    寺田 聡一

    測量で用いられる距離計(トータルステーション)の校正方法と産総研でトータルステーションの校正を行っている施設「光学トンネル」について発表する。トータルステーションの校正では、自己校正によってオフセットを、レーザ干渉計との比較によって比例係数を校正する。測定環境、特に気温の安定性は重要で、その為、地下トンネル内で校正を行っている。

【工学計測標準研究部門 幾何標準研究グループ】

  • X線CTによる幾何形状計測における測定不確かさ評価法の開発

    松崎 和也、渡邉 真莉、佐藤 理

    X線CTによる幾何形状計測は、内部形状の測定などの利点から近年活用が進められている技術である。この測定における主要な不確かさ要因の一つとして、CT装置が持つ幾何誤差による測定空間の歪みが知られている。この幾何誤差の影響についてシミュレーションによる影響評価を行った成果について報告する。

  • X線CT校正用マリモゲージの実用化に向けた研究

    渡邉 真莉、松崎 和也、佐藤 理

    近年、X線CTを用いて産業部品の三次元形状を計測する需要が高まっている。これまで我々は、X線CT校正に用いる基準ゲージとして、樹脂中に測定球を埋め込んだマリモゲージを新たに開発し、現在、本ゲージの実用化を進めている。本発表では、マリモゲージを、ゲージ校正に用いるCT装置の測定空間の歪みによる影響を低減し、校正した結果について報告する。

  • 接触式座標測定機(CMM)による幾何形状測定-スキャン測定による輪郭測定-

    佐藤 理、松崎 和也、渡邉 真莉、鍜島 麻理子

    今日、CMMによるスキャン測定は、円筒形状以外にも様々な形状に対して適用される。この持ち回り測定では今日のCMMによる複雑形状のスキャン測定において、スキャン条件を変えると測定結果がどのように変化するかを検証した。また、データ処理方法によらず、各参加者の測定結果が一致するかを検証した。

  • SelfAテーブルを利用したフォトマスク真円度測定装置の開発

    鍜島 麻理子、堀 泰明、菅原 健太郎、渡部 司

    画像測定機の校正に必要とされる、フォトマスク真円度基準器を実現するため、校正装置を開発している。回転ステージに円形パターンを描画したフォトマスクを載せて回転させ、パターンのエッジ部分を顕微鏡で観察し、エッジの位置ずれを検出することで、半径の変化を測定する。校正装置には自己校正型ロータリエンコーダ(SelfA)を搭載した回転ステージを用いて、高精度化した。

  • 走査電子顕微鏡における像質向上の試み

    菅原 健太郎

    これまで二次電子検出型の走査電子顕微鏡(SEM)をもちいた精密計測の研究をおこなってきた。試料表面の形状をより正確に反映した像を得るためには、装置と試料の工夫により像障害を改善することが望ましい。今回、電子線照射による試料表面の負帯電を減少するための試み、像の非対称性を改善するための装置開発を進めているので報告する。

  • SelfA傾斜計の開発による5軸加工機用傾斜円テーブルの超精密姿勢計測技術の確立

    渡部 司

    次世代自動車用部品の機能・価値向上に不可欠な複雑自由曲面形状部品を加工する5軸加工機において、加工ワークを積載する傾斜円テーブルの姿勢を超精密に計測し高精度な姿勢調整を可能とするSelfA傾斜計を開発することにより、傾斜円テーブルの信頼性向上と5軸加工機による加工部品の品質向上に資する技術開発を行う。

【工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ】

  • 新しい1キログラムの実現方法

    倉本 直樹、狩野 祐也、藤田 一慧、大田 由一、張 ルウルウ(物質計測標準研究部門)、東 康史(物質計測標準研究部門)、黒河 明(計量標準普及センター)、大久保 章(物理計測標準研究部門)、稲場 肇(物理計測標準研究部門)、水島 茂喜(知財・標準化推進部)

    2019年、質量の単位「キログラム」の定義が130年ぶりに改定された。新たな定義はプランク定数にもとづく。計量標準総合センターでは、シリコン単結晶球体中の原子数を計測することで新たなキログラムを実現する。本発表では、2021年から2023年にかけて実施されたキログラム実現技術の国際比較への参加結果について報告する。国際比較の結果をうけて実施された「キログラムの合意値」の改定についても紹介する。

  • 自己参照型格子比較器による単結晶シリコンの格子定数の一様性評価と結晶間比較

    早稲田 篤

    放射光を利用した自己参照型格子比較器を用いて、自然同位体および同位体濃縮結晶の格子定数の結晶内の一様性評価を行っている。また、その応用として、格子定数が絶対測定された参照結晶と試料結晶の二結晶間の格子定数を比較することによる、試料結晶の格子定数決定に取り組んでいる。本発表ではこれらの技術について紹介する。

  • 代替冷媒候補物質の低温域における飽和蒸気圧力および沸点圧力測定

    粥川 洋平

    近年の家庭用・業務用空調機器の小型化に伴い、冷媒の高圧化・低沸点化が進んだことで、代替冷媒に関する-60 ℃前後の温度範囲における熱物性データの必要性が増している。さらに、-60 ℃以下の超低温用冷凍機に用いられているHFC系冷媒R23の代替物質開発のため、さらに低い温度範囲においても高精度な熱物性測定技術が必要である。特に基本的な飽和蒸気圧力および沸点圧力について、産総研で開発中の測定装置および測定方法について報告する。

  • キログラムを高精度に実現するための青色レーザー干渉計による球体体積測定の研究

    大田 由一、倉本 直樹、大久保 章(物理計測標準研究部門)、稲場 肇(物理計測標準研究部門)

    質量の単位であるキログラムは、プランク定数を基準としている。計量標準総合センターでは、シリコン単結晶球体中の原子数を計測することで、プランク定数にもとづくキログラムを実現する。質量標準研究グループでは、球体中のシリコン原子数決定に必要な球体体積をレーザー干渉計によって測定している。測定を高精度化するための、青色半導体レーザーを用いた球体直径測定用干渉計の開発について紹介する。

  • 次世代冷媒実用化のための音波共鳴を利用した気相域粘度測定装置の開発

    西橋 奏子、狩野 祐也、倉本 直樹

    次世代冷媒の実用化には、その気体状態での粘度測定が不可欠である。気体粘度の高精度測定を実現するために、音波共鳴の一種であるヘルムホルツ共鳴を用いた気体粘度測定装置を開発に取り組んだ。ヘルムホルツ共鳴とはダクト状の開口管を持つキャビティにおいてダクト部分の空気が振動することで発生する音波共鳴モードであり、その共鳴周波数特性を測定することで粘度が求められる。本発表ではプロトタイプの装置を用いた粘度の予備的な測定結果について報告する。

【工学計測標準研究部門 力トルク標準研究グループ】

  • 1 MN油圧式力標準機におけるヒステリシスによる影響を軽減するための制御方法の検討

    長谷川 暉、林 敏行

    油圧式力標準機は、制御量の選択により目標値に対するオーバーシュート量が変化するため、局所的なヒステリシスループを辿ることにより力変換器出力の往復誤差が変化する。1 MN油圧式力標準機の導入にあたり制御量について検討し、計測ラム変位のみを制御量とする場合と比べ、作動油圧力やその時間微分も制御量とした場合、オーバーシュートを軽減し局所的なヒステリシスループによる影響を小さくすることができた。

  • 電磁力式動的トルク発生装置を用いた動的トルクの精密計測に関する研究

    濱地 望早来、西野 敦洋

    本研究では、動的トルクの測定に使われるトルクセンサを動的に校正することを目指し、キッブルバランスの原理に基づく、電磁力式動的トルク発生装置の開発を行った。本装置は、従来の重力を用いてトルクを発生させる実荷重式トルク標準機とは異なり、電磁力を用いて国際単位系(SI)にトレーサブルなトルクを発生させることが可能である。また、印加する電流を動的に変化させることで、任意の動的トルクの発生が可能である。本研究では、電磁力式動的トルク発生装置を用いた、動的トルクの精密計測に向けた取り組みについて報告する。

  • 回転型電磁力式微小力発生装置における力範囲上限の拡大

    朱 俊方、林 敏行

    微小力の信頼性を確保するため、産業技術総合研究所計量標準総合センターでは、 20 mNを上限とする力の範囲を実現する回転型電磁力式微小力発生装置を開発してきた。現状の力標準供給体制との整合性を取るため、既存回転型電磁力式微小力発生装置における力範囲上限を200 mNまでに拡大する手法を考案した。JIS B7728 に基づき測定を行った結果から、提案した手法が適切であることを確認し、力範囲の上限を200 mNまでに拡大することができた。

  • 力基準機遠隔校正のためのフロントエンドアプリケーション

    林 敏行

    力基準機の遠隔校正では、従来の出張校正でNMIJ側要員が行っていたPC操作を、顧客側要員に委ねる必要がある。十分な誘導機能や誤操作防止機能を実装するため、フロントエンドアプリケーションを全面的に再開発した。

  • 電磁力を用いた回転トルク計測技術に関する研究

    西野 敦洋、濱地 望早来、立木 魁(東京理科大学)

    モータの性能評価では、回転速度とトルクの関係を調べるために、回転式トルク計測機器が用いられる。産業技術総合研究所では、回転式トルク計測機器の精密な評価を実現するために、角速度とトルクの同時計測が可能な、電磁力式回転トルク発生装置の研究開発を進めている。本発表では、電磁力による回転トルクの発生原理と装置の開発状況について報告する。

  • ビルドアップ式トルク基準機によるトルクドライバチェッカの校正及びデジタル校正証明書の活用について

    西野 敦洋、濱地 望早来

    産業技術総合研究所では、トルク計測機器の効率的な校正を実現するために、基準トルクメータを内蔵するビルドアップ式トルク基準機の研究開発を行っている。本発表では、ビルドアップ式トルク基準機による、手動式トルクドライバの校正または試験で用いられるトルクドライバチェッカの校正手順について検討したので紹介する。また、NMIJでは、2022年11月1日よりデジタル校正証明書(Digital calibration certificate:DCC)の発行サービスを開始した。本発表では、トルクで発行可能なDCCを例に、その活用方法についても紹介する。

【工学計測標準研究部門 圧力真空標準研究グループ】

  • 光学式圧力標準のための2ガス法によるファブリ・ペロ共振器の変形係数計測

    〇武井 良憲、寺田 聡一(長さ標準研究グループ)、吉田 肇、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)

    光学式圧力標準は、圧力を気体の屈折率・熱力学温度・気体の分極率から計測する。屈折率はファブリ・ペロ共振器を用いて高分解能に測定する。しかし、測定圧力に応じて共振器が変形するため、屈折率の測定値は実際の値よりも僅かに小さくなる。本研究では、ヘリウムの分極率と窒素の分極率から、その共振器変形係数を計測した。

  • インフラサウンド観測のための動的圧力評価装置の基礎的特性

    〇髙原 大地、飯泉 英昭、梶川 宏明

    時間変化する圧力(動的圧力)の計測ニーズが高まり、圧力計や圧力センサの動的な評価技術が必要とされている。当グループでは、インフラサウンドと呼ばれる微小大気圧変動を観測する機器の信頼性向上のため、レーザ干渉計を用いた評価技術または装置の開発に取り組んでいる。本報告ではその評価装置に関する直線性や繰り返し性等の基本的な特性についての評価を行った。

  • MEMS気圧センサモジュールの特性評価

    〇小島 桃子

    MEMS気圧センサは,近年,高精度化が進んでいることから微小な気圧変動(インフラサウンド)の観測にも用いられている。これらの測定では,センサを外気に近い環境に設置することがあるため,温湿度などの影響を評価することが重要である。以前より,各メーカーの複数タイプのMEMS気圧センサについて温度特性評価行ってきたが,今回はさらに,湿度や応答特性についても評価を行った。それらの結果を報告する。

  • 気体高圧力標準の多国間比較に向けた準備

    〇飯泉 英昭、梶川 宏明

    100 MPaまでの気体圧力標準について、13ヶ国による国際比較が計画されており、産総研が幹事機関として実施準備を進めている。仲介標準器の製作や測定プロトコルについて紹介する。仲介標準器候補の圧力センサの評価も行っており、種類ごとの基礎特性についても紹介する。

  • 高圧用液体分離装置の特性評価

    〇梶川 宏明、飯泉 英昭、村本 智也(気体流量標準研究グループ)

    重錘形圧力天びんを用いた液体圧力の校正システムでは、通常、圧力媒体として潤滑油のセバシン酸ジオクチルを使用する。依頼者のニーズや研究目的に応じて被測定器に別の液体を使う場合には、2種類の液体を隔膜などで分離しつつ圧力を伝達する装置が利用できる。本研究では、3種類の高圧用液体分離装置について、装置による圧力損失や微小な圧力変化に対する感度特性などの評価を行った。

  • スニッファ法による漏れ試験における周囲の風の影響

    〇新井 健太

    スニッファ法による漏れ試験は、漏れ箇所を通じて試験体内から外部に漏れ出てくるトレーサガスを、吸入プローブを備えたリークディテクタによって検出し、定量する方法である。この方法では、大気中に漏れ出てくる微量なトレーサガスを吸引するため、試験条件に注意を要する。例えば、風はトレーサガスの拡散を促進し測定結果に大きな影響を与えることが予想される。今回、スニッファ法による漏れ試験における風の影響を調べた。

  • 修正クヌーセンの式の改良と応用

    〇吉田 肇

    修正クヌーセンの式とは、層流、乱流、臨界流、亜臨界流、分子流の気体流量計算式を合成した式で、クヌーセン数、レイノルズ数、マッハ数に関わらず使用することができる。計算精度は20 %から30 %と高くないが、比較的簡単に計算できるので、配管を流れる気体流量を大まかに見積もる際に便利である。修正クヌーセンの式の計算精度を上げる試みと、応用例について紹介する。

【工学計測標準研究部門 材料強度標準研究グループ】

  • ロックウェル硬さ不確かさ評価に向けた簡易的な感度係数決定方法の提案

    田中 幸美

    ロックウェル硬さは、試験力や圧子形状の違いにより30スケールほど存在し、それぞれ不確かさを考慮する必要がある。硬さの計算方法の性質上、試験力や圧子形状などの感度係数は実験的に求められてきたが、全てのスケールで求めるのは実験が膨大となり困難である。本研究では、すべてのロックウェル硬度スケールで感度係数を決定するための簡易的な非実験的方法を提案する。

  • 光学顕微鏡によるビッカースくぼみ寸法の測定の不確かさに関する研究

    高木 智史

    ビッカース硬さ試験におけるくぼみ対角線長さ測定では、顕微鏡の設計上のパラメータ (倍率、開口数など) や焦点合わせの誤差が測定結果に大きく影響する。加えて、測定する材料の顕微鏡組織に起因して試料表面が粗面となることで測定の不確かさが増大することがある。本研究では、これらを総合的に考慮してくぼみ対角線長さの測定の不確かさを考察する。

  • 血中成分測定デバイスに用いる音響センサの水中での特性評価技術の開発
    -光音響効果による音波の発生装置の構築-

    吉岡 正裕

    血中成分測定デバイスにおいて血糖値の測定に用いる音響センサの評価技術を開発するため、グルコースに吸収される波長の赤外線を水面に照射し、光音響効果により空気中及び水中に音波を発生させる装置を構築している。空気中に発生する音波を音響センサを用いて、水中に発生する音波をハイドロホンを用いてそれぞれ検出を試みた。

  • ハイドロホン感度位相特性の一次校正技術の開発
    -光干渉信号の模擬信号を用いたヘテロダイン干渉計構成要素の仕様検討-

    千葉 裕介、吉岡 正裕

    医用超音波の安全性評価のためには、ハイドロホン感度の振幅だけでなく位相特性も用いた超音波瞬時音圧の精密計測が必要である。この度は、周波数0.5 MHz ~ 100 MHz、振幅数十pmオーダーの振動変位を測定できるヘテロダイン干渉計を設計するため、信号発生器で光干渉信号の模擬信号を生成し、AD変換器やAOMなどの仕様値に対する復調変位信号への影響を調べたので報告する。

  • 二槽型カロリメトリ水槽を用いた超音波パワー計測

    内田 武吉

    水を発熱体とするカロリメトリ法による超音波パワー計測は、超音波振動子の発熱が超音波エネルギー以外の熱源として影響するため、精密計測が困難であった。そこで、超音波振動子の発熱の影響を抑えることを目的としたシリコンシートによる二槽型水槽を試作した。今回は、二槽型水槽による計測値と天秤法による計測値を比較した結果を報告する。

  • ハイドロホン感度校正の範囲拡張 -100 MHzの超音波の検出-

    松田 洋一

    我々は、医用超音波機器から出力される音圧の振幅計測に必要な超音波音圧標準を、0.1 MHzから60 MHzの範囲で供給するとともに、100 MHzまでの範囲拡張を進めている。今回、1 µm厚のペリクル及び反射型配置の採用により、光干渉計出力信号の高感度化を行った。光干渉計及びハイドロホンを用いて、100 MHzまでの超音波を測定した結果を報告する。

【工学計測標準研究部門 液体流量標準研究グループ】

  • 管内速度場の設備間比較と新しい速度分布則の提案

    古市 紀之、小野 満里絵

    流量計測において最も重要な管内の速度分布に関して、Princeton大のSuperpieおよびドイツPTBの結果を、産総研における結果を詳細に比較し、その普遍性を検討する。また、壁からの距離に応じた速度分布に関して、新たな長さパラメータを導入することにより普遍的な分布則を提案する。

  • 容積式流量計と密度計を組み合わせた質量流量計の計測性能に対する更なる評価検討

    Cheong Kar-Hooi

    本報では、PD型容積式流量計とインライン型密度計を組み合わせた新開発の質量流量計について、それぞれの構成機器に着目した性能評価を紹介する。

  • 超音波パルストレイン計測法の偏流への適用性に関する研究

    和田 守弘

    超音波パルストレイン法は超音波パルスを用いた流速分布計測法であり、速度レンジの拡張が可能な技術である。これまで、安定した配管流れにおいて実験的に検証を行っており、速度レンジを4倍まで拡張できることが確認されている。本研究では、流速分布が大きく時間変動する配管流れへの本手法の適用性について検証した結果を報告する。

  • 円管内差圧計測における均圧化手法の違いによる影響評価

    小野 満里絵、古市 紀之

    円管内の摩擦係数の計測や差圧式流量計を用いて流量を計測する場合は上流と下流それぞれタップを開け、差圧の計測を行う。多くの場合は流れが完全に軸対照ではないために、上下流それぞれに4つのタップを開け、それらを均圧化したもの同士での差圧を計測する。均圧化の手法についての報告はほとんどなされていないが、均圧化の手法によって得られる差圧値が大きく異なることが明らかになった。本研究では均圧化の手法の差異が差圧計測に与える影響評価と最適な均圧化の方法の探索を行った。

  • 過渡変動する流動を計測・制御する技術の開発

    芳田 泰基、古市 紀之

    流量計は定常流下での使用を前提として校正され、その精度が担保されている。しかしながら、幅広い産業分野でのニーズから、非定常流下で流量が測定されるケースがほとんどである。そのため、流量計の時間応答性能を試験するためのシステムや、管内の変動流そのものを可視化する計測方法が必要となる。この研究では、過渡的に変動する流量や流動を計測・制御するためのシステム構築や、光・超音波を用いた流動計測方法の開発を進めている。中でも本発表では、過渡変動する流量を制御・計測するシステム、可制御容積型プルーバ(CVP)について、紹介する。

  • 液体微小流量の計測手法と標準に関する調査研究

    加賀見 俊介

    微小な流量の液体を用いたデバイスは工学、化学、生物、医療など多くの分野で使用される。本研究は、汎用流量計から微小流量の国家標準まで計測手法を調査し、より高精度かつ簡便な標準供給に向けた指針を提案する。

【工学計測標準研究部門 気体流量標準研究グループ】

  • 液体微小流量校正装置の不確かさ解析

    土井原 良次

    これまで液体微小流量校正装置の秤量システム、切替バルブシステムなのどの要素開発を行ってきた。DUTである流量計を校正した際の装置全体としての不確かさ解析を行ったのでこれを報告する。

  • より高精度な粘度決定を目指した標準細管粘度計群のための恒温槽整備

    藤田 佳孝

    粘度標準では、水の粘度絶対値を基準に連鎖して校正された細管粘度計群によって広範な粘度域をカバーする粘度決定が行われている。この決定精度をさらに向上させて、現在進める絶対測定の研究における水の粘度の高精度決定を目標として、細管粘度計群のための温槽整備を進めている。この改良により見込まれる測定不確かさ低減の効果について、絶対測定研究の取組みの現状とともに報告する。

  • 臨界ノズルを用いた流量比混合法に関する研究

    森岡 敏博

    天然ガスに水素を混ぜての輸送や燃焼(混焼)する実証試験などが行われている。本研究では臨界ノズルを用いた異種ガスの流量比混合法に関して、被試験流量計への影響について評価した結果を報告する。

  • 問題提起:光周波数による風速の精密測定は可能か

    栗原 昇

    流れのレーザー計測は60周年を迎えたが、精密計測のためには現在でも微粒子を浮遊させる必要がある。これは常温常圧の気体分子が放つ散乱光のスペクトル幅が、計測対象の周波数偏移の数万倍にもなるためである。もし直接計測が可能ならば、異物混入を嫌う用途や清浄な室内気流への応用が可能となり社会にインパクトを与える破壊的イノベーションをもたらし得る。今年度で研究を終えるため、故・大苗敦 上級主任研究員と晩年まで議論を重ねたテーマについて、ここに問題提起する。

  • 過渡的な流量変化を有する空気流の計測

    舩木 達也

    産業界で普及が進んでいる動作速度が数ミリ秒の高速電磁弁について、その動作に伴う空気の流量変化を実際に計測した事例はほとんどない。本研究は、高速電磁弁からの過渡的な空気流を、気体の状態変化を補償した容器へ充填する、もしくは当該容器内から高速電磁弁を介して圧縮空気を大気へ開放することで、生成した過渡的な流れの流量変化を直接計測する手法を提案する。さらに、実流評価結果を示し、その有用性などを報告する。

  • 微風速標準設備における測定部床面の温度分布計測

    岩井 彩

    微風速標準設備における風速計の校正環境には、風速計を設置する測定部内の背景気流が極めて無風に近いことが求められる。一方で、この背景気流を増加させる要因の一つとして、測定部床下に設置した風速計測機器群の発熱による測定部床面の温度上昇が挙げられている。そこで本発表では、風速計測機器群付近の測定部床面温度分布を複数の温度センサで計測した結果を紹介する。

  • 液体窒素を利用した低温流体に関する流量計測標準の開発と課題

    竹川 尚希、森岡 敏博

    クリーンエネルギーの輸送および貯留方法として、液化ガスが注目されている。しかしながら、現状として液化ガスに対応した低温用流量計は数少ない。そこで、本研究では秤量式流量計測手法を開発し、液化窒素を対象とした流量計測実験を実施した。

  • 動的粘弾性測定に見る速度状態依存摩擦則

    村本 智也

    速度状態依存摩擦則はDieterichによって提唱された後(Dieterich, 1979)、Ruina (1983)によって厳密な定式化がなされた。弾性歪みと非弾性歪みを直列に繋ぐMaxwell粘弾性に相当する記述である一方、高い応力下においては粘性率が双曲線関数を含んだ非線形の形になる。本研究では動的粘弾性測定を模擬した境界条件下で速度状態依存摩擦則を数値的に解き、実際に行われたシステム内部で固体摩擦が生じる場合の動的粘弾性測定の結果と比較・考察を行った。

【工学計測標準研究部門 データサイエンス研究グループ】

  • JCGM WG1におけるGUM関連文書に関する動向について

    田中 秀幸

    JCGM WG1ではGUM関連文書に関する新規文書作成とメンテナンスが行われている。本発表では、2023年5月と11月に行われたJCGM WG1会議にて討論された内容を中心に、GUM関連文書の現状と将来について解説する。

  • デジタル化試験・校正のデータ認証の研究

    城野 克広、平井 亜紀子(長さ標準研究グループ)、松井 源蔵(長さ標準研究グループ)、佐藤 理(長さ標準研究グループ)、渡邊 宏、高辻 利之(企画本部)、藤本 俊幸(企画本部)

    デジタル校正証明書をはじめとして、測定に関連するデータのデジタル化が進展している。本研究では、試験・校正の記録の必要な部分を機械可読なデータにし、測定のプロセスの妥当性を第三者が認証した上で、データの質を保証する「データ認証」のアイディアを提案する。この発表では、ブロックゲージによるノギスの校正・性能試験を例にとり、ソフトウェア開発を行い、デモを行った様子について紹介する。このシステムでは、ドイツPTBが開発しているデジタル校正証明書を用いて、システムに組み込んでいる。

  • 測定の不確かさ評価における最新動向に関する調査研究

    髙井 絢之介

    計測技術の発展に伴い、それらに対応した新規不確かさ評価法が開発され始めている。本調査研究では、機械学習を用いた測定における不確かさ評価を中心とした最新動向の調査を行い、課題解決に向けた指針を提案する。

  • verilog code から Symbolic Model Checker の program へのトランスレータの開発

    松岡 聡

    昨年度開発した FPGA 上で動作する verilog で記述された非自動はかりの code に関する、デッドロック・フリーのようなシステム上の重要な性質を検証することを目的として、verilog code をSymbolic Model Checker NuSMV に読み込むことができる SMV program に変換するトレンスレータを開発している。本発表では開発の概要について報告する。

  • OIML D31:2023 「ソフトウェア制御計量器の一般要件」について

    渡邊 宏

    近日出版されるOIML D31の改定版について、ニューラルネットワーク等の動的モジュールを含む法定計量関連ソフトウェア及び遠隔検定の要件など、改定のポイントを紹介する。また、これから始まる次の改定の話題も紹介する。

【工学計測標準研究部門 型式承認技術グループ】

  • 法定計量における国際相互承認への取り組み

    福崎 知子、堀越 努、長野 智博

    型式承認技術グループでは、計量法に基づく特定計量器の型式承認並びにOIML勧告に基づくOIML-CS証明書の発行において、適合性評価を実施している。法定計量における国際相互承認であるOIML-CS制度の紹介を含めて、近年のOIML-CSにおける活動について報告する。

  • ガスメーターの技術基準の改正に伴う型式承認の移行

    堀越 努、安藤 弘二(流量計試験技術グループ)、西川 一夫(流量計試験技術グループ)、青木 彩(流量計試験技術グループ)

    計量法に規定される特定計量器であるガスメーターに適用する技術基準が改正され2024年4月1日より施行される。これにより適用する基準は改正され、多くのガスメーターが型式承認の移行の対象となる。新基準の運用開始後の型式承認業務を円滑かつ、遅滞なく実施するために行った関係部署とのこれまでの取り組みを報告する。

  • 監査証跡確認のための設計書と検査式

    岡本 隼一、渡邊 宏

    計量器から取り出した監査証跡と検査式をツールに入力して自動判定させる監査証跡確認の方法を開発中である。現時点では検定で監査証跡確認を実施していないこともあり、この方法を適用できる計量器はまだ世の中になく、具体的な検査式も与えられない。そこで、この方法を適用できる計量器を準備する代わりに、監査証跡を備えた非自動はかりの設計書を作成した。本発表では、設計書とそれから導いた検査式を紹介する。

【工学計測標準研究部門 計量器試験技術グループ】

  • 浮ひょう検査用液体としてのポリタングステン酸ナトリウム水溶液の安定性評価

    高橋 豊、井上 太

    密度や濃度の測定に用いる浮ひょうの検査は、一部の密度範囲おいて「よう化第二水銀」と「よう化カリウム水溶液」との混合液を用いるようにJIS規格で規定されている。この液体は毒物であるため作業環境及び環境衛生を悪化させており、水銀汚染防止の観点からも、他の安全な液体への置き換えが望まれている。現在、より安全な代替液として、「ポリタングステン酸ナトリウム水溶液」の特性評価を行っており、並行してJIS改正作業も行っているので報告する。

【工学計測標準研究部門 質量計試験技術グループ】

  • 自動重量選別機の試験効率化のための新規手法 ~実機データへの適用結果~

    田中 良忠

    自動重量選別機は包装食品等の生産ラインに設置され、内容量の全数確認等を行う自動はかりである。消費者保護の観点から正確な測定が求められているが、その試験方法のなかには60回の測定を行い標準偏差を求めるものがあることから、試験時間の短縮などの効率化が求められている。本発表では当グループで開発した新規手法を型式承認試験で取得した実機データに適用した結果を報告する。

【工学計測標準研究部門 流量計試験技術グループ】

  • 超音波式ガスメーターのゼロ点に関するガス種の影響

    青木 彩、島田 正樹、森岡 敏博(工学計測標準研究部門)

    次世代エネルギーの一つとして「水素ガス」が期待され、純水素型燃料電池や水素調理機器の開発が活発である。家庭に水素ガスが供給される場合、超音波式ガスメーターで計量することを想定しているが、水素ガスの音速は都市ガスに比べ約3倍速いため、測定誤差が非常に大きい。本研究では、音速の異なる3つのガス(空気、水素、ヘリウム)においてゼロ点測定を実施し、ガス種の影響を調査した結果について報告する。