2023年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 1日目

【物質計測標準研究部門 無機標準研究グループ】

  • 元素分析技術の新展開―オゾンリアクションICP-QMS/QMS―

    朱 彦北

    リアクションセルを搭載したタンデム四重極型誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-QMS/QMS)は、高い感度を維持しながら、リアクションセル内におけるイオンとガス分子の反応を利用し、複雑な組成を持つサンプルの元素分析におけるスペクトル干渉を分離でき、元素分析用認証標準物質開発に限らず、環境・食品・マテリアル・地球化学などの分野で最もパワフルな元素分析装置として広く利用されている。ICP-QMS/QMSの分析において、on-massモード(例、56Fe+56Fe+)に比べ、mass-shiftモード(例、75As+75As16O+)はアルゴンプラズマから検出器までのイオン輸送率が高く、高い分析感度を得るのに有利である。本講演は、mass-shiftモードの活用範囲を広げるための、リアクションセル内のイオン・ガス分子反応を向上させるオゾンリアクションICP-QMS/QMS技術の新規開発の結果を報告する。

  • マルチコレクター型ICP-MSを用いた高精度なストロンチウム同位体比測定手法の開発

    有賀 智子、下田 玄(地質情報研究部門)、三浦 勉(標準物質評価研究グループ)、後藤 孝介(地質情報研究部門)

    地質の年代測定や食品の産地判別等の目的で、放射起源のストロンチウム(Sr)同位体比(87Sr/86Sr)はこれまで盛んに測定されてきた。87Sr/86Sr以外にも、近年では生体内の金属代謝のメカニズムを知る目的等から安定同位体である88Sr/86Srも重要な測定対象となってきている。本研究では、マルチコレクター型ICP-MSを用いた高精度な87Sr/86Srおよび88Sr/86Sr同位体比測定手法の開発を行い、開発した手法を用いて環境・食品試料中の同位体比測定を行った。

  • 超純水並み低電気伝導率の絶対測定による電気伝導率計校正システム開発

    日比野 佑哉

    電気伝導率は溶液中のイオン濃度と相関があるため、簡便な水質管理の指標として幅広い分野で利用されている。現在、国内の電気伝導率標準供給は水道水並みの値が下限である。一方で、海外NMIでは超純水並みの値の標準が確立されている。本発表では現在取り組んでいる、超純水並みの電気伝導率標準供給を目指した測定技術と校正システム開発ついて概説する。

  • プラスチックに含まれる重金属および無機化学種分析に関する検討

    名取 幸花、大畑 昌輝

    重金属分析用ポリプロピレン樹脂CRM(NMIJ CRM 8133-a)に含まれる、Cd、Cr、Hg、Pbの定量分析について検討を行った。また、XAFS(X線吸収微細構造)分析法を用いた、当プラスチックCRM中に含まれるCr (VI)の定量分析も試みたので、その際に得られた知見についても報告する。

  • 半導体ウェーハの極微量元素分析のためのLA-ICP-MSの開発

    大畑 昌輝、鈴木 幸志(株式会社イアス)、一之瀬 達也(株式会社イアス)、川端 克彦(株式会社イアス)

    2020FY-2022FYに実施されたサポイン(戦略的基盤技術高度化支援)事業において、半導体ウェーハの極微量金属不純物汚染管理のための高感度且つ全自動LA-ICP-MSの開発を行ったので、装置開発コンセプトから基礎的分析性能など、これまでに得られた知見などについて紹介する。

【物質計測標準研究部門 標準物質評価研究グループ】

  • 固体試料中のふっ素の迅速放射化分析

    三浦 勉、石本 光憲(東京大学)

    ふっ素の原子核に中性子を照射して生成する半減期11秒の放射性同位体20Fを測定すると、ふっ素の非破壊迅速分析ができる。今回は、日本原子力研究開発機構JRR-3の気送照射設備PN3による、高純度金属、合成樹脂中のふっ素の非破壊分析の結果を報告する。

  • SIトレーサブルな水銀標準液の値付け方法の確立

    チョン 千香子

    従来、水銀標準液は、2014年開発時に純度を評価した塩化水銀を原料物質として用いた質量比混合法による値付けが採用されていた。今年度、よりSIトレーサブルな値付け方法として、NMIJ CRM 3009-a 高純度亜鉛を基準としたキレート滴定法により、調製された水銀標準液に直接値付けする方法を確立したので報告する。

  • SIトレーサブルなカルシウムの定量

    和田 彩佳

    NMIJ CRM 3603-bカルシウム標準液の原料であるNMIJ CRM 3013-a炭酸カルシウムはEDTA標定の基準としての用途で頒布されている。今回NMIJ CRM 3009-a亜鉛を基準とした滴定法による炭酸カルシウム中のカルシウムをSIトレーサブルに定量した。また、定量結果から評価した同物質の8年間にわたる安定性について報告する。

【物質計測標準研究部門 ガス・湿度標準研究グループ】

  • 高速スキャンCRDS微量水分計の性能評価

    天野 みなみ

    半導体材料ガス中に不純物として含まれるppbレベルの水分測定を目的とし、キャビティリングダウン分光方式(CRDS)の微量水分計を開発している。本装置では、プローブレーザーの波長を連続的に高速掃引することにより、波長1400 nmにおける水の吸収スペクトルを約1秒間で取得する。スペクトルを解析して得られた水分濃度とガス中微量水分の一次標準との比較について述べる。

  • 小型CRDS微量水分計を用いた減圧下での微量水分計測

    阿部 恒

    CRDSの小型化の研究を行っている。小型化に伴う課題の一つに分解能の低下がある。本研究では キャビティ長を熱膨張・収縮によって周期的に変化させ、共振周波数を周波数軸上で変化させることで分解能を向上させた。

  • 大気観測用標準ガスの消費(圧力減少)にともなうボンベ内におけるCO2濃度の変化

    青木 伸行

    ボンベ詰めの大気中CO2観測用標準ガスでは、標準ガスの消費とともにボンベ内のCO2濃度が吸着や熱分別の影響により変化することが最近明らかになった。しかしながら、これらの効果によるCO2濃度変化の詳細は良くわかっていない。本研究では、標準ガスの消費によるCO2変化について詳細に調べたので、その結果を報告する。

  • 水の吸収スペクトルのガス種依存性

    橋口 幸治

    ガス中微量水分の精確な測定を目指して、これまで高感度な微量水分測定装置の開発を進めてきた。本発表では、開発した装置を用いて微量水分標準ガスを測定し、得られたスペクトルを解析した結果や、各分光パラメータのガス種依存性について紹介する。

  • 二圧力法を用いた露点発生における不確かさ評価の研究

    石渡 尚也

    産業界における精度1 %rh以上の湿度計測へのニーズに対し、湿度標準での発生露点には標準不確かさ0.02 ℃以下の実現が求められる。そこで高湿度標準発生装置を例に、現在実現可能な発生露点の不確かさに関し、最新の知見やこれまでの装置改造の成果、また蓄積された発生データ等を用いて、40以上の不確かさ要素を1つ1つ検討した。その結果、-10 ℃~95 ℃における発生露点の標準不確かさを、従来の1/4~1/2以下となる0.01 ℃以下と評価した。

  • 有効磁気モーメント法と定量磁気共鳴法の組み合わせによるフリーラジカル数分析

    松本 信洋、伊藤 信靖(有機基準物質研究グループ)、山崎 和彦(バイオメディカル研究部門)

    「一次標準直接法」は、標準物質を用いずにSI単位を基準に物質量または物質量分率を直接決定できる絶対定量分析法であるが、新たな一次標準直接法の実現を目指して、キュリー・ワイスの法則に基づく「有効磁気モーメント法」を考案した。しかしながら、本分析法は分析に手間がかかるなどの幾つかの短所もある。そこで、この分析法と定量常磁性共鳴法を組み合わせることによって、幾つかの代表的なフリーラジカル試薬の純度評価をSIトレーサブルに、かつ、簡便に実施することを試みたので報告する。

  • 加湿VOC標準ガス発生装置の開発と分析機器・センサ測定への適用

    渡邉 卓朗、下坂 琢哉、李 鵬

    生体ガス中のVOC測定など、高湿度な試料の測定の信頼性を評価するため、生体ガスと同程度に高湿度なVOC標準ガスの発生方法を開発し、装置化した。この装置を用いて湿度条件の異なるVOC標準ガスを発生し、分析機器やガスセンサへ導入して測定を行った。得られた結果や湿度影響について紹介する。

【物質計測標準研究部門 有機組成標準研究グループ】

  • 中鎖塩素化パラフィンの共同分析

    羽成 修康

    欧州RoHS指令の対象物質候補である中鎖塩素化パラフィンの分析について関心が高まっている。しかしながら、精度良い分析値を得るには多くの課題を解決しなければならず、分析事業者らは対応に苦慮している。そのため、課題解決の一助として共通試料を準備し、塩素化パラフィン分析に関する共同分析を継続的に実施している。本発表では、第1回目の結果概要について述べる。

  • 正確なヒト尿中グリホサート分析法の確立

    大竹 貴光

    グリホサートはヒト尿中において低濃度(例えば0.5 µg/kg程度)であるだけでなく、測定感度も悪いことが知られており、正確な分析が難しい。本研究では、操作がシンプルなジーエルサイエンス社製のMonoSpin TiOカラムを用いた前処理法と、誘導体化条件の検討を行うことで、正確な分析法を確立した。

  • 熱脱着GC/MS法を用いた正確なポリスチレン中の臭素系難燃剤分析法の開発

    中村 圭介

    熱脱着GC/MS(TD-GC/MS)は、ポリスチレン等の高分子材料に含まれる添加剤(フタル酸エステル類や臭素系難燃剤等)を前処理なしで分析できるため、材料のスクリーニング分析法として広く用いられているが、定量性が低いという欠点がある。本発表では、TD-GC/MSを用いたポリスチレン中の臭素系難燃剤分析法に同位体希釈質量分析法(IDMS)を適用することで、定量性を向上した結果について報告する。

  • 土壌中PFAS抽出法の検討

    山﨑 絵理子

    現在、ペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)汚染の社会問題化が顕著であり、特に土壌中PFASの精確な分析法の開発は急務の課題となっている。本発表では特にヒトへの暴露が懸念されている4種類のPFASについて、土壌中から効率的に抽出する方法の検討結果について報告する。

【物質計測標準研究部門 有機基準物質研究グループ】

  • ラマン顕微鏡の校正に用いるSi基板ピークの同等性検証

    伊藤 信靖

    ラマン顕微鏡の波数校正には、520 cm-1付近に現れるSi基板の1次フォノンピークが広く用いられている。このSi基板は容易に入手できる一方で、結晶方位やドープの種類・量が様々であるとともに、応力や温度によってピーク波数がシフトすることも知られている。そこで我々は、一般的に入手できる結晶方位やドープの種類・量が異なるSi基板を用い、ピーク波数の同等性を検証するとともに、温度による変化量を評価した。

  • シクロヘキサンの融点における雰囲気ガス依存性

    清水 由隆

    純物質の融点は物質固有の特性であり、一定圧力下の純物質の融点は一定と考えられていることから、熱分析装置の校正などに用いられる。しかしながら、断熱型熱量計および示差走査熱量計での測定から、シクロヘキサンの融点が雰囲気ガスによって変動することが確認された。シクロヘキサンについて、雰囲気ガスを変えて融点をはじめとした熱力学特性を測定し、雰囲気ガス依存性について検討を行ったのでその結果を報告する。

  • フェノール類6種混合標準液の堅牢な濃度校正に向けたqNMR/LCの適用

    北牧 祐子、黒江 美穂、山崎 太一、岡本 千奈、大塚 聡子、中村 哲枝、山中 典子、伊藤 信靖

    安心・安全なくらしを支えるための標準物質を迅速に供給するために、一対多型の校正技術を活用した混合標準液への濃度校正を実施しているが、昨今のヘリウム供給不足問題やアセトニトリル供給遅延といった外的要因の問題から、1つの校正技術だけでは校正が止まってしまうリスクがあった。そこで、水道法等の規制に対応した標準液(フェノール類6種混合標準液)の濃度校正について、qNMR/GCのみではなく、qNMR/LCでも適用できるよう測定方法や不確かさの見直しを行い整備することで、より堅牢な濃度校正の実施体制を整えた。

  • 4-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム標準液の濃度校正サービス立上げ

    山﨑 太一、中村 哲枝、伊藤 信靖

    水道法の改定によりJCSSの標準液が水質検査で利用できるようになり、NMIJでは標準供給を進めてきた。水質試験における陰イオン界面活性剤は様々な異性体の総量を評価する必要があるため、4-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを基準とした一対多型の分析技術を開発してきた。本発表では、基準として重要となる4-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム標準液の濃度校正サービスについて紹介する。

  • 国際比較CCQM-K78.b アセトニトリル中の農薬2種(トリクロラリン、メトキシクロル)の濃度測定

    黒江 美穂、北牧 祐子、山﨑 太一、大塚 聡子、伊藤 信靖

    国際比較CCQM-K78.bにおいて、アセトニトリル中の農薬2種(メトキシクロル、トリフルラリン)混合標準液の濃度測定を行った。NMIJでは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)の2手法を用いて定量を行い、両者の値が同程度であったことから適切に定量できたと判断した。標準物質の純度、調製、測定ばらつきの不確かさを見積り、メトキシクロル:(10.51±0.04) mg/kg (k=2)、トリフルラリン:(5.66±0.02) mg/kg (k=2)の定量結果を得た。

  • 類似不純物を含むピリブチカルブのqNMRによる純度評価のためのデコンボリューションの適用

    岡本 千奈、山﨑 太一、大手 洋子、中村 哲枝、伊藤 信靖

    qNMRは1つの標準物質から様々な物質を定量できる方法である。正確に定量するためには目的成分の正確なシグナル面積が必要となるが、類似構造をもつ不純物が含まれる場合にはほとんどのシグナルが重なるため、不純物の影響を受けたシグナルを用いても正確に定量できる技術の確立が求められていた。そこで、類似不純物が部分的に重なっている目的成分のシグナルについて、デコンボリューションにより目的成分と類似不純物のシグナルに分離することで正確に純度を算出する方法を検討した。

【物質計測標準研究部門 バイオメディカル標準研究グループ】

  • アミロイドβ認証標準物質の開発

    七種 和美、絹見 朋也、水野 亮子、惠山 栄、加藤 愛

    アルツハイマー病は老年性認知症の約半数以上を占めており、その根本的な治療方法の確立とともに、早期発見、早期治療に向けた検査方法の開発が求められている。本発表では、2023年に供給を開始したアミロイドβ(1-42)の認証標準物質(NMIJ CRM 6210-a)における認証値、不純物解析、均質性、安定性試験を含む品質特性評価の結果について報告する。

  • 遺伝子治療薬の品質評価についての調査研究

    安達 友里子

    遺伝子治療は、体外から遺伝子を導入し治療する先端医療である。日本や欧米で遺伝子治療薬は承認されており、品質管理の整備が進められている。遺伝子治療薬の一つであるウイルスベクターの品質評価における分析技術や国内外の取り組みを調査する。

  • ステロイドホルモン分析用ヒト血清認証標準物質の開発

    川口 研、惠山 栄

    一つの血清試料に複数のステロイドホルモンの質量濃度が認証された標準物質の開発を行った。ステロイドホルモンとしては、アルドステロン、コルチゾール、テストステロンを選択した。候補標準物質を用いて、均質性試験、安定性試験、値付けを行った。

  • デジタルPCRを用いた精確なRNA定量に向けた逆転写反応の最適化

    柴山 祥枝、大角 友希子、加藤 愛

    本研究では、デジタルPCR(dPCR)を用いた精確なRNA定量を行うために必要な逆転写反応の最適化について発表する。分析試料はRNA認証標準物質であるNMIJ CRM 6204-bを用い、認証値とdPCRの定量値を比較することで逆転写反応効率を評価した。酵素、逆転写プライマーの種類、逆転写プライマーの濃度について最適化を行った結果、100 %に近い反応効率を得ることができる測定条件を見出した。

  • 高分子核酸を対象とした質量分析技術の開発

    藤井 紳一郎

    これまで、高分子核酸を酵素や酸を用いて低分子化し、同位体希釈質量分析法やICP-MSによるリン定量を行ってきた。測定対象となる高分子核酸の完全性や不純物として含まれる他の核酸分子を評価するためには、高分子のままで質量分析を行う必要がある。そこで、本研究では、高分子核酸を対象とした分離分析技術と質量分析技術について検討を行った。

  • モノクローナル抗体定量の国際比較

    絹見 朋也、七種 和美

    我々は、モノクローナル抗体のアミノ酸分析および280 nmにおける吸光度による定量分析法を確立し、標準物質開発への応用を行ってきた。本測定技術を用いてモノクローナル抗体溶液定量の国際比較CCQM-P216に参加したので、その結果について報告する。

  • タンパク質測定やRNA測定に影響しないウイルス不活性化方法の探索

    長谷川 丈真、柴山 祥枝、大角 友希子、加藤 愛

    不活性化ウイルス標準試料を開発するために、ウイルス測定への影響が小さい不活性化処理方法を探索した。本研究ではインフルエンザウイルスを用い、UV照射、加熱、βプロピオラクトン処理、過酸化水素処理、過塩素酸処理を検討した。それぞれの方法で処理したウイルスについて、タンパク質またはRNAの代表的な測定方法であるELISAとRT-デジタルPCR測定を行い、測定への影響が最も小さくなるウイルス不活性化方法を検討した。

  • L-ヒスチジン標準物質(第2ロット)の開発

    宮本 綾乃、惠山 栄、加藤 愛

    アミノ酸分析は、食品、医薬品、生体など様々な分野で広く行われている。こうしたアミノ酸分析の信頼性を確保するためには、分析機器の校正などに用いる正確な値の付いたアミノ酸標準物質が必要である。本研究では、中和滴定法、OPA法、カールフィッシャー水分測定法、光学異性体分離分析法を用いて、L-ヒスチジン標準物質の第2ロットの開発を行った。

  • 生体関連物質計測の信頼性向上に向けたバイオメディカル標準研究グループの取り組み

    加藤 愛

    当グループではバイオ分析や医療分析、食品分析の信頼性確保を目指し、種々の生体関連物質の「濃度」を正しく測定するための分析法や標準物質の開発を行っている。本発表では当グループにおける近年の標準開発や国際比較参加等への取り組みについて報告する。

【物質計測標準研究部門 ナノ材料構造分析研究グループ】

  • 高磁場負荷PFG-NMR法による多成分材料中の選択的特性評価技術

    中村 文子、加藤 晴久

    汎用的に販売されている食品・化粧品等の製品は単一材料で構成されているわけではなく、多成分混合物である。一方これらの製品の安定性は品質管理の肝であり、一方多成分が故の分析の困難さが問題であった。そこで高磁場負荷によるPFG-NMR法を用いた選択的評価により、当該安定性評価に係る重要因子を抽出することを達成した。本件では高磁場負荷によるPFG-NMR法の実材料評価における有用性を示す。

  • 電子プローブマイクロアナライザーによるNi-Pt合金のモル分率測定

    東 康史、伊藤 美香

    固体高分子燃料電池の触媒材料として用いられるPtxNi1-x合金薄膜のモル分率を電子プローブマイクロアナライザーを用いて精密測定した結果を報告する。値付けは、純Pt薄膜、純Ni薄膜の他、モル分率の異なる参照物質を用いて検量線法を用いて行った。不確かさ評価を含めた詳細を報告する。

  • 光機能性材料の研究DXに向けたデータ収集基盤の開発

    細貝 拓也、宮田 哲

    LEDや太陽電池、光触媒などに使われる光機能材料の人工知能(AI)を使った構造および物性の事前予測に向けて、発光寿命や電子状態エネルギーなどの過渡的なデータのビックデータを取得するための分光分析装置を開発している。本発表では、発表者が最近に開発した迅速過渡発光分光計測装置およびデータ収集のための各種の取り組みについて紹介する。

  • X線光電子分光法による極薄HfO2の膜厚測定

    張 ルウルウ、東 康史

    X線光電子分光法 (XPS) を用いて極薄膜の膜厚を測定する場合、正確な基準強度比(R0) と有効減衰長(L)が必要不可欠となる。本研究では、Si(100) 基板上にある極薄HfO2膜を対象に、それぞれバルク材料と薄膜を用いてR0 を実験的に求め、得られた結果を比較検討した。そして、X線反射率法によりL を決定し、極薄HfO2の膜厚測定を行った。

  • 表面X線回折高速測定技術を用いた全固体電池界面のオペランド観察

    白澤 徹郎

    表面X線回折法は固体や液体に埋もれた表面の原子スケール構造を非破壊で解析できる唯一といってよい方法である。この方法の高速測定技術を開発し、全固体リチウム電池界面のオペランド観察を行った。この結果、層状酸化物正極におけるリチウムの脱挿入による構造変化の深さ分布を観察することに成功した。

  • 過渡吸収分光法を用いた酸硫化物光触媒の光キャリアダイナミクス解析

    松﨑 弘幸、東海林 良太

    発表者らは、これまでに、数100フェムト秒からミリ秒領域までの幅広い時間領域で、過渡吸収(または正反射、拡散反射)スペクトル及び時間変化を、紫外から中赤外域の広波長領域で測定可能なシステムを開発・整備し、様々な光機能性材料への適用を進めてきた。本発表では、可視光を吸収する粉末光触媒Gd2Ti2O5S2を対象に、過渡吸収分光法を用いて、光キャリアダイナミクスについて調べたので、その結果を報告する。

【物質計測標準研究部門 ナノ構造計測標準研究グループ】

  • 原子間力顕微鏡によるレジストパターンの電子線収縮の観察および側壁粗さの解析

    〇木津 良祐、三隅 伊知子、平井 亜紀子(工学計測標準研究部門)、権太 聡(物質計測標準研究部門)

    半導体リソグラフィ技術ではレジストパターンの形状を走査電子顕微鏡で評価するが、電子線照射が原因でレジストが収縮変形するため正確な評価が容易でない。我々は、非破壊かつ三次元的にパターン形状を計測可能な傾斜探針型の原子間力顕微鏡(AFM)を開発している。本研究では、レジストへの意図的な電子線照射で収縮変形を引き起こし、その前後でのAFM計測により収縮によるラインエッジラフネス(側壁粗さ)計測への影響を評価した。

  • SEM像のシャープネス評価および倍率校正用認証標準物質の不確かさ低減のための標準ナノスケールピッチ校正

    〇三隅 伊知子、熊谷 和博、木津 良祐

    正確な走査電子顕微鏡(SEM)像を得るには、SEM像のシャープネス評価と倍率校正を同時に行う必要がある。NMIJ-CRM5207-aはSEM像のシャープネス評価と倍率校正のための認証標準物質で、認証値はX軸とY軸の平均ピッチである。NMIJ-CRM5207-aの主な不確かさ要因は、市販の標準ナノスケールのピッチ校正である。今回、標準ナノスケールのピッチ校正値の不確かさを低減するため測長原子間力顕微鏡を用いてピッチ校正を行い、その不確かさを評価した。

  • 300 kV透過電子顕微鏡で格子縞が撮像できる試料厚さの実験的評価

    〇小林 慶太、木津 良祐

    シリコンの格子面間隔距離は透過電子顕微鏡(TEM)の倍率校正のための標準物質として利用されている。TEM観察に必要な試料薄膜加工は格子面間隔距離に影響を与えることから、倍率校正のためにはこの影響の少ない比較的試料の厚い部位で格子像を撮像することがのぞましい。しかしTEMで格子像を撮像し得る試料厚の限界は発表者の知る限りいまだ評価されていない。そこで発表者は異なる試料厚のシリコンパターンより加速電圧300 kVでTEM像を取得し、得られた像から格子縞が撮像し得る最大試料厚さの評価を行った。

  • マルチプローブ法によるナサブナノメートル表面粗さの解析

    井藤 浩志

    EBD法を利用して、系統的に探針先端を制御したプローブを作製し、表面粗さ測定への影響を調べ、精密な光学部材やシリコンウエハーの表面粗さ等で要求される、1 nm以下の表面粗さを再現性良く測定するための手法の開発を行った。この結果、マルチプローブ法により、再現性の良い表面粗さを測定できることを確認した結果について報告する。

【物質計測標準研究部門 粒子計測研究グループ】

  • フローサイトメトリーによるマイクロプラスチックの迅速計測

    車 裕輝、桜井 博、奥田 知明(慶應義塾大学)

    マイクロプラスチックと呼ばれる5 mm以下のプラスチック粒子は、河川・海洋・大気中に存在することが確認されており、近年、その環境負荷や生体への影響について強い関心が持たれている。定量的な実態把握のためにはマイクロプラスチックの計測が不可欠だが、従来の顕微鏡法や分光法では、可測粒子サイズに制約があることに加え、計測に時間を要するといった欠点があった。フローサイトメトリーは、特に微小なマイクロプラスチック(≦50 µm)を短時間に計測可能な方法として近年注目されつつある。本研究では、フローサイトメトリーによるマイクロプラスチック計測の実用化に向けた検討を行ったので報告する。

  • 粒径10 um以上での気中パーティクルカウンタの校正技術の開発

    飯田 健次郎

    NMIJではこれまでにおいて、インクジェットエアロゾル発生器(IAG)を用いた光散乱式気中パーティクルカウンタの計数効率(CE)の校正技術の開発と、校正事業者への技術移転を実施してきた。これまでのIAGを用いたパーティクルカウンタの校正サービスにおいて、CEを校正できる粒径範囲の上限は粒径10 µmであった。この度NMIJにおいて、この上限を粒径30 µmまで拡張するための改良をIAGに加えた。本発表では粒径15 µmから30 µmでのIAGの粒子発生効率を評価した例を報告する。

  • 光散乱法による液中粒子の相互作用評価とゼータ電位

    高橋 かより

    液中に分散した粒子にレーザー光を照射し、その散乱光の時間平均値を測定する手法を静的光散乱法といい、散乱光の時間相関を測定する手法を動的光散乱法という。粒子の液中における光散乱を多角度高精度計測し、液中粒子の相互作用について考察を行った。また、その結果を、ゼータ電位測定の結果と比較した。

  • 液中粒子径計測技術と計量標準に関する調査研究

    松浦 有祐

    液中粒子のキャラクタリゼーションは現在の産業において不可欠であり、特に液中粒子の粒子径計測は産業の様々な分野で実施される。本発表では、既存の液中粒子の粒子径計測法と最新の計測技術、そしてその計測法の校正・妥当性評価のための粒子径標準物質のレビューと、液中粒子計測の研究開発についての展望を議論する。

  • 微分型電気移動度分析器(DMA)による高精度粒径測定

    高畑 圭二、桜井 博

    微分型電気移動度分析器(DMA)は、静電場中での帯電粒子の運動の軌跡の違いを利用して、ある特定の大きさの電気移動度をもつ粒子のみを取り出すことができる装置である。DMAは、その粒径分解能に関わる特性が理論的にも実験的にもよく理解でき、ナノメートル粒径域の粒子に対してきわめて高い分解能をもつことから、NMIJは依頼試験や標準物質を介した粒径標準の供給に利用している。この発表では,DMAによる高精度粒径測定の現状と課題について報告する。

  • 凝縮粒子計数器の検出効率校正における校正用粒子のもつ粒径不確かさの影響

    桜井 博、村島 淑子

    凝縮粒子計数器(CPC)の検出効率はカットオフ径近傍において急激に変化するため、カットオフ域での検出効率校正においては、校正に用いる粒子の粒径に高い精確さが求められる。しかし、粒径の不確かさが及ぼす検出効率の不確かさを定量的に調べた報告例はない。そこで本研究では、まず校正用粒子のもつ粒径の不確かさの要因洗い出しと定量化を行い、次に実際のCPCを例に、その結果を用いて検出効率の不確かさへの寄与を算出した。さらに、検出効率の不確かさ低減を目指し、校正用粒子の粒径不確かさ低減の方策の検討を行った。

【物質計測標準研究部門 熱物性標準研究グループ】

  • 高温固体熱膨張計測に関する調査研究

    折笠 勇

    高温固体の熱膨張計測技術は、次世代高効率熱機関への適用が想定される次世代耐熱合金の安定稼働性評価や精密製造設計に必須である。一方で、高温特有の金属固体特性のために、最も一般的な押し棒法をはじめとした従来手法では熱膨張計測は困難である。本調査研究では、従来計測技術を俯瞰し、高温計測での課題を抽出するとともに、特に有望な光・画像計測に焦点をあて、高温計測実現への展望を示す。

  • 革新的カーボンネガティブコンクリートの熱物性評価 (1)

    山田 修史、阿部 陽香、阿子島 めぐみ、田原 和人(デンカ株式会社)

    グローバルな社会課題としてCO2削減のへの対応として、CO2固定化コンクリートの開発が国際的に推進されている。熱物性標準研究グループはグリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発に参画し、CO2固定化コンクリートの熱物性評価のための評価システム開発および既存技術を活用した材料評価を実施している。今回は実施概要およびトライアル試験などの結果について報告する。

  • 球構造を用いた比熱容量・熱伝導率計測技術の開発

    阿部 陽香

    比熱容量と熱伝導率は、熱膨張率、熱拡散率とともに、物質・材料の熱特性を評価するために不可欠な物性値であり、評価対象の種類や形態が多様化する近年では、さらなる計測技術の向上が求められてる。本研究では、球構造を用いた熱量計および熱伝導率測定装置の開発を進めており、その進捗状況について報告する。

  • パルス光加熱サーモリフレクタンス法による薄膜の熱伝導率の計測

    八木 貴志、山下 雄一郎

    パルス光加熱サーモリフレクタンス法は薄膜材料の膜厚方向の熱拡散率の計測技術として構築されてきた。一方で、加熱レーザーパルス列に強度変調を加えることにより、パルス加熱応答に加えて周期加熱応答も同時に測定され、周期加熱応答に含まれる薄膜の単位体積当たりの熱容量と基板の熱浸透率の情報を解析することができる。この原理を用いて、熱拡散率と単位体積当たりの熱容量の積として熱伝導率を算出する技術について報告する。

  • 多段階パルス通電加熱熱量法による耐熱金属の高温熱物性測定

    渡辺 博道

    融点が2000 Kを超える耐熱金属(W, Mo, Ta, Nb)のエンタルピー(比熱)は,新規耐熱合金の状態図計算や物理特性の予測に不可欠な熱力学データである。しかし、耐熱金属の融点近傍におけるエンタルピー/比熱の文献値は大きくばらついており、正確な測定法の確立が求められている。そこで、過去にあまり考慮されていない金属-気体反応が熱物性測定に与える影響を評価可能な方法を開発し、温度1000~3200 KにおけるTaのエンタルピー、比熱、放射率、電気抵抗率の測定を行った。

  • ソフトマテリアルをターゲットとしたプローブ型熱拡散率計測手法の開発

    劉 芽久哉、阿子 島めぐみ、森川 淳子(東京工業大学)

    微小領域の熱制御を始めとした熱的機能材料として注目が高まるソフトマテリアルをターゲットとして、プローブ型センサーと周期加熱法を用いた新規熱物性計測手法を開発した。本手法のさらなる妥当性評価のために、化学増幅型フォトレジストを用いたサンプル形状による見かけの熱拡散率変化や、プローブサンプル間の接触熱抵抗の一定化などの検討を進めたので報告する。

【物質計測標準研究部門 材料構造・物性研究グループ】

  • 粉末X線回折実験と分子力場計算を用いたSrSi2-xの結晶構造解析

    藤久 裕司

    Sr-Si相図では二つの化合物SrSi2とSrSi2-x (0.16 < x < 0.34)が存在する。後者はSi原子が不規則に欠損したα-ThSi2型構造を持つと報告されていた。しかしSrSi2-xの粉末X線回折パターン上にはそれでは説明ができない超格子反射が含まれていた。今回の分子力場計算を併用したリートベルト解析により、規則的なSiの欠損を持った新しい長周期構造の存在が明らかになった。

  • AIST先端ナノ計測施設(ANCF)固体NMR共同利⽤の成果事例

    服部 峰之、大沼 恵美子

    マテリアル先端リサーチインフラ事業にて実施した固体NMR共同利用装置によるジシラン架橋ビス(ピリジン)配位子とCuIの銅錯体の温度応答性評価およびMg-25,Ca-43,Ti-47,Ti-49,V-50,Cr-53,Ni-61,Zn-67,Y-89,Zr-91,Mo-95,Mo-97,Ru-101,Ag-109,Ba-135,Nd-143,Dy-163,Tm-169,Yb-173,Lu-176,Os-189,Hg-201などの新規核種含有化合物の固体NMR測定事例を紹介する。

  • 薄膜面内方向熱伝導率計測技術の開発2

    山下 雄一郎、有馬 寛人、八木 貴志

    熱電薄膜の性能指数は面内方向の電気特性と面直方向の熱伝導率を用いて評価されている。本研究はそうした矛盾を解消し、真の性能指数を評価するために時間領域サーモリフレクタンス測定法を用いて、薄膜面内方向の熱伝導率計測技術を開発している。昨年度に引き続き、計測装置開発および解析技術の進捗を報告する。

  • 高速周期加熱とピコ秒パルス加熱の融合によるフォノン熱輸送スペクトル計測技術の創発

    志賀 拓麿

    フーリエ則の熱拡散描像に基づく従来の汎用計測技術では、次世代熱伝導材の熱設計に必要であるフォノン(格子振動の量子)の準弾道輸送情報を入手することが困難である。本発表では、平均自由行程や累積熱伝導率等のフォノン熱輸送スペクトル計測に最適化したサブμmからシングルnm領域を網羅する高速周期加熱とパルス加熱を融合した極微サーモリフレクタンス法の開発に関して報告する。

【物質計測標準研究部門】

  • イオン付着イオン化質量分析法のためのGC-MS装置用オプションユニットの試作開発

    三島 有二(株式会社神工試)、藤井 麻樹子(横浜国立大学)、〇津越 敬寿(物質計測標準研究部門)

    有機化合物のスクリーニング分析技術として、イオン付着イオン化質量分析法(IA/MS)は優れた特徴を有するが、専用装置の装置販売も終了おり、利用し難い状態が長く続いている。しかしながらGC分離無しで分子イオン毎に分別検出できるため、RoHS指令の臭素化難燃剤やフタル酸エステル類のスクリーニング分析などでのニーズは大きい。そこで既存のGC-MS装置に装着しIA/MS法が利用できるDIP-IAユニットを開発した。

【堀場製作所-産総研粒子計測連携研究ラボ】

  • 堀場製作所‐産総研粒子計測連携研究ラボ研究トピックス紹介

    舘野 宏志、〇桜井 博、本田 真也、佐藤 優穂、小嶋 健太郎

    HORIBA Institute for Particul Analysis in AIST TSUKUBA(HIPAA)では、世界トップレベルの粒子計測を可能とするシステムの実用化を目指しており、二つの領域にまたがって別々の2テーマに取り組んでいる。本発表ではこれまでの研究内容と成果について報告する。

【物理計測標準研究部門 時間標準研究グループ】

  • イッテルビウムの431 nm遷移の精密分光

    川崎 瑛生、小林 拓実、西山 明子、田邊 健彦、安田 正美

    光格子時計の精度は急速に向上し、それらの比較が物理量のセンサーに利用できる水準に達した。中性イッテルビウム原子は、光格子時計に用いられる原子の1つであり、複数の狭線幅遷移を有する。これらの狭線幅遷移のうち、431 nmの遷移は、微細構造定数の時間変化や中性子と電子間の未知の力の探索などさまざまな物理量の測定に有用であるが、これまで正確に調べられていなかった。431 nm遷移の探索、観測、及びその絶対周波数の世界初の測定に関する最近の取り組みについて述べる。この遷移のさらなる精密分光は、基礎物理学の研究とより正確な光格子時計の開発への道を切り開く。

【物理計測標準研究部門 光周波数計測研究グループ】

  • 次世代移動通信(6G)のためのミリ波帯周波数合成ー光コムの適用ー

    中島 悠来、稲場 肇

    第6世代移動通信システム(6G)では300 GHz帯のミリ波の使用が計画されており、その実用化には正確な周波数を持つミリ波発生が必要である。その有力な手法の一つとして、2つのCWレーザーをUTCに同期した光コムに位相同期し、その差周波としてミリ波帯周波数を合成する手法がある。本研究では、高価な波長計を用いずに、2つのCWレーザーと干渉している光コムのモード次数差を簡便・安価に決定する方法として、変調深さ測定を利用した方法を提案し、その進捗を報告する。

  • 2種の光コムによる高速かつ高分解能なデュアルコム分光の性能評価

    柏木 謙、大久保 章、稲場 肇

    光周波数コム(光コム)を2台用いて分光計測を行うデュアルコム分光は、一般的に周波数分解能と測定速度がトレードオフの関係にある。我々は周波数分解能と測定速度(読み出し速度)が2台の光コムのそれぞれで決まることに着目し、各役割に適した種類の光コムを組み合わせることで高速で高分解能なデュアルコム分光を開発した。本発表では、開発したデュアルコム分光の性能について評価した結果を報告する。

  • ファイバリンクを用いた光周波数伝送における雑音要因の評価

    和田 雅人、稲場 肇

    光周波数標準の高度化によりGPSを用いた周波数比較は精度が不足しつつあり、また安全保障の観点からも別の方式が求められている。我々は究極的な精度での周波数比較を目指し、ファイバリンクを利用した光周波数伝送の高度化に取り組んでいる。本発表では、双方向光増幅器やRF部品が付加する周波数不安定性をこれまでにない精度で評価した結果やシステム全体での評価結果について報告する。

【物理計測標準研究部門 量子電気標準研究グループ】

  • 高抵抗国際比較の高精度化に向けた仲介器高抵抗ブリッジの開発

    〇大江 武彦、S. Payagala、A. R. Panna(NIST)、金子 晋久(物理計測標準研究部門)、D. G. Jarrett(NIST)

    電子機器の小型化、省エネルギー化に伴い、高抵抗や微小電流の精密測定の重要性・ニーズが増している。NMIJでは1 TΩまでjcssでの校正サービスを実施しているが、10 TΩ 以上の測定能力の確認に関する要望を受け、高抵抗測定技術の高度化を進めている。国際同等性の確認に向け、デジタルマルチメータの良好な線形性を用いた高抵抗ブリッジを開発し、米国の標準研究所NISTの高抵抗ブリッジとの整合性を10 MΩから100 TΩまでの範囲で確認した。

  • 磁場環境下での量子電圧標準の実現に向けた超伝導磁気シールドの特性評価

    松丸 大樹、中村 秀司、丸山 道隆、金子 晋久(物理計測標準研究部門)

    ジョセフソン効果を用いた電圧標準は、量子効果に基づいた高い測定精度を実現する一方で、磁場環境で使用できない欠点があった。本研究では、強力な磁気遮蔽効果をもつ超伝導磁気シールドを用いてこれの克服を目指す。10 T以上の強磁場を伴う量子ホール効果抵抗標準と同じ極低温環境での精密電気計測など、量子電圧標準の新しい適用フィールドの開拓が期待できる。発表では、試作した磁気シールドの特性評価結果について報告する。

【物理計測標準研究部門 応用電気標準研究グループ】

  • 高精度な熱電デバイスの変換効率評価装置の開発

    天谷 康孝、大川 顕次郎、舟橋 良次(ナノ材料研究部門)、太田 道広、山本 淳(ゼロエミッション国際共同研究センター)

    熱電デバイスの変換効率を高精度に評価するため、熱電デバイスに投入した熱流の量を正確に測定できる変換効率評価装置を新たに開発した。開発した装置では、熱電デバイスの周囲に、熱特性にあわせて最適化されたガードリングを設置することで、側面からの熱損失を最小限に抑えることができる。これにより、発電性能試験法における国際標準の制定に向けた取り組みが前進した。

  • 4端子法による正確な無次元熱電性能指数の評価

    大川 顕次郎、天谷 康孝、坂本 憲彦、金子 晋久(物理計測標準研究部門)

    交流及び直流抵抗測定から無次元熱電性能指数(zT)を評価可能な交流ハーマン法の熱解析を行った。測定試料の熱拡散長などによって決まる特定の低周波領域において「熱インダクタンス効果」に起因する複雑な温度分布が生じ、zT評価において20 %程度の過大評価が生じることを実証した。本研究により、一般的に用いられる2端子法で生じる、電極と試料との接触抵抗の影響を排除した正確な抵抗測定からzT評価が可能となる。

  • ダイヤモンド量子センサを用いた精密電流計測技術の開発

    村松 秀和、貝沼 雄太(東京工業大学)、波多野 雄治(東京工業大学)、天谷 康孝、加藤 宙光(先進パワーエレクトロニクス研究センター)、坂本 憲彦、浦野 千春(量子計測基盤研究グループ)、金子 晋久(物理計測標準研究部門)、阿部 浩之(量子科学技術研究開発機構)、小野田 忍(量子科学技術研究開発機構)、大島 武(量子科学技術研究開発機構)、波多野 睦子(東京工業大学)、岩崎 孝之(東京工業大学)

    ダイヤモンド量子センサは、ダイヤモンド中の格子欠陥である窒素空孔中心(NVセンター)の電子スピンのエネルギー状態が磁場によって分裂することを利用した高感度磁気センサである。ダイヤモンド量子センサを用いることで電流計測の高度化が期待できるため、ダイヤモンド量子センサと従来の精密電流計測技術を組み合わせるためのセンサヘッドを開発し、その評価を行った。

【物理計測標準研究部門 電磁気計測研究グループ】

  • 円偏波マイクロ波を利用した2次元電子材料の非接触測定

    荒川 智紀、昆 盛太郎

    2次元電子材料はノーベル賞になった量子ホール効果など物理現象の宝庫であると同時に、高周波用の低雑音増幅器の材料としても重要である。そこで、我々は円偏波のマイクロ波共振モードを利用することで、様々な2次元電子材料の伝導度を非接触に測定する技術を開発した。本手法は2次元電子の伝導ダイナミクス解明に資するものである。

  • 低温高周波部品の高精度計測技術とハードウェアテストベッド構築への取り組み

    荒川 智紀、昆 盛太郎、金子 晋久(物理計測標準研究部門)

    量子コンピュータシステムには、室温部の高周波制御装置と極低温の量子チップの間で高周波信号を伝送するために、数多くの高周波部品が含まれている。しかし、低温環境下における低温高周波部品・素材の評価法は十分に確立していない。そこで我々は、独自に校正手法を開発し、4 Kから300 Kの任意の温度において2ポートの反射・伝送特性評価を可能にした。

  • 6Gメタサーフェス反射板のテラヘルツ帯評価技術の開発

    加藤 悠人、飴谷 充隆

    メタサーフェス反射板を利用したテラヘルツ通信のエリア拡大技術が有望視されている。従来、反射板のサイズが波長に比べて極めて大きくなるテラヘルツ帯では、実使用と同等の平面波照射下でのメタサーフェス反射板の正確かつ簡便な評価技術が確立されていなかった。本研究では、疑似平面波を生成するオフセットグレゴリアンアンテナを利用して、平面波照射下でのメタサーフェス反射板の高精度な性能評価をコンパクトなセットアップで実現した。

  • マイクロ波による非破壊検査技術-水分量計測や異物検査への応用-

    渡部 謙一、昆 盛太郎

    農林水産物や食品中の水分量は、その品質を決める重要な指標である。例えばコメの水分量を計測する場合、サンプルを抽出し、粉砕して電気抵抗を測定する方法やサンプルの乾燥前後の重量の変化を調べる方法などがあるが、いずれもサンプルの調製や測定に手間や時間がかかる。そこで、マイクロ波を用いて、水分量を非破壊、非接触、全数、リアルタイムで計測する技術の研究開発を行い、実証を進めている。

【物理計測標準研究部門 高周波標準研究グループ】

  • ラビ減衰量:原子スピンに基づく高周波減衰量の精密計測

    山本 真大、東島 侑矢、木下 基

    本研究ではセシウム原子の持つスピンと高周波の相互作用をレーザーで光学的に読み出す二重共鳴分光を利用し、ラビ周波数測定に基づく高周波減衰量測定、すなわちラビ減衰量測定を実現した。ラビ減衰量は低周波分圧器を基準とする従来法と比べ精度・安定性・普遍性の向上が期待され、より直接的なSIトレーサビリティを持つ。将来的には量子現象に基づく次世代高周波標準の実現に寄与する。

  • 高周波電力標準用カロリーメータの高度化に向けた3Dプリンタによる高周波部品の開発

    東島 侑矢、木下 基、桑野 玄気(製造技術研究部門)、穂苅 遼平(製造技術研究部門)、栗原 一真(製造技術研究部門)

    高周波電力標準として利用されている等温制御型カロリーメータは、室温駆動する熱型検出器として長い時定数とトレードオフに高感度な測定を実現している。一方でより弱いパワーを高精度に検出するには、検出部と熱浴との熱コンダクタンスを適切に設計し環境温度変動の影響を低減させる構造にすることが重要となっている。昨年度より、製造技術研究部門とともに3Dプリンタを母材とした空間型吸収体の開発など熱特性を考慮した高周波部材の開発に着手している。今回、導波管伝送路部分の熱特性の改善のため3Dプリンタによる断熱導波管の試作を開始したのでその進捗を報告する。

【物理計測標準研究部門 電磁界標準研究グループ】

  • コンクリート平板を伝播するマイクロ波の空間分布制御

    松川 沙弥果

    本研究はコンクリート構造物の壁や床などを平板状の誘電体導波路と見なして電磁波を伝播させ、電力伝送用の伝送路として利用することで、二次元平面の任意の位置での給電が可能な電力伝送技術の開発を目的としている。今回、電磁波の励振にアレイアンテナを用いることで、コンクリート平板を伝播するマイクロ波の空間分布を制御し、信号強度の向上に成功したので報告する。

  • セシウム原子の磁気副準位間のエネルギー差を利用した低周波帯における電磁波可視化技術

    石居 正典

    従来の電磁波の可視化技術と言えば、アンテナや電磁界センサをアレイ化または空間中で掃査し、受信で得られた強度分布のデータを2Dや3Dの表示画面にマッピングする手法が一般的である。一方、我々の研究では、レーザーを吸収したセシウムの気体原子が発する赤外線の蛍光を利用した電磁波の可視化手法の検討を行っている。本報告では低周波帯(kHzからMHz程度)の電磁波の可視化技術を提案し、約100 kHz程度での検証実験を行ったので報告する。

  • 精密波形計測に向けた独立成分分析による波形分離の検討

    髙橋 直央

    現在の電磁環境では、近接する周波数帯域を通信に使用する機器や、意図しない電磁波の放射による電磁干渉が生じるリスクが高くなっていることから、空間での精密波形計測による対策の重要性が増している。本研究では、観測波形を独立成分ごとに分離する手法である独立成分分析によって、周波数の異なる二つの正弦波が任意の位相と振幅で合成された二つの観測波形から、元の信号波形を分離する実験と検討を行った結果について報告する。

  • 機械学習によるシングルカット測定法に基づくアンテナパターン評価の初期研究

    She Yuanfeng

    NMIJで行っているアンテナパターン評価の手法であるシングルカット走査測定法と機械学習を組み合わせることにより、より高度で効率的なアンテナ評価システムを構築することが可能である。初期段階では標準ホーンアンテナを対象に、シミュレーションデータを学習データとして使用し、機械学習アルゴリズムを活用して近傍界データをデータパディングして遠方界のアンテナパターンを予測する方法を試行する。

【物理計測標準研究部門 温度標準研究グループ】

  • 高温域におけるT-T90の測定のための音響気体温度計の開発

    ウィディアトモ・ジャヌアリウス、三澤 哲郎(量子計測基盤研究グループ)、斉藤 郁彦、中野 享(物理計測標準研究部門)、小倉 秀樹

    国際単位系における熱力学温度の単位の定義改定に伴い、現在、熱力学温度(T)と、熱力学温度の最良近似である1990年国際温度目盛(ITS-90)により実現された温度T90との差(T-T90)を明確にする動きが進んでいる。現在、ガリウム点(29.7646 ℃)以上の(T-T90)を精密に測定できる音響気体温度計(AGT)の開発を進めており、ガリウム点において初期評価を行った結果を紹介する。

  • ガラスセルを用いたガリウム点実現装置の作製と評価

    斉藤 郁彦

    ガリウムの融解点は、1990年国際温度目盛における重要な温度定点の一つであり、現在NMIJではステンレス製セルを用いたガリウム点実現装置を国家標準器として使用している。しかしステンレス製セルは、周囲からの熱流の影響を受けやすいことが知られている。そこで新たにガラスセルを用いたガリウム点実現装置を作製した。本発表では、新たに作製した装置と既存の国家標準器を比較した結果について報告する。

  • 高温用熱電対の偏差関数の評価技術開発

    小倉 秀樹

    素材産業分野における半導体やセラミックスなどの熱処理温度や、電力分野における水素やアンモニアなどの燃焼温度の測定等、製品の品質管理やエネルギー効率の向上のため、熱電対による高精度な温度測定は重要である。一方で、高精度な温度測定を実現するためには、使用する熱電対の校正が不可欠である。本発表では、金属-炭素共晶点実現装置を用いて校正した高温用熱電対の偏差関数の評価技術について報告する。

【物理計測標準研究部門 光温度計測研究グループ】

  • テラヘルツ波を用いた非接触温度測定法に関する調査研究

    立川 冴子

    粉塵や障害物の向こう側、不透明容器内部の温度を正確に測る非接触温度計測技術が求められている。そこで、本研究では透過性の高いテラヘルツ波を用いた水蒸気の吸収分光を用いた非接触温度計を提案する。テラヘルツ分光計の周波数分解能向上に取り組み、本グループの持つ、分光スペクトルから温度を算出する解析技術を応用し、高精度なテラヘルツ分光温度測定システムの確立を目指す。

  • 単一画素撮像干渉計測技術の高コヒーレント光源への適用

    井邊 真俊

    干渉計を用いた空間コヒーレンス計測と合成に基づく単一画素撮像技術を開発してきた。従来の技術と比較して、画素構造光デバイスが不要であり、汎用的な光学素子のみで実現できるという特徴をもつ。この撮像技術ではこれまで原理上、撮影物体に対して空間的にインコヒーレントな照明光を用いる必要があると考えられていた。しかし今回、空間的にコヒーレントな照明でも実現できること、すなわち、レーザー光を使用できることを見出した。

  • デュアルコム分光による気体温度計測

    清水 祐公子、入松川 知也、大久保 章(光周波数計測研究グループ)、稲場 肇(光周波数計測研究グループ)

    分光を用いた非接触な気体の温度測定技術は新たな熱力学温度測定手法として着目されている。これまでにデュアルコム分光により気体分子の吸収スペクトルを測定し、多数の振動回転遷移の吸収スペクトルの強度分布から熱力学温度を決定する手法を実証しており、現在その高精度化に取り組んでいる。発表では、その進捗状況について報告する。

【物理計測標準研究部門 応用光計測研究グループ】

  • イメージングカメラの分光放射輝度応答度校正システムの開発とデータ解析手法の検討

    神門 賢二、堂前 篤志(計量標準普及センター)、山澤 一彰(計量標準普及センター付)

    医療・リモートセンシング分野等で、画像計測技術が広く用いられている。正確な画像データの取得や機種毎に同質の画像データを取得するためには、計測するイメージングカメラの校正・評価が不可欠である。本発表では、イメージングカメラの分光放射輝度応答度校正システムを開発し、取得した膨大な測定データを解析し、デジタル校正証明書を発行する方法について報告を行う。

  • 近接場光を利用した高性能レーザビームサンプリング技術の開発

    徳田 将志、沼田 孝之

    レーザ加工の高度化に向けて、加工用レーザの外部変調型パワー制御技術が求められている。従来技術ではキロワット級のレーザに対してパワーモニタ用ビームサンプリング素子の光減衰量が十分でなく、制御システムの応答速度やサイズを律速する一因となっていた。そこで本研究では、近接場光を利用し十分な光減衰量を確保することで、上記の課題を解決可能な高性能レーザビームサンプリング技術の開発に取り組んでいる。

【物理計測標準研究部門 光放射標準研究グループ】

  • 紫外領域でのシリコンフォトダイオードの応答非直線性

    田辺 稔

    紫外放射は、殺菌、半導体製造などの様々な分野で使用されている。これらの分野において、近年、高出力のLED光源が注目されている。この光源の信頼性や安全性を保証するためには、紫外領域における精密な光計測が重要である。シリコンフォトダイオード(SiPD)は、紫外放射の絶対放射束を6桁以上のレンジで測定可能だが、その応答が非直線の領域が存在する。本研究では、SiPDの紫外領域における応答非直線性と、その波長依存性の評価を実施した。

  • マルチバンド実用紫外放射照度計の開発

    岩佐 祐希、木下 健一、蔀 洋司

    殺菌用途に用いられる紫外光源の多様化に伴い、多様なスペクトルを持つ光源に対して測定が可能な計測器の開発が求められている。本研究では、新たに光学フィルタを用いた簡易的な分光手法を活用した紫外放射照度計の原理検証を行った。その結果、この手法を用いることで、同一の放射照度計で異なるスペクトルの紫外光源が測定可能であることが分かった。

  • 光度・照度標準を取り巻く課題と将来展望に関する調査研究

    二宮 博樹

    測光量の一つである光度の単位、カンデラ(cd)はSI基本単位の一つであり、それに関連する計量標準は光計測に不可欠な基盤技術である。本研究では、光度や照度などの測光量を対象に、標準の維持・供給における現状を調査した。また、白熱型標準電球の枯渇や、新しい分光視感効率の提起など、測光標準の運用に関わる昨今の状況を踏まえ、光度・照度標準の将来展望を考察する。

  • 近距離条件におけるUV-LED放射照度測定の不確かさ改善

    木下 健一、神門 賢二

    近年、紫外LEDの産業用途は、殺菌、水処理、紫外線硬化、非破壊検査など様々な広がり見せている。それら紫外線照射工程においては近距離・大強度での照射が求められる。それに対応するため、産総研において近距離における紫外LED放射照度の評価システムの開発を行ってきたが、7 % (k = 2)程度の不確かさに留まっていた。今回、相互反射や距離設定の改良を導入し、不確かさの大幅な改善を行ったので報告する。

  • SC光源を用いたマルチチャンネル型分光放射計の特性評価

    中澤 由莉、神門 賢二(応​用光計測研究グループ)

    LED照明の特性評価ではマルチチャンネル型分光放射計が広く用いられているが、より高精度な測定を実施するためには、波長校正やスリット関数といった分光放射計の特性評価が不可欠である。今回、実用的かつ高精度な分光放射計の特性評価を目的として開発したスーパーコンティニウム(SC)光源を利用した疑似単色光発生システムを用い、スリット関数の波長依存性などの分光放射計の特性評価を実施したので、報告する。

【物理計測標準研究部門 量子計測基盤研究グループ】

  • 極低温ジュール・トムソン冷凍機用細管組み込み熱交換器の開発

    島崎 毅、中川 久司

    ジュール・トムソン(JT)冷凍機では、予冷した流体を細孔や細管などを通して膨張させ寒冷を発生させる。本研究では、長尺の細管を組み込み、流体の予冷と膨張を同時に起こす熱交換器を試作し、JT冷凍機の冷却特性と操作性の向上を試みている。その概要について紹介する。

  • 単一光子を分光可能な超伝導転移端センサの開発

    服部 香里、加藤 晶大、福田 大治

    超伝導現象を利用した超伝導転移端センサは高い検出効率を実現し、可視光から近赤外までの広帯域の光を検出可能である。本発表では、量子計算の応用に向けた時間分解能向上や光子の同時計数に向けた取り組みについて紹介する。

  • 銀焼結体熱交換器による超流動ヘリウム4の超低温冷却

    中川 久司

    量子流体力学の研究対象である超流動ヘリウム4は、暗黒物質検出のターゲットや高密度超冷中性子生成源などにも利用されている。この際、超流動ヘリウム4は、その転移温度(約 2 K)よりもはるかに低い温度に冷却する必要がある。本研究の目的は、超流動ヘリウム4を効率よく超低温冷却する熱交換器の開発である。これまでに、希釈冷凍機の熱交換器材である銀微粒子の焼結体(銀焼結体)と超流動ヘリウム4との熱抵抗を測定し、銀焼結体の熱交換器材としての性能を評価した。

  • ヘリウムイオン顕微鏡技術による銅酸化物高温超伝導体ジョセフソン接合の作製

    三澤 哲郎、野崎 智義(量子計測基盤研究グループ、東京理科大学)、石田 茂之(電子光基礎技術研究部門)、小川 真一(先端半導体研究センター)、森田 行則(先端半導体研究センター)、永崎 洋(電子光基礎技術研究部門)、内田 慎一(東京大学)、西尾 太一郎(東京理科大学)、浦野 千春(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)

    ジョセフソン接合は量子電圧標準や超伝導量子干渉素子などの精密計測技術に不可欠である。本研究は銅酸化物高温超伝導体であるYBa2Cu3O7-δ(YBCO)を用い、小型スターリング冷凍機で実現可能なジョセフソン接合を作製することを目指している。厚さ数ナノメートルのトンネル障壁層を形成するため、ヘリウムイオン顕微鏡を用いてサブナノメートル径に集束させたヘリウムイオンビームを照射することによるYBCO物性の局所制御に取り組んでいる。