ナノ粒子を含む粉体材料の計測には、 液体中や真空中など粒子の置かれた環境、 測定可能な粒径の範囲、 測定値の精度など測定条件の違いにより様々な方法が考えられます。 このため測定には、 材料の特性、使用目的や利用環境に応じた測定手法を考慮し、 適切な計測装置を選択することが重要となります。
特にナノ材料規制に対応した測定おいては、
などの点が重要視され、 こうした条件をクリアーできる計測手法と装置の早急な定常化が求められています。
また、 粒径が数ナノから数ミクロンにおよぶ広い範囲を測定できる手法及び装置は いくつか存在しますが、 単一の計測装置のみで粒径分布の広い試料 (極微小粒子と大きな粒子が混在したもの)を 正確に評価することには困難が伴います。 そこで本コンソーシアムでは 分級装置により試料の粒径分布を幾つかに区分したのちに、 広範囲の粒径測定が可能な複数の装置 (TEM/SEM, SAXS, DLS, AFM, ICP-MS) を用いて正確に粒径分布を計測する手法 -ナノ粒子複合計測システム- の構築に取組んでいます。 複数の計測方法を組み合わせることにより、 様々な種類の材料や利用現場への迅速な対応を目指します。
一般的なナノ材料の場合、粒径の分布が大きく広がっている状態が普通です。 そうした材料を試料として計測する場合、 その粒径範囲を網羅できる測定法であっても 以下のような問題の発生が想定されます。
上記のように隠ぺいの影響が発生する場合には、 単一の計測法のみでは正確な粒子数計測ができないため、 分級との組み合わせが必要とされます。
本コンソーシアムでは、 分級システムによりあらかじめ粒径分布をいくつかに分画し、 分画された試料に対して複数の計測評価法により粒径分布を計測し、 データを合成するなど一連の作業をシステム化することにより 正確な測定結果を導き出す計測手法を提案しています。
ナノ粒子複合計測システムを構成する主要装置は
など、ナノ材料計測用に開発された機器により構成されています。
上記にあるようにナノ粒子複合計測システムは、 分級技術を核にメンバー企業から提供される各装置のポテンシャルを活かした 装置間データを比較することで正確な測定結果を導き出すことを目指します。 本システムにより開発された計測手法の標準化に向けた 新たな規格項目の提案も準備中です。 またシステムの安定的な運用により装置間整合、 国際整合には必須となる標準物質の整備実現を目指します。
分級装置とSEMの組合せによる、 銀ナノ粒子混合試料の測定例でシステムの有効性を見てみます。 図では、試料の分級前と分級後のSEM計測した画像の比較を示しています。 混合状態では、わかりにくかったナノ粒子が粒子径ごとに分級されることで SEMで精度よく観察することが可能となります。