地層の調査と分析野外調査

地層の採取(人の力を使った方法)

枯れた植物、砂、泥などが数十年、数百年、数千年以上という時間をかけて積もって地層ができます。

この地層からは、たまった当時に生きていた生物の遺骸(化石)や、津波の痕跡である津波堆積物が発見されることがあります。その土地の地層をきれいに採ることは、過去の津波を知る第一歩と言えます。

地層の採取には、その土地の環境(何もない湿原なのか、道路脇の田んぼなのか)や地層の種類(堅いのか軟らかいのか、砂なのか泥なのか)によって様々な方法があります。

ロシアンサンプラーによる掘削

2009年1月 三重県志摩市 *

塩ビパイプによる採取

2019年10月 三重県南伊勢町 *

シンウォールサンプラーによる掘削

2011年2月 徳島県阿南市 *

ハンディジオスライサーによる掘削

2015年2月 北海道厚岸町 *
2017年2月 千葉県山武市 *

地層の採取(重機を使った方法)

ジオスライサーによる掘削

2012年10月 茨城県北茨城市 *
2013年3月 宮城県仙台市 *

機械ボーリングによる掘削

2009年1月 三重県志摩市 *

トレンチ・ピット調査

2003年5月 北海道厚岸町 *
2020年7月 青森県五所川原市 *

地層の採取方法

手掘り式コアラーの図 比較的かんたんな掘削方法で、1~2名での掘削が可能、先端部の違いで、ハンドコアラーやロシアンサンプラーなど呼び方が違う。ハンドコアラーは半分開いた円筒形の先端部、ロシアンサンプラーは蓋のついた円筒形の先端部を持つ。
パイプを押し込み採取する方法の図 水深の浅い湖や池で、水上に浮かべたフローターや結氷した氷の上から、塩ビパイプを突き刺して試料を採取する
シンウォールサンプラーの図 円筒型の試料が採取できる。4~5名程度での掘削が可能。重機は使用しないが、試料を引き抜くために三脚を組む必要がある。深くまで掘削するとシンウォールサンプラーそのものが重くなり、引き上げたものを支えるために数名必要となる。
ハンディジオスライサーの図 地層を箱型に抜き取る方法。小型のバイブレーターを使用しながら、人力で採取する。試料を引き抜くために三脚を組む必要がある。
ジオスライサー(大型ロングタイプ、大型幅広タイプ)の図 地層を箱型に抜き取る方法。小型のバイブレーターを使用しながら、人力で採取する。試料を引き抜くために三脚を組む必要がある。
機械ボーリングの図 ボーリング用の機械(試錐機しすいき)を使用した掘削調査。円筒型の試料を採取することができ、深さは数十メートル以上に達する。打込式やロータリー式などがあり、状況によって採取方法を変える。
トレンチ・ピット調査の図 大きな溝を掘って、その壁面の地層を観察する調査。「トレンチ」とは溝の意味。比較的小規模な溝を「ピット」と呼ぶ。溝の掘削は重機を使用するが、ピットは人力で掘削することもある。

調査で使用する重機

積載型トラッククレーン

通常のトラックを補強してクレーン装置を搭載したもの。ジオスライサーや機械ボーリングの調査の際、資材の搬入・搬出のために使用する。軽トラック以上の大きさの様々なタイプがある。つり上げ荷重(つり上げのためのフック等を含めた最大荷重)が3トン未満のものが多い。クレーン装置を使用する際は、転倒防止のためにアウトリガー(横側に張り出す足)を使うため、運用の際はある程度のスペースが必要となる。

2012年10月 茨城県北茨城市 *

クローラークレーン

大型ジオスライサーを用いた調査の際、最も頻繁に運用される重機。クローラーで走行することができるため、未舗装地や軟弱地でも走行が可能。つり上げ荷重が5トン未満のクレーンを使用することが多い。

2012年10月
茨城県北茨城市 *
2009年12月
福島県富岡町 *

小型クローラークレーン

クローラーで走行するクローラークレーンの一種。未舗装地や軟弱地でも走行が可能。アウトリガーが、本体の四隅から「カニ」あるいは「クモ」のように張り出す。アウトリガーを収納すると非常に小さくなるため、幅の狭い農道などでも走行することができる。タイヤ付き車両で行けないような場所で大型ジオスライサーを運用する際に使用する。

2012年10月 茨城県北茨城市 *

ホイールクレーン

タイヤで移動するため、公道を走行することができる。特に、カニ走行などもできるホイールクレーンを「ラフターレーンクレーン」と呼ぶことがある。転倒防止のためのアウトリガーを使用するため、ある程度のスペースが必要となる。大きな道路沿いで大型ジオスライサーを運用する際に使用する。

2009年12月 宮城県山元町 *

掘削以外の調査方法

地中レーダー探査

電磁波をアンテナから地下に放射し、その反射波の走時(ある場所を出発して、ある観測点に到着するまでの時間)を計測することで地下の様子を知ることができる。

地中レーダー探査の仕組みを表した図
カートタイプの地中レーダーを使用した探査風景 *

フォトグラメトリ

ドローンなどで撮影した複数のデジタル写真と、ドローンが衛星から取得した位置情報から、地形などの情報を読み取り、コンピュータ上で画像を合成・構築し、解析する方法。

ドローンによる撮影の様子を表した図
ドローンは予め決められたルートを飛行しながら、一定間隔で写真を撮影する *

本頁は、澤井・田村(2022)GSJ研究資料集 no.741に加筆・修正したものです。写真の説明に(*)を付したものは同資料集より転載したものです。