用語解説
イベント堆積物(イベント層)
突発的な出来事により、数千、数百、数十年という地質学的な時間感覚からすると瞬時に形成される堆積物を「イベント堆積物」「イベントを表す地層」と呼ぶ。イベント堆積物には、津波堆積物のほか、洪水堆積物、高潮堆積物、高波堆積物などがある。
地震の規模
地震の規模を表す指標には、エネルギー量を示すマグニチュードを用いる。マグニチュードは「M」と標記され、値が1大きくなるとエネルギーは約31.6倍になり、2大きくなると1000倍となる。Mの算定方法には幾つかある。例えば、地震学ではモーメントマグニチュード(Mw)が用いられることが多いが、気象庁は気象庁マグニチュード(Mj)を用いている。同じ地震のマグニチュードでも、複数の異なる値が発表されることがある。これは、地震の規模を1つの指標で表すことができないということを意味している。
ピットとトレンチ
野外で地層を観察するためにやや広く掘削する穴のことを、形状に応じてピットやトレンチと呼ぶ。ピット(pit)とは穴を、トレンチ(trench)とは溝を意味する言葉で、通常のボーリングで掘る穴よりも広く(幅1m程度)、浅い(深さ1-2m程度)ものをピットと呼び、そのピットを拡大して溝状に細長く掘ったものをトレンチと呼ぶことが多い。ボーリングよりも広い範囲で地層の状態が観察できるため、地層がたまった時の状況などを推定する上で適している。トレンチの掘削による調査は、津波堆積物だけでなく、内陸の活断層を調査する際によく行われる。
浜堤と堤間湿地
海浜において暴浪時などに波によって打ち上げられた砂礫が、海岸線に沿って堤状に堆積してできた高まりの地形。その高さは数10cmから数mまである。海岸から内陸に向かって複数の浜堤が何列も発達したものを浜堤列と呼び、浜堤と浜堤との間の低まりには堤間湿地と呼ばれる湿地が形成される。津波や暴風によって形成された堆積物は、堤間湿地の堆積物(泥炭や泥)に残されていることが多い。
放射性炭素(14C)年代
放射性炭素14原子(14C)が約5,730年で半減する性質を利用し、堆積物の年代を推定する方法。大気中には一定量の14Cが含まれており、生物が体内に取り込んだ14Cは、大気と同じ割合に維持されている。しかし生物が死ぬと、14Cが取り込まれなくなるため、その時点で体内にあった14Cは時間の経過とともに放射性崩壊によって徐々に減っていく。この減少率を利用し、測定物(例えば、炭素を多く含む植物の化石など)に含まれる14Cの割合から、その地層の堆積した時期を知ることができる。なおこの方法は半減期の長さから、約6万年前から約400年前までの年代測定に有効とされている。
暦年較正年代
放射性炭素(14C)年代の測定において半減期に基づいて算出された値を暦の年代に補正する方法のこと。14C年代測定では、まず大気中の14C濃度について、過去のいつの時代も常に一定であったと仮定して、そこからの減少率で算出する。しかし過去の大気中の14C濃度は、自然放射能の増減の影響を受けて時代毎に変化しており、実際の年代(暦年代)と放射性炭素年代の間に若干のずれが生じる。このため実際の年代を知るために、14C年代を暦年代に補正するプログラムがあり、これによって得られた年代を、暦年較正年代と呼ぶ。
プレートの三重点
3つのプレートがぶつかり1カ所で接する場所。トリプルジャンクションとも言う。房総半島東方沖では、大陸プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートがぶつかり合う。
有孔虫
海に生息している微少な原生動物。大きさは数十ミクロンから数ミリ程度で、実体顕微鏡で観察することができる。環境によって生息する種が異なるため、過去の環境を推定する指標として使用することができる。