独立行政法人産業技術総合研究所
事業目的と研究開発のアプローチ 飲食・小売サービス 医療・介護サービス 観光・集客サービス サービス工学技術の導入戦略 成果のまとめと今後の展望

サービス工学技術の導入戦略
本事業の最終目標は、サービス事業者がサービス工学技術に基づく最適設計ループを導入し、効果を定量的に確認しながらPDCAサイクルを廻すような経営形態に移行させることにある。これは、従来の勘と経験に頼った経営から、形式知とデータに基づく経営に移行することを意味する。ただし、これはサービスを画一的、マニュアル的なものにすることを意味しているのではない。サービスプロセス全体を勘と経験で実行するのではなく、その基盤となる部分を形式知とデータに基づく工学的技術で支え、勘と経験によるすぐれたサービス提供価値をその上に築いていくことを意味している。これは、最終的にサービス提供による価値を向上させることにほかならない。
図5-1:サービス工学の導入
図5-1:サービス工学の導入(※図6.1-2)
このためには中小サービス事業者にいたるまで、サービス工学技術が導入され普及していくことが必要となる。そのための戦略を提案する。これは、サービス工学の主たる目的である中小サービス事業者への導入を一気に行うのではなく、導入実績と導入効果の実例を挙げながら段階的に進める方策である(図5-2)。図中のハートマークの大きさは企業の投資意欲×投資力のイメージを示したものであり、定量的な意味はない。
図5-2:サービス工学技術の導入戦略
図5-2:サービス工学技術の導入戦略(※図6.3-1)

研究開発においては、中小サービス事業者と連携を進めており、それらの事業者へは技術導入が進みそうであるが、同程度の規模の事業者に水平展開するのは難しい。そこで、工学技術の導入に意欲が高い製造業を最初のターゲットに導入を推進するのを第一段階とする。製造業においても、たとえば直販店をもっているとか、あるいは、メインテナンス・リサイクル・コールセンターなどのサービスを実施しているケースがある。これらの製造業のもつサービス機能に対してサービス工学技術の導入を推進する。これによって、サービス工学技術の一層の成熟化を図るとともに、導入実績を蓄積する。第二段階は、大手サービス事業者への導入である。放送事業者、運輸事業者などある程度の規模の設備を伴うサービス事業者は、製造業と同様にある程度の投資を必要としており、投資力がある。第三段階は、中小のコンサルティング企業への技術導入と、コンサルティング企業を介した中小サービス事業者への技術移転である。中小サービス事業者にコンサルティングを行う事業者が、サービス工学技術を活用し、たとえば、従業員行動観測や顧客データの収集、分析などをコンサルティングとして引き受け、ここにサービス工学技術を活用して効率化を図る。これにより、コンサルティング経費の削減が実現できれば、中小サービス事業者にとってもコンサルティングが活用しやすいものとなる。
図5-2の導入戦略に基づいて、サービス工学研究センターでは開発したサービス工学の要素技術、もしくは、技術パッケージの移転を進めている。以下、本報告書執筆時点で導入実績があるか、導入に向けて協議中の事例である。

●顧客接点支援技術パッケージ:POSEIDON、経営者支援技術パッケージ:APOSTOOL
・大手下着会社、大手化粧品会社(製造業)
・大手信販会社(大手サービス事業者)
・中小コンサルティング事業者のID-POS分析(中小コンサルティング事業者)
・複数のシステム開発ベンダー

 

●顧客接点支援技術パッケージ:OSF-POS
・地域密着型の旅行代理店(中小サービス事業者)

 

●従業員支援技術パッケージ:PDRplusS
・複数の大手製造業の製造ライン支援(製造業)
・大手コンサルティング事業者の大手小売支援(大手コンサルティング企業)
・複数のシステム開発ベンダー

 

●従業員支援技術パッケージ:従業員情報共有システム
・複数の介護システム開発ベンダー

 

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