観光・集客サービス
4.1. 研究の構成と開発目標
大規模集客サービスの典型例には、地方観光地やスポーツスタジアムなどがある。飲食・小売と同様に顧客の情報を取得しカテゴリ化することで、顧客カテゴリに応じたサービス設計を支援することができる。ここでは、観光・集客サービスを2つのタイプに分けて考える。第一は、サービス提供者(通常、単一企業)が閉空間を用意し、その中で顧客との接点をもつタイプ(Closed Service Field)、第二は特定の地域に複数のサービス提供者が混在して広がっているタイプ(Open Service Field)である。Open Service Fieldでは、広域空間の中で顧客IDを付与した上でその行動をいかに取得するか、それを複数のサービス提供者にいかに提示するかが技術課題となる。 4.2. 研究成果
(1)顧客接点支援技術パッケージ
顧客サービスを通じて顧客をID化し、行動を観測するための技術パッケージである。地方観光地などの広域空間(Open Service Field)で顧客ID化を実現するとともに、球場などの閉空間(Closed Service Field)でより深い顧客情報を得るための技術を開発した。広域空間(Open Service Field)での顧客接点支援技術については、先行するプロジェクトで開発してきた顧客にIDを付与するカードシステム(OFS-POS:Open Service Field - Point Of Service、城崎温泉にて「ゆめぱ」として実証中)を改良し、メインテナンスを容易にした【要素技術D:顧客ID化基盤技術】。ソフトウェアとハードウェアを実装レベルから見直し、特に導入時設定の省力化を実現した。従来システムの初期設定パラメータ数36を、9項目まで削減でき、70%以上の導入省力化を達成した。 図4-1 タッチタワーと設問例(※図4.2.2.1-1、4.2.2.1-2)
(2)経営者支援技術パッケージ
顧客ID化基盤技術、あるいは、閉空間サービスにおいてすでに導入されている顧客情報を多面的に集積し、外部環境データ(例えば球場内でのイベント、投手、対戦チームなどのCausal Data)とともに統合データベースに集約した上で、飲食・小売サービスフィールドで開発した経営者支援技術パッケージを適用し、有効性を検証した。具体的には北海道日本ハムファイターズの協力を得て、2009年から2010年の2年間の来場者データ(ID付きのファンクラブ会員情報を含む)に基づいて、カテゴリマイニング技術で顧客カテゴリを導出した。ID付きのファンクラブ会員は5つのカテゴリに類型化でき、C4についてはリピート率の高いカテゴリであることが分かった。さらに、この2年間のデータと顧客カテゴリに基づいて2011年の需要予測を行った。 図4-2:ファンクラブ会員のカテゴリ毎の来場行動(※図4.3.2-2)
|
|