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研究紹介・レポート

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3】福島における山菜11種の面的移行係数に関する研究

掲載誌:Scientific reports、12, Article number: 5171 (2022)
論文紹介執筆者:地圏化学研究グループ 高田モモ
福島における山菜11種の面的移行係数に関する論文がScientific reportsに掲載されました。

題目

福島第一原子力発電所事故後の山菜の137Csに関する面的移行係数とその時間変化
(Aggregated transfer factor of 137Cs in edible wild plants and its time dependence after the Fukushima Dai-ichi nuclear accident)

著者

高田モモa、保高徹生a、林誠二b、高木麻衣b、田上恵子c
  1. 国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)
  2. 国立環境研究所
  3. 量子科学技術研究開発機構

概要

 筆者らは、東北地方で一般的な山菜11種(草本類5種、タケノコ、木本類2種、シダ植物3種)について、山菜中の放射性セシウム濃度の将来予測に役立つ面的移行係数(図1)を求めました。面的移行係数の計算には、2012年から2019年の厚生労働省の食品モニタリングデータおよび2012年の航空機サーベイによる沈着量データを使用しました。タケノコおよび草本類、シダ植物の山菜の面的移行係数は、半減期約2年の減少傾向を示しましたが、木本類の山菜については明確な時間変化を示しませんでした。したがって、2014年以降のデータを用いた面的移行係数は、その緩やかな減少から、長期的な放射性セシウムの摂取量の推定に適用可能であることが示されました。表1に示す通り、面的移行係数は6.1 × 10-5 から 5.2 × 10-3 m2/kg-生の範囲を示し、最大はコシアブラで、最小はフキでした。木本類は草本類やシダ植物よりも面的移行係数が高い傾向にありました。
                  図1 面的移行係数の概念図

               表1 各山菜の面的以降係数(論文より)
山菜名 学名 区分 面的移行係数(m2/kg-生)
コシアブラChengiopanax sciadophylloides木本類5.2 × 10−3
タラノメ Aralia elata 木本類 4.3 × 10−4
ゼンマイ Osmunda japonica シダ植物 4.2 × 10−4
タケノコ Phyllostachys spp. 3.9 × 10−4
ウワバミソウ(ミズ) Elatostema umbellatum 草本類 3.6 × 10−4
モミジガサ(シドケ) Parasenecio delphiniifolius 草本類 2.5 × 10−4
クサソテツ(こごみ) Matteuccia struthiopteris シダ植物 2.0 × 10−4
ワラビ Pteridium aquilinum シダ植物 1.9 × 10−4
フキノトウ Petasites japonicus 草本類 1.7 × 10−4
ウド Aralia cordata 草本類 1.1 × 10−4
フキ Petasites japonicus 草本類 6.1 × 10−5
【謝辞】

 現地調査にご協力いただいた川俣町山木屋地区および飯舘村の地元住民の皆様に感謝いたします。本研究はJSPS科研費 18H04141の助成を受けたものです。

【原文掲載先】

https://www.nature.com/articles/s41598-022-09072-5

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