物理探査ケーススタディCase studies
物理探査法の紹介 ダイレクト・プッシュ法【神宮司 元治】
2007年9月28日から10月10日にかけて社団法人地盤工学会調査研究部「最近の CPTテクノロジーとその設計・環境・防災への適用に関する研究委員会」の米国CPT(コーン貫入試験)最新動向視察団に参加する機会を得ました。ここでは、米国のCPT技術の最新技術の動向について紹介します。
■ CPT(Cone penetration test)・ダイレクトプッシュ技術
CPT(コーン貫入試験)とは、左図に示すようにして、先端がコーン状のプローブを、油圧ジャッキ等の貫入装置を用いることにより打撃を加えることなく静的に押し込み(静的貫入)、プローブの内部に設置された各種のセンサーによって地中の各種パラメータを計測する技術です。当初は、従来の標準貫入試験に代わる地盤強度のサウンディング手法として開発されましたが、近年では、プローブに最先端のセンサーを装備することにより、土壌汚染や地下水流動の調査に用いられるなど、従来の地盤強度計測の枠を超えた新しい地盤調査法として、アメリカやヨーロッパなどを中心に広く利用されるようになりました。 最近では、ダイレクトプッシュ技術として静的貫入だけでなく打撃貫入や土壌サンプリングなどを含めて幅広く応用されています。調査手順としては、まず油圧ジャッキなどで構成される貫入試験装置を搭載した車両を調査地に移動させ、車両重量やアンカーによる反力を確保した後に、毎秒2センチメートルの速度で、ロッドを地盤に貫入させます。ロッドの先端には、コーン状になった貫入プローブが取り付けられており、プローブ内の各種のセンサーによって地盤の貫入抵抗や摩擦抵抗、間隙水圧、電気伝導度(EC)、含水率などの様々なパラメータを連続的に計測することができます。
■ ARA社によるEAPS(Enhanced Access Penetration System)
EAPSは、左図に示すようなCPTの貫入システムとボーリングシステムを組み合わせたハイブリッドな貫入システムです。静的には貫入が困難な強固な地層に対しては、ボーリングを使用することにより障害となる強固な層を堀抜いて前進することで、礫層や貫入摩擦の大きな大深度におけるCPTプローブの貫入が可能になります。比較的浅層に静的貫入が不可能な貫入抵抗の大きな砂層や礫層があるような地質においてもCPTの適用が可能なため、我が国のような複雑な地質を有する国においても、今後注目すべき技術であると考えられます。米国環境省からの委託によりARA社が開発した本EAPSシステムでは、主に環境汚染分野での適用が考慮されており、掘削水は完全に再循環されるようになっていて、ボーリング使用時に掘削水が地盤に影響を与えず、地盤汚染が起きないようになっています。貫入に使用するCPT油圧ジャッキは、20トンクラスの大型のCPTトラックに搭載されており、CPTトラックの自重で十分な反力を得ることが可能です。我が国では、あまりこのような大きなCPTトラックを使ったシステムは少ないが、広い敷地での調査の多い欧米では、一般的に使わている。デモンストレーションは、ヒューストンの郊外で行われたが、ボーリングと静的貫入を連続的に行うことができることを確認しました。
カンザス州サライナにあるジオプローブ社は、我が国でもよく知られたメーカーで、環境調査用の各種の貫入試験装置を開発・販売しています。Geoprobe社がCPT・ダイレクトプッシュ用に販売している貫入試験装置は主に66シリーズですが、左の写真は、新型の6625機で、反力を容易に確保できるオーガタイプのアンカーシステムが搭載され、極めて短時間でアンカーの設置が可能であす。実際にデモにおいても、わずか2・3分でアンカーの設置が完了しました。デモでは、Geoprobe社と提携関係にあるスウェーデンのGeotech社の無線電送型コーン、ノバシステムを使って貫入テストを行いました。ノバシステムは無線電送式のワイヤレスCPTプローブで、無線電送のほか、内部メモリーでもデータを記録可能です。コーンから送られてきたデータは、貫入試験器上部に取り付けられたアンテナで受信され、Bluetooth通信を使ってPCに電送されます。ただし、無線電送型のコーンは、ロッドの中に水が入ると無線通信できなくなるということで、気密性の高いロッドが必要です。今回のCPTデモにおいては、無線電送や貫入に何の問題も発生せず、深度14m程度の貫入試験をわずか20分足らずで終了しました。試験は、アンカーの設置を含め、30分程度ですべての工程が終了しました。
詳細は、地質ニュース2008、4月号をご覧ください。