生物地球科学研究グループ
生物地球科学研究グループについて
私たちは,地下深部での微生物の働きや、天然ガスの生成・酸化の仕組みを調べ、資源循環や気候変動対策につながる知見の創出を目指しています。地質・地球化学・微生物学を組み合わせた学際的な研究を、国内外の研究機関や企業と協力して進めています。

メンバー
● リサーチスタッフ
眞弓 大介(グループ長) ,片山 泰樹,金子 雅紀
朝比奈 健太,風呂田 郷史,小村 悠人
○ テクニカルスタッフ
石川理美,岩波 理恵子,大原 真理,篠塚 由美
深谷 千恵,小林 みゆき
天然ガス資源の効率的開発の為の生物地球科学的研究
および メタン生成活性(B)の深度分布.
天然ガスは他の化石燃料の石油・石炭に比べ環境負荷が低いことから,脱炭素にシフトする現在の社会情勢にあっても需要は高まっている.ガス組成や同位体比等の化学的性質に基づくと,日本近海に埋蔵するメタンハイドレートや,近年相次いで見つかった大規模な天然ガス鉱床などは生物起源と推定されており,その資源開発が高い関心を集めている.天然ガスの主成分メタンが生物起源であるならば,その生成にはメタン生成菌の存在が不可欠である.深部地下環境でのメタン生成菌の性質を理解することは,生物起源ガスの探鉱や資源量の正確な評価に貢献する.我々は,JX石油開発株式会社と共同で,生物起源天然ガスが賦存する新潟県中条ガス田におけるメタン生成菌の研究を進めている.中条ガス田地域は地温勾配が高く,ヒトの体温付近(35℃)から堆積物環境に生息する微生物の上限温度(80℃)まで非常に幅広い温度帯を有する.そこで,このような温度の大きな変化に対してメタン生成菌のバイオマスと活性がどう影響受けるかに着目して研究を進めた。
その結果,温度帯によって主要なメタン生成の経路が異なり,特に,70℃以上の高温域では未知のメタン生成菌による酢酸からのメタン生成が重要であることが示唆された(図1)。このような性質が明らかとなっていない未知の(未培養)微生物は深部地下環境に多いことが知られている.我々は,上記のフィールド調査に加え,より基盤的な研究として深部地下環境に生息する未知微生物群実験室で培養化することによって性質を明らかにする取組みも行っている。
天然ガスの起源を推定する同位体地球化学の新発見
天然ガス(メタン)は、メタン生成菌が作る「生物起源」と地下深部の地熱によって発生する「熱分解起源」に分類される。これまで、メタンの生成起源を特定する際には「安定同位体シグナル」が重要な指標として用いられてきた。地下由来の生物起源メタンは、同位体平衡に近い安定同位体シグナルを示すことが特徴であるが、このシグナルをメタン生成菌の室内培養実験で再現した例はなく、同位体地球化学と微生物学の解釈には大きな隔たりがあった。今回、地下環境を忠実に模擬する高圧培養装置を開発し、水素発生型細菌と水素資化性メタン生成菌を共培養することで、同位体平衡に近い安定同位体シグナルを初めて再現することに成功した。
さらに、地下環境において、水素資化性メタン生成菌が熱分解起源メタンの安定同位体シグナルを生物起源メタンのものに「上書き(再平衡化)」する現象を発見した。
これらの成果は、天然ガス鉱床の成因推定に関する従来の解釈を大きく見直す必要性を示している。
連絡先
〒305-8567 茨城県つくば市東1-1-1 中央事業所7群
国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター
地圏資源環境研究部門 生物地球科学研究グループ