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新機能材料チーム

研究目標

SiC,GaN等ワイドギャップ半導体材料とそのパワーデバイスは2050年カーボンニュートラル実現に向けたキーコンポーネントの一つとして注目され社会実装が始まりつつあります。  当チームではこれらワイドギャップ半導体材料をパワーデバイスとして使用するに当たってキーkeyとなる薄膜成長技術の研究開発を行っており、この開発を通じてワイドギャップ半導体デバイスのさらなる高性能化・高機能化を進めていきます。  またこれら開発した材料の外部提供を通じて外部での研究開発の支援も行っています。

保有技術

    1:SiC低オフ角エピ成長技術
    2:SiC高速厚膜成長技術
    3:トレンチ埋め戻し成長技術
    4:ワイドギャップ半導体ヘテロエピ成長技術
    5:ダイヤモンドイオン注入技術

重点研究

重点研究(1)4H-SiC厚膜成長技術開発

SiCはその材料物性からSiデバイス単体では実現できない20kVを超える超高耐圧デバイスが実現可能であり2050年カーボンニュートラル実現に向けて配電系統の低損失化・インテリジェント化が期待されている。本研究ではスタンダードな4H-SiCオフウエハ上への高速厚膜成長技術開発とオフウエハを用いるが故の課題解決に向けた低オフ角エピ成長技術の二つのアプローチでSiC-IGBTやSiC-サイリスターといった超高耐圧デバイス実現に向けた材料開発を行っています。

(1)-a 高速厚膜成長技術

本研究では20kV超の超高耐圧デバイス実現に向けて4インチ並びに6インチ径の4H-SiCウエハに200μmを超える厚さのエピタキシャル成長層を形成する技術開発を行っています。膜厚並びに濃度均一性は1kVクラスのウエハと同等を実現できておりさらなる高品質化を進めています。

(1)-b SiC低オフ角エピ成長技術

SiCは様々な多形が安定です。そこで、エピ成長時の多形を一種類に安定させるために、基板にオフ角をつけることによって基板の多形を引き継がせるステップフロー成長が実施されています。しかし、このステップフロー成長では、①基板の基底面転位がエピ成長時に引き継がれることによるデバイス特性劣化や、②厚膜成長時の有効面積の減少という課題があります。我々はこれらの課題を解決できる、オフ角を究極に小さくした基板上のらせん転位から発生するスパイラル成長により基板の多形を引き継がせる成長技術を有しておりSiC-IGBTやSiC-サイリスターといった超高耐圧デバイスへの適用を進めています。

(1)重点研究(2):スパージャンクションデバイス製造に関わるトレンチ埋戻し成長技術

PNカラム構造を有するスーパージャンクション(SJ)構造は材料物性で決まるユニポーラ素子の理論限界を超える技術としてSiではCoolMOSの名称ですでに実用化されている。この構造をSiCに適用するために新たにトレンチ埋め戻し成長によるPNカラム構造作製技術開発を進めています。すでに6.6kVクラス耐圧の素子でon抵抗が従来の1/2まで低減できることを確認しています。現在、実用化に向けた埋め戻し成長技術のブラッシュアップを進めるとともに開発中の半絶縁(SI) SiC薄膜成長技術と組み合わせることでSOI構造に近いSiC-CMOS構造形成も進めています。

重点研究(3)ワイドギャップ半導体ヘテロエピ成長技術

半導体ヘテロ接合は単一材料のみでは不可能な材料特性が発現可能であることが知られています。例えばGaNを持ちいたHEMT構造はGaNとAlGaNのヘテロ接合により生じる格子歪によってその界面に2次元電子ガスが形成されます。3C-SiCと4H-SiCのヘテロ接合も同様に2次元電子ガスが形成されることが理論的に予測されており実現できればGaN-HEMTを超える高速動作が期待されます。本研究では3C-SiCと4H-SiCのヘテロ接合による2次元電子ガス形成に向けた高品位3C-SiC結晶の4H-SiC基板上へのエピタキシャル成長技術の開発を本材料を用いた高電子移動度トランジスタの開発を進めています。 また、GaNデバイスの耐圧向上を目的としたGaNと4H-SiCエピタキシャル層とのヘテロ接合、量子コンピューター実現に向けたAlN/ダイヤモンドのヘテロ接合技術の研究も行っています。

重点研究(4)ダイヤモンドイオン注入技術

ダイヤモンドは次々世代のパワーデバイス向けの半導体として嘱望されている。イオン注入技術はデバイスプロセス上必須の技術であり、SiのみならずSiCに於いてもデバイスプロセスとしてのイオン注入技術が確立している。一方ダイヤモンドでは,イオン注入の宿命である照射損傷のコントロールがまだ途上であるうえ,一定の注入量を超えるとその後の焼鈍で常圧下で最も安定なグラファイトになって再びダイヤモンドには戻らない. これらの点を克服することでp形についてはホウ素のイオン注入によりある程度の伝導性制御が実現されてきたものの,デバイスプロセスに応用するには至っていない. 本研究では,イオン注入層の特性を向上させながら,局所的に自在にp形n形の伝導性制御を行い,MOSFETや電子放出素子など,実際のダイヤモンド電子デバイスプロセスに適用させるイオン注入技術の確立を目指している.

主要論文等

  • ”Study of spiral growth on 4H-silicon carbide on-axis substrates”, K. Masumoto , K. Kojima, and H. Okumura, J. Crustal Growth 475, 251 (2017).
  • “Investigation of Factors Influencing the Occurrence of 3C-Inclusions for the Thick Growth of on-Axis C-Face 4H-SiC Epitaxial Layers”, K. Masumoto , K Kojima and H. Yamaguchi, Materials 13, 4818 (2020).
  • US10741648 (Semiconductor device and manufacturing method thereof)
  • 特許第6760604号, [半導体装置およびその製造方法]
  • “Fast-filling of 4H-SiC trenches at 10 μm/h by enhancing partial pressures of source species in chemical vapor deposition processes” S.Y. Ji, R. Kosugi, K. Kojima, K. Adachi, Y. Kawada, K. Mochizuki, Y. Yonezawa, S. Yoshida, and H. Okumura et al., J. Cryst. Growth, 546,12580 (2020).
  • “A study of CVD growth parameters to fill 50-μm-deep 4H-SiC trench”, S.Y. Ji, R. Kosugi, K. Kojima, K. Adachi, Y. Kawada, K. Mochizuki, A. Nagata, Y. Matsukawa, Y. Yonezawa, S. Yoshida, and H. Okumura, Mater. Sci. Forum 963, 131 (2019) .
  • “An empirical growth window concerning the input ratio of HCl/SiH4 gases in filling 4H-SiC trench by CVD”, S. Y. Ji, R. Kosugi, K. Kojima, K. Mochizuki, S. Saito, A. Nagata, Y. Matsukawa, Y. Yonezawa, S. Yoshida, and H. Okumura, Appl. Phys. Express, 10, 055505 (2017).
  • “Growth of vanadium doped semi-insulating 4H-SiC epilayer with ultrahigh resistivity”,K. Kojima, S. Sato, T. Ohshima, S. Kuroki, J. Appl, Phys.,131, 245107 (2022).
  • “High-mobility 2D electron gas in carbon-face 3C-SiC/4H-SiC heterostructure with single-domain 3C-SiC layer”, H. Sazawa and H. Yamaguchi, Appl. Phys. Lett. 120, 212102 (2022).
  • “Electrical properties of a B doped layer in diamond formed by hot B implantation and high-temperature annealing” N. Tsubouchi, M. Ogura, N. Mizuochi, and H. Watanabe, Diamond Relat. Mater., 18, 128 (2009).

その他

本グループではSiCを中心としたエピタキシャル薄膜作製技術を生かして、市場では入手困難な特殊なSiCエピタキシャルウエハや小口径エピウエハの提供、様々なキャリア濃度における4H-SiCの電導度特性の温度依存性のデータ提供等を実施しています。


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