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クレーストの工業化

-開発した粘土膜材料を、どのようにして実用化まで結びつけていったのでしょうか?

バリア機能を工業用途に積極展開

耐熱バリア材料としての粘土膜を産総研のシーズとして2004年以降、プレスリリースや展示会等で積極的に発表し、「この新しい材料をどんな用途に使えますか?」と幅広く問いかけました。2010年までに国内外から約400件もの技術相談を受け、これらの情報も基礎として強い特許群の構築を行いました。

製品化第一号はアスベストの代替材料

クレースト製品化第一号はアスベスト(石綿)を使わないガスケットの開発でした。ガスケットという、工業用配管間のつなぎ目の隙間を埋めるガス漏れ防止用のシール材として、それまでアスベストが使われていましたが、健康への影響があるとして代替材料の開発が急がれていました。そこで、ジャパンマテックス株式会社(大阪府)とアスベスト代替ガスケットの共同開発を始めました。2007年に製品化に成功し、発電所や化学プラントなどに広く導入されています。

アスベスト代替ガスケットの写真

▲アスベスト代替ガスケット(ジャパンマテックス)


東北の原料と技術、企業でつくる

-クレーストの工業化により東北にどのような貢献をされてきたのですか?

原料となる粘土も、技術も東北発ですので、東北で生まれたシーズを東北地方の企業に使っていただくことで地域活性化に貢献したい想いがありました。
そこで、株式会社宮城化成(宮城県)とは燃えないプラスチック材を共同開発しました。製品化まで6、7年を要しましたが、新幹線の天井材に使える、燃えない・割れない照明カバーの開発に成功しました。

燃えない照明カバーの写真

▲燃えない照明カバー(宮城化成)

有限会社東北工芸製作所(宮城県)とは、宮城県指定の伝統的工芸品「玉虫塗」の保護膜として、粘土とプラスチックをナノレベルで混合したナノコンポジットコーティングを共同開発し、食洗機対応の玉虫塗の製品化に成功しました。これも製品化まで約6年を要しましたが、引き合いの多い製品に育てることができました。
色々な方にお会いできた幸運もあって、東北ゆかりの原料と技術、企業で製品を一貫してつくることができました。そのような点を今回の河北文化賞ではご評価をいただけたのではないかと考えています。

歴史とは生かすもの

産総研東北センターが、漆器、木工、工業デザイン等を取り扱う国立工芸指導所をその起源にしていること、また、工芸指導所の発明を基に、東北工芸製作所は「玉虫塗」を製作していていることを勉強させていただきました。工芸指導所発のベンチャーは工芸と最先端材料の融合という野心的な取り組みを行っており、むしろ今の私たちの発想よりも自由で開拓意識旺盛だと感じました。
「歴史とは学ぶものでなく今この時に活かすものだ」と思った私は、東北工芸製作所にアポなしで訪問し「何か一緒にできませんか?」と提案し食洗機対応漆器の開発を始めたのです。
食洗機対応玉虫塗のワインカップは2016年の主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で各国要人への記念品として採用されました。食洗機にも耐えるコーティングを施すことで、諸外国の幅広い生活様式でも玉虫塗漆器を普段使いいただけるようになったのです。
(蛯名首席研究員談)

食洗機対応玉虫塗の写真

▲食洗機対応玉虫塗(東北工芸製作所)

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