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【特集】河北文化賞受賞記念インタビュー 蛯名武雄主席研究員に聞く

蛯名武雄研究員インタビュー写真

驚異的なガスバリア性と高い耐熱性を誇る粘土膜材料「クレースト」の誕生

-今回の受賞対象となった粘土膜材料「クレースト」はどのようにして生まれたのですか?

東北で豊富に産する粘土をバリア材に

私が東北工業技術試験所(*1)に入所した当時から、すでに研究室のテーマとして取り組んでいた、東北地方で豊富に産する「ベントナイト」と呼ばれる粘土を研究してきました。一般的に粘土と言えば、焼き物の原料というイメージが強いと思いますが、実はベントナイトは焼き物には適しておらず、水をドロドロにする性質(保水性)や、水を通しにくい性質(遮水性)があります。その性質を活かし、当初は廃棄物の処分場から有害物質が漏れ出すことを防ぐための浸水バリア材としてベントナイトを研究していました。

粘土を薄くするほどバリア性が向上

最初はベントナイトを圧密した塊をサンプルとして、水のバリア性を測定していました。ところが、なかなか水が染み出してこないのでサンプルを薄くすることにしたのです。すると、ベントナイトの層を薄くするほど水の通るスピードが遅くなり、膜状にまで薄くしたものが最もバリア性が高いという意外な結果が出ました。その理由は、慎重にサンプルをつくるために厚さ1ナノメートルの板状の粘土結晶が一方向に整然と並びやすくなり、それらが多層的に重なり合うことで、通り抜ける水分子にとって“邪魔板”の役割を果たすためとわかりました。

粘土膜の構造と、バイア性の発現メカニズムの図

▲粘土膜の構造と、バリア性の発現メカニズム

粘土膜の耐熱性・ガスバリア性を発見

工業用途として気体を透過させない「ガスバリア」のニーズが非常に多くあり、プラスチックに粘土を混ぜることでガスバリア性が高くなることが知られていました。さらに、高温で溶けたりするプラスチックとは異なり、粘土は耐熱性が高い特性もあります。そこで、プラスチックが使えないような高温下でも使える耐熱バリア材料として粘土膜を実用化するアイディアが浮かび、上司から、高圧水素ガスシール材の検討を指示されました。そして、この粘土膜の性能をテストした結果、高い耐熱性とガスバリア性があることがわかったのです。完成した粘土膜は「CLAY(粘土)」と産総研の英文略称である「AIST」から「クレースト(CLAIST)」と名付けられました。

粘土膜「クレースト」の写真

▲高い耐熱性と驚異的なガスバリア性を持つ粘土膜「クレースト」







*1)産総研東北センターは、1928年、国立工芸指導所に始まり、東北工業技術試験所となり、次に東北工業技術研究所へ改称し、2001年に産総研東北センターとして組織再編された。

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