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蛯名首席研究員の写真

ニーズが決まれば、シーズは有る

蛯名私たちもシーズを持っているのですが、シーズは問題解決のためにあると思っています。問題が何であるかという意識を持っておられたという点が、今回の連携がうまくいったポイントではないでしょうか。具体的になればなるほど、産総研のシーズが活きてくると思っています。中小企業がどうやって勝ち残っていくかという明確な戦略があって、はじめて、これがこうでなければならないという必要性が出て来る。それが今回はあったので、それに見合った性能を持った材料はなんなのか、というところまで、私たちは具体的にテーマ設定ができたということなんです。

長田ニーズが決まれば、シーズは有ると思います。でも、「何か」と漠然と言っていたら、あてはまるピンポイントはないですから。いくら産学連携でやってみましょうといっても、「何かいいことないですかね」では、「何か」で終わってしまいます。これをやらなくちゃいけない、この為にというのがあれば、必ずシーズは有ると思います。

蛯名あいだに住友精化さんに入っていただいたのも大きいですね。スピード感がぜんぜん違いますから。

長田今回は、住友精化さんという企業が鎹(かすがい)役で、産総研と我々の間を通訳してくれたからできたんですよ。早い話が、産総研というのは大学院で、我々は小学生ですから。だけど、我々に、こんなものに使いたいという思いがものすごくあるから、シーズが、がつんと入るんです。

蛯名私たちもオオアサ電子さんのような問いかけがあると、非常にありがたいです。特に、研究者の場合、付加価値というものを志向して材料の開発をするので、現行のものより、コスト高になりがちなのです。でも、高いものは買ってもらえないのですよ。オオアサ電子さんのように、自社ブランドを改良したい、新規に立ち上げたいという時には、私たちはブランド力向上に寄与できる材料が作れるわけです。ニッチでもいいし、高くてもいいし、中小企業さんのブランド力向上に寄与できる機能材を開発できるかというのは、私たちにとって非常によいチャンスです。

長田まずみなさんに使ってもらって、それで評価されて広がっていくわけですからね。その順序というのは必要ですからね。新しかったらいいや、というのは絶対にないですから。

蛯名製品の付加価値向上、ブランド力向上と言った時に、何故これはいいものなのかということに対して答えを出せると一つのサポートになる。産総研はそれを目指すというのもひとつのポイントです。

オオアサ電子長田社長の写真

手作りが「日本ブランド」の製品をつくる

―Egrettaの筐体には漆喰があしらわれています。

長田ひとつの思いの中で、メイド・イン・ジャパンに拘りが有りました。日本素材というものを探しました。やっぱり先輩が築き上げられてきたものですから。色々見るに、日本人の感性は違うと思いますので。なるべくなら、手作業を増やして、手作業でそのことを表した製品にしていきたいと考えています。
 最後の仕上げ、というのは人間の手で仕上げないと違いがでないと思います。今、現実を見ていると、機械化の弊害を人間が直しているという部分が随分あるのですよ。人間の目というのはものすごく確かですからね。ちょっと斜めになっているというと、計測できないような差も、人間の目では、曲がっているねとわかるんですよ。
 スピーカーも、99%まで完成品をつくったあと、最後には、弊社マイスターの川崎が耳で聴いて、製品を完成させます。

蛯名メイド・イン・ジャパンと手作りということは、これから長い間、日本がものづくりを基盤として国際的地位を向上させていく上で、産総研が支援しなければならないポイントです。いいものをつくろうと努力している人たちを、ひきあげないと。日本の生き延びる方向は、機械化で、誰でも同じものが作れて、安いものを買えればいいというところと逆の方向にあると思うのですよ。だからオオアサ電子さんみたいに、いいものをわかってくれるお客様に提供しようという企業さんには、産総研は積極的に支援しないと、あり方として変な方向に行ってしまうのです。

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