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オオアサ電子では、2011年に自社ブランドのスピーカー「Egretta」シリーズを発売開始しました。筐体部分に白の漆喰をつかった斬新なデザインは、リビングの中で音を聴いてもらい、お客様に喜ばれたいという気持からでした。音響特性の更なる向上を目指すなかで、粘土膜材料「クレースト®」の開発者である産総研の蛯名と出会います。

オオアサ電子長田社長と蛯名首席研究員の対談写真

スピーディな製品化を可能にした人との縁

―以前から産総研とはつながりがあったのですか?

長田まったくないです。過去30年下請けをしていた時の常識では、せいぜい、県の公設試とまりだったんですよ。公設試の所長をされていた方から、私に講演依頼があったのです。その時の聴講者の中に、産総研中国センターの方々がいたのです。それで、柳下中国センター所長が、一度私どもの会社を訪問してみようとなり、その際、タフクレースト*を紹介してくれました。「これ何ですか」と訊くと、「粘土らしいよ」と言われて。粘土はちょっと難しいでしょうと思って見たら、意外と発想が違って、これおもしろいな、どんな成分なんですかねと言って連絡を取らせていただいた。

*タフクレースト:「クレースト®」の技術をベースに、住友精化㈱と産総研が共同開発した、粘土鉱物の一種であるタルクを主原料に、バインダとしてポリイミドを組み合わせたフィルム。耐熱性、水蒸気バリア性、熱伝導性などに優れた特性を持つ。

蛯名オオアサ電子さんがご興味をお持ちということで、当初からスピーカーに使用するという話だったかと思います。今までは電子機器でも、一般の基板用途や、フレキシブル材料を狙って粘土膜材料の研究開発をしていたので、スピーカーというのは、新しい世界に私たちも挑戦していけるな、と楽しみにしました。

長田蛯名先生からすぐ住友精化株式会社の見正(みしょう)さんに連絡してくれて、見正さんにもすぐ我が社のほうに来られました。これをもう少し薄く出来るかとか、うちの社員と相談したら、可能ですよ、と。約1年という速さで製品化がなされるというのは、ピンポイントで縁が結ばれたからですよ。
 深い意味で言えば、人ですよ。産総研と出会いました、住友精化さんと出会いました、というだけでは、成立しなかったですよ。蛯名さんでなければダメなんですよ。見正さんじゃなければダメなんですよ。それが人と人との出会いで、そこらがポイントのような気がします。

―タフクレーストを使って、今までのものとどのような違いが出たのでしょうか?

長田周波数特性が安定していることがタフクレーストの特徴ですね。極端な話、音特性がいいと言いましょうか。

―試行錯誤される点もあったのでしょうか?

長田試行錯誤はずいぶんありましたよ。音特性が良くなるように、配合を適時替えていきました。素材の配分が違ったらパリパリに折れるし、劣化は起こすし、大変でした。

蛯名今回の場合は、私が知っている範囲でも難しい点が二つありました。一つは、シートの両側に同じように銅の配線を作らなければならないのです。片面は経験があったのですが、両面は初めてでした。それから、今回の用途は、作る前に蛇腹状にしなければならないのです。蛇腹で使う用途があるのだと初めて気づかせてもらったくらいです。細かく折るので、成形の度合いがとても厳しいのです。私たちが思っていた、この柔らかさなら大丈夫だろうというのは通じずに、パリパリになって壊れちゃうんですよね。成形に耐えうるような柔軟性が具備しなければならなかったのです。

長田技術レベルは高いと思いますよ。両面銅箔にもノウハウがあり、フィルムの折り曲げもただ折り曲げればいいというものではないので。
 でも、今これで満足しているわけではなくて、住友精化さんとも、まだまだ追求していこうと話しています。フィルムのなかで、タフクレーストの対抗馬はポリイミドなんですよ。だけど、タフクレーストも琥珀色で、ポリイミドも琥珀色なので、今度はタフクレーストの色をつくりましょうよと提案しました。識別ができると、商品価値があがるかなと。

オオアサ電子長田社長と蛯名首席研究員の対談写真

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