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産総研化学プロセス研究部門 西岡主任研究員、宮沢総括研究主幹、DIC株式会社R&D本部関根主席研究員、木村主任研究員の写真

「お試し連携研究」でニーズとシーズをスピーディにマッチング

―産総研とDIC の「化学ものづくり連携研究室」ご担当者様にお話を伺います。連携研究室で進められる「お試し連携研究」とはどのような取り組みですか? また、現場レベルで従来との違いをどのように感じていますか?

宮沢私はこの連携研究室の運営を担当しています。産総研には、企業の研究課題と産総研の研究シーズのマッチングを図るため、本格的な共同研究を開始する前に技術開発の可能性を検討することを目的とした「FS( feasibility Study)連携」があり、これまで多くの実績をあげています。今回、課題解決に限らず、課題発掘段階から幅広く議論するFS 連携を始めました。このFS 連携開始にあたり、東北センター内に企業専用の連携研究室を設置し、企業側と産総研側の双方の研究員が顔を合わせながら課題発掘のためのお試し実験を実施できるようにしたのが「お試し連携研究」です。同じ場所で実験し、意見交換しながら検討を進めることで、ブレークスルーのための技術的問題点等の認識を共有化しやすくし、FS 連携から本格的な研究への移行を大きく加速させることが目的です。実際に開始から約2 か月で、お試し連携研究を経て本格的な研究につながりそうな案件が何件も生まれようとしています。
 従来、企業に産総研内の場所を提供するには様々な手続きを要しましたが、今回は可能な限り手続きを簡略化し、連携研究室を自由に使ってくださいと運営しており、それがうまく機能していると思います。セキュリティ面では、研究に関する情報や材料の漏洩あるいは混在を避けるため、企業専用の実験室やミーティングスペースを用意 しました。これは企業側にとっても、多くの企業連携 を抱える産総研側にとっても、安全・安心な環境です。

産総研宮沢総括研究主幹の写真

西岡私の専門は特殊なエネルギー場を使った化学反応です。企業の方から具体的な研究課題をいただいた時、我々が提供できることを考え実際に実験し、企業の方に持ち帰っていただくところを担当しています。今回の連携研究室では、産総研内の専用の場所で、産総研の技術を使う企業の方と直接お話ししながら「お試し連携研究」を行えるので、本格的な研究開始までの期間が随分短くなることが良いと思います。

木村私は「お試し連携研究」以前から産総研とのお付き合いがありますが、企業から見ると「お試し」という言葉が重要でしてね。急に本格的な研究に入るのは、企業のニーズもありますし評価もありますから、ある意味では不安があるのです。通常は過去の論文や特許等のデータを見て進めるのですが、「正直ちょっと違うな」というところが途中で出てくるものなのですよ。それが今回の連携研究室では、自分たちの目でそれを判断でき、実際にやってみようと、企業側にフレキシビリティを与えていただける枠組みが非常に有り難いですね。これによって、実際の成果をもって具体的に研究を行うステージまで上がれることが、企業にとっては非常に重要だと思います。

関根今回、企業側のニーズをオープンにできる形での連携を組ませていただいたことで、大変スムーズに話を進められたと思います。通常、研究テーマの話を進めようとすると、秘密保持契約等を、例えば10 テーマあれば10 件個別に結ぶ必要があり、社内手続き等が煩雑になって、おそらく何十年たっても終わらないでしょう。それを今回のように一つの包括的な形で秘密保持が担保される中でしたら、我々企業の必要とするニーズを相談できます。産総研は「NO」と言わず相談を受けてくれますので、次から次へと、新しいアイディアや具体的な研究テーマが生まれます。こうして次々と産総研との連携事例をつくることで、社内にもアピールができます。

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