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産業技術総合研究所 東北センター

地域活性化のために技術支援と事業化支援の連携を!

独立行政法人産業技術総合研究所 産学官連携推進部門長 矢部 彰


在、イノベーションの議論が盛んですが、一つの技術がどのようにして製品になるかという時間的展開を考えてみます。多くの技術は、まず、技術シーズが確立された段階で注目を浴び、新聞等で報道され盛り上がります。しかしながら、実用になるまで、その後5年ぐらいはかかることが多く、実用化まで至らない技術も数多くあります。この技術シーズがいったん脚光を浴びてから実用化に至るまでの期間は、「死の谷」と呼ばれ、ほとんど新聞などにも取り上げられず、社会的にも目立ちません。しかし、その間も、経済性と高性能化の両立、競合技術に対する比較優位性の確保、耐久性、安全性、環境性など多くの視点から、多大な努力が続けられ、成功したものだけが実用化し、社会的に評価されます。現在のイノベーションの議論は、「死の谷」と呼ばれる苦しい時期をどのようにしたら早く乗り越えることが出来るかというところにあります。

のような視点で産学官連携による技術開発を考えてみますと、産学官の連携により幅広い分野の人が協力し、種々の視点から議論が出来て、それにより死の谷をより早く乗り越えられるようになりますので、産学官連携を実施することはイノベーションにとって大変有効なものとなります。このように有益な産学官連携をうまく機能させるために重要な点を、ここでは技術シーズ側に備わるべきポイントとして二つご紹介したいと思います。

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つは、技術シーズを技術プラットフォームの形にまで高めて、どんな技術ニーズに対しても、どこまで有効か答えを出せるようにしておくことが重要であると思います。現在、産総研で作成しているものづくりソフトである「ものづくりMZプラットフォーム」は、現在までに知られている種々の加工条件が備えられていて、それに
企業独自のノウハウの加工条件を入れることが出来、自社だけで閉じた形で使うことが出来ます。また、工程管理の最適化を各社に合わせて構築できますので、インターネット時代の競争力あるものづくりを支援できます。現在、種々の技術ニーズに対応することにより、成功例を積み重ねる作業を続けております。

つめは、技術開発の早い段階から、経済性の議論が出来るようになることです。「死の谷」を越えるには、技術ニーズ側と技術シーズ側が、同じ課題で議論することが重要であり、経済性や環境性の議論は、最も重要な課題の一つです。産総研では、バイオマス利用システムの経済性を算出する技術を確立しましたが、種々のバイオマス利用のアイデアに対して、その経済性を推定し、アイデアがどの程度有効であるか、また、経済性に効果のある基礎研究課題を選択することも可能です。エネルギーシステムは、経済性で実用化できるかどうかが決まりますので、経済性の議論を早い段階から実施することは有効です。

のように技術シーズを技術プラットフォームの形にまとめ上げることにより、ノウハウや経済性に関する技術ニーズとの議論を活発化し、死の谷越えを加速することを、一つの重要な手法として提示していきたいと思います。




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