現在では、バイオマスエタノールの濃縮、半導体の洗浄工程で用いられるイソプロピルアルコールの回収など、ゼオライト膜は主に脱水プロセスの一端を担っている。これらのプロセスで用いられるLTA型ゼオライト膜は、高い透過性・分離性を有しているものの、耐酸性が乏しく、pHが6程度の水溶液の分離に適用することはできない。また、作製したゼオライト膜の約50%は、充分な分離機能を発揮できないとも言われている。これは、ゼオライト膜が多結晶体として形成されるので、分子がゼオライト細孔だけでなく結晶粒子間の空隙内を拡散するためである。
我々のグループでは、ゼオライト自身の化学的特性に基づいて膜材料を選定するとともに、製膜プロセスが粒子間空隙の形成および膜性能に及ぼす影響を考慮することにより、高い化学的安定性を有した新規なゼオライト膜を開発し(図2)、膜反応チームとともに反応分離への応用を試みている。膜分離は、中小規模の分離プロセスとして好適な分離技術であり、「クリーンで省エネルギーな化学プロセス」の確立に繋げたいと考えている。 |