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研究紹介

石井主任研究員

機多孔質材料には、ゼオライト、活性炭、メソポーラスシリカのように本質的に細孔を有するものと、アルミナ、ジルコニア、チタニアのように微粒子の集合体として細孔を形成する材料がある。その中でも、ゼオライトは骨格構造に由来した0.3−1.3ナノメートルの規則的な細孔構造を有する結晶性の無機化合物である(図1)。その細孔サイズが無機ガスや炭化水素の分子サイズに近いことから、結晶粒子間の空隙が物質移動に影響を及ぼさない多結晶薄膜を形成できれば、分子篩作用によって混合物を分離できる。

1990年頃、ほとんど同時期に、日本とオランダの研究グループがMFI型ゼオライト膜に関する研究を報告したのを発端として、現在では、LTA型、FAU型等、十数種類のゼオライト膜が合成されている。ブタンやキシレンのような異性体の分離、バイオマス由来物質の濃縮、次世代エネルギーとして期待される水素の分離など、省エネルギーな分離技術である膜分離への応用研究が活発に進められている。また、隔年で開催される無機膜国際会議(ICIM)においても、50件以上のゼオライト膜に関する発表があった。これは、全体の約1/4に相当し,水素分離膜として期待されるパラジウム系膜とほぼ同じ発表件数であった。


図1
図1 各種ゼオライトの骨格構造 (a) MFI,(b) LTA,(c) PHI,(d) MER

在では、バイオマスエタノールの濃縮、半導体の洗浄工程で用いられるイソプロピルアルコールの回収など、ゼオライト膜は主に脱水プロセスの一端を担っている。これらのプロセスで用いられるLTA型ゼオライト膜は、高い透過性・分離性を有しているものの、耐酸性が乏しく、pHが6程度の水溶液の分離に適用することはできない。また、作製したゼオライト膜の約50%は、充分な分離機能を発揮できないとも言われている。これは、ゼオライト膜が多結晶体として形成されるので、分子がゼオライト細孔だけでなく結晶粒子間の空隙内を拡散するためである。

々のグループでは、ゼオライト自身の化学的特性に基づいて膜材料を選定するとともに、製膜プロセスが粒子間空隙の形成および膜性能に及ぼす影響を考慮することにより、高い化学的安定性を有した新規なゼオライト膜を開発し(図2)、膜反応チームとともに反応分離への応用を試みている。膜分離は、中小規模の分離プロセスとして好適な分離技術であり、「クリーンで省エネルギーな化学プロセス」の確立に繋げたいと考えている。


図2
図2 高い耐酸性を有するMERおよびPHI型ゼオライト膜 (a) MER,(b) PHI



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