近年、このナノ空間制御技術を他の層状化合物に適用する研究が進められている。筆者は、本技術を結晶性層状ケイ酸塩の一種であるileriteに適用する研究を行っている。ileriteは、スメクタイト系粘土鉱物よりも結晶性の高いケイ酸ナノシートが積層した構造をとっている。 このナノシート表面には反応性官能基が規則的に配置されており、有機化学的な操作により、その層間空隙を修飾できる特徴を持っている。最近、筆者は、ナノ空間制御技術と有機化学的操作を組み合わせることにより、ileriteの層間に有機分子ユニット(ビフェニル)が規則的に固定されたハイブリット材料を開発した(図2)。本材料は、従来の有機カチオン交換型スメクタイトよりも大きなナノ空間(比表面積にして500 m2/g前後)を有している。さらに、ナノ空間の一部が有機分子ユニットで構成されているため、ナノ空間の設計と機能化を柔軟に進めることができるという利点を有している。このような特徴と利点は、本材料を、分離・センシング・触媒等の機能材料分野への展開を可能とさせるものである。今後は、有機分子ユニットへの官能基導入や反応性有機分子ユニットの固定化によりナノ空間の機能化を図っていく予定である。本材料をさらに発展させることにより、ナノ空間の効率的利用を進め、化学プロセス用部材のコンパクト化に寄与したいと考えている。
・参考文献 1. R. Ishii, T. Ikeda, T. Itoh, T. Ebina, T. Yokoyama, T. Hanaoka and F. Mizukami, Journal of Materials Chemistry, 16, pp 4035-4043, 2006. 2. R. Ishii and Y. Shinohara, Journal of Materials Chemistry, 15, pp 551-553, 2005.