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研究紹介

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佐藤剛 一 研究員
くの化学製品は複雑な多段階プロセスを経て合成されているが、生成物の濃縮や副生成物の分離等において多大なエネルギーが消費されるといった問題を抱えており、省エネルギー化・コンパクト化が大きな課題となっている。一段階で目的生成物を製造できるシンプルな反応プロセスの開発は、コンパクト化における重要な技術要素であり、それを目指して、選択的に物質を透過する無機膜と触媒機能を組み合わせた膜触媒反応プロセスの研究を進めている。現在、 水素を選択的に透過するパラジウム金属膜を利用して水酸基導入反応を検討しており、フェノール合成を例に説明する。

ェノールはポリカーボネート(コンパクトディスク材料)やナイロン繊維等、合成樹脂の基礎原料となる重要な化学物質である。工業的にはベンゼンから合成されるが、現在はクメン法と呼ばれる多段階プロセスで製造されている(図1)。直接合成が出来ない理由の一つとして、この水酸基導入反応に必要な活性酸素 種を、通常の固体触媒を用いて酸素ガスから生成させることが極めて困難なことがあげられる。そこで図2のような膜型反応器を製作し、パラジウム膜を透過した水素(水素分子は原子状に解離してパラジウムの金属格子間を透過する)によって酸素を還元的に活性化させて活性酸素種を作り、それをベンゼンと反応させ ることによってフェノールの直接合成を試みた。その結果、この手法で得られたフェノール直接合成収率は世界最高水準の値(13%, 423K)を示し、加えて安全(酸素と水素は分離して供給)かつ安価(特殊な酸化剤等を必要としない)という特徴を有している 。

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の手法においてパラジウム膜は、水素を透過させるだけでなく、同時に反応を進行させる触媒としての二元機能を有していることになる。現在、反応の詳細なメカニズムを明らかにすると同時に、より高活性な反応システムとするべく最適な反応器構造等を検討している。反応に不可欠な十分に薄いパラジウム膜は、CVD(化学的気相成長)法や無電解メッキ法などの手法で、他チームの協力を得て製作している(図3)。今後さらに膜触媒の改良や、適用反応系の拡大などを進めていく予定であり、膜機能と触媒機能の融合によって、より効率よい反応の実現を図りたいと考えている。

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参考文献
・ S. Niwa, M. Eswaramoorthy, J. Nair, A. Raj, N. Itoh, H. Shoji, T. Namba, F. Mizukami, Science , 295 , 105 (2002)
・ K. Sato, S. Niwa, T. Hanaoka, K. Komura, T. Namba, F. Mizukami, Catal. Lett ., 96 , 107 (2004)
・ K. Sato, T. Hanaoka, S. Niwa, C. Stefan, T. Namba, F. Mizukami, Catal. Today ., 104 , 260 (2005)


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