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石の都仙台

イトルは、もちろん「杜の都―仙台」のもじりですが、より正確に言えば「輸入石材の都」とするべきでしょうか。仙台及び宮城県地域には石巻産粘板岩である「稲井石」をはじめ、各種中生代白亜紀花崗岩類、新生代新第三紀の凝灰岩である「松島石」「秋保石」など時代も岩種も様々な石材が産出しますが、仙台屈指のビルの外壁や床などはどうしたことか輸入石材を用いることが多いのです。「地産地消」はどこにいったのでしょうか。ともあれ仙台町歩きのご参考までに幾つかご紹介しましょう 。

ずは、平成11年に竣工した地上23階建ての仙台有数の高層ビル花京院スクエア(青葉区)です。この外壁の一部に用いられているのが世界的に有名なポルトガル南部産の花崗岩石材の1つである「シェニトモンチーク」です。正式には砕石場所有者の兄弟(CarlosとVida)のイニシャルを入れてSienito C.V.L Monchique といいます。写真1でおわかりのように白い針状の長石の斑晶が特徴的です。これは、カリ長石(KAlSi 3 O 8 )の一種であるペルト長石で,基質の褐色粒状鉱物は霞石[(Na, K)AlSiO 4 の化学組成を持つ準長石]で,一般の花崗岩と異なる珍しいもので一見の価値があります。白亜紀末期(7,200万〜7,000万年前)の形成です。花京院スクエア壁面にはもう1種類花崗岩が用いられています。それが「ロックビルホワイト」です。アメリカ産で写真2にあるように石英・長石・黒雲母の斑晶が目立つ粗粒の典型的な花崗岩です。この他にも各ビルそれぞれに有名な花崗岩石材を使用しています。

北電力エナジースクエアは、「オイスターパール」というインド産の花崗岩で、吸水率が0.09%ときわめて低いので外壁に向きます (写真 3 ) 。「オイスター」は「牡蠣」で、「パール」は「真珠」ですね。そんな色調が感じられるでしょうか。仙台第一生命ビル(青葉区)の外壁は、カナダ産の「ディアブラウン」です。ディアというか鹿皮の茶色がかった感じがでていますかね (写真 4 ) 。日本地所仙台ビル・北日本銀行(青葉区)の外壁は中国産の「G664」という味も素っ気もない名前の花崗岩石材ですが、中粒で渋い色調はなかなかです。

のほか、仙台アエルビル(青葉区)の内壁の一部は「シベック」と称されるマケドニア産の大理石です。磨かれると純白度の高い輝きのある面を呈し、まさに大理石といった豪華な感じがします。メルパルク仙台(宮城野区)の壁面では「テレサベージュ」というフィリピン産大理石が用いられています。これはやや純白度には欠けますが、逆にうっすらと濃淡のある茶 色 がかった色調と散在する方解石の脈は味わいのある模様を作り出しています。また、同じくメルパルク仙台の壁の一部は「バーリントンスレート」と称されるイギリス産の粘板岩(スレート)です。泥などの細粒物質が変形運動を受けて剥離性の発達した片状岩になったもので、それだけ壁材に加工しやすくなります。やや緑色がかった暗色の色調はこれまた風情があります。この色調はおもに中に含まれている緑簾石(エピドート)という鉱物によるものです。残念ながら、大理石やスレートは写真に撮っても映えませんので割愛させていただきます。暇はあってもお金のない時(筆者を含めていつものことでしょうが)仙台を散歩するとき探してみてはいかがでしょう。

石の都仙台
(東北センター所長 加藤碵一 記)



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