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早いもので、超臨界流体研究センター長を引き受けてから4年が経過しようとしております。東北大学と兼務という立 場ですが、本センターの職員、研究者、顧問はもちろんのこと、水野前所長、加藤所長はじめ産学官連携センター、業務 推進室、メンブレン化学研究ラボ等研究ユニットの皆様方の暖かいご支援のもとに、相応の実績を挙げてこられたかと 思っております。ここに、深く感謝申し上げます。
超臨界流体は、気体、液体と同様に物質の流体状態の一つで、高温、高圧領域に存在し、新たな工業溶媒として注目さ れております。その特徴は、温度と圧力を操作することにより、溶媒機能を連続的かつ大幅に変化させ、一つの超臨界流 体溶媒で複数の溶媒の役割を果たせることです。高温であるための処理操作の高速化に加えて、この特徴により、生産プ ロセスを従来の多段の工程から簡素な工程に変えることができます。とりわけ、自然界に大量に存在し、その環境適合性 に優れた水と二酸化炭素は、超臨界領域を含めれば様々な有機溶媒に匹敵する機能を引き出すことができ、21世紀の持続 可能な社会に必須な、簡素で、小型で、高効率で、本質的な環境適合性を有する分散型生産プロセスを実現する溶媒とし て、自然が用意した唯一無二の物質であると言えます。分散型生産プロセスとは、ローカルな需要に応じて、ローカルな 原料、自然由来のローカルなエネルギーで賄いうる効率的な生産が可能なプロセスで、従来の大量生産による経済性の追 求から脱却して、現時点で言えばオンデマンド生産が経済的に可能なものであり、将来的には再生可能なエネルギーで駆 動する物質循環社会に適応しうるものとイメージされます。
このように、本センターで開発する超臨界流体技術は21世紀の社会が必要とする本質的な基盤技術に位置付けられ、「何時かは、何処かで、誰かが、必ず開発すべき技術」であると捉えています。
一方、産総研の立場として実用化への速やかな貢献も大きな使命です。当然のことですが、将来の基盤となるべき汎用的技術は現時点での課題の多くにも応えられるものです。例えば、揮発性有機物(VOC)の削減に二酸化炭素を溶媒とする新たなプロセスの開発が考えられ、ドライクリーニング、洗浄、塗装等々多くの実用 化開発が行われております。また、平成15年4月には、本センターはこのような実用化を先導すべく、産学官連携センターと共同で超臨界インキュベーションコンソーシアム(SIC)を立上げ、具体的な活動を行ってまいりました。さらには、NEDOプロジェクト「超臨界流体利用環境負荷低減技術開発」において当センターは 集中研究場所として主要な役割を果たし、そこで構築される超臨界流体データベースと各種シミュレータの発展と普及を行い、超臨界流体技術の世界的拠点としてさらなる充実を図っております。
来年度から本センターはメンブレン化学研究ラボと統合し、グリーンプロセス分野のナショナルセンターとして位置付けられます。新研究センターにおいても継続して、超臨界流体技術の研究と実用化並びに普及活動を積極的に行う予定であり、東北センター、産総研、企業及び関連諸機関の方々のご理解とご支援をお 願いする次第です。
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