2017年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 1日目

【工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ】

  • 可搬型光格子時計のためのレーザー制御型低速Yb原子線源の開発

    尾藤 洋一、武井 良憲(圧力真空標準研究グループ)、寺田 聡一

    ファブリペロ共振器における共振モード間のビート周波数測定により、球面ミラーの曲率半径を測定する手法を開発した。本手法は、周波数計測のみによって曲率半径値を算出するため、長さの基準器を必要としない周波数標準にトレーサブルな測定法である。実験では、曲率半径0.5-5 mの球面ミラーに対して10-5レベルの測定再現性が得られた。

  • ランダムボール回転を利用したマイクロCMM用疑似基準球の開発

    工藤 良太、近藤 余範、平井 亜紀子(ナノスケール標準研究グループ)、尾藤 洋一

    マイクロCMMによる形状測定の高精度化においては、測定プローブ球の校正用基準球の精度がボトルネックとなっている。本研究では、高精度球をランダム回転させ平均化することにより疑似的に理想球面標準を実現するとともに、平均直径値も利用することによって絶対精度を向上させる手法について提案する。

  • 大口径かつ高精度な平面形状測定装置の開発

    近藤 余範、尾藤 洋一

    これまでに、物体の表面の局所的な傾斜角の変化を逐次測定し、得られた角度変化データを積分することにより形状データを得る形状測定装置を開発している。一方、測定対象が2次元(ライン)形状に限定される問題がある。本研究では、大口径(〜Φ600 mm)とナノレベルの測定精度を併せ持つ平面形状測定装置を提案する。

  • レーザ干渉計を用いた直尺・巻尺校正の不確かさ評価とその低減方法

    寺田 聡一、鍜島 麻理子(幾何標準研究グループ)、堀 泰明(ナノスケール標準研究グループ)

    本研究所の巻尺の校正(基準器検査)は標準巻尺との比較校正であるが、アジア他国の計量研究所では、直尺や巻尺をレーザ干渉計を用いて校正している研究所が多い。レーザ干渉計を標準器として校正する時の不確かさ評価とその低減方法について発表する。

【工学計測標準研究部門 幾何標準研究グループ】

  • 幾何学量測定への利用を目的としたプラスチック特性評価

    松崎 和也、佐藤 理、藤本 弘之、阿部 誠、高辻 利之

    プラスチック製品はX線CTによる幾何学計測において重要な測定対象の一つである。幾何学量の高精度計測においては測定対象の熱膨張係数などの材料特性が非常に重要なパラメータであるが、これらはこれまで評価されてこなかった。本研究ではこれらの特性を評価した結果について報告する。

  • 自己校正型ロータリエンコーダSelfAの軸振れ検出機能

    渡部 司、上山 裕理

    自己校正ロータリエンコーダ(SelfA)は単体で角度誤差を検出することが可能であり、さらに取り付けた回転軸の軸振れを検出する機能(SelfA+)を有する。新たに開発したXYピエゾステージを用いた高精度な軸振れ発生装置を用いて、SelfA+機能のより詳細な評価を行った結果を報告する。

  • 非直交光学式座標測定機の国際標準化

    阿部 誠、松崎 和也、佐藤 理、加藤 裕美、呂 明子

    パターン投影、縞投影などの方式による非直交光学式座標測定システムの性能評価法に関するISO国際標準の開発を行っている。座標測定システムとして最も重要な長さ測定誤差の測定戦略について、測定点配置による誤差の検出効率の違いに着目した実験的検証を行った。これまで広く使われてきた2球間距離による測定戦略の検出効率が想定外に低いことを明らかにした。

  • 計測用X線CTにおける物質透過の長さ測定誤差への影響

    松崎 和也、高辻 利之、阿部 誠、佐藤 理、藤本 弘之

    内外形状の測定が可能なことについて期待の高い計測用X線CTの国際標準の開発を行っている。X線が測定対象物を透過・減弱することに起因する誤差要因の影響をどの程度考慮するかについての基礎実験をホールプレートを対象として行った結果について報告する。

  • 3D3プロジェクト 〜3Dスキャナで評価する3Dプリンタの精度〜

    高辻 利之、阿部 誠、佐藤 理、鍜島 麻理子、松崎 和也

    3Dスキャナと3Dプリンタの連携によるデジタルものづくりへの貢献を目指し、簡便で信頼性の高い幾何誤差の評価技術を開発しています。全国から47公設研が参加しており、このプロジェクトを通して、国内における3Dものづくりの拠点形成が進んでいます。

  • 幾何学測定のためのX線CT装置の開発

    藤本 弘之、松崎 和也、佐藤 理、阿部 誠、高辻 利之

    X線CT装置を製品の寸法形状を計測する幾何学測定器として利用するためには、既存のX線CT装置技術に加えて、ハードウエア、ソフトウエアの両面から研究開発を行う必要がある。幾何学測定の現状を紹介する。

【工学計測標準研究部門 ナノスケール標準研究グループ】

  • 走査型プローブ顕微鏡像のドリフト補正

    木津 良祐、三隅 伊知子、平井 亜紀子、権太 聡

    原子間力顕微鏡(AFM)による微細形状測定において、熱ドリフトと呼ばれる、探針と試料の相対位置変化が引き起こす意図しない像変形が問題となっている。本研究では、参照基準を逐次測定してドリフトをモニタする新しい熱ドリフト補正技術を提案する。Siラインパターンの三次元形状計測に適用し、AFM像に重畳した熱ドリフトをsub-nm精度で補正した結果を報告する。

  • 測長AFMを用いた標準ナノ粒子サイズ測定および他の顕微鏡法との比較

    三隅 伊知子、菅原 健太郎、高畑 圭二(物質計測標準研究部門)、高橋 かより(物質計測標準研究部門)、榎原 研正(計量標準普及センター)

    測長原子間力顕微鏡を用いて各種標準ナノ粒子のサイズ測定および不確かさ評価を行っている。レーザ干渉計搭載型走査型電子顕微鏡および標準試料で校正されたAFMとの比較を行ったので結果を報告する。

  • 表面性状評価におけるソフトウェアの仕様による評価結果の違いの比較

    直井 一也

    測定装置の電子化により、評価結果が容易に得られるようになっている。また、評価ソフトウェアも様々なものが作成されており、ソフトウェアによる評価結果の違いがでることがある。そこで、2次元断面曲線の表面性状パラメータ評価における仕様の違いによる結果に関して比較を行う。

  • 光学的マスク線幅校正装置の改良と評価

    土井 琢磨、菅原 健太郎

    サブμmから数十μmのマスク線幅を測定するために、光学顕微鏡を使った線幅校正装置のプロトタイプを構築した。より小さな不確かさによる測定を行うために画素間隔の校正、焦点検出、エッジ位置の検出等の高度化を行った。装置の概要と共にその結果について述べる。

  • ナノ構造測定のためのX線回折装置の特性評価Ⅱ

    堀 泰明、藤本 弘之(幾何標準研究グループ)、権太 聡

    次世代標準周期サンプルは、その構造周期が微小(50 nm以下)であることにより、光学回折装置やAFM等、既存の手法での測定は困難である。そこで、SIトレーサブルな構造周期の測定を目的としたX線回折装置の開発を行っている。今回は検出器回転角度のトレーサビリティ確保のために搭載した自己校正型ロータリーエンコーダと、それを基準としたサンプル用ロータリーテーブルの校正、およびX線源のドリフト等を評価したので報告する。

  • リンギング不要な寸法・厚さ計測用両面干渉計の開発

    平井 亜紀子、尾藤 洋一(長さ標準研究グループ)

    ブロックゲージ寸法の経年変化評価や熱膨張係数の評価などのブロックゲージ寸法の相対測定や板厚測定に対する要望がある。ブロックゲージ絶対寸法測定ではゲージを平面基板へリンギング(密着)させるが、その不確かさの影響が大きいため、リンギング不要な測定法が望まれている。開発中のリンギング不要な寸法・厚さ計測用両面干渉計について報告する。

【工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ】

  • 質量の単位「キログラム」の新たな基準となるプランク定数の決定

    藤井 賢一、倉本 直樹、水島 茂喜、藤田 一慧、早稲田 篤(流体標準研究グループ)、黒河 明(物質計測標準研究部門)、東 康史(物質計測標準研究部門)、張 麓ルウ(物質計測標準研究部門)、成川 知弘(物質計測標準研究部門)

    質量の単位「キログラム」を基礎物理定数によって再定義するための研究が、世界各国で進んでいる。その結果、プランク定数に基づく新しい定義に移行するかどうかが、2018年に審議されることとなった。NMIJはシリコン単結晶を用い、プランク定数の世界最高レベルの精度で測定に成功した。科学技術データ委員会CODATAはNMIJや複数の海外の研究機関のプランク定数の測定結果に基づき、新しい定義に用いられるプランク定数の値を決定している。NMIJにおける高精度プランク定数測定および新たなキログラムの基準となるプランク定数の決定について紹介する。

  • プランク定数に基づくキログラムの実現に関するパイロットスタディ

    倉本 直樹、水島 茂喜、藤田 一慧、藤井 賢一、黒河 明(物質計測標準研究部門)、東 康史(物質計測標準研究部門)、張 麓ルウ(物質計測標準研究部門)

    質量の単位「キログラム」は、国際キログラム原器によって定義されている。この定義は、早ければ2019年に、プランク定数を基準とするものに改定されるが、新たな定義に基づく各国のキログラム実現能力の同等性確認が、定義改定実現の重要な条件となっている。NMIJは、シリコン単結晶球体を用いてキログラムを実現する準備を進めており、国際度量衡委員会の諮問機関である質量関連量諮問委員会CCMが同等性確認のために実施したパイロットスタディに参加した。同等性の確認結果およびNMIJにおける新たな定義に基づくキログラム実現のスキームについて紹介する。

  • キログラムの定義改定に向けた白金イリジウム製質量標準の設定

    水島 茂喜、倉本 直樹、藤井 賢一

    基礎物理定数に基づいたキログラムの定義改定の条件の一つとして、国際キログラム原器へのトレーサビリティの確保が必要とされている。本報告では、2013年から2015年に国際度量衡局で実施されたPt-Ir製キログラム標準の臨時校正の結果を概説し、国際度量衡局の実用標準に見つかったずれについて考察する。さらに、臨時校正の結果によって可能となった、臨時校正後のNMIJでのPt-Ir製キログラム標準の高精度な設定について報告する。

  • 目量0.1 μgの質量比較器を用いた小分銅の質量校正における信頼性評価

    植木 正明、孫 建新、上田 和永(力トルク標準研究グループ)、藤井 賢一

    ひょう量5.1 g、目量0.1 μgの高性能質量比較器を用い、公称5 gまでの分銅の質量校正を行っている。本報では、質量比較測定の再現性や繰返し性について、700シリーズ以上の結果から評価したので報告する。

  • NMIJにおける100 kg〜500 kg分銅の校正測定能力の向上

    孫 建新、植木 正明、上田 和永(力トルク標準研究グループ)、藤井 賢一

    当所では、質量計測および質量関連量の計測の進歩に対応するため、50 kgから5000 kgまでの大質量の領域における質量の国家計量標準の高度化を進めていて、その一環としてひょう量500 kg、分解能0.01 gの高精度な質量比較器を開発した。この開発した質量比較器を用いた結果、市販の高精度質量比較器を用いた結果と比べて、100 kgから500 kgまでの分銅の校正の不確かさは66 %以下に低減された。ここでは、これらの結果を報告する。

  • 光放射圧を利用した微小力計測技術の開発

    藤田 一慧

    SI基本単位のひとつであるキログラムの定義改定をいかした研究開発として、電極間の静電力をプランク定数にもとづいて測定するボルトバランス装置の開発が進められている。本研究ではこれに併せ、既存の分銅を用いる測定手法では困難なナノグラムオーダーの微小質量・力測定技術開発を目指し、1 Wオーダーのレーザー光の反射に際し生じる光放射をボルトバランス装置により測定可能な測定系について開発を行った。装置開発の概要とその測定結果について報告する。

【工学計測標準研究部門 流体標準研究グループ】

  • 海水密度の絶対測定

    粥川 洋平

    地球環境モニタリングにおいて、海水の熱力学状態方程式TEOS-10は水温や塩分、圧力、密度といったパラメータを相互変換する重要なツールである。この信頼性を検証するため、海水密度の絶対測定を実施したので報告する。

  • オレフィン系冷媒の音速・誘電率計測による基礎物性評価

    狩野 祐也

    近年、冷凍・空調機器用の冷媒として地球温暖化係数の小さい新規フロン物質が注目されており、既存冷媒の代替による温室効果削減に向けた研究開発が進んでいる。本研究では、新規フロン物質であるHFO-1224yd(Z)の熱力学性質を評価するため、気相域における音速ならびに誘電率を測定し、理想気体比熱や双極子モーメントなどの基礎物性を明らかにした。

  • 自己参照型格子比較器による28Si単結晶の格子比較測定

    早稲田 篤、藤本 弘之(幾何標準研究グループ)、張 小威(中国科学院高能物理研究所)、藤井 賢一(質量標準研究グループ)

    高エネルギー加速器研究機構の放射光施設を利用した自己参照型格子比較器により、アボガドロ定数決定用28Si単結晶の格子定数の一様性評価をこれまで行なってきた。今回、新たに結晶間の格子定数の比較測定を行なった。これにより、新しいインゴットの格子定数を決定することが可能となった。

  • MEMS粘度センサーおよびトレーサブルな微小質量計測の実現とMEMS天秤の開発

    山本 泰之、藤井 賢一(質量標準研究グループ)、松本 壮平(集積マイクロシステム研究センター)、藤田 佳孝、藤田 一慧(質量標準研究グループ)

    小型の粘度センサーはエンジンオイルやインキなどの変化のモニタリング用途に大きなニーズがあり、注目が集まっている。現場への適用開発を進めており、最新の開発状況を紹介する。また、創薬の研究開発の現場などではサンプルの微小化が進んでおり、その質量の高精度計測の必要性が高まっている。しかし現状のミリグラムからマイクログラムオーダーの分銅は精度が十分ではなく、トレーサブルな高精度測定が困難であった。キログラムの定義改定に伴い、質量を電気素量などから決定することが可能になる。このことを利用して微小質量を静電気力の精密測定で決定できる新しい測定法としてボルトバランス法の開発を進めている。また、この原理を応用した質量・力センサーの開発も進めている。

  • 粘度の国際比較の結果報告

    藤田 佳孝、山本 泰之

    粘度のCIPM基幹比較は、幹事機関から配布される標準液に対する参加機関の標準細管粘度計による動粘度測定により実際され、これまでに、広範な粘度域における測定と広範な温度域における測定が各回交互に3回実施されてきた。NMIJを幹事機関として3回目に実施したCCM.V-K3の最終報告の結果について、本発表時点における公表可能な範囲にて報告する。

【工学計測標準研究部門 力トルク標準研究グループ】

  • ASTM E74による力計校正の不確かさに対する加除方法の影響

    前島 弘、林 敏行、上田 和永

    ASTM E74は、試験機校正用力計の校正方法を規定した規格であり、その試験機は主に米国の顧客向けに使用されるものではあるが、近年、日本の制度でもこの規格に基づくJCSS校正が可能となった。この規格に基づく力の校正では、条件が満たされればさまざまな加除方法を選択できることから、その相違による影響が懸念される。本研究では、ASTM E74に基づく校正方法として、力の加除の順序を変更し、その違いが校正結果や校正の不確かさに与える影響を実験的に検証した。

  • 微小力の実現技術及び計測技術に関する調査研究

    朱 俊方

    医療、食品、バイオ、ナノ材料等の分野で要望のある微小力標準整備を目的とし、産業界における力計測の現状、微小力標準・計測のニーズ、並びに微小力実現技術・計測技術に関する各機関の取り組みについて調査したので、結果を報告する。

  • 10 N・m実荷重式トルク標準機におけるトルクメータ校正範囲拡大に関する研究

    西野 敦洋、大串 浩司

    本研究では、定格容量10 N・mの実荷重式トルク標準機(10-N・m-DWTSM)のトルクメータ校正範囲の下限値を、0.1 N・mから0.01 N・mまで拡大するための研究開発を行っている。今年度は、新たにサブミリグラム分銅を導入し、小容量トルク変換器を用いた支点感度限界の再評価実験を行い、10-N・m-DWTSMにより実現されるトルク(0.01 N・m〜0.1 N・m)の相対拡張不確かさの評価をした。

  • 電磁力式トルク標準機によるJMIF015(TTSG-T102)によるトルクメータ校正方法に関する研究

    西野 敦洋、藤井 賢一(質量標準研究グループ)

    NMIJでは、微小トルク標準を実現するために、ワットバランス法の原理に基づいた電磁力式トルク標準機を開発し、国際単位系SIにトレーサブルなμN・mオーダの精密なトルクの発生に成功した。本研究では、電磁力式トルク標準機によってトルクメータを校正するために、日本計量機器工業連合会規格JMIF015「トルクメータ校正事業者のためのガイドライン」の第2編「トルクメータの校正事業者に必要な校正方法(TTSG-T102)」に従った校正手順の検討をした。

  • 参照用トルクレンチの校正結果に及ぼす角ドライブ面接触の変化の影響

    大串 浩司

    参照用トルクレンチの校正において、不確かさの要因の一つとして測定軸に関して設置角度を変えた場合の校正値の変化、すなわち設置変更の再現性が見込まれるが、その方法にはトルクレンチ形トルク変換器のレバー向きを角ドライブ及び角ホールアダプタシャフトと一体にして変更する方法(Lever way)と、トルク変換器本体から着脱可能な角ドライブを取り外し、それを90°ピッチで向きを変えることで行う方法(Drive way)とがある。角ドライブと角ホールアダプタシャフトの面接触の変化の影響を見込んだ上でトルク変換器自体の姿勢を変える設置変更方法(Face way)により校正を試み、前述二通りの方法と校正結果を比較したので報告する。

【工学計測標準研究部門 圧力真空標準研究グループ】

  • 0.1 mPa〜1 Paの圧力の国際整合性の確認

    新井 健太、小松 栄一、小畠 時彦、秋道 斉(評価部)

    NMIJが参加した国際基幹比較CCM.P-K15(0.1 mPa〜1 Pa)について、今年最終報告書が出版され、NMIJの国際整合性が確認された。本発表では、この国際比較結果とともに、使用した膨張法装置の概要について報告する。

  • 1 Pa-10 kPaの圧力の国際同等性確認

    小島 桃子、新井 健太、小松 栄一、小畠 時彦

    2012年に開始された低圧力の国際基幹比較CCM.P-K4.2012の最終報告書が今年出版された。この国際比較にはNMIJも参加しており、この結果によって1 Paから10 kPaの圧力範囲においてもNMIJの国際同等性が確認された。本国際比較の結果について報告する。

  • 三極管型電離真空計の比感度係数と空間電荷の関係

    杉沼 茂実

    空間電荷の項を含む電位の計算式を用いたシミュレーションにおいては、空間電荷が圧力の関数となっていることから、圧力の変化に対して、電位分布の変化の傾向を追うことができる。三極管型電離真空計内の電位分布の変化により、電子衝撃で生成するイオン量も変化するので、導入ガス種ごとの比感度係数も変化する。このような真空計の比感度係数に及ぼす空間電荷の影響を報告する。

  • 高真空・超高真空における様々な気体の定量測定のための研究

    吉田 肇、新井 健太

    真空技術を利用した産業では、様々な気体が利用されている。本研究では、多ガス種に対応した電離真空計や質量分析計の校正方法や真空ポンプの排気速度測定方法、微小気体流量の定量導入方法を開発している。質量数2から338までの24種類の気体や液体蒸気に対して測定を試みたので結果を報告する。

  • 光学的手法を用いた圧力計測に関する調査研究

    武井 良憲、新井 健太、吉田 肇、尾藤 洋一(長さ標準研究グループ)、寺田 聡一(長さ標準研究グループ)、小畠 時彦

    圧力は、気体の状態方程式および分子密度と屈折率の関係式より、屈折率と温度から求めることができる。屈折率の光学的測定手法を用いて、真空域の圧力値を計測する研究が世界各国のNMIで行われている。その手法を調査し従来技術と比較する。

  • 液柱による圧力差を利用した高圧での圧力媒体の密度測定

    梶川 宏明、小畠 時彦

    正確な圧力測定・校正のためには、測定位置の高さの差(ヘッド差)による圧力差を補正することが必要である。しかし、高圧では、圧力差の補正計算に必要な圧力媒体の密度値が得られていない場合がある。本研究では、ヘッド差による圧力差を精密に測定することで、液体圧力媒体の高圧下での密度を測定した。圧力校正に使用するセバシン酸ジオクチルの密度を200 MPaまでの圧力範囲で測定した結果を報告する。

  • 圧力媒体による圧力センサの校正値への影響とその低減方法

    飯泉 英昭、梶川 宏明、小畠 時彦

    気体高圧力用圧力センサの校正値が、圧力媒体の種類により受ける影響について評価した。圧力センサの設置姿勢と校正値の関係を評価し、影響を受ける原因について考察した。また、使用方法の最適化によって、圧力媒体の種類による影響を低減する方法を調べた。

【工学計測標準研究部門 強度振動標準研究グループ】

  • 画像処理を用いたくぼみサイズの自動測定-㈼

    清野 豊

    ブリネル硬さやビッカース硬さでは顕微鏡を用いてくぼみサイズの測定を行うが、眼視による測定では個人差が生ずる。大きな偏差要因である個人差を除くため、画像処理によるくぼみサイズ測定の試みの一環として特にくぼみ周辺のノイズ除去の検討について報告する。

  • ナノインデンテーション法による弾性特性評価の高度化に関する研究

    田中 幸美

    ナノインデンテーション法は、材料の局所的な弾性率を測定するために有用なツールであるが、ある単結晶材料では弾性定数から算出した理論弾性率と異なる。本研究では、複数の単結晶材料を三角錐圧子および球圧子を用いて測定し、実験弾性率が理論値と異なる要因について検討することで、ナノインデンテーション測定の精度向上を目指す。

  • 低周波および中高周波振動加速度標準の現状

    穀山 渉、野里 英明、石神 民雄、三森 弘美、服部 浩一郎、大田 明博

    NMIJでは低周波数および中高周波数の振動加速度標準として合計二種類の装置を保有している。低周波数においては2015年の国際基幹比較 CCAUV.V-K3 に伴い、不確かさ低減等の性能向上を行った。中高周波については、2018年初頭に実施する国際基幹比較 CCAUV.V-K5 のための対応を行っているところである。本発表ではこれらに関連した振動加速度標準の現状について解説する。

  • ブリネル硬さ試験機校正の不確かさ

    服部 浩一郎

    ブリネル硬さの不確かさは規格(参考)では機器の検証の結果と、上位標準による間接検証の結果で完全に分かれている。このため校正を行った際の試験力発生機構の位置等条件が限定されてしまう可能性がある。特にブリネルくぼみの読取りでは、用いる光学系やくぼみ端の決定の影響が大きい。このような影響を考慮した不確かさの算出方法について検討した結果について報告する。

【工学計測標準研究部門 液体流量標準研究グループ】

  • 石油流量の国際比較試験(CCM.FF-K2.2015)

    嶋田 隆司

    石油流量のCIPM基幹比較試験(CCM.FF-K2.2015)を幹事国として実施した。参加国は7カ国であり、仲介器として容積流量計を採用し、流量範囲は60 m3/h 〜 300 m3/hであった。各国の校正値は不確かさの範囲内で国際参照値(KCRV)と一致したことから、比較試験に参加した国家計量標準機関の石油流量標準の国際整合性が確認された。

  • 高速切換バルブを用いた通液式静的秤量法による小流量校正に関する研究

    Cheong Kar-Hooi

    高速切換バルブを転流器として、小流量域における通液式静的秤量法を高精度で実現するために、様々な技術課題が存在する。液体小流量校正に高速切換バルブを導入するための課題解決について述べる。

  • 液体用マイクロフローセンサの校正装置における蒸発の影響

    土井原 良次

    液体用の微小流量センサを秤量タンク式の装置で校正する場合、蒸発が支配的な誤差要因になる。そこで従来型の秤量タンクに対する様々な条件の影響を調査した。また、蒸発誤差を克服する校正システムの検討を行った。

  • 超音波パルス形状が時間領域相関法を用いた流量計測に与える影響検討

    和田 守弘

    本研究は、超音波パルスを用いた流速分布計測法を適用した流量のオンサイトキャリブレーション技術の開発を最終目標とし、本報では、超音波パルスの形状等が時間領域相関法を用いた流量計測精度に与える影響について実験的検討を行った。

  • スロートタップ式フローノズルの流出係数特性式の確立

    古市 紀之

    スロートタップ式フローノズルに関して、各種の実験結果を取りまとめ、流出係数の特性式を確立したことを報告する。

【工学計測標準研究部門 気体流量標準研究グループ】

  • ピトー静圧管の形状最適化に向けた管表面圧力分布評価の実験的検討

    岩井 彩

    現在わが国で使用されるJIS型ピトー静圧管は、管表面の圧力分布測定結果に基づき、鼻管先端および茎管全体が流れを妨げるブロッケージ効果による圧力変化を相殺する位値に静圧孔を有する。しかし、90 m/s程度の高流速域では管表面圧力分布の変化により相殺位置が移動し、正確な流速値が得られない可能性がある。そこで本発表では気体大流速風洞を用いた、ピトー静圧管表面の圧力分布測定のための実験的検討結果を紹介する。

  • 数ミリ秒の気体流量変動生成技術に関する開発と技術動向調査

    舩木 達也

    気体流量変動に関して既存の生成技術について網羅的に整理する。また、気体流量変動の計測手法についても言及しながら、新たな流量変動生成技術の構築にむけた開発の進捗について報告する。

  • 校正風洞の長期安定性

    栗原 昇

    気体中流速の標準設備のうちワーキングスタンダードとなっている校正風洞についてこれまでの校正実績を横断比較した。その結果、過去5年間のばらつきが全てCMC内に収まっていることが確認され、校正風洞の校正周期を従来の1年から2年に延長したので報告する。

  • トロイダルスロート型として製作された臨界ノズルに形成されたシリンダースロートの影響

    石橋 雅裕

    ISO 9300型トロイダルスロート臨界ノズルのレイノルズ数依存性は、多少の誤差があっても、トロイダルスロートを持つ限り、ほぼISOの規定通りとなることが、超精密加工臨界ノズルを用いた実験及び信頼性あるいくつかの理論計算により確認されている。しかし現実には、異様に大きなレイノルズ数依存性を持つものや、数は少ないがレイノルズ数依存性が若干小さいものが存在する。スロートとディフューザを別体とした組み立て式臨界ノズルを用い、その原因を明らかとした。

  • 水素流量計測技術の高圧化・大流量化に関する研究

    森岡 敏博

    燃料電池自動車の普及へ向けて、水素ステーションの建設が進められている。水素ステーションでは高圧大流量で水素充填が行われるため、水素計量システムの計量性能評価のためには水素流量計測技術の高圧化・大流量化が必要である。本研究では、マルチノズル式校正器による水素流量計測技術の高圧化・大流量化の成果について報告する。

【工学計測標準研究部門 型式承認技術・計量器試験技術・質量計試験技術・流量計試験技術グループ】

  • 計量制度見直し−型式承認におけるASNITE試験事業者による試験成績書を活用−

    根本 一、森中 泰章(計量器試験技術グループ)、神長 亘(流量計試験技術グループ)、三倉 伸介(質量計試験技術グループ)、伊藤 武(型式承認技術グループ)、島田 正樹(型式承認技術グループ)、長野 智博(型式承認技術グループ)、大谷 怜志(質量計試験技術グループ)、薊 裕彦(質量計試験技術グループ)、池上 裕雄(質量計試験技術グループ)、田中 良忠(質量計試験技術グループ)、井上 太(計量器試験技術グループ)、堀越 努(計量器試験技術グループ)、西川 一夫(流量計試験技術グループ)、福崎 知子(法定計量管理室)

    平成28年11月に計量行政審議会で取りまとめられた答申「今後の計量行政の在り方−次なる10年に向けて−」を踏まえて、政令及び省令について必要な改正が行われた。政令並びに省令改正されたうち、型式承認の際に試験成績書の受入れを認めるための方法等の取り組みについて報告する。

  • 計量制度見直し−特定計量器に追加された「自動はかり」への取り組み−

    根本 一、三倉 伸介(質量計試験技術グループ)、伊藤 武(型式承認技術グループ)、長野 智博(型式承認技術グループ)、大谷 怜志(質量計試験技術グループ)、薊 裕彦(質量計試験技術グループ)、池上 裕雄(質量計試験技術グループ)、田中 良忠(質量計試験技術グループ)、高橋 豊(計量器試験技術グループ)、福崎 知子(法定計量管理室)、菅谷 美行(法定計量管理室)

    平成28年11月に計量行政審議会で取りまとめられた答申「今後の計量行政の在り方−次なる10年に向けて−」を踏まえて、政令及び省令について必要な改正が行われた。政令並びに省令改正されたうち、特定計量器に新たに追加された「自動はかり」への今後の対応について報告する。

【物質計測標準研究部門 無機標準研究グループ】

  • 溶液の電気伝導率標準液(0.1 S/m〜11 S/m)の開発

    朝海 敏昭

    ジョーンズタイプセルを用いて電気伝導率測定用の認証標準物質を開発した。ジョーンズセルはインピーダンス測定とセルの幾何形状から絶対的に溶液の電気伝導率を測定することが可能なものである。開発した認証標準物質は3種類の濃度の塩化カリウム水溶液で、海水や食品分析等で利用される0.1 S/mから11 S/mをカバーする。

  • 高純度フタル酸水素カリウムの有機体炭素としての純度評価

    鈴木 俊宏、朝海 敏昭

    有機体炭素(TOC)は、日本工業規格(JIS)や水道法水質試験などでは、フタル酸水素カリウム(KHP)から調製された標準液が定量の基準として用いられている。KHPの純度は多くの場合、中和滴定法によって評価されているが、それがTOCとしての純度と一致するとは限らず、TOCとしてのトレーサビリティが必ずしも明確ではない。今年度ロット更新したNMIJ CRM 3001-c フタル酸水素カリウムでは、TOCとしての純度評価も行ったので、その技術的根拠について報告する。

  • 化学分離/プラズマ分光分析法による高純度希土類試薬中のScの定量

    和田 彩佳、野々瀬 菜穂子、三浦 勉

    希土類元素はそれぞれ化学的性質が類似しており、高純度希土類元素試薬中の不純物として含まれる希土類元素の精確な定量は困難である。本研究ではTRUレジンを用いた化学分離によって、高純度酸化イットリウム中の不純物として含まれる微量のScを分離する条件を検討した。その際に得られた知見について報告する。

  • 連続流れ分析法の分析値の評価

    チョン 千香子

    連続流れ分析法はJISの各種水質試験方法にも採用され、汎用される分析手法であるが、その測定の不確かさを評価した例は少ない。そこで海水中の栄養塩(溶存シリカ、硝酸イオン、亜硝酸イオン、りん酸イオン)を例にとり、測定の不確かさを含めた分析値の評価を行った。加えて、より精確な分析を行うために、二点挟み込み法の妥当性を評価し、海水に適用した結果を報告する。

  • 二重収束型ICP-MSにおけるジェットインターフェースの構造最適化

    野々瀬 菜穂子、大畑 昌輝、藤本 弘之(工学計測標準研究部門)、鍜島 麻理子(工学計測標準研究部門)、三浦 勉

    二重収束型ICP-MS(ICP-SFMS)のJet interfaceを構成するSampler,Skimmer、2種類のコーンについて、X線CT法および画像測定器による幾何構造測定システムを構築し、ICP-SMSの高感度化・高精度化を目指したコーン形状の改良を試みた。具体的には(i)コーン先端部におけるスパッタ由来の金属元素BECを低減する、(ii)SamplerとSkimmer間の距離の最適化である。本発表では改良したJet interfaceを有するICP-SFMSの分析性能について報告する。

  • 金属チタン中の炭素および酸素分析

    大畑 昌輝、城所 敏浩

    チタン標準液を開発するためには純度が評価された金属チタンが必要であり、そのためには不純物分析が必要である。そこで金属チタン中の不純物の主成分と想定される軽元素(炭素、水素、窒素、酸素など)の定量分析について、特に炭素と酸素について、燃焼/融解-非分散型赤外線吸収法を用いた検討を行ったので、その際に得られた知見について報告する。

【物質計測標準研究部門 環境標準研究グループ】

  • 誘導結合プラズマ質量分析法によるヒ素化合物分析のためのカラム組み込み型ネブライザー開発

    宮下 振一、高江 祥(東京薬科大学)、藤井 紳一郎(バイオメディカル標準研究グループ)、高津 章子(物質計測標準研究部門)、梅村 知也(東京薬科大学)、稲垣 和三

    金属化合物の化学形態別分析法である高速液体クロマトグラフィー-誘導結合プラズマ質量分析法(HPLC-ICP-MS)では、μL/minレベルの低流量での化合物分離において、配管接続部の存在等による試料液及び分離化合物の拡散が問題となる。本発表では、これら拡散の抑制を目的として、分離カラムをICP-MS装置試料導入部のネブライザーに組み込んだカラム組み込み型ネブライザーの開発成果について報告する。

  • プラズマ内のイオンイメージングから見るマトリクス効果の基礎的研究

    有賀 智子

    バイオエタノールの品質管理など、有機溶剤を主成分とする試料中の微量元素定量に対するニーズは高いものの、元素定量において有機溶剤が引き起こすマトリクス効果の詳細については未だ不明瞭である。本研究では、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)において有機溶剤が引き起こすマトリクス効果の基礎的研究を目的として、有機溶剤を含む多元素溶液をICP-MS分析し、プラズマ内のイオンイメージング図を作成した。また、これを元に各元素の挙動解析を試みた。

  • HPLC-ICP-MSを用いたコメ粉末中無機ヒ素の迅速モニタリング法

    成川 知弘

    高速液体クロマトグラフィー - 誘導結合プラズマ質量分析法による新しい無機ひ素の迅速モニタリング法について報告する。ひ素化合物の抽出条件の検討と合わせ、コメ粉末試料への適用例を紹介する。

  • LA-ICP-MSによるはんだの主成分元素と微量元素の定量

    井戸 航洋、朱 彦北、大林 秀行(東京大学・京都大学)、平田 岳史(東京大学)、保倉 明子(東京電機大学)、野々瀬 菜穂子(無機標準研究グループ)、稲垣 和三

    RoHS指令によってはんだ中の鉛濃度の分析の需要が高まっており、酸分解のような試料調製が不要で迅速な分析法手法として、レーザーアブレーション(LA)を用いた研究が盛んに行われている。一方で、 検量線試料が固体標準物質に限られる、元素分別効果によって定量性が不十分といった課題がある。そこで、本研究では、溶液スタンダードの検量線に基づいて、LA-ICP-MSを用いたはんだ中のAg、Cu、Pbの定量分析および元素分別効果の影響を抑制したLA条件の検討を行った。

  • ICP-MSのリアクションセル内における元素イオンとガス分子の反応特性

    朱 彦北

    ICP-MS分析におけるスペクトル干渉対策として、分析対象イオンまたは干渉物イオンとガス分子との反応特性を利用したリアクションセル技術は有効である。本研究は、O2・CH3F・H2Sをセルガスとして、元素周期表中の75元素について網羅的に調査し、各元素と酸素・フッ素・硫黄の親和性に基づいて、元素を分類したので、その結果について報告する。また、これらの反応特性に基づいた分類の活用例についても紹介する。

【物質計測標準研究部門 ガス・湿度標準研究グループ】

  • TDLAS露点計

    本田 真一(神栄テクノロジー(株))、杉村 賢一(神栄テクノロジー(株))、板橋 健一(神栄テクノロジー(株))、橋口 幸治、阿部 恒

    近年、Liイオン電池製造等のハイテク分野においては、低濃度領域での応答のよい湿度計測が必要とされている。しかし、現状一般に使用されている湿度計は、低濃度領域で応答が遅い問題がある。この問題に対応するため本研究では、気相中の水蒸気量を直接高速に測定できる、波長可変半導体レーザー分光法(TDLAS)を用いたTDLAS露点計の開発を行っている。開発したTDLAS露点計の性能評価の結果について報告する。

  • ガス中微量水分の高感度吸収スペクトル測定

    橋口 幸治

    ガス中微量水分の高感度測定を目指して、キャビティリングダウン分光法(CRDS)を用いた測定装置の開発を進めている。波長計を用いてレーザー周波数の制御を行う独自の手法(波長計制御型CRDS)により、長時間安定したスペクトル測定が可能となった。得られた測定結果を用いて詳細なスペクトル解析を行い、フィッティング残差を10 ppt以下にまで下げることができた。

  • 参照容器と試料容器の温度差による高圧ガス容器の秤量値の変動

    青木 伸行

    質量比混合法で調製された標準ガス中の成分濃度の主要な不確かさ要因は、高圧ガス容器の秤量の不確かさ(約2.6 mg)である。われわれは、高精度な標準ガスの開発のために、秤量の不確かさ要因について詳細に調べた。その結果、高圧ガス容器の秤量では、参照容器と試料容器の温度差に依存して秤量値が変動することが明らかになった。

  • 炭化水素系高純度標準ガス(イソブタン及びブタン)の開発

    渡邉 卓朗、松本 信洋、高田 佳恵子、下坂 琢哉

    標準物質整備計画に基づいて炭化水素系高純度標準ガス3物質の開発を行っており、これまでに1物質(エタン)の開発を終えている。本発表では、開発中の残り2物質(イソブタン及びブタン)についての開発状況について述べる。

  • CRDS微量水分計によるアルゴン/窒素混合ガス中微量水分の測定

    天野 みなみ

    様々なガス種について微量水分の一次標準を確立することを目指し、「多種ガス用微量水分発生装置」を開発している。本装置では、発生させたターゲットガス中微量水分の中に約1 %の窒素が混入することが課題となる。本研究では、ターゲットガスをアルゴンとし、発生させたアルゴン中微量水分に混入する窒素が、被校正器物であるCRDS(キャビティリングダウン分光法)微量水分計の指示値に与える影響を評価した。

  • 有効磁気モーメント法による高純度DPPH粉末のフリーラジカル純度分析

    松本 信洋、伊藤 信靖(有機組成標準研究グループ)

    将来の一次標準直接法の実現を目的として、キュリー・ワイスの法則と電子スピン共鳴(ESR)基本方程式を組み合わせた”有効磁気モーメント法”を開発している。本発表では、同分析法の適用例として、ESR測定の標準試料として広く用いられているDPPHのフリーラジカル純度分析について紹介する。

【物質計測標準研究部門 有機組成標準研究グループ】

  • 残留農薬分析用の食品標準物質を用いた同位体希釈質量分析法によるQuEChERS法の評価

    大竹 貴光

    食品中の残留農薬分析において、簡便かつ迅速に結果が得られるQuEChERS法は、世界的に広く普及している。その妥当性は、添加回収試験で確認されている例が多いが、抽出過程を含めた評価のためには不十分な場合も考えられる。そこで本報告では、試料に残留農薬分析用の大豆およびリンゴ認証標準物質を用い、QuEChERS法の評価を行った。

  • 新規残留性有機汚染物質の塩素化パラフィンに係わる定量分析の現状

    羽成 修康

    新規残留性有機汚染物質としてストックホルム条約の対象物質へ追加予定の塩素化パラフィンの分析について関心が高まっている。しかしながら、精度良い分析値を得るには多くの課題を解決しなければならず、分析事業者らは対応に苦慮している。そのため、分析事業者や関連研究者が参加する塩素化パラフィン分析の情報交換会を開催し、分析における問題点などを共有した。本発表では、挙げられた課題を報告し、今後の対策案について紹介する。

  • ラウンドロビンテストで明らかになったラマンシフトの同等性についての現状

    伊藤 信靖

    ラマンシフトは、ラマン分光法の結果を表す重要なパラメータである。今日、ラマン分光装置の性能やレーザ波長は様々であるにも関わらず、ラマンシフトの統一的な校正方法は存在しない。このため本研究では、ラウンドロビンテストによって異なる装置や条件下で得られたラマンシフトの同等性を評価するとともに、欧州薬局方(EP)の許容値とも比較した。その結果、半数程度しか、この許容値を満たしていないことが明らかになった。

  • 水分分析用標準液(1 mg/g)(NMIJ CRM 4228-a)の開発

    稲垣 真輔

    産総研計量標準総合センターでは、これまでに、カールフィッシャー水分計などによる水分測定の精度管理用の認証標準物質として、水分分析用標準液(0.1 mg/g)(NMIJ CRM 4222-a, b, c)を開発し、頒布している。しかしながら、水分分析用標準液は、その性質上、使用時に希釈などの操作を行うことができないことから、必要とされる濃度レベルごとに提供される必要がある(0.1、1、10 mg/gなど)。そこで、本研究では、ニーズが高くかつ汎用分析の精度管理に対応した濃度レベルである1 mg/gの標準液の開発を行った。

【物質計測標準研究部門 有機基準物質研究グループ】

  • DSCを用いた凝固点降下法によるトリクロロ酢酸標準物質の純度評価

    清水 由隆、山 太一、斎藤 直樹、北牧 祐子、鮑 新努、中村 哲枝、沼田 雅彦、井原 俊英(物質計測標準研究部門)

    水道水質基準項目の一つであるトリクロロ酢酸の信頼性確保のため、純度を認証値とする認証標準物質、NMIJ CRM 4074-a トリクロロ酢酸を開発した。値付け法の一つとしてDSCを用いた凝固点降下法により純度を評価したが、得られた純度には大きなばらつきが見られた。今回は、DSC純度のばらつきの要因と考えられた試料の不均質性とその対策について報告する。

  • かび臭物質2種混合標準液への効率的な値付け法の確立

    北牧 祐子、斎藤 直樹、沼田 雅彦、井原 俊英(物質計測標準研究部門)

    水道水質検査に求められるかび臭物質2種混合標準液の開発において、標準液に直接値付けする方法を確立した。本法は、ポストカラム反応GCを用いることで、分析対象成分ごとに認証標準物質を用意しなくてもSIトレーサブルな値を得ることができる。今回はポストカラム反応GCを用いて信頼性の高い値付けを行う際に欠かせない装置チェックの方法や不確かさの算出などについて詳細を報告する。

  • クロスバリデーションによる定量NMR用標準物質の有用性の評価

    山 太一、Norbert Stoppacher(BIPM)、Steven Westwood(BIPM)、Robert Wielgosz(BIPM)

    BIPMではNMIJとのMOUの中で「定量NMR用標準物質の探索と有用性」に関する評価を実施している。発表者はBIPMに半年間滞在して、市販されている定量NMR用標準物質間のクロスバリデーションによる、有用性の評価を進めてきた。今回はクロスバリデーションによる評価の方法およびその結果について報告する。

  • 高揮発性有機化合物(塩化ビニル)標準液の定量NMRによる精確な濃度校正法の検討

    斎藤 直樹、北牧 祐子、井原 俊英(物質計測標準研究部門)

    土壌汚染対策法の一部改正に伴い、信頼性が確保された分析機器校正用の塩化ビニル標準液の整備が求められている。しかし、塩化ビニルは常温で気体であるため取扱いが難しく、その標準液を精確に調製することは困難である。そこで、あらかじめ目標濃度付近に調製された塩化ビニル標準液に対して、近年適用範囲が拡大している定量NMRによる濃度校正の適用を検討した。特に、試料溶液の調製ならびにNMR測定の際に塩化ビニルの揮発を抑えるための最適条件を模索したので、報告する。

  • 測定対象と同一成分の標準が不要な手法による非イオン界面活性剤の濃度測定

    黒江 美穂、斎藤 直樹、山 太一、沼田 雅彦、井原 俊英(物質計測標準研究部門)

    クロマトグラフィーなどの機器分析により精確な定量値を得るためには、目的の成分ごとに精確な値を持つ校正用標準物質が必要である。しかし、界面活性剤など様々な構造を有する成分の混合物が分析対象である場合、各成分の標準物質を全て用意することは容易ではない。そこで我々は、原理上標準物質が一つだけあれば試料中の複数成分の分離・定量が可能な測定法であるqNMR/クロマトグラフィーの研究を行っている。今回は本法を非イオン界面活性剤メタノール溶液の濃度測定に適用した結果を報告する。

【物質計測標準研究部門 バイオメディカル標準研究グループ】


  • 点変異導入した内標準タンパク質を利用した血清中C反応性タンパク質定量法の開発

    絹見 朋也、水野 亮子、高津 章子(物質計測標準研究部門)

    質量分析による血清中タンパク質の精確な定量法は、濃度の基準値を得るため重要な方法として検討が重ねられてきた。血清中C反応性タンパク質(CRP)定量のため、我々はアミノ酸点変異を導入したCRPを内標準とし、同位体希釈質量分析法に類似した測定方法を開発したので報告する。

  • カラムスイッチング-LC/MS法による下痢性貝毒測定法の開発

    川口 研、宮本 綾乃

    下痢性貝毒の通知法では、固相抽出法が用いられている。今回、LCのバルブを用いて、カラムスイッチング法による半自動化を検討した。開発した方法を用いて、下痢性貝毒分析用組成試料の認証標準物質を開発していく予定である。

  • デジタルPCRを利用した遺伝子組換えナタネ定量分析法の確率とDNA認証標準物質の開発

    柴山 祥枝、藤井 紳一郎、高津 章子

    日々増加する遺伝子組換え作物(GMO)の組換え率を精確に定量するためには、対象となるGMOの標準物質が不可欠である。近年、標品なしに定量可能なデジタルPCRが台頭したことから、デジタルPCRによるGMO定量法の確立を目指し、GMナタネの定量を行った。GMナタネ認証標準物質(ERM-BF434シリーズ)を試料として用いることで定量法の妥当性を評価した結果、調製値と定量値が一致したことから、デジタルPCRによるGMナタネ定量法が確立できた。

  • オンライン還元を利用した新規タンパク質中糖鎖定量法の開発

    坂口 洋平

    本研究では、誘導体化技術にオンライン還元法を組み合わせることで、タンパク質中に結合している糖鎖を精確に定量するシステムの構築を試みた。まずジスルフィド結合を有し、かつ糖鎖の還元末端と反応する誘導体化試薬の合成を行い、モデル化合物である単糖との反応性などの基礎検討を行った。またオンライン還元カラムを作成し、誘導体化された単糖へ適用することで本法の妥当性について検討を行った。

  • ホタテガイ中腸腺(下痢性貝毒分析用)NMIJ-CRM-7520-aの安定性評価

    宮本 綾乃

    ホタテガイ中腸腺(下痢性貝毒分析用)NMIJ-CRM-7520-a中のオカダ酸(OA)及びジノフィシストキシン−1(DTX1)について、LCMSを用いて安定性の評価を行った。評価には、開発時のサンプルを基準としたOA及びDTX1のピーク面積値の比較と、標準添加法を用いたOA及びDTX1の定量の2つの方法を用いた。これらの評価の結果、値付け時から18ヶ月間のCRMの安定性が確認された。

【物質計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ】

  • 密度標準のためのSi単結晶球体の表面分析

    張 ルウルウ、倉本 直樹(工学計測標準研究部門)、黒河 明、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)

    産総研は2001年までSi単結晶を頂点とする密度のトレーサビリティ体系を構築した。本研究では、密度標準物質としてのSi単結晶球体のX線光電子分光法(XPS)による表面分析を初めて実施した。Si球体表面に存在する金属汚染層、自然酸化膜、炭素汚染層の化学組成及び膜厚を測定し、各層の不確かさ要因の評価も行った。

  • XPSスペクトルのみでEELS同等の励起構造を調べる

    城 昌利

    XPS スペクトルのバックグラウンドを最適化によって求めると、損失関数が同時に得られる。この関数は固体内の励起の様子を表しているが、通常は電子線を用いたEELSで得られる情報である。XPSは電子線を用いないマイルドな方法であるので、電子線損傷を受けるデリケートな試料のEELS代替手段になると期待される。

  • 表面分析用標準物質の開発と安定性モニタリング

    寺内 信哉、伊藤 美香

    今年度供給を開始した金/ニッケル/銅金属多層膜標準物質(CRM 5208-a)を紹介する。また、これまでに開発した表面分析用標準物質(EPMA用標準物質CRM 1001a-1010a,1017a-1020aおよび多層膜標準物質CRM 5206-a,5208-a)の安定性モニタリングについて紹介する。

  • X線反射率法による酸化ハフニウム膜の構造解析

    東 康史

    酸化ハフニウム(HfO2)膜は高誘電率ゲート絶縁膜に用いられるなど有用なデバイス材料である。HfO2膜は成膜条件によって、シリサイド化やシリケイト化することが知られており、薄膜材料における電気特性等は膜構造の影響を強く受けることから膜構造を精密に評価・理解することは重要である。本発表ではALD法によって作成されたHfO2膜をX線反射率法を用いて構造解析した結果について報告する。

【物質計測標準研究部門 ナノ構造化材料評価研究グループ】


  • MALDI過程へのイオン対分解の寄与

    富樫 寿

    マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)過程において、予め試料中に存在する、あるいはレーザー照射時に過渡的に生成する、正と負のイオンの結合体(イオン対)の分解機構を検討し、試料イオンの生成効率に影響を及ぼす可能性を考察した。

  • 高速イオンビームによる薄膜評価

    平田 浩一

    イオンビームは、半導体への元素ドーピング、表面改質・分析等、材料改質、材料分析の幅広い分野で用いられている。イオンビームを用いた材料分析では、入射イオンと材料との相互作用により、試料表面から放出される粒子や光子を検出・分析することにより、材料の深さ方向元素分布、材料表面の微量元素や化学構造の分析を行うことが可能である。本発表では、sub-MeV〜MeV領域の入射エネルギーを持つ高速イオン照射による2次粒子放出現象を用いた薄膜評価に関する報告を行う。

  • 酸化ハフニウム薄膜標準物質の安定性モニタリング

    高塚 登志子

    ハフニウム定量用酸化ハフニウム薄膜認証標準物質(NMIJ CRM5605-a)の経時安定性モニタリングとして、非破壊で分析可能な蛍光X線分析を実施している。膜中のハフニウム量(相対値)を高精度に評価するための参照試料について検討した結果について報告する。

  • 市販型陽電子寿命測定システムの開発

    山脇 正人、伊藤 賢志

    陽電子消滅法は、金属の原子欠陥や高分子の自由体積等に高い検出感度を持つことから、超微細欠陥の分析手法として、金属疲労研究や機能性高分子材料の開発等に利用されている。陽電子を用いた材料研究は1950年代に始まり、2008年日本陽電子科学会設立をきっかけに産業応用への期待が高まっている。そこで我々は、一般ユーザでも操作できる簡便な測定プロトコルを確立した。東洋精鋼株式会社と製品化を進め、2016年9月より市販装置の販売開始に至った。現在データを蓄積し、適用範囲の拡大を目指している。

【物質計測標準研究部門 粒子計測研究グループ】

  • 水溶性高分子標準物質の光散乱法による分子量計測

    高橋 かより、桜井 博

    サイズ排除クロマトグラフィーに代表される各種クロマト法は分子量測定法として広く使用されているが、測定される分子量は相対値であり、正確な分子量を求めるにはできる限り性状の近い高分子化合物による校正を必要とする。代表的な水溶性高分子であるプルランをモデル物質として、絶対測定法である光散乱法を用いることにより、SIトレーサビリティを確保した分子量計測法の開発を行った。

  • 実環境中での微粒子サンプリングを模擬した気中パーティクルカウンタの校正

    飯田 健次郎

    産総研ではサブマイクロメートルからマイクロメートル粒径域での気中パーティクルカウンタ(OPC)の粒子計数効率の校正を、インクジェットエアロゾル発生器(IAG)を用いて行っている。このIAGを用いたOPCの校正において、実環境中の一様に混合したエアロゾル粒子群がOPCにサンプリングされる状態を模擬する手法を開発したので報告する。

  • 窒素吸着測定のSIトレーサブル化と不確かさ評価

    水野 耕平、田中 秀幸(計量標準基盤研究グループ)

    窒素吸着測定は粉体の比表面積や多孔性評価に欠かせない測定法であるが、トレーサビリティに関しては現状十分に確保されているとはいえない。昨年度に引き続き、吸着量(等温線)測定のSIトレーサブル化と不確かさ評価の進捗について報告し、不確かさの要因と伝搬の仕組みについて考察する。

  • 個数濃度を対象にした気中粒子粒径分布標準に関する研究

    村島 淑子

    気中粒子の粒径分布測定の精度保証に資する標準や校正技術の開発に取り組むにあたり、粒径分布測定装置の個数濃度の性能評価法として、個数濃度標準で校正した凝縮粒子計数器(CPC)を基準とし、単分散PSL粒子の総個数濃度を比較する総個数濃度比較法を提案する。また、総個数濃度比較法によって、市販の電気移動度式粒径分布測定装置の性能評価を行ったので、その結果を報告する。

  • 単一粒子光散乱観測によるナノ粒子追跡流速計測法の開発

    松浦 有祐(計量標準基盤研究グループ)、中村 文子(計量標準基盤研究グループ)、加藤 晴久

    マイクロチャネルに代表されるマイクロメートルスケールの流れ場における流速計測においては、ナノサイズの粒子をトレーサに使用することが求められる。一方で、ナノ粒子は光学的観察が困難であることとブラウン運動の影響が大きいことがトレーサに使用するための課題である。本発表では、散乱光観察による可視化とブラウン運動の補正を実施することにより確立したナノ粒子トレーサによる流速計測法について報告する。

  • 質量校正式液中粒子数濃度計数装置の開発と既設標準の油中粒子数濃度への展開

    坂口 孝幸

    液中粒子数濃度標準の操作性・精度向上のため、光散乱式液中粒子計数装置を用いた計数と試料懸濁液質量変化を同期させた質量校正式液中粒子数濃度計数装置の偽計数評価を行った。計数のばらつきや質量測定の不確かさ等と合わせ現行の拡張不確かさより小さな値を実現するめどが立ったのでこれを報告する。また、現行標準を用いた油中粒子数濃度測定校正方法の展望を述べる。

  • 電気移動度分析器による粒径分布測定

    高畑 圭二

    電気移動度分析器(DMA)は、その粒径分解能が理論的によく理解されており、実験的にも評価が可能である。DMAモーメント法は、実験スペクトルから粒径分布パラメータを厳密に決定できる方法であり、その粒径および分布幅の標準供給における技術的課題および実験スペクトル分割による拡張について報告する。

【物質計測標準研究部門 熱物性標準研究グループ】

  • 3次元物体表面へのカーボンナノチューブ成膜法の開発

    渡辺 博道、山下 大志、室谷 健吾、山口 将太郎

    特殊な光学的・電気的特性を有するカーボンナノチューブ(CNT)を様々な機器へ応用するためには金属・炭素材料・セラミックスからなる3次元物体の表面にCNTを成膜する必要がある。CNTを3次元物体表面に成膜する手法として化学気相蒸着法(CVD法)が提案されているが、成膜プロセスにおける物理的・化学的現象の理解は十分に進んでいない。本研究開発では、CVD法によるCNT成膜の技術要素である触媒担持層と触媒層及びにCN膜それぞれの成膜プロセスにおける最適な条件の探索を行った。

  • 遮熱コーティングの熱拡散率の異方性評価

    阿子島 めぐみ

    発電用ガスタービンの発電効率向上において、遮熱コーティングの重要性が増している。溶射で施工される遮熱コーティングの表面のセラミックス層は、パンケーキ状粒子が積層する特徴的な組織を有しており、その板厚方向の熱拡散率は多数の測定例がある。組織構造が異方的であることから熱拡散率にも異方性があると予想した。レーザフラッシュ法を用いて面方向の熱拡散率を測定する治具を作製して用いることで面方向の熱拡散率測定を実現し、板厚方向の結果と比較することで異方性を評価した。

  • 高温における比熱容量標準の開発㈵

    阿部 陽香

    産業ニーズが大きい室温以上の比熱容量標準は、示差走査熱量計による比較測定により実現しているが、絶対測定より不確かさは大きく、改善が必要とされている。そこで、NMIJ標準整備計画に基づき、室温以上での絶対測定による比熱容量標準の開発を開始した。発表では、新しい熱量計開発の進捗状況について報告する。

  • 熱物性データベースにおける材料製造プロセス・材料キャラクタ情報への対応

    山下 雄一郎

    熱物性分野においては、ビッグデータを活用した材料探索に注目が集まっている。材料探索を支えるデータベースとして、物性発現を記述するデータの収録が不可欠であり、産総研分散型熱物性データベースではシステムを拡張して対応した。本法では新たに収録可能となった材料製造プロセス情報および材料キャラクタ情報について報告する。

  • 固液界面の熱抵抗計測技術の開発

    八木 貴志

    液体と固体の接触する界面の熱抵抗は、対流、冷却、沸騰などにおける熱輸送の初期過程に影響し、例えばヒートパイプ等による熱輸送において重要な因子である。近年、固体表面への単分子膜処理により、劇的な界面熱抵抗の減少が報告された。このような研究おいては正確な計測技術が必要である。本研究では、薄膜用の熱拡散率計測技術を利用した、金属と液体(水、アルコール)との界面における熱抵抗測定について報告する。

【物質計測標準研究部門 計量標準基盤研究グループ】

  • ACRMにおけるプラスチック添加剤共同測定

    松山 重倫

    日中韓の国立計量研究所による標準物質に対する国際共同研究などを行うAsian Collaboration on Certified Reference Materials (ACRM)では、様々な国際比較を行ってきた。ACRMのWG3ではRoHS指令に関連したプラスチック中の重金属や添加剤の共同研究などを行ってきた。このうち、臭素系難燃剤、フタル酸エステル類の共同測定結果について報告する。

  • 帰属評価結果の妥当性の議論を表現するプログラム

    渡邊 宏

    有機化合物のスペクトルデータベース(SDBS)が提供するH-1 NMRスペクトルの帰属評価を題材に、評価結果の妥当性を主張する議論を形式アシュアランスケースの枠組みを用いてプログラムとして表現した。形式アシュアランスケースの枠組み、作成した事例、プログラムで表現する意義を紹介する。事例作成の取り組みは神奈川大学との共同研究の中で実施した。

  • さまざまな組合せ論的問題の線型論理へのエンコーディング

    松岡 聡

    科学のあらゆる領域に組合せ論的問題は頻繁に出現する。一つの例はNMR のスペクトラムから分子の構造を特定する問題は2部グラフのマッチング問題という組合せ論的問題である。発表者は、さまざな組合せ論的問題を線型論理へ埋め込む方法を見つけた。

  • 不確かさクラブ事例研究会にて作成した不確かさ評価事例集IIIの発行について

    田中 秀幸

    当グループが運営する不確かさクラブにて、第3次不確かさクラブ事例研究会を2014年に発足し、約2年半の間、事例研究会参加者への不確かさ評価の指導、討論を行い、9件の不確かさ評価事例を完成させた。2017年3月に不確かさクラブ総会として事例発表会を開催し、そこで作成した事例をまとめた不確かさ評価事例集IIIの配布を行った。本発表では、完成した不確かさ評価事例9件の内容と、事例集について紹介する。

  • 基幹比較に基づくCMC不確かさの見直し

    城野 克広

    計測標準の同等性は、その不確かさの情報を含む各国NMIの校正測定能力(CMC)を相互承認協定(MRA)のAppendix Cに登録することで世界的に認められる。その同等性を技術的にサポートするのは基幹比較(KC)である。本研究では、KCにおいて同等性が保たれていない恐れがあると判断された場合に、CMCの不確かさ情報はどのように更新されるべきかをベイズ統計学的な視点から考察する。

【物質計測標準研究部門 精密結晶構造解析グループ】

  • アンモニウムイオンで部分置換したCs2(HSO4)(H2PO4)におけるスピン拡散とスピン−格子緩和

    林 繁信、治村 圭子

    CsHSO4に代表される無機固体酸塩ではAO4型の四面体イオンが水素結合ネットワークを形成している。これらの物質の中には融点直下の高温相において高いプロトン伝導を示すものがある。その中で、Cs2(HSO4)(H2PO4)はいったん超プロトン伝導相になると転移点以下でも超プロトン伝導相が長い時間維持される。しかし、室温相においては水素結合でプロトンが固定されているため、プロトンであっても100秒以上の長いスピン−格子緩和時間を示した。本研究では、Csイオンの一部をNH4イオンで置換し、プロトンの緩和について調べた。プロトンの緩和に対するマジック角回転の影響を調べ、スピン拡散の寄与を評価した。

  • 天然ガスハイドレートの位相コントラストX線CT観察

    竹谷 敏

    X線の位相コントラストを用いた非破壊三次元可視化測定では、低元素により構成される物質では、吸収コントラストよりも高精細な画像の撮影が可能である。今回の発表では、海底で採取された天然ガスハイドレート試料の位相コントラストX線CT観察の結果を報告するとともに、得られた画像のグレースケール情報から、測定対象物質内の密度分布、ガスハイドレートと氷の部分状態を評価する。

  • 温度・圧力に対する液体粘性への水晶振動子応答

    山脇 浩

    室温から100 ℃の温度範囲で、ピストンシリンダー型圧力セル中における小型水晶振動子応答を調べた。粘度と共振周波数シフトの相関や、振動子自体の圧縮効果による振動数シフト変化量は、この温度範囲では あまり温度に依存しないことがあきらかになった。これにより、40 ℃の時でも 室温の時と同様に 共振周波数シフトから液体媒体の粘性の圧力変化を求めることができた。

  • 情報量規準を用いた量子スピン系酸化物Sr14Cu24O41の精密原子構造評価

    後藤 義人

    単結晶精密構造解析法における原子構造モデルの決定精度の向上を目的とした新指標の開発を目指しているが、統計的モデリングの手法である情報量規準を用いたモデル評価法の導入による効果が確認されつつある。今回は、四次元超空間群の対称性を持つ量子スピン系梯子物質Sr14Cu24O41について、未解決な複合結晶構造の精密評価を行った。