日本学術会議 公開シンポジウム「新しい国際単位系(SI)重さ、電気、温度、そして時間の計測と私たちの暮らし」

日本学術会議 公開シンポジウム
「新しい国際単位系(SI)重さ、電気、温度、そして時間の計測と私たちの暮らし」

私たちが使っているキログラム(kg)、秒(s)、ケルビン(K)などの単位は、国際度量衡総会において、国際的な取り決めによって決められています。 来年5月からこの単位についての取り決めが大きく変更される予定です。 新しく施行される国際単位系は、唯一人工物によって定義されているキログラムを、自然界を支配するいくつかの「定数」を使って定義します。 人間が恣意的に決めた単位は、科学技術の発展とともに、自然の中にある原理を使ったものに置き換えられてきましたが、今回の改定でこの取り組みがとうとう完成します。

日本学術会議では、この機会に、単位の制定の背景にある、自然の原理や科学技術の発展、今後の進展などを広く展望するシンポジウムを開催します。 学生、研究者、教育関係者、技術者等などのご来聴を歓迎します。

開催概要

主催 日本学術会議 物理学委員会・総合工学委員会合同IUPAP 分科会、化学委員会IUPAC 分科会
共催 一般社団法人 日本物理学会、公益社団法人 日本化学会
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター
日時
場所
平成30年12月2日(日)13:00-17:10(受付開始 12:15) 終了時刻が変更になりました(2018.11.22)
日本学術会議講堂(東京都港区六本木 7-22-34 東京メトロ千代田線乃木坂駅5 番出口すぐ)
申込方法 満員につき、申込を締め切りました。
当日受付は致しません。
お問合せ先 国立研究開発法人産業技術総合研究所
計量標準総合センター 計量標準普及センター 計量標準調査室
Eメール:scj-2018-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)

プログラム

変更になりました(2018.11.22)
時間 講演タイトル・概要 講演者 所属・役職
13:00-13:10 開会挨拶 渡辺 美代子 日本学術会議 副会長
国立研究開発法人科学技術振興機構 副理事
13:10-13:30 『標準改定の歴史、今回の改定と今後』 臼田 孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所
計量標準総合センター 総合センター長、国際度量衡委員
13:30-14:00 『国際単位系(SI)の定義改定が拓く新しい計測技術』 藤井 賢一 国立研究開発法人産業技術総合研究所
計量標準総合センター 工学計測標準研究部門
首席研究員、CODATA 委員
14:00-14:30 『新元素の名前と化学記号の決定および原子量の新たな表記』 巽 和行 名古屋大学 名誉教授、日本学術会議連携会員、化学委員会IUPAC分科会
14:30-15:00 『新単位系を支え、新単位系に支えられる物性物理学』 勝本 信吾 東京大学 物性研究所 教授、物理学会理事
15:00-15:10 質疑応答
15:10-15:25 休憩
15:25-15:55 『新しい時間をつくる、使う』 香取 秀俊 東京大学大学院 工学系研究科物理工学専攻 教授、
理化学研究所 香取量子計測研究室 主任研究員
15:55-16:25 『精密時空時計測が拓く重力波天文学』 三代木 伸二 東京大学 宇宙線研究所 准教授
16:25-16:55 『長さの定義改定がもたらした長さ計測の進展』 美濃島 薫 電気通信大学 情報理工学研究科基盤理工学専攻 教授、
日本学術会議連携会員、総合工学委員会委員
16:55-17:05 質疑応答
17:05-17:10 閉会挨拶 野尻 美保子 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 教授、
日本学術会議第三部会員、物理学委員会・総合工学委員会 合同IUPAP 分科会委員長
公開シンポジウム フライヤーダウンロード
  • 臼田 孝

    臼田 孝

    『標準改定の歴史、今回の改定と今後』

    (概要)
    単位の定義は、これまでにも実際の測定精度の要求を満たせなくなったとき、何度か見直しが行われてきた。 国際単位系(SI)基本7単位の中でもっとも最近見直しがあったのは1983年の長さである。 今般予定されるのは、質量(キログラム)、電流(アンペア)、物質量(モル)、熱力学温度(ケルビン)を一気に見直すという大規模なものである。 このような改定の歴史と背景、検討の体制について紹介する。

  • 藤井 賢一

    藤井 賢一

    『国際単位系(SI)の定義改定が拓く新しい計測技術』

    (概要)
    これまで質量の単位は国際キログラム原器という人工物によって定義されてきましたが、近年の計測技術の進歩によって、キッブルバランス法とX線結晶密度法からそれぞれプランク定数とアボガドロ定数を精度よく測定することが可能になり、国際キログラム原器の質量安定性を超える精度で、これらの基礎物理定数を測定することが可能になってきました。 科学技術データ委員会(CODATA)の基礎定数作業部会では、キログラムの新しい定義で用いられるプランク定数の値を、これらの最新の測定結果から不確かさのない定数として2017年に決定しました。 2018年にメートル条約にもとづいて開催される第26国際度量衡総会での賛成多数が得られれば、1889年以来変わることのなかったキログラムの定義が約130年ぶりに改定され、プランク定数によって定義されることになります。 本講演では、これらの測定に用いられた最新の実験技術とCODATAによる基礎物理定数の決定について紹介し、定義改定がもたらす質量の新しい測定方法などについて展望してみたいと思います。

  • 巽 和行

    巽 和行

    『新元素の名前と化学記号の決定および原子量の新たな表記』

    (概要)
    新しい元素の発見は世界的なニュースとして大きな注目をあびます。 国際純正・応用化学連合(IUPAC)は新しく発見された元素の名前と化学記号を認証する責任を持ちます。 新元素が物理的な手法で作り出されるようになり、物理学との連携も重要になりました。 第112番目の元素(コペルニシウム)を例として、その認証の具体的な経緯を紹介します。 また、原子量の新しい表記について説明します。

  • 勝本 信吾

    勝本 信吾

    『新単位系を支え、新単位系に支えられる物性物理学』

    (概要)
    プランク定数と質量の関係は新国際単位系(SI)にとって大変重要です。 それを保証する技術の1つ、キッブルバランス法は、20世紀後半になって現れた物性物理学の成果、超伝導ジョセフソン効果、量子ホール効果、半導体レーザーなどによって支えられています。 一方、今回の単位系の改定は物性物理学に大きな恩恵をもたらすでしょう。 電磁気の極めて基本的な単位であるA、多体系を規定する重要な物理量の温度の単位K、そして、原子集団の数量を表すmolが極めて明瞭な定義に変り、精密科学への道も開けます。 本講演ではこのような導入の後で、特にジョセフソン効果、量子ホール効果について解説し、単位系と物性物理学にどのような意味を持っているのかについて考えたいと思います。

  • 香取 秀俊

    香取 秀俊

    『新しい時間をつくる、使う』

    (概要)
    普遍な周期現象を利用して時間を共有する道具が時計でした。 1967年以来、セシウム原子の振動が国際単位系の1秒(SI秒)を決め、現在では国際原子時として15桁の精度が共有されています。 ところが、この10年間に劇的な進歩を遂げた原子時計は、重力で曲がった相対論的な時空間での時間の共有の難しさを露呈させ、さらには物理学が暗黙の仮定をする物理定数の恒常性まで研究の対象にしようとしています。 光格子時計は、魔法波長のプロトコルによって、高安定・高精度な新たな原子時計の可能性を提起しました。2001年の提案以来、30近くの研究拠点で開発が進み、SI秒を100倍以上凌駕する精度は、秒の再定義を迫ろうとしています。高精度な異種原子時計の比較による物理定数の恒常性の検証や、2台の時計の高低差を重力赤方偏移として数 cm精度で読み出す相対論的測地の実験を紹介します。 小型・可搬化を進めている光格子時計の現状と、それらの時計ネットワークが社会実装されたときの未来の時計の役割を展望します。

  • 三代木 伸二

    三代木 伸二

    『精密時空時計測が拓く重力波天文学』

    (概要)
    2015年9月14日、人類史上初となる重力波の観測に、アメリカのLIGO重力波望遠鏡が成功しました。 重力波は、アインシュタインからの最後の宿題ともいわれた難題でしたが、その理論の提案から丁度100年目の節目の年の快挙となりました。 重力波の検出は、時空つまり時間と空間が対等であることの“動的”な証明という大きな意義を持ち、それ以降、既に5個の重力波の波形をとらえることにも成功し、重力波天文学という新しい分野が創生されました。 約400年前のガリレオ・ガリレイによる光学天文学の創生にも匹敵する新展開ともいえるでしょう。 重力波による観測は、その重力波の発生原理が、既存の情報伝達・観測手段として利用する電磁波や粒子とは根本的に異なっているので、逆に、重力波でしか見えない宇宙の未踏未開領域を開拓できると期待されています。 本公演では、重力波検出の意義、重力波検出に要求される精密時空計測装置の仕組み、そして、重力波波形観測とその重力波発生天体の同時電磁波観測・追尾観測によって判明した結果、および、将来の重力波観測計画について解説します。

  • 美濃島 薫

    美濃島 薫

    『長さの定義改定がもたらした長さ計測の進展』

    (概要)
    長さの定義は1983年に真空中の光の速度に改定された。 これによって光の飛行時間や光波干渉など、定義と等価な原理によってナノテクノロジーからアストロノミーレベルの計測まで高い相対精度での測定が実現されている。 本講演では、基礎物理定数による定義によって恩恵を受けた長さ測定に関わる経緯を振り返る。