2024年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 2日目
- 工学計測標準研究部門 [01 - 58]
- 物質計測標準研究部門 [59 - 121]
- 堀場製作所-産総研 粒子計測連携研究ラボ [122]
- 島津製作所-産総研 アドバンスド・ソリューション連携研究ラボ [123]
【工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ】
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自己校正ロータリエンコーダを用いた試料表面の局所角度分布に基づく自由曲面形状計測
増田 秀征、近藤 余範、平井 亜紀子、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)
X線光学やEUVを含む種々の光学システムの高度化により、高精度な自由曲面光学素子の形状計測技術が重要となってきている。本研究では、試料表面の局所角度を用いて高精度絶対形状計測を実現するスキャニングデフレクトメトリ手法を発展させ、その計測可能範囲を、従来の平面から自由曲面に拡張する。この原理及び装置構成、予備実験として曲率半径4 mの円筒面の測定を行った結果について報告する。
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球面フィゾー干渉計におけるアライメントエラーに起因する測定誤差解析と再現性評価
川嶋 なつみ、近藤 余範、平井 亜紀子、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)
球面度測定に用いるフィゾー干渉計の主要な不確かさ要因の一つがアライメントエラーに起因する測定誤差である。理論的解析かつ実験的検証によりアライメントエラーに起因する不確かさの評価方法を確立した。実験的検証で判明した球面原器の不完全性により顕在化する測定誤差が不確かさに与える影響の、球面原器初期アライメント状態依存性を検証した。球面度校正システム全体の構成と測定不確かさと合わせて報告する。
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世界最高レベルの精度で球の直径測定を実現
近藤 余範、川嶋 なつみ、平井 亜紀子、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)
自由曲面レンズ・ミラーなどの光学素子の形状測定機において、絶対形状の測定精度は、形状測定機の基準として用いられる球の直径校正精度に依存している。球の直径校正精度は、100 nmから200 nm程度の不確かさをもち、形状測定機のもつ測定の分解能や再現性に比べて高いとはいえない。今回、シリコン製ブロックゲージを基準とした三次元測定機による球直径校正方法を考案し、不確かさ15 nmで球の直径を測定できた。この球を自由曲面形状測定機の基準として用いることで、自由曲面形状の高精度化が期待される。
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両面干渉計による熱膨張係数測定
平井 亜紀子、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)
非接触で長さの国家標準にトレーサブルに試料絶対寸法を測定できる両面干渉計は、微小な寸法変化の高精度測定も可能であり、新規開発材料の寸法の経年変化測定や熱膨張係数の測定などに適用できる。両面干渉計により、シリコン製ブロックゲージの熱膨張係数を測定した例を報告する。
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ホモダイン干渉計における移動鏡角度に依存した周期誤差の二次元分布評価
堀 泰明
一次元変位計測を目的としたホモダイン干渉計の周期誤差低減に取り組んでいる。これまでの研究で光学素子の表面反射抑制及び数値補正により、数pmの周期誤差実現に成功した。しかし、一般に周期誤差は移動鏡の設置姿勢に依存することが知られており、1つの姿勢のみの評価では不十分である。そこで、移動鏡の角度を系統的に走査して周期誤差を評価し、その変化を二次元分布として取得することに成功したので報告する。
【工学計測標準研究部門 幾何標準研究グループ】
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X線CT校正用ゲージの光学的校正手法の開発
渡邉 真莉
近年、X線CTを用いて産業部品の三次元形状を計測する需要が高まっている。これまで、X線CT校正に用いる基準ゲージとして、樹脂中に測定球を埋め込んだゲージを新たに開発し、X線CTにより30 mmあたり3 µmの拡張不確かさで校正を行った。本研究では、さらに校正不確かさを低減するため、光学的に開発ゲージを校正する手法を開発する。
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Optimization of workpiece orientation to multiple measurement on X-ray CT
松崎 和也、渡邉 真莉、佐藤 理
三次元座標測定においてマルチステップ法を用いて誤差をキャンセルすることは小さな不確かさでの測定を実現するために非常に有用である。X線CT測定においてこの手法を適用するためには、装置が持つ誤差要因を考慮し、誤差が相殺できる有効な組み合わせを設定する必要がある。本研究では、測定時の器物姿勢の変化が測定結果に及ぼす影響を調査し、マルチステップ法に適した姿勢の組み合わせについて検討を行った。
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CMMスキャニングによる大曲率複雑形状測定の高精度化
佐藤 理、渡邉 真莉、松崎 和也、鍜島 麻理子、渡部 司、尾藤 洋一(工学計測標準研究部門)、高辻 利之(工学計測標準研究部門)
座標測定機(CMM)によるスキャニング測定では、曲率の大きな形状を測定した際にプローブ半径補正方向の誤差が大きくなり、高精度な形状測定が困難である。本研究ではプローブ半径補正方向を求めることなくプローブ中心座標から測定対象の機械的表面位置を推定する方法を提案し、実用性を検証した。
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結晶中のトリウム229原子核アイソマー状態をX線で制御
渡部 司、吉村 浩司(岡山大学)、吉見 彰洋(岡山大学)、平木 貴宏(岡山大学)、依田芳 卓(高輝度光科学研究センター)、永澤 延元(高輝度光科学研究センター)、瀬戸 誠(京都大学)、北尾 真司(京都大学)、山口 敦史(理化学研究所)、重河 優大(理化学研究所)、羽場 宏光(理化学研究所)、玉作 賢治(理化学研究所)、笠松 良崇(大阪大学)、Thorsten Schumm(ウィーン工科大学)
トリウム229原子核は、自然界で最小の8.4 電子ボルトの励起状態(アイソマー状態)を持ち、レーザーを使って励起することができる原子核である。この特性を利用して、超高精度時計「原子核時計」を作ることが期待されている。大型放射光施設「SPring-8」の高輝度X線を用いて、固体結晶中のトリウム229をアイソマー状態に励起し、それが基底状態に戻る際の光を観測することに成功。またアイソマー状態のほぼすべてが光を発して遷移することを確認し、その寿命とエネルギーを測定した。さらに、X線照射によってアイソマー状態の寿命を10分の1程度に短くできることを発見し、固体結晶中のアイソマー状態を外部から制御できる可能性を示した。
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顕微干渉計による相変化パターンの評価
菅原 健太郎、後藤 民浩(群馬大学)
顕微干渉計による段差測定において、材料の相状態(結晶相⇔アモルファス相)の違いによる効果(光反射の位相変化)を評価するため、弊所と群馬大学の間で共同研究を行ってきた。これまでの開発技術のポイントは、実験の再現性向上につながる成膜装置の高性能化、精密計測のための相変化パターンの考案、パターン作成のためのレーザ描画装置の開発であった。今回、現象の理解につながるより定量的な結果が得られたので報告する。
【工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ】
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新しい1キログラムの実現方法
倉本 直樹、狩野 祐也、藤田 一慧、大田 由一、張 ルウルウ(物質計測標準研究部門)、東 康史(物質計測標準研究部門)、大久保 章(物理計測標準研究部門)、稲場 肇(物理計測標準研究部門)
2019年、質量の単位「キログラム」の定義が130年ぶりに改定された。新たな定義はプランク定数にもとづく。計量標準総合センターでは、シリコン単結晶球体中の原子数を計測することで新たなキログラムを実現する。本発表では、2021年から2023年にかけて実施されたキログラム実現技術の国際比較への参加結果について報告する。国際比較の結果にもとづき実施された「キログラムの合意値」の改定についても紹介する。
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キログラムを高精度に実現するための球体体積測定用レーザー干渉計の開発
大田 由一、倉本 直樹、大久保 章(物理計測標準研究部門)、稲場 肇(物理計測標準研究部門)
計量標準総合センターでは、シリコン単結晶球体中の原子数を計測することで、プランク定数にもとづくキログラムを実現している。球体中のシリコン原子数は、球体体積をレーザー干渉計によって測定することで決定する。体積測定を高精度化するための、干渉縞解析の高度化および青色半導体レーザーを用いた干渉計の開発について紹介する。
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自己参照型格子比較器による単結晶シリコンの格子定数の二結晶間比較
早稲田 篤
単結晶シリコンを用いたキログラム実現において、その格子定数測定は不可欠である。放射光を利用した自己参照型格子比較器を用いて、同位体濃縮単結晶シリコンの二結晶間格子比較を行なっている。格子定数が絶対測定された参照結晶と、試料結晶との格子比較を行なうことにより、試料結晶の格子定数を決定することができる。本発表ではこれらの技術について紹介する。
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絶対重力加速度計の国際比較
寺田 聡一(長さ標準研究グループ)、粥川 洋平
2023年9月にアメリカ・ボルダーで絶対重力加速度計の国際比較が行われた。この国際比較には、21の国や地域から30の研究所が参加した。この国際比較の結果を現地の様子と共に発表する。
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ボルトバランス法による微小質量測定装置の開発
藤田 一慧、金子 晋久(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)、堂前 篤志(計量標準普及センター)、天谷 康孝(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)、倉本 直樹
ボルトバランス法は、電極間の静電力を利用した微小質量測定方法であり、分銅を用いることなく、プランク定数にもとづく電気標準にもとづき、SIトレーサブルな質量測定を実現することができる。開発中のボルトバランス装置を高精度化するために、静電力発生部である円筒電極の蓋構造が質量測定に与える影響を、有限要素法を用いた数値計算によって評価した。評価結果の詳細について報告する。
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次世代冷媒R1132(E)の気相域における音速・誘電率測定
狩野 祐也、西橋 奏子、粥川 洋平、倉本 直樹
冷凍・空調機器に使用される冷媒の熱物性は、冷凍サイクルの性能を左右する重要な情報であり、機器の省エネ化や性能向上を図るために、幅広い温度・圧力にわたって正確な物性値情報が求められている。産総研では、音波と電磁波の共振現象を利用した気相域における音速と誘電率の同時計測技術を開発し、冷媒の精密物性評価に取り組んでいる。本発表では、地球温暖化への影響が極めて小さい次世代冷媒として期待されるR1132(E)の気相域における音速および誘電率測定について紹介する。
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次世代冷媒の液相域音速測定装置の開発
西橋 奏子、狩野 祐也、粥川 洋平、倉本 直樹
モントリオール議定書キガリ改正により、地球温暖化係数(GWP)が高い従来のHFC系冷媒に対する規制が世界的に強まる中で、GWPが極めて小さい次世代冷媒への期待が高まっている。HFO冷媒は次世代冷媒の有力な候補であり、実用化のために正確な熱物性情報が求められている。その液相域における音速データの取得を目的として、超音波パルス伝搬式の音速センサを用いた液相域音速測定装置の開発を行ったので紹介する。
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低GWP冷媒の特性予測における拡張対応状態モデルの新汎用パラメータの提案
粥川 洋平
地球温暖化係数の小さい新たな候補物質に関する熱物性値を精度よく予測するために、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷媒に対する拡張対応状態(ECS)モデルの汎用パラメータを提案する。このパラメータを用いることで、既存のHFO冷媒の蒸気圧と飽和液体密度の予測誤差は、それぞれ1 %と3 %以内に抑えられ、新規冷媒の事前評価にも適用可能である。
【工学計測標準研究部門 力トルク標準研究グループ】
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電磁力式回転トルク発生装置における同期制御システムの構築
西野 敦洋
本研究では、キッブルバランス法の原理に基づく電磁力式回転トルク発生装置を開発し、回転速度の変化がトルク計測に与える影響を実験的に検証することを目的としている。本発表では、電磁力式回転トルク発生装置において、磁気回路と矩形コイルの2つの回転軸を同期させるために、第3の仮想軸を設定した同期制御システムの開発について報告する。
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電磁力式動的トルク発生装置を用いた振動トルク計測評価に関する研究
濱地 望早来
本研究では、トルク計測機器の動的トルク計測の評価手法の確立を目指し、キッブルバランス法を応用した電磁力式動的トルク発生装置を開発した。本装置は、電磁力を用いて国際単位系(SI)にトレーサブルなトルクを発生させることが可能である。また、印加電流の制御により、任意波形の動的トルクの発生が可能である。本研究では、電磁力式動的トルク発生装置を用いた、振動トルク計測評価に関する研究について報告する。
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自己発熱による電磁力式微小力発生装置の固有値の変動
朱 俊方
本研究では、電磁力を利用した微小力発生装置に使用されている磁石の温度変動が装置自身に与える影響を評価した。定格容量20 mNおよび200 mNの力計に対してJIS B 7728に基づく校正を想定し、動的モード、暖機モード、および静的モードの各条件下で、磁石の温度変動と磁束密度の変動を調査した。その結果、装置自身の発熱が磁束密度の変動に影響を与え、力実現の不確かさの支配的な要因の一つであることが示された。特に定格容量200 mNにおいて、その影響が顕著に現れた。暖機モードの実施が、その影響を低減するのに効果的であることも確認された。
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異なる分解能を持つ指示装置を用いた力計の感度安定性の検討
林 敏行
材料試験機の力計測系や、これを校正するための力計は、校正又は使用する際にその読取分解能を考慮した不確かさ評価が必要となるが、過小評価の懸念がある。異なる分解能を持つ指示装置群を用意し、共通の力変換器を接続して測定を数度行うことによって、感度の安定性に及ぼす指示装置分解能の影響について実験的な検討を行った。古い世代の指示装置では、新しい世代のものと比べ、分解能だけでなく印加電圧の安定性等が劣るため、単純に分解能の違いだけを評価することができなかったので、今後は統計的な検討を進める必要がある。
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周期的に時間変化する力の計測装置の開発状況
長谷川 暉、林 敏行
材料の力学特性評価時などに応用される力標準は、トレーサビリティと国際比較による同等性確認により保証されている。現行の標準供給は時間変化しない静的力が主流であるが、自動車や航空業界では時間変化する動的力の計測が求められ続けている。本発表では、動的力計測の実現に向けて、我々が取り組んでいる正弦波形の周期力を発生および計測装置の開発状況について紹介する。
【工学計測標準研究部門 圧力真空標準研究グループ】
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液体用重錘形圧力天びんの発生圧力の短周期変動
梶川 宏明、飯泉 英昭
重錘形圧力天びんは非常に安定な圧力を発生できるとされているが、発生圧力の短時間の変動や、装置の設置・動作状態との関係は未評価のままである。本研究では、高分解能の圧力センサにより、重錘形圧力天びんによる発生圧力がピストンの回転に対応して周期的に変動する様子を観測した。発生圧力の安定性向上を目指し、圧力の短周期変動とピストンの回転時の動きとの関係を詳細に調べている。
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真空技術における計測標準と規格化の現状と課題
吉田 肇
日本の真空標準の供給は、1964年度(昭和39年度)に開始された。その後、社会ニーズの高まりを背景に、2009年に膨張法を中心としたトレーサビリティ体系の構築に移行し、現在に至っている。また、当グループの研究員は、真空技術のISO規格やJISの制定に協力してきた。本発表では、これらの現状をまとめるとともに、今後の課題について議論する。
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MEMS気圧センサのモジュール性能評価
小島 桃子
MEMS気圧センサの性能向上により、さまざまな場所で微小な気圧変動(インフラサウンド:超低周波音)の観測にも用いられている。これまで複数種類の気圧センサの温湿度特性を評価してきたが、今回はさらに特性評価を進め、同じセンサのモジュールの違いによる温湿度特性の違いや、インフラサウンド観測にも適した簡易的な応答特性評価について報告する。
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超高真空への排気過程に関する調査研究
長田 渉
超高真空への排気では容器壁面に吸着した分子の排気が律速となる。吸着分子は表面からの脱離と再吸着を繰り返しながら少しずつ排気されていく。従って、真空排気過程を理解するためには脱離分子が再吸着する確率(付着確率)と、分子が吸着してから気相へ戻るまでに要する時間(平均滞在時間)の評価が重要となる。本調査研究では、真空分野と表面科学分野のそれぞれで、付着確率と平均滞在時間がどのように評価されてきたのかを概説する。
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レーザ干渉計を用いた動的圧力計測システムの基礎的な計測特性
髙原 大地
インフラサウンド(超低周波音)用大気圧計の動的特性を評価するため、レーザ干渉計を用いた動的計測装置の開発を行っている。本装置の静的な圧力計測における不確かさ評価を行い、正弦波状の動的圧力に対する装置特性の評価と改良を実施中である。
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高圧力測定のロバスト性改善-圧力センサの設置姿勢、測定圧力媒体の影響を低減-
飯泉 英昭、梶川 宏明
高圧力測定用の高精度圧力センサは、設置姿勢および測定する圧力媒体の種類の影響を受ける事が判明しており、様々な現場で高精度測定を実現するためには、圧力センサのロバスト性を改善する必要がある。設置姿勢および測定する圧力媒体の種類とも、原因は重力による感圧部への作用の変化であることを特定した。本研究では、2台のセンサを組み合わせる手法を考案し、影響を10分の1に低減できることを実証した。
【工学計測標準研究部門 材料強度標準研究グループ】
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ロックウェル硬さ各スケールにおける効率的な不確かさ評価手法の提案
田中 幸美
ロックウェル硬さは、試験力や圧子形状の違いにより30スケールほど存在し、スケールごとに不確かさを評価する必要がある。硬さの計算方法の性質上、試験力や圧子形状などの感度係数は実験的に求められてきたが、全てのスケールで求めるには膨大な実験が必要となり、実施は困難である。本発表では、特に球圧子を用いたロックウェル硬さスケールでの感度係数を決定するための簡易的な非実験的方法を提案する。
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ロックウェルダイヤモンド圧子の校正
高木 智史
ロックウェル硬さの計量トレーサビリティにおいて、近年、ダイヤモンド圧子の校正に注目が集まっている。半径や角度などの形状計測と硬さの比較測定からなる圧子の校正技術の概要と、求められているトレーサビリティ体系について解説する。
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超音波パワー標準の200 Wへの拡張
内田 武吉
我々は、医用超音波機器から出力される超音波パワー測定に必要な標準を200 Wへ拡張した。今回は、カロリメトリ法による200 Wまでの測定結果、不確かさ評価、天秤法との比較による妥当性評価を報告する。
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血中成分測定デバイスに用いる音響センサの特性評価技術の開発―血糖値測定に求められる測定能力の検討―
千葉 裕介、吉岡 正裕
血中成分測定デバイスにおいて血糖値測定に用いるカンチレバー型音響センサの評価技術を開発している。グルコースを吸収する波長の赤外線レーザーを液面に照射し空気中に音波を発生させ、音波を受けて振動する音響センサと同様のカンチレバーの速度を測定する装置を構築した。この度は、グルコース水溶液の濃度変化に対するカンチレバーの振動速度変化、及び主要な測定値のばらつき要因を調べ、血糖値測定に求められる測定能力を検討した。
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IEC TC87(超音波) における医用超音波に係る技術動向
吉岡 正裕
超音波に関する技術の国際標準化活動はIEC(国際電気標準会議)に設置されたTC(専門委員会)の一つであるTC 87で進められいる。2025年1月末に産総研臨海副都心センターで開催されるTC87 WG(作業グループ)会議においても超音波測定技術や医用超音波機器に関連する規格の制定やメンテナンスについて議論される。報告者がエキスパートとして参加しているWG6(高強度治療用超音波と収束振動子)とWG8(超音波音場測定)で議論されている医用超音波に関する技術の動向について報告する。
【工学計測標準研究部門 液体流量標準研究グループ】
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高レイノルズ数における管摩擦係数
古市 紀之、小野 満里絵
円管流れにおける管摩擦係数は工学的に非常に重要であり、古くからの研究が行われてきている。しかしながら高レイノルズ数領域における管摩擦係数については実験ごとの偏差が大きく、十分な合意形成がなされていない。本報告では、幾つかの口径に対する実験結果と近年の文献からの結果を比較検討する。
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液体計測用流量計内部の液温見積り手法の試み
Cheong Kar-Hooi
体積流量計を校正する際に、流量計出口近傍に温度計を設置して、その温度測定値から流量計内部を通過する液温を推定する。この液温推定値は、体積流量計を通過する標準体積流量を求めるために、重要な測定パラメータであり、校正不確かさの一つの大きな要因になっている。そこで、本研究は、流量計内部の実際の液温と流量計出口での液温測定値との誤差を検証するとともに、流量計の内部液温を正確に見積もる手法を試みる。
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超音波パルストレイン計測法適用時のエリアジングや測定体積への影響に関する研究
和田 守弘
超音波パルストレイン法は超音波パルスを用いた流速分布計測法であり、速度レンジの拡張が可能な技術である。これまで、安定した配管流れにおいて実験的に検証を行っており、速度レンジを4倍まで拡張できることが確認されている。本研究では、流速分布変動の大きな流れ場におけるエリアジングや測定体積及び定在波の影響について検証した結果について報告する。
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スペクトル解析におけるレーザードップラー流速計の離散的時系列データの取り扱いについて
小野 満里絵、古市 紀之
円管流れにおける乱流構造を理解する上で、スペクトル情報は非常に有益である。乱流中には微細な構造から大きな構造まで多種多様な構造が存在し、それらを正確に捉えるには計測上のいくつかの問題を考慮する必要がある。本研究では、レーザードップラー流速計によって得られた速度の時系列データをもとにスペクトル解析を行う際の離散的データの補間方法やサンプリング周波数、計測時間等が結果に及ぼす影響について調査した。
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超音波放射特性の校正方法の開発
芳田 泰基
本研究では、ステレオ画像と超音波計測を組み合わせた新しい手法を開発し、3次元空間における超音波パルスエコーの伝搬特性を評価することを目的とする。独自開発のステレオビジョン装置を用いた球状粒子の3次元座標計測と超音波パルスエコーの同時計測を行う。水中にランダムに分散した多数の粒子からデータを取得することで、従来手法よりも高密度な3次元データが得られ、パルスエコーの空間分布評価を高度化することができる。
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MEMS微小流量校正チップに向けた熱式流量計測法の特性解析
加賀見 俊介、土井原 良次
微小流量デバイスは工学、化学、生物、医療など幅広い分野で利用が拡大している。本研究では、液体の微小流量を高精度かつ簡便に測定でき、さらに熱伝導率や粘性等の液物性による影響を受けづらい熱式流量計測法の実現に向け、実験や数値計算による特性解析を行う。
【工学計測標準研究部門 気体流量標準研究グループ】
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石油流量標準設備の改修に伴うダイバーター調整試験について
土井原 良次
石油流量標準設備は建設から20年以上が経過したため、大規模な改修作業を行った。精密な調整が必要な転流器(ダイバータ)についてもモータ、センサー等を更新したため、ダイバータタイミングエラーについて再評価を行った。ISO4185に記載されている2種類の方法のうち、今回は以前と異なるが、より作業効率の高い方法により評価試験を行ったのでこれを報告する。
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落球法による粘度絶対測定を確立するための管壁補正実験機構の開発
藤田 佳孝
粘度の高精度基準点実現を目指した落球法による絶対測定の開発について報告する。円筒型試料容器内壁(管壁)の境界条件が落球に及ぼす減速の影響を精密評価して落球終端速度を精度決定するための実験機構を開発し、試料容器内で遠隔駆動させる伝達機構を構築した。これらの機構を実験システムに組み込むことにより、相対不確かさ10-4レベルの粘度決定が期待できる。
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標準リークの長期安定性評価
新井 健太
リーク量を正確に測定するためには、校正されたリークディテクタを用いる必要がある。これを校正する際の現場計測器として用いられる「標準リーク」は、一定の気体流量を常に発生する器具であり、NMIJは極微量の気体流量を正確に測定できる装置により標準リークの校正サービスを実施している。長期にわたる安定性評価の結果、標準リークに通常の漏れ試験結果に影響を与えるような特性変化はなかったことが確認された。
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空気流の過渡的流量変化を計測する方法の考察
舩木 達也
数ミリ秒の動作速度を有する高速電磁弁やノズルフラッパー型サーボ弁など、空気圧制御に有用なバルブ類は、高速、高精度化が進んできている。一方、その特性評価を厳密に実施できる手段や装置の開発は不十分であり、解決すべき課題となっていた。本研究では、過渡的な流量変化が生じる環境を、機器要素ごとに分類、整理するとともに、過渡的変化が連続的か、一過性の場合かなどの発生条件も考慮した計測手段について考察する。
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微風速標準設備における測定部内部の背景気流計測
岩井 彩
微風速標準設備における測定部内部の気流(背景気流)は標準風速の誤差要因となるため、背景気流を極めて小さくする必要がある。本発表では、背景気流の発生要因として挙げられる測定部内の温度勾配に注目し、背景気流が現状より小さくなると予想される複数の温度環境条件で背景気流を計測した結果を紹介する。
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CO2削減利活用技術を支えるCO2流量評価システムの検証
竹川 尚希、舩木 達也、土井原 良次
近年、地球温暖化など環境問題への対応から、DAC、CCUS、メタネーションなどのCO2削減利活用技術が注目されている。これら技術の発展・推進には、回収量、充填量、反応量などのCO2量評価が重要であり、流量計による連続的なCO2量の計測は有望であると考えられる。そこで本研究では、開発中の国家標準にトレーサブルなCO2流量評価システムを検証する。
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高圧粘性測定用二重円筒形流路の開発
村本 智也、梶川 宏明(圧力真空標準研究グループ)、飯泉 英昭(圧力真空標準研究グループ)
高圧下における液体の粘性率測定の為のシステム開発の一環で二重円筒形高圧流路を開発した。本流路を用い、流路の上流と下流に生じる差圧と流量から高精度で粘性率を求めることが可能となる。本発表では開発した二重円筒形高圧流路で得られた測定結果を紹介する。
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熱活性過程を考慮した摩擦構成則と非線形粘弾性の関係 - 粘土の場合
村本 智也
構成則とは力と変形の関係を記述するものである。本研究では室内実験で観測された粘土鉱物の動的粘弾性が熱活性過程を考慮した摩擦構成則に基づく非線形Maxwellモデルによって定量的に説明できることを示す。これは、熱活性過程が巨視的な非線形粘弾性に反映されることを示唆する。
【工学計測標準研究部門 データサイエンス研究グループ】
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測定データのデジタル化を利用した測定要件の検証システムの研究
城野 克広
計測のリソース情報とプロセス情報の両面をデジタル化することで、機械的にそれらの妥当性をリアルタイム検証するシステムを開発している。本システムはラボラトリに設置する品質マネジメントシステムに沿ったアプリケーションの開発と、ネットワークを介してアクセスするアプリケーションにより実現する。これにより、測定データの一貫性・完全性を実現する。
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OIMLのDX及びD31改訂の動向
渡邊 宏
OIMLが目指す法定計量及びOIMLのデジタル化について、デジタル化タスクグループの活動を紹介する。また、OIML D31「ソフトウェア制御計量器の一般要件」の新しい改訂作業を紹介する。
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ドイツのスマート・メーター・ゲートウェイ認証におけるセキュリティ・モジュールの技術要件に関する調査研究
松岡 聡
ドイツ情報セキュリティ庁(BSI)では、2010年代半ばから、技術ガイドライン TR-01309に基づいたスマート・メーター・ゲートウェイの認証制度を開始している。2023年に施行されたエネルギー転換のデジタル化法(GNDEW)の影響もあり、近年、TR-01309によって認証された製品の数が増加している。TR-01309は計量、ネットワーク通信、暗号など多岐に渡る技術が含まれる膨大な文書である。本発表では、その一部であるセキュリティ・モジュールに関する技術要件の概略について報告する。
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機械学習を用いた不確かさ評価方法のケーススタディ
髙井 絢之介
機械学習を計測技術に応用する研究は様々見られるが、その値の不確かさ評価に関しては未だ課題が多い。近年報告されている深層学習の不確かさ評価法を適用し、不確かさが評価が定量的にどのように算出されるかについてケーススタディを行った結果を報告する。
【工学計測標準研究部門 型式承認技術グループ】
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ガスメーターの技術基準改正における放射電磁界イミュ二ティ試験装置群の能力向上(周波数3 GHz)
長野 智博、堀越 努、福崎 知子、大谷 怜志(法定計量管理室)
特定計量器の型式承認試験やOIML適合性試験では耐電磁環境性能の評価を行うが、代表的なものとして放射電磁界イミュ二ティ試験がある。ガスメーターの技術基準が改正され、放射電磁界イミュ二ティ試験の周波数範囲が3 GHzまでに拡張したことから、同試験装置群の能力向上を図った。信号発生器など既存装置を活用しながら、パワーアンプなどを更新することによって、周波数3 GHzの試験が実施できるようになったため、そのプロセスを含めて紹介する。
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ランタイム検証を用いた監査証跡確認のデモンストレーション
岡本 隼一、渡邊 宏
計量器の監査証跡と検査式をツールに入力して、監査証跡が法的要件に適合しているかどうかを自動判定させる監査証跡確認の方法を開発中である。今回、自前で用意した監査証跡と検査式を用いて、監査証跡確認をデモンストレーションしたので、その報告を行う。
【工学計測標準研究部門 計量器試験技術グループ】
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密度・比重浮ひょうの検定検査の安全性向上に向けた溶液評価などの取り組み
高橋 豊、藤本 安亮、井上 太
密度・比重の測定に用いる浮ひょうの検定検査は、各都道府県の検定所・浮ひょうの製造事業者・適性計量管理事業所で行われているが、一部の密度範囲おいて毒性・危険性のある液体を用いている。作業者の安全性向上、環境負荷の低減のために、より安全な代替液の使用が望まれている。代替液の評価試験からJIS改正までの各種取り組みについて紹介する。
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環境に配慮した電気式基準器導入の取り組み
井上 太、原田 克彦、藤本 安亮、高橋 豊、神長 亘(法定計量管理室)、福崎 知子(型式承認試験技術グループ)
水銀使用の計量器については水銀汚染防止法の規制により製造が原則的に禁止となっている。計量法により規制されているアネロイド型血圧計・圧力計及び抵抗体温計の検定・検査については、その多くが水銀使用の基準器が使用されており、その取扱い・使用が困難な状況となっている。そのため水銀使用の基準器の代替対応として電気式基準器の導入を行ったのでその取り組みについて紹介する。
【工学計測標準研究部門 質量計試験技術グループ】
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自動捕捉式はかりJIS B 7607改定における活動 -検定/検査効率化のためのチェックポイントモデルの提案-
田中 良忠
JIS B 7607では、計量法により規制の対象となっている自動重量選別機の技術的要求事項及び試験方法が定められている。60回の測定から平均や標準偏差を求める必要があり、試験時間の短縮などの効率化が求められている。当グループでは、試験効率化のために測定回数に応じたステップ状の最大許容誤差による試験手法(チェックポイントモデル)を開発した。改訂作業中であるJIS B 7607への産総研からの提案内容を報告する。
【工学計測標準研究部門 流量計試験技術グループ】
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水素利用が超音波式ガスメーターに与える影響と課題調査
青木 彩、島田 正樹、和田 守弘(液体流量標準研究グループ)
近年、水素調理機器の開発など家庭における水素利用の研究開発が活発である。本研究では、各家庭へ水素が供給される際、超音波式ガスメーターで計量することを想定し、その影響と課題について調査を行っている。水素利用における課題の主要因は、都市ガス等と水素の音響特性が大きく異なることにある。今回は、従来の超音波式ガスメーターを用いて超音波パルスの受信波形を実測・評価した結果を報告する。
【物質計測標準研究部門 無機標準研究グループ】
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オゾンリアクションICP-QMS/QMSによる元素分析の進展2024
朱 彦北、浅川 大樹(分析計測標準研究部門)
オゾンをリアクションガスとするタンデム四重極型誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-QMS/QMS)は、酸素リアクションに比べ優れたスペクトル干渉分離能力を有する。本発表は、発表者らの研究で得られた関連成果(カルシウム、アルミニウム、放射性ヨウ素の分析への応用)を紹介する。
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プラスチックCRM中の重金属元素の定量分析および化学種分析に関する検討
名取 幸花、大畑 昌輝
本発表では、重金属分析用ポリプロピレン樹脂CRM(NMIJ CRM 8133-a)に含まれるカドミウム、クロム、水銀、鉛についてICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)を用いて分析した結果を報告する。また、XAFS(X線吸収微細構造)法を用いた、当CRM中の六価クロムの定量分析についても紹介する。
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燃焼IR法を用いたカーボンネガティブコンクリートのCO2固定量評価(1)
大畑 昌輝、田原 和人(デンカ株式会社)
グローバルな社会課題であるCO2削減のへの対応として、CO2固定化コンクリート(カーボンネガティブコンクリート)の開発が国際的に推進されている。発表者は「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」に参画し、カーボンネガティブコンクリートのCO2固定量評価の一手法として、燃焼IR法を用いたCO2固定量の評価に関する研究を実施してきたので、これまで得られた知見について報告する。
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国際比較CCQM-K96.2023二クロム酸カリウムの電量滴定
日比野 佑哉
電量滴定とは、測定対象を直接電解、もしくは電解発生させた物質を反応させて滴定を行う技術である。NMIJはこれまで電量滴定により高精度に物質量を測定した標準物質を供給してきた。本測定技術を用いて二クロム酸カリウムの電量滴定の国際比較CCQM-K96.2023に参加したので、その結果について報告する。
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半減期が長い放射性核種の質量分析とその不確かさ評価
浅井 志保
半減期が長い放射性核種は、放射線計測が適用できない場合があり、代替法としてICP-MS等の質量分析計を用いる定量法の開発が進められている。しかし、認証標準物質の入手が困難であるため、現状では分析値の信頼性を明確に示すことが難しい。本研究では、SIトレーサブルに値付けする手法を開発し、分析値の信頼性向上への貢献を目指す。
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シングルパーティクルICP質量分析法を応用した多孔質微粒子への生体分子担持量評価
宮下 振一、福田 枝里子(細胞分子工学研究部門)、小椋 俊彦(健康医工学研究部門)、松浦 俊一(化学プロセス研究部門)、高木 俊之(細胞分子工学研究部門)
ナノ・マイクロメートルサイズの多孔質微粒子は、ドラッグデリバリーシステム、バイオセンサー、生体分子の分離精製のための担体として注目されている。しかし、微粒子上に担持したタンパク質、脂質、低分子化合物、ポリマー等の担持量を個々の粒子レベルで評価する手法は限られていた。そこで本研究では、これまで様々なナノ粒子や炭素系マイクロ粒子の個別粒子分析に使用されてきたシングルパーティクルICP質量分析法(spICP-MS)を応用し、規則性細孔を有するメソ多孔質シリカ微粒子への生体分子の担持量評価手法の確立を目指した。本発表では、これまでに成功した鉄結合タンパク質及び脂質膜の担持量評価事例を紹介する。
【物質計測標準研究部門 標準物質評価研究グループ】
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一次標準測定法によるテルルの精密分析に関する検討
和田 彩佳、山内 喜通、成川 知弘
テルル標準液の濃度測定法として一次標準測定法である酸化還元滴定法が適用でき、他法と比較して高精度定量が可能である。ただし、調製操作および滴定前処理における妨害成分(塩酸、硝酸)の存在はバイアスとなる。本講演では、残留する妨害成分の影響について、市販の標準液等を試料として、滴定、イオンクロマトグラフィーおよびLC-ICP-MSにて詳細に検討し、滴定法によるテルルの精密分析を実現するための条件について報告する。
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原子炉を利用する中性子放射化分析法
三浦 勉
原子炉を中性子源として利用する放射化分析法は固体試料中の目的元素を直接測定できる優れた分析法である。ここでは、中性子放射化分析法の原理、特徴を紹介した後、最近開発した半減期11秒の放射性同位体F-20を測定する分析法を高純度金属、合成樹脂中のふっ素測定に応用した結果を報告する。
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海水中りん酸イオン分析の高度化
チョン 千香子、山内 喜通
海水中のりん酸イオンの分析には、イオンクロマトグラフィーと吸光光度法が汎用されている。しかし、感度や夾雑物の影響で、極低濃度の分析は難しい。本研究では、NMIJ CRM 7601-a海水(栄養塩;極低濃度)の高度化を目指し、両者を組み合わせたポストカラム誘導体化法を適用して、高感度かつ選択性の高いオンラインりん酸イオン分析法を開発した。開発した方法の精確さと、海水への適用可能性について発表する。
【物質計測標準研究部門 ガス・湿度標準研究グループ】
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気相での温度計測・温度計校正における不確かさ評価の研究
石渡 尚也
相対湿度計測の精度にも大きく影響する、気相での温度計測・温度計校正に関し、近年その不確かさや液相での不確かさ要因との違いが注目されている。本研究では、相対湿度試験槽を用い、支配的な不確かさ要因とされる温度均一性や、気相では寄与が大きいとされる外部への熱流出・輻射の影響を調べた。本発表では、10 ℃~80 ℃における気相での温度計測・温度計校正の不確かさについて、評価結果とその詳細を報告する。
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高精度磁気式酸素測定システムの開発
下坂 琢哉
空気中の酸素濃度を約100万分の1の超高精度で測定するシステムについて発表する。このシステムは、主に大気・生物・海洋・化石燃料間の炭素循環評価に資することを期待して、酸素濃度を相対精度0.0002 %(2 per meg)で測定することを目指して開発してきた。今回は測定システムの温度を精密空調機で制御することにより測定値を安定化した時の結果を報告する。
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熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフによる不安定なピークリテンションタイム下での標準ガスの定量分析
松本 信洋
マニュアルのキャリアガス流量制御器が用いられている熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフは、そのロバスト性及び使いやすさから、現在も標準ガスのルーチン分析に用いられている。 国際比較サンプルである標準ガスを定量した時に、分析値のばらつきが大きかった事があった。その際、ピークの面積とリテンションタイム間に相関がある事を見出し、その相関を用いて分析値を補正した結果について報告する。
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大気観測用標準ガスの消費(圧力減少)にともなうボンベ内におけるCO2濃度の変化_Part 2
青木 伸行
大気中CO2観測観測では、濃度決定に用いる標準ガス中のCO2濃度が吸着や熱分別により変化して観測結果に影響を与えることが問題となっている。昨年度、標準ガス中のCO2濃度の変化が高圧ガス容器から取り出すガスの流量や高圧ガス容器の向きに依存することを報告した。今年度は、さらに吸着や熱分別それぞれの寄与について考察した結果について報告する。
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小型CRDS微量水分計の製品化
阿部 恒
キャビティリングダウン分光法(CRDS)の小型化技術を開発して、これを民間企業に移転し、共同研究を通じて小型ガス中微量水分計を製品化した。独自の光学設計・特許取得済みのスペクトル解析技術・部品数の削減と最適化によって、米国製スタンダード品に比べて容積1/4、重量1/3、価格1/2を実現した。半導体・二次電池等の製造分野への貢献が期待される。
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加湿アルコール標準ガスの用時調製に係る検討
渡邉 卓朗、下坂 琢哉
アルコール検知器の校正で用いられる加湿アルコール標準ガスは、主としてアルコールシミュレータによる用時発生法が用いられている。実機を用いて標準ガスを発生させたところ、発生ガス中のアルコール濃度は時間経過とともに低下した。また、標準ガスの発生流量が大きいほど、濃度低下速度は大きくなった。得られたデータを用いて、複数台接続時のアルコール濃度をシミュレートした。
【物質計測標準研究部門 有機組成標準研究グループ】
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定量分析に用いるPFAS標準物質
羽成 修康、山﨑 絵理子
PFAS(ペル及びポリフルオロアルキル化合物)は、耐熱性・耐薬品性など優れた物理化学的性質を有するため、様々な産業分野で使用されてきた。しかし、有害性及び環境残留性が問題となり、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約などにより規制され始めた。そのため、これら化合物を適正管理する上では、分析機器校正用の標準物質や、分析法の妥当性確認用の標準物質が必須となる。そこで本稿では、国家計量標準機関が供給する標準物質について紹介する。
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技能試験の玄米試料に含まれる有機リン系農薬に対する信頼性が高い定量値の付与
大竹 貴光
他所が実施した技能試験で使用された、玄米試料中に含まれる有機リン系農薬(クロルピリホス、ダイアジノン、フェニトロチオン、マラチオン)に、信頼性の高い分析値を付与した。われわれの分析値は、信頼性をより確保するため、厚生労働省通知試験法(一斉試験法)、QuEChERS法、QuEChERS改良法(STQ法)の3種類の分析法を用いて求めた。
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ポリエステル繊維及びその分解生成物中の色素の定性分析によるポリエステル解重合法の評価
中村 圭介
ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の解重合反応生成物に含まれる色素の定性分析結果を基に、産業技術総合研究所触媒化学融合研究センターで開発したPETの低温解重合法と現行の高温解重合法を比較・評価した。本研究の結果より、低温解重合法は、高温解重合法と比較して分解生成物中に残存する色素の数を大幅に減少できること、また高温解重合法とは異なり、生成物中の色素構造を推定可能な場合があること等の利点を持つことが判明した。
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異なる定量方法による土壌及び水道水中PFAS測定値の比較
山﨑 絵理子
ペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は環境中に極微量含まれるため精確な測定値を得るのが難しい。本発表では、SIトレーサビリティの確保された測定値を得るために適用が推奨されている、一次標準測定法の一つである同位体希釈質量分析法を用いて、土壌及び水道水中のPFOS、PFOA、PFHxS、PFNAについて測定した。この方法で得られた測定値を検量線法、内標準法と比較し、結果の違いについて解析したので報告する。
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固体及び液体中の水分測定技術に関する調査研究
木原 真穂
水分測定は石油産業・医薬品・食品・化学工業など様々な分野での品質管理において重要である。本調査研究では、代表的な測定法であるカールフィッシャ-滴定法をはじめとする測定技術の概要や標準物質の開発状況について調べ、今後の測定法開発や認証標準物質開発に向けて現状と課題をまとめた。
【物質計測標準研究部門 有機基準物質研究グループ】
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カルサイトを用いたラマン分光装置の波数分解能評価
伊藤 信靖
波数分解能は、ラマン分光装置や測定条件の性能を知るための重要な要素である。炭酸カルシウム(カルサイト)を用いることにより、レーザの線幅を含めた装置全体の波数分解能が評価できるものの、結晶性や測定温度によって評価結果が変わる可能性も指摘されていた。このため、カルサイトを用いて波数分解能評価を行う上での影響要因を検証した。
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高純度有機標準物質 NMIJ CRM 4036-b ジブロモクロロメタンの開発
清水 由隆、鮑 新努、北牧 祐子、伊藤 信靖
計量法トレーサビリティ制度(JCSS)で供給される標準液の計量計測トレーサビリティ確保に用いられる、高純度ジブロモクロロメタン標準物質のロット更新を行った。認証値となる純度の算出法として一次標準測定法の一つである凝固点降下法を用いており、純度測定を含めた標準物質開発について報告する。
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ポストカラム反応GC-FIDとGC/MSから求めた相対モル感度によるポリ塩化ビニル樹脂中のフタル酸エステル類の定量
北牧 祐子、大塚 聡子、井原 俊英、伊藤 信靖
定量核磁気共鳴分光法(qNMR)とクロマトグラフィーを組み合わせた相対モル感度を用いる方法は、各対象成分の標準物質を必要としない定量を可能にし、標準液校正などに実用化してきた。しかし、qNMRは分離能が十分ではなく、類似構造の不純物が含まれると適用が困難な場合があった。そこで、qNMRに代わりポストカラム反応GC-FIDを適用し、ポリ塩化ビニル樹脂中のフタル酸エステル類の濃度を保証した認証標準物質(NMIJ CRM 8152-a)を定量して方法の妥当性を評価した。
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1H NMRおよび31P NMRを用いたオリゴヌクレオチドの正確な定量分析
山﨑 太一、柴山 祥枝(バイオメディカル標準研究グループ)
核酸医薬品は高い特異性を持ち、化学合成が容易なことから近年、精力的に研究開発が進められており、毎年新たな品目が承認・実用化されている。一方で、医薬品としての品質管理について分析技術が確立されていないために、品質管理項目の内容については明記されていない。本発表では、qNMRで水素およびりんを定量対象核種として、4-mer(配列:AGTC)のDNA型オリゴヌクレオチド水溶液を分析対象にqNMR法の有用性を検討した。特に、分析条件の最適化に加え、従来法による妥当性確認や不純物の影響も検討した。
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定量NMR用標準物質(1H, 31P)フェニルホスホン酸の定量NMRによる均質性および安定性試験法の確立
岡本 千奈、中村 哲枝、山﨑 太一
定量NMR用標準物質(1H, 31P)フェニルホスホン酸は、HPLC-UVで不純物が検出されないほど高度に精製された原料を用いたため、HPLC-UVを用いた面積百分率法による均質性や安定性の評価が困難であった。そこで、1H 定量NMRによりDSS-d6の重水溶液の濃度を評価し、この溶液を基準にフェニルホスホン酸を評価した。これにより、調製操作を簡略化しつつ、品質評価に十分な有効桁での精確な評価法を実現した。
【物質計測標準研究部門 バイオメディカル標準研究グループ】
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AIST-MABトリプシン消化物の調製とペプチドマッピングへの応用
絹見朋也、水野亮子
ペプチドマッピングや各種ペプチドのLC-MS, LC-UV分析のためのシステム適合性評価に利用可能な、AIST-MABのトリプシン消化物を大量調製した。AIST-MABを変性還元アルキル化、トリプシン消化を行いペプチド混合物を得た。このトリプシン消化物をアミノ酸分析により定量し、分注後凍結保存した。LC-MSによるペプチドマッピングを実施し、各ピークの同定、定量を行った結果を報告する。
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核酸低吸着容器における核酸の保存状態の評価
藤井 紳一郎、柴山 祥枝、塩田 圭右(日本ゼオン株式会社)、小浜 千裕(日本ゼオン株式会社)、板垣 望(日本ゼオン株式会社)、澤口 太一(日本ゼオン株式会社)
主にHPLCを用いた容器等に対する高分子核酸の吸着評価技術を構築し、短期的な容器への吸着評価や試料保存中の安定性評価を行ってきた。この評価技術を利用して、透明性と低不純物特性を有するシクロオレフィンポリマー(COP)を素材とした核酸低吸着容器を開発した。開発した容器を使用して、核酸を対象とした試料調製時の吸着や低温環境下での安定性評価を実施したので報告する。
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高分解能質量分析計を用いた麻痺性貝毒候補標準物質中不純物の定性
川口 研
本年度から開始されたプロジェクト「ホタテガイ等の麻痺性貝毒検査における機器分析導入に向けた標準物質製造技術の開発」において、麻痺性貝毒候補標準物質として、サキシトキシンの鏡像異性体の開発が進められている。本研究では、高分解能質量分析計を用いて、サキシトキシン鏡像異性体中の不純物の解析を試みた。また、液体クロマトグラフィーでは、HILICカラムを使用して、分析条件等を検討した。
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L-グルタミン酸標準物質(第2ロット)の開発
宮本 綾乃、惠山 栄、加藤 愛
アミノ酸分析は、食品、医薬品、生体など様々な分野で広く行われている。こうしたアミノ酸分析の信頼性を確保するためには、分析機器の校正などに用いる正確な値の付いたアミノ酸標準物質が必要である。本研究では、中和滴定法、窒素分析法、OPA法、カールフィッシャー水分測定法、光学異性体分離分析法を用いて、L-グルタミン酸標準物質の第2ロットの開発を行った。
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デジタルELISAによるノロウイルスVLP測定
長谷川 丈真、安達 友里子、七種 和美、加藤 愛
ノロウイルスを高感度で測定するために、デジタルELISAによる測定系を確立した。ノロウイルスのウイルス様粒子(VLP)を測定対象として、2組の抗体ペアを用いて2つの測定系を構築し、それぞれの測定系における検出感度や検量線の直線性を評価した。また、測定を繰り返し行うことで測定間、測定内のばらつきを評価し、堅牢性を評価した。
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オリゴ核酸の質量分析に向けた2D-LCによるイオン交換分離とオンライン脱塩条件の検討
安達 友里子、藤井 紳一郎、七種 和美、加藤 愛
核酸医薬の品質評価方法としてLC/MS法は主流となっている。しかしながら、低分子から高分子までの核酸の分離手法である陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)は移動相に多量の塩を含むため質量分析には不向きである。そこで二次元液体クロマトグラフィー(2D-LC)を用いてAEX分離後のオンライン脱塩条件を検討した。本発表では、逆相クロマトグラフィーを二次元目に接続した2D-LC/MSの結果を報告する。
【物質計測標準研究部門 ナノ材料構造分析研究グループ】
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材料の液中分散機構の解明
中村 文子、加藤 晴久
材料の液中分散機構の正しい理解は、適切な分散条件選択や最適な機能材料作製の観点から非常に重要である。 今回は特に超音波照射に基づく材料の液中分散機構について、各種計測技法を用いた評価結果を講ずる。
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シリコン極薄膜中での光電子の有効減衰長の測定
今村 元泰
光電子分光による定量分析を行う時には物質中での光電子の減衰長(AL)を把握することが重要である。本研究では膜厚既知の極薄膜について放射光を利用して得られた光電子分光スペクトルから有効減衰長(EAL)を求めた。
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In vitro試験による純マグネシウムの局所分解挙動の研究
張 ルウルウ
人体にとって重要な必須元素であるマグネシウム(Mg)は、生体内で材料表面から分解吸収され最終的に生体組織に置換されることから、新規生体材料として期待されている。本研究は、培養液に浸漬(In vitro試験)した純Mgの表面形状観察と化学組成結合分析を行った。特にMg表面の局所分解挙動に注目し、培養液中のMgイオンとCO2の濃度変化が表面生成物の分解・析出への影響を調べた。
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ナノ材料のマルチモーダル分析に向けたX線吸収分光と小角X線散乱の同時計測技術の開発
白澤 徹郎
燃料電池など様々な工業製品を構成するナノ材料の機能を左右するのは、ナノ構造の大きさや形状といったナノスケール構造、および原子間距離、配位数、化学状態といった原子スケールの特性である。小角X線散乱法とX線吸収分光法は、それぞれ、ナノスケールと原子スケールの構造観察に用いられる計測法であり、ナノ材料分析に相補利用されている。本研究では、X線吸収スペクトルと小角X線散乱(SAXS)を同時かつ高速に計測する方法の開発を行い、触媒ナノ粒子の同時高速分析に成功した。
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ライン構造を用いた3次元X線顕微鏡の倍率校正
東 康史、熊谷 和博、伊藤 美香
3次元X線顕微鏡(3DXRM)は、サブマイクロメートル以下の分解能で物質の内部および外部構造を計測できる非破壊イメージング技術である。3DXRMの倍率校正を行うための標準試料としてライン構造を試作し、校正された走査電子顕微鏡(SEM)を用いてそのライン間隔を評価した。ライン間隔と3DXRMの評価結果より、3DXRMの倍率校正係数を求めた。
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時間分解レーザー分光を用いたペロブスカイト太陽電池の劣化解析技術開発
松﨑 弘幸
発表者らは、これまでに超短パルスレーザーを用いた過渡吸収分光や過渡発光分光等の時間分解レーザー分光システムを開発・整備し、様々な光機能性材料への適用を進めてきた。本発表では、ペロブスカイト太陽電池を対象に、過渡発光分光法等を用いた、同太陽電池の劣化解析技術開発の現状について報告する。
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光機能性有機材料の物性予測AI基盤モデルの開発に向けた取り組み
細貝 拓也、宮田 哲、椿 真史(人工知能研究センター)
我々はこの数年、光機能性有機材料の光機能を高度に制御するための物性予測AI基盤モデルの開発を進めている。本発表ではその取り組みとして行っている計測装置開発や実験項目のオートメーション化、文献からのデータ収集、そしてAIモデル開発の現状について紹介する。
【物質計測標準研究部門 ナノ構造計測標準研究グループ】
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測長原子間力顕微鏡と透過電子顕微鏡により比較測長を可能とする標準物質の試作
小林 慶太、木津 良祐
透過電子顕微鏡(TEM)を用いた国際単位系(SI)にトレーサブルな寸法測定を実現するために、測長原子間力顕微鏡(m-AFM)とTEM双方で側壁距離を評価できる周期パターンを持つ標準物質(RM)を試作した。このRMは、Siウェハの(-110)面上に幅80 nmから500 nm、長さ80 nmから500 nmの周期的な正方形と長方形のドットパターンをリソグラフィしたものであり、薄膜加工なしでTEMとm-AFMの比較観察ができるように設計されている。
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多数本の半導体ラインパターンに対するラインエッジラフネス分布の計測
木津 良祐、三隅 伊知子、平井 亜紀子(工学計測標準研究部門)、権太 聡
半導体製造での計測要求に、ラインパターンの側壁粗さを指すラインエッジラフネス(LER)がある。現状の走査電子顕微鏡によるLER計測では、測定ノイズ起因誤差への対処として数百以上の多数本パターンの測定とノイズ補正アルゴリズム適用により、平均情報として単一のLER結果を得る。本研究で提案するノイズ補正アルゴリズムは、1本のパターンに対して適用可能なため多数本分のLERの分布計測が可能になった。LER分布計測はプロセス管理等に資すると期待できる。
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原子間力顕微鏡を用いた酸化グラフェンの高さ分布測定
三隅 伊知子、菅原 健太郎(工学計測標準研究部門)、熊谷 和博、木津 良祐
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて酸化グラフェンの高さ分布測定を行った。AFMを用いた高さ測定結果は、測長AFMを介して国際単位系(SI)にトレーサブルである。酸化グラフェン200個の高さを測定した結果、最頻区間は20 nmから25 nm、最小区間は5 nmから10 nm、最大区間は120 nmから125 nmと、広い分布であった。
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ナノラフネス測定( < 1 nm)における探針と機器ノイズの評価
井藤 浩志
ナノラフネス、特に1 nm未満の形状を正確に測定するためには、探針形状と機器ノイズの評価が重要になる。これらを評価する方法を開発し、サブナノメートルのラフネス測定結果を検証するための理想的なテスト試料(原子配列からある程度計算できる資料)を試験的に作成した結果について報告する。
【物質計測標準研究部門 粒子計測研究グループ】
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エアロゾル粒子電荷調整装置に対する高負荷性能試験
桜井 博
気中に浮遊する粒子の計測では、電気移動度法と呼ばれる粒径分級技術とともに、粒子に電荷を持たせる電荷調整技術が用いられる。電荷調整装置の性能は粒径や濃度の計測精度に大きく影響するが、性能試験技術が整っておらず、十分な性能確認がなされていない場合も多い。本発表では、粒子濃度が高く電荷調整装置への負荷が大きい場合の性能評価を可能にする新たな試験法を紹介する。
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微分型電気移動度分析器(DMA)の分級粒径の校正サービス
村島 淑子、高畑 圭二、桜井 博
微分型電気移動度分析器(DMA)は、エアロゾル粒子を電気移動度に基づいて分級する装置であり、自動車排ガス規制における粒子数測定器の粒径ごとの検出効率評価に用いられている。今回、これまでの粒径校正技術を拡張し、DMAの5つの分級粒径(10 nm, 15 nm, 23 nm, 41 nm, 55 nm)に対する校正サービスを始めたので、本発表で紹介する。
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200 nm単分散粒径標準粒子の開発
高畑 圭二、後藤 英樹(株式会社ポリスフェア)、桜井 博
体外診断薬として利用されている200 nmのポリスチレンラテックス粒子が相対標準偏差1 %程度の狭い粒径分布を持つことから、粒径標準粒子として利用できる可能性があることを見い出した。本発表では、200 nmの単分散粒径標準粒子の開発について報告する。
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単一粒子光散乱観察による液中粒子の材質密度粒子密度の計測
松浦 有祐、花井 睦美(ナノ材料構造分析研究グループ)、中村 文子(ナノ材料構造分析研究グループ)、加藤 晴久
粉体材料の製造における粉体構造の推定において、粉体粒子の材質密度は重要な評価パラメータとなる。本発表では、単一粒子の液中運動の解析による、液相粒子の個数基準での材質密度計測法の開発について報告する。本手法は、混合物など複雑な組成の粉体材料の評価や、異物粒子の検出・識別に貢献すると期待される。
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光散乱法による巨大分子の計測
高橋 かより
光散乱法のうち特に静的光散乱法は、光の波長よりも計測対象のサイズが十分に小さく、内部干渉が無視できる分子や粒子に対して発達してきた計測法である。しかし、高重合度の合成高分子や生体分子においては、より大きなサイズへの計測ニーズが高まっている。本研究では、静的光散乱法をより大きなサイズ領域へ拡張できる解析法について報告する。
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気相噴霧と電気移動度法による細胞曝露試験用粒子懸濁液の粒径分布測定とその妥当性評価
車 裕輝、桜井 博、奥田 知明(慶応義塾大学)
微小粒子状物質(PM2.5)の毒性学的研究を目的として、細胞曝露試験用粒子懸濁液の正確な粒径分布測定法を考案した。本法では、粒子懸濁液の前処理として透析処理による分散媒交換を行い、これを気相噴霧することで微分型移動度分析装置により粒径分布を測定する。粒径・粒径分布既知の標準粒子を用いて本法の妥当性評価を行った結果を報告する。
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Particle Size Magnifierを用いた疎水性ナノエアロゾル粒子の計数
飯田 健次郎
Particle Size Magnifier(PSM)は過飽和蒸気の核凝縮を利用することで、市販の凝縮粒子カウンタ(CPC)では検出が難しい粒径・粒子種のエアロゾル粒子を計数するために用いられる。テトラデカンをPSMの作動液として用いることで、疎水性のナノ粒子を高効率で検出・計数できるシステムを開発した。疎水性ナノ粒子の例として、エアロゾル化したフラーレンC60を試験粒子として用いた。そして粒径約1 nmのフラーレンC60の単量体を約30 %の効率で検出できることを実証した。
【物質計測標準研究部門 熱物性標準研究グループ】
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スーパーコンティニュームパルス光源を用いた高速化時間分解サーモリフレクタンス装置
八木 貴志、有馬 寛人(材料構造・物性研究グループ)、山下 雄一郎
時間分解サーモリフレクタンス法は、薄膜材料の伝熱特性の評価において欠かすことのできない技術である。一方、時間分解法では、パルス光源のディレイを細かく制御するために、比較的長い実測定時間を有した。本研究では、幅広い波長帯を発光するスーパーコンティニューム光のパルスを狭い波長帯で複数分割し、それぞれに異なるディレイを与えた後、これを時間分解測定に用いることで、測定時間の大幅な短縮を可能とする装置を開発した。
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フラッシュ法熱拡散率計測技術の低温拡張に関する調査研究
上治 寛
NMIJの熱拡散率の標準供給は室温以上に限られている。近年、室温以下における熱拡散率のニーズが増加しており、本調査研究ではフラッシュ法の低温拡張技術に焦点をあて、今後の技術開発の方向性を明らかにする。
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低温における熱伝導率計測技術及び標準開発に関する調査研究
辰巳 翔一
室温~極低温下での材料及び製品開発において、断熱性能等の指標となる熱伝導率は正確な測定が必要とされる物性値である。本調査研究では、近年の低温での熱伝導率計測技術の調査を通じて、今後の計測技術及び標準開発の方向性を示す。
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革新的カーボンネガティブコンクリートの熱物性評価 (2)
山田 修史、田原 和人(デンカ株式会社)
グローバルな社会課題としてCO2削減のへの対応として、CO2固定化コンクリートの開発が国際的に推進されている。熱物性標準研究グループはグリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発に参画し、CO2固定化コンクリートの熱物性評価のための評価システム開発および既存技術を活用した材料評価を実施している。今回は新規開発した熱膨張測定システムの性能評価およびセメント試験体のトライアル測定結果などについて報告する。
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パルス通電加熱とシャドウグラフ法にもとづく超高温固体熱膨張計測装置
折笠 勇
2000 Kを超えるような超高温状態での固体熱膨張特性は、熱機関における耐熱超合金の構造部材としての安定稼働性評価に必須な情報である。従来一般的な接触測定法に対して、本研究では、瞬間的な試料加熱が可能なパルス通電加熱技術と、試料の長さ変化を非接触に測定可能なシャドウグラフ法を組み合わせた超高温固体用の熱膨張計測装置を開発している。今回は、新規開発した計測装置のプロトタイプについて、システム構成やトライアル測定結果などについて報告する。
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マグネシウム合金の熱物性評価
阿部 陽香、山田 修史、阿子島 めぐみ(物質計測標準研究部門)、中津川 勲(マルチマテリアル研究部門)、黄 新ショウ(マルチマテリアル研究部門)、BIAN Mingzhe(マルチマテリアル研究部門)、千野 靖正(マルチマテリアル研究部門)
輸送機器・通信用機器の筐体等に必要な軽量かつ高強度・強剛性を有する材料として、マグネシウム(Mg)合金の開発が注目されている。機械的強度に加え、高い放熱性等の熱的性能も期待されることから、正確な熱物性値を把握することが必要となる。サステナブルインフラ研究ラボ・インフラ長寿命化技術研究チームでは、中部センターにおいて開発された新規Mg合金、および純Mgや汎用Mg合金の熱物性評価を目的として研究を進めており、今回は比熱容量等の測定結果について報告する。
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高温融体のXAFS測定法の開発
渡辺 博道、新納 圭亮(福井大学大学院)、有田 裕二(福井大学)
高温融体の熱力学・伝導特性を導出する手段として、機械学習で推算した原子間ポテンシャルを基にした計算手法の活用が期待されている。そこで、原子間ポテンシャルから比較的容易に計算できる近接構造パラメータ(配位数、原子間距離等)を実測値と比較することで機械学習ポテンシャルの妥当性を評価することを最終的目標として、高温融体の近接構造パラメータを導出するための高温その場XAFS測定法の開発を開始した。過去の関連研究の問題点を踏まえ、考案した試料加熱システムとジルコニア融体の測定結果を報告する。
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MEMSデバイスとプローブ型センサーを基盤技術とした周期加熱法によるソフトマテリアルの熱拡散率計測
劉 芽久哉
ソフトマテリアルの局所的な構造を反映した熱物性計測の直接計測には、微小な領域での熱物性計測を実現可能なMEMSデバイス、プローブ型センシングシステムを活用した、頑健な微小領域測定システムの構築が必須である。本発表では、これまで開発してきた周期加熱法を基盤とした局所領域熱物性計測システムおよび、周辺のMEMSデバイス作成について報告する。
【物質計測標準研究部門 材料構造・物性研究グループ】
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フォノン熱輸送スペクトル測定に向けた高周波変調時間領域サーモリフレクタンス法の開発
志賀 拓麿、山下 雄一郎、八木 貴志
フォノン熱輸送スペクトル測定を行うためには、フォノン輸送の弾道性が顕在化するように加熱領域を制限する必要がある。高周波数変調により熱拡散長を制限した周波数領域サーモリフレクタンス法が提案されているが、高周波計測特有のノイズ除去に課題が残る。我々は、高周波変調と時間領域サーモリフレクタンス法を組み合わせ、ノイズに対して頑健な熱輸送スペクトル計測法の開発に取り組んでいる。
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薄膜面内方向熱伝導率計測技術の開発3
山下 雄一郎、有馬 寛人、八木 貴志
本研究は熱と電気の測定方向を一致させ、薄膜試料の真の性能指数を評価するために、時間領域サーモリフレクタンス測定法を用いた薄膜面内方向の熱伝導率計測技術を開発している。測定原理と解析物理モデルが整合するよう、加熱レーザービームをフラットトップ形状に加工するとともに、ストライプ状にビームを形成する方法を見直したので、その効果を報告する。
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分子動力学計算を用いた結晶構造解析手法の開発Ⅱ
藤久 裕司
結晶構造情報は材料開発に不可欠であり、その取得には粉末X線回折法が広く用いられている。特に新物質の合成や相転移によって新規構造が得られた場合、従来の指数付けやリートベルト法による解析では、格子定数が正しく求まらなかったり、水素やリチウムなどの軽元素の位置や空間群の選定を誤ることがある。本発表ではこうした課題を解決するために構造解析に古典および量子分子動力学計算を導入した事例を紹介する。
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情報量規準を用いた単結晶精密原子変調構造解析によるヘテロ界面の評価
後藤 義人、藤久 裕司
単結晶原子変調構造の解析について、変調波に伴う過適合の影響を赤池情報量規準(AIC)よりも抑制効果が大きいベイズ型情報量規準(BIC)を適用した成功例について報告する。複合結晶構造の異なる対称性を持つ異種層間で形成されるヘテロ界面における格子歪みの緩和の重要性に着目し、ヘテロ界面の原子間距離の変調による局所的ミスフィット格子歪みの緩和に伴う過適合現象の抑制指標としてBICによる評価を行った。
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AIST先端ナノ計測施設(ANCF)固体NMR共同利⽤の成果事例
服部 峰之、大沼 恵美子、佐藤 景一
文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)事業において固体NMR装置群の共同利用を実施しており、国内の大学や研究機関との計測事例について紹介する。【新規核種の固体NMR測定】NMRの対象となる核種一覧表のNMRパラメータの参照により、産総研の600 MHzの固体NMR装置に装備されるプローブMAS7L(低周波数対応)に対応する核種を選定した。公開中のデータベースに掲載がない核種は、25Mg,43Ca,47Ti,49Ti,50V,53Cr,61Ni,67Zn,89Y,91Zr,95Mo,97Mo,101Ru,109Ag,135Ba,143Nd,163Dy,169Tm,173Yb,176Lu,189Os,201Hgであった。これらの核種について、代表的な含有化合物の固体NMRスペクトルを測定し、これらの測定結果から、化学シフトの基準として適した参照用試料の選定した。
【物質計測標準研究部門】
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有機化合物の網羅検出のためのGC-MS用オプションユニットの試作開発
津越 敬寿
有機化合物のスクリーニング分析として、イオン付着イオン化質量分析法(IA/MS)の強みは、広範な有機化合物に対して(擬)分子イオン計測性能に優れる点である。既設GC-MS装置に取り付けることでIA/MS測定を実現できるオプションユニットを開発したので、これを紹介する。
【堀場製作所-産総研 粒子計測連携研究ラボ】
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堀場製作所-産総研 粒子計測連携研究ラボ 研究紹介
舘野 宏志、桜井 博、本田 真也、北原 鷹大
HORIBA Institute for Particle Analysis in AIST TSUKUBA(HIPAA)では、世界トップレベルの粒子計測を可能とするシステムの実用化を目指し、計量標準総合センターと生命工学領域において2つの研究テーマに取り組んでいる。本発表ではそれら研究テーマの内容とこれまでの成果を紹介する。
【島津製作所-産総研 アドバンスド・ソリューション連携研究ラボ】
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島津製作所-産総研 アドバンスド・ソリューション連携研究ラボのご紹介
渡辺 真、吉田 祐一、関口 勇地、稲垣 和三
連携研究ラボは「プラネタリーヘルスを目指した革新的な技術・製品の開発と国際標準化」を目的に、先端的分析計測手法の国際的な標準や規格などのルール形成に戦略的に取り組むことで、グローバルな競争力の向上を目指す。また、有用物質を効率的に生産する微生物の迅速な探索手法・システムを構築し、農業・医薬品・食品・ヘルスケア・バイオものづくり分野などに展開する。今後、シナジーを創出できるテーマの探索を継続し、研究分野を拡大してゆく。