2024年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 1日目
- 物理計測標準研究部門 [01 - 54]
- 分析計測標準研究部門 [55 - 94]
- サステナブルインフラ研究ラボ [95 - 97]
【物理計測標準研究部門 時間標準研究グループ】
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イッテルビウムの新時計遷移の精密分光を用いた素粒子・原子核物理
川崎 瑛生、小林 拓実、西山 明子、田邊 健彦、安田 正美
精密分光は18桁の精度に達しており、高エネルギー現象による低エネルギー系の摂動を識別できる。これにより、従来は高エネルギー加速器を用いて行われていた原子核物理や素粒子物理において、精密分光を通じて新たな道が開かれた。我々はイッテルビウムの6s2 1S0–4f135d6s2(J=2)遷移(波長431 nm)を用いてYbの超微細構造定数の決定、原子核の荷電半径の評価、中性子と電子の間に作用する新しいボソンの探索などの基礎物理探索を行なっている。
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時間標準のためのヨウ素安定化レーザーの開発
西山 明子、大久保 章(光周波数計測研究グループ)、小林 拓実、川崎 瑛生、田邊 健彦、安田 正美、稲場 肇(光周波数計測研究グループ)
現在、UTC(NMIJ)のフライホイールとしては、高い周波数安定度をもつ水素メーザーが用いられている。本研究では、水素メーザーと同等以上の周波数安定度を持つヨウ素安定化レーザーを開発することを目指しており、これまでに5×10-15の安定度を達成した。発表では、開発したヨウ素安定化レーザーの概要と今後の取り組みについて報告する。
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高い稼働率の光格子時計を用いた高精度な時刻系の生成
小林 拓実、保坂 一元(物理計測標準研究部門)、西山 明子、川崎 瑛生、和田 雅人(光周波数計測研究グループ)、稲場 肇(光周波数計測研究グループ)、田邊 健彦、安田 正美
過去に高い稼働率での運転に成功した光格子時計のデータを用いて、その際の水素メーザー原子時計の周波数を調整することで、光格子時計を基準とした時刻系を生成した。この時刻系は、230日間にわたって、国際的な時刻の標準である協定世界時(UTC)との時刻差±1 ns(10億分の1秒)以内という世界最高水準の同期精度を達成できた。
【物理計測標準研究部門 光周波数計測研究グループ】
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光共振器を用いたデュアルコム分光ガス計測の高感度化
大久保 章、柏木 謙、橋口 幸治(物質計測標準研究部門)、稲場 肇
デュアルコム分光法は、高分解能・高周波数精度・高速でガス分析の有力なツールとして期待されている。従来のデュアルコムでは、光源の強度揺らぎや光学系の波長依存性などによりスペクトルが歪み、感度・精度が制限される。本研究では分子吸収スペクトルの微分成分が光共振器の共鳴周波数変化に比例する効果を用いた周波数ベースのデュアルコム分光を行い、強度揺らぎの影響がほとんどない吸収スペクトルを取得することに成功した。
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光コムによる正確で実用的なミリ波帯周波数合成法
中島 悠来、稲場 肇
次世代移動通信(6G)の実用化には、協定世界時(UTC)が運用されているマイクロ波周波数からミリ波帯周波数を合成する必要がある。光コムを用いてUTCから連続発振レーザーの光周波数を2つ合成し、それらの差周波としてミリ波帯周波数を合成する方法が有力だが、従来はコムモード次数を知るための高価な測定器と煩雑な補助測定が必要であった。本研究では簡便にモード次数を決定する方法いくつか考案し、実験を行った。
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高速・高分解能なデュアルコム分光の信号対雑音比の向上
柏木 謙、大久保 章、稲場 肇
光周波数コム(光コム)を2台用いて分光計測を行うデュアルコム分光は、一般的に周波数分解能と測定速度がトレードオフである。我々はそれらを各光コムで役割分担して各役割に適した種類の光コムを組み合わせた高速で高分解能なデュアルコム分光を開発した。また、本方式は従来方式と比較して単位時間あたりの信号対雑音比(SNR)が高く得られる。本発表では、さらにSNRを向上するための開発を行った結果について紹介する。
【物理計測標準研究部門 量子電気標準研究グループ】
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無冷媒極低温電流比較器を目指したヘリウムガスチャンバーの設計
岡崎 雄馬、大江 武彦、金子 晋久(物理計測標準研究部門)
量子ホール抵抗標準において量子ホール効果と標準抵抗器をつなぐデバイスとして極低温電流比較器が使用される。極低温電流比較器は液体ヘリウムを利用して冷却して使用するものであるが、近年のヘリウム価格の高騰や入手困難があり標準供給の維持が困難になりつつある。本研究では液体ヘリウムを使用しない無冷媒冷凍機に極低温電流比較器を入れて動作させるためのヘリウムガスチャンバーの設計や動作評価について発表する。
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安定な金属箔10 kΩ標準抵抗器の開発
大江 武彦、金子 晋久(物理計測標準研究部門)、野里 英明(分析計測標準研究部門)、須磨 秀之(アルファ・エレクトロニクス株式会社)、座間 松雄(アルファ・エレクトロニクス株式会社)、熊谷 誠弥(アルファ・エレクトロニクス株式会社)
共同開発した10 kΩの金属箔標準抵抗器の性能に関して評価結果を報告する。製造直後より抵抗値は安定であり、2年間の経年変化は年間10 nΩ/Ω前後、23 ℃における一次温度係数は約10 (nΩ/Ω)/K、湿度係数は0.2 (nΩ/Ω)/%未満、気圧による変化は5 (nΩ/Ω)/500 hPa未満であった。またMIL規格に則った振動試験を実施し50 nΩ/Ω未満で安定であることを確認した。
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磁場環境下における超伝導シールドを用いたジョセフソン電圧標準の動作
松丸 大樹、大江 武彦、中村 秀司、丸山 道隆、金子 晋久(物理計測標準研究部門)
希釈冷凍機等の低温系にジョセフソン電圧標準を実装することで、量子効果を用いた精密な電圧計測・生成技術を直接利用することが期待できる。本研究では、磁場中での直接利用が難しいジョセフソン電圧標準を超伝導体を用いた磁気シールドとともに実装することで、量子化ホール抵抗標準などの磁場を必要とする素子との同時駆動を目指している。発表では、シールド内で発生させた量子化電圧の発生磁場依存性の測定結果を報告する。
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量子電圧生成技術の現状と展望
小柳 香穂
ジョセフソン効果に基づいた量子電圧生成に関して、直流電圧校正や交流電圧標準の世界各国における技術の現状および最新の研究動向について調査研究を行った。また、IoTネットワークの基盤であるセンサの校正など現行の国家標準システムに対応していない微小電圧標準や量子コンピューター、精密電気計測技術など、産業界や電気計測・材料といった幅広い分野への普及に向けた量子電圧生成技術の応用研究等についても報告する。
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基準電圧源脱着型デジタルマルチメータの開発
丸山 道隆、大江 武彦、浦野 千春(物理計測標準研究部門)、金子 晋久(物理計測標準研究部門)、金井 貴宏(株式会社エーディーシー)、今井 慧(株式会社エーディーシー)、田中 功(株式会社エーディーシー)
計測器の “心臓部” である基準電圧源の脱着が可能な、これまでにないデジタルマルチメーターを共同開発した。基準電圧源のみを取り外して校正を受けられるため、計量トレーサビリティを効率的に確保でき、測定精度向上と運用コスト低減との両立を可能にする。発表では、開発したシステムの詳細に加え、温度係数や安定度などの評価結果について報告する。
【物理計測標準研究部門 応用電気標準研究グループ】
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熱電モジュールの変換効率評価手法の精密比較
大川 顕次郎、天谷 康孝(G-QuAT)、坂本 憲彦、金子 晋久(G-QuAT)
環境発電技術として注目される熱電発電技術において、市場に普及するモジュール型デバイスの標準的評価技術は未だ確立されていない。我々は代表的な3種類の評価手法を同一の市販モジュールを用いて変換効率の評価を行ったので報告する。特に熱放射による熱損失の影響に注目した数値計算と合わせて、各手法の評価結果の違いを議論する。
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極低温における熱電計測技術開発の取り組み
大川 顕次郎
熱流と電流の非線形素子(非相反熱電素子)の実現はミクロな熱制御や冷却、論理演算などの重要な要素技術となり得る。我々は熱雑音を抑えたミリケルビン領域での高感度熱電計測系の開発を進めている。本発表では無冷媒希釈冷凍機に搭載するサンプルステージの試作状況と構造について報告する。
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交流抵抗標準とキャパシタンス標準に関する調査研究
森 風歌
電気関係量の計量で重要な要素である交流抵抗標準とキャパシタンス標準に関して、計量標準総合センターにおける測定原理および整備状況について調査を行う。あわせて、各国標準研究所における整備状況を調査する。
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湧水に浸すと発電できる「湧水温度差発電」
天谷 康孝、一ノ瀬 彩(茨城大学)、井川 怜欧(地質調査総合センター)、坂本 萌乃(茨城大学)、扇谷 匠(茨城大学)、小西 百恵(茨城大学)、大川 顕次郎、坂本 憲彦、金子 晋久(物理計測標準研究部門)
湧水と大気の自然な温度差から発電できる技術を考案した。電池なしで湧水の温度を計測し、無線通信で自動的なデータ収集に成功した。地域資源である湧水の保全と持続可能な利用に貢献することが期待される。
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ダイヤモンド量子センサを用いた電流比較器による精密電流計測
村松 秀和、貝沼 雄太(東京科学大学)、波多野 雄治(東京科学大学)、天谷 康孝(G-QuAT)、加藤 宙光(先進パワーエレクトロニクス研究センター)、坂本 憲彦、山田 達司、浦野 千春(G-QuAT)、金子 晋久(G-QuAT)、阿部 浩之(量子科学技術研究開発機構)、小野田 忍(量子科学技術研究開発機構)、大島 武(量子科学技術研究開発機構)、波多野 睦子(東京科学大学)、岩﨑 孝之(東京科学大学)
電流比較器は、電流が生成する磁束を高感度に検出することで精密に電流比を決定することができる電流計測技術である。本研究では、電流比較器に高感度磁場センサであるダイヤモンド量子センサを組み込むことで、従来の電流比較器に比して高精度かつ広帯域な電流計測技術を開発することを目指している。本発表では、試作したダイヤモンド量子センサを搭載した電流比較器による電流計測を行ったので、その結果について報告する。
【物理計測標準研究部門 電磁気計測研究グループ】
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平面回路評価技術を活用した電子デバイス・材料開発
坂巻 亮
これまで開発した産総研独自のウエハレベル計測技術により得られた成果や知見を活用した所内外との融合研究による新しい構造の電子デバイスや材料の研究開発を推進している。NEDOポスト5G先導研究においてはオンウエハ計測技術の知見を活用した新しいデバイス構造を提案して伝送特性の評価精度を向上させることに成功した。他にも印刷配線技術や蓄電材料開発(Solid-NEXT(NEDO))等の融合研究を推進しており、これらの研究開発状況について報告する。
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電磁波を用いた木材含水率の非破壊センシング装置
渡部 謙一、昆 盛太郎
RF、マイクロ波、ミリ波を用いた電磁波センシング技術により食品や農畜産物等の非破壊検査装置の開発を進めている。今回は、高含水率の製材品および木材チップを対象とした木材含水率の非破壊センシング装置のデモ機と測定技術の概要を紹介する。なお、ここで紹介する木材含水率の非破壊センシング装置は、日本アンテナ(株)および森林総研と連携し開発を行った。
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大規模量子コンピュータ向け技術ロードマップとサプライチェーン強靭化への取り組み
昆 盛太郎、荒川 智紀、金子 晋久(物理計測標準研究部門)
量子コンピュータの大規模化に必要となる部素材の開発目標を定量化・明確化することで、非量子分野の企業からの参入障壁をなくし、サプライチェーンの強靱化を図って、我が国の技術でチョークポイントを押さえる取り組みを進めている。同時に、量子コンピュータシステムの大規模化に必要となる部素材開発の中核を担うハードウェアコンポーネントテストベッドの構築を進めており、本講演ではこれら取り組みの概要について紹介する。
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電子波束伝播型量子計算機の開発
伊藤 諒
大規模な量子計算機を実現するための一つの大きな障壁は量子ビットを制御するために必要となる配線や制御装置数の爆発的な増加にあると言われている。その問題を回避するための方式の一つは飛行する量子ビットを用いることにより少数の制御装置で多数の量子ビットを制御するというものである。産総研を含む国際共同研究チームでは伝播する電子波束を用いた量子計算機を提案しており、研究開発が進められている。
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高周波インピーダンス標準の供給と発展
伊藤 諒、岸川 諒子
高周波コンポーネントの評価装置であるベクトルネットワークアナライザーで高精度測定を行うためには電磁波透過・反射の標準となる校正器が必要である。この校正器の性能は産総研を含めた国家計量研究所が供給する高周波インピーダンス標準にトレーサブルに評価されており、世界における高周波コンポーネント評価の正当性を担保している。本発表では産総研における高周波インピーダンス標準供給の取り組み等について紹介する。
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高周波領域における非線形インピーダンス測定技術の研究開発
岸川 諒子
産総研では、高周波領域の線形インピーダンス測定および校正技術の研究開発を行ってきた。通信技術の発展に伴いトランジスタ等の非線形デバイス評価の重要性が高まっていることを受け、現在は、これまでに蓄積した線形インピーダンス測定技術を非線形インピーダンス測定へと拡大することを目指している。本発表では、高周波非線形インピーダンス測定の研究成果と今後の展望を報告する。
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量子・疑似量子アニーリング技術を活用したメタサーフェス反射板の最適設計
加藤 悠人、飴谷 充隆(電磁界標準研究グループ)
次世代テラヘルツ通信のエリア拡大には、メタサーフェスに基づく異常反射板の利用が有望視されている。産総研ではこれまで、高精度の反射板評価技術の構築やそれを活かした高機能・高効率のメタサーフェス反射板の開発を推進してきた。今年度は、量子・疑似量子技術や機械学習を活用した、メタサーフェスの設計ツール・評価ツールの構築を進めている。本発表ではそのうち、量子・疑似量子アニーリング技術を活用したメタサーフェス反射板の反射方向・ビーム幅制御設計について報告する。
【物理計測標準研究部門 高周波標準研究グループ】
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テラヘルツ波帯カロリーメータの性能改善に向けた断熱導波管の設計解析について
東島 侑矢
世界無線通信会議では2031年の暫定議題でテラヘルツ帯の周波数分配の拡大が挙げられるなど社会普及にむけた整備が進んでおり、標準開発の重要性が高まっている。テラヘルツ波帯電力の標準器としてカロリーメータ法が採用されているが、周波数の上昇に伴い発振器出力低下や伝送損失などの課題からこれまでの断熱構造を持つ導波管カロリーメータでは実用的な不確かさの測定を実現することは困難である。これらの解決に向けた取り組みとして、新型断熱導波管の設計と解析結果について報告する。
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ラビ減衰量の線形性評価:量子マイクロ波減衰量標準に向けて
山本 真大、東島 侑矢、木下 基
最近我々は原子のラビ周波数に基づくマイクロ波減衰量「ラビ減衰量」の量子測定法を実証した。ラビ減衰量は低周波分圧器を基準とする従来法と比べ安定性・普遍性の向上が期待されるが、ダイナミックレンジや精度に課題があった。本研究では原子の共鳴周波数を精密に決定することで、ラビ減衰量のダイナミックレンジが向上したことを報告する。将来的には量子マイクロ波減衰量標準の実現を目指している。
【物理計測標準研究部門 電磁界標準研究グループ】
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セシウム原子の磁気副準位間のエネルギー差を利用した低周波帯における電磁波可視化における周波数の可変技術
石居 正典
従来の電磁波の可視化技術と言えば、アンテナや電磁界センサをアレイ化または空間中で掃査し、受信で得られた強度分布のデータを2Dや3Dの表示画面にマッピングする手法が一般的である。一方、我々の研究では、レーザーを吸収したセシウムの気体原子が発する赤外線の蛍光を利用した電磁波の可視化手法の検討を行っている。本報告では低周波帯(kHzからMHz程度)において提案する電磁波の可視化技術に対し、観測対象となる周波数の可変技術に関する検証実験を行ったので報告する。
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ハイトパターンによるオープンサイト特性評価
髙橋 直央
1 GHz以下の周波数帯域ではダイポールアンテナが信頼性を求められる測定に用いられているが、アンテナは周囲環境によってその特性が変わるため、標準アンテナを校正するオープンサイトには理想的な半自由空間のサイト特性が求められる。CISPR16-1-4で規定される手法ではアンテナをグランドプレーン上で高さ掃引するハイトパターン測定を行い、理論値からの差によってサイト特性を評価する。本報告ではサイト特性に影響を与える平坦度改修前後のサイト特性比較を行った結果を報告する。
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電界プローブ補正係数校正の周波数拡張
森岡 健浩
電界強度を測定する電界プローブの校正には既知の電界を生成するが、周波数帯域によって複数の手法を組み合わせることで周波数帯域をカバーする必要がある。しかし、一般の電界プローブを標準電界によって直接校正することが難しい帯域もあるため、仲介器として小型で電磁界に対する侵襲性の低い光電界プローブの標準電界に対する応答を校正し、これとの置換法で一般の電界プローブの補正係数を100 kHzから6 GHzまでの帯域で校正する技術について報告する。
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ガウス過程回帰を用いたアンテナ近傍界遠方界変換測定のサンプリング効率化に関する研究
飴谷 充隆、加藤 悠人(電磁気計測研究グループ)
近傍界遠方界変換を用いたアンテナ放射パターン計測では、2次元表面の電界分布を測定する必要があり、連続測定できない方向の走査数が測定時間に寄与し、通常の近傍界測定では数時間から十数時間の測定時間がかかる。本発表では、電界分布をガウス過程でモデル化し、非測定点の電界分布を、測定点からのガウス過程回帰により推定することにより、測定点数を減らし、近傍界遠方界変換の測定時間の短縮を目指した研究について報告する。
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産業用6軸アームロボットを用いたマルチ形状スキャン対応アンテナ放射パターン計測システムに関する研究
飴谷 充隆
近傍界遠方界変換を用いたアンテナ放射パターン計測では、被測定アンテナの放射パターンによって、最適な受信プローブ走査形状が異なるため、アンテナに応じて、平面、円筒面、球面の3種類のスキャナ装置を準備する必要があり、さまざまなアンテナに対応するためには高い装置コストが必要となる。本発表では、比較的安価な産業用6軸アームロボットを用いて、アンテナの近傍界計測装置を構築し、平面、円筒面、球面のすべてに対応可能な、マルチ形状スキャン対応アンテナ放射パターン計測システムの開発を目指した研究について報告する。
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ホーンアンテナ利得測定システムの改良
She Yuanfeng
NMIJは1アンテナ法を用いて、1 GHzから18 GHzの広帯域ホーンアンテナに対してアンテナ係数の校正を行なっている。本研究では、従来の3アンテナ法測定装置を改造し、1アンテナ法にも対応可能とした。これにより、40 GHz以下の広帯域ホーンアンテナ利得測定が一つのシステムで可能となり、5Gや6G通信で使用される多様なアンテナ形状に対する評価が可能となったので、この技術を報告する。
【物理計測標準研究部門 温度標準研究グループ】
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高温域においてT-T90を評価可能な音響気体温度計の開発
ウィディアトモ・ジャヌアリウス、三澤 哲郎(量子計測基盤研究グループ)、斉藤 郁彦、中野 享、河村 泰樹、小倉 秀樹
現在、熱力学温度(T)と1990年国際温度目盛(ITS-90)により実現された温度T90との温度差(T-T90)の評価が、世界各国の研究機関において進められている。NMIJでは、これまで、水銀の三重点(-38.8344 ℃)からガリウム(Ga)の融解点(29.7646 ℃)の温度範囲で(T-T90)を精密に評価可能な音響気体温度計(AGT)の開発を行ってきた。本発表では、Gaの融解点以上の高温域で(T-T90)を評価可能な高温用AGTの開発状況について報告する。
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ガリウムの融解点実現装置の作製と評価
斉藤 郁彦、ウィディアトモ・ジャヌアリウス
熱力学温度Tと1990年国際温度目盛により実現された温度T90との温度差(T-T90)を精密に評価するためには、T90のベースとなる温度定点を着実に実現する必要がある。しかし国際比較の結果、ガリウムの融解点(29.7646 ℃)で、NMIJの値は不確かさの範囲で一致しているものの、他の機関と比較して低めの値となった。そこで、ガリウムの融解点セルを新たに作製し、既存のセルと比較することで、定点実現温度の妥当性の検証を試みた。
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超高温域における温度計測技術の高度化に向けた熱電対開発に関する調査研究
小野 稜平
近年、SiCパワー半導体の製造プロセス等では超高温域(1500 ℃以上)での精密温度計測需要が高まりつつある。熱電対はこれらの温度計測で数多く利用されているが、現在IEC等で規格化された熱電対では超高温域での安定性が問題となっている。そのため、多くの研究機関において安定性に優れた新規熱電対開発が試みられている。本発表では、超高温域における熱電対の安定性に関する研究動向について調査した結果を報告する。
【物理計測標準研究部門 光放射標準研究グループ】
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分光応答度標準に基づく2次元スキャン法による市販V(λ)受光器の照度応答度評価
木下 健一
現在、照度応答度標準の校正体系は標準電球に依存しているが、標準電球の枯渇により将来的に維持が困難になると予想される。一方、分光応答度に基づいてV(λ)受光器の分光放射照度応答度を直接決定できれば、標準電球を用いることなく照度応答度の決定が可能となる。そこで今回、分光応答度標準に基づく2次元スキャン法を用いて市販V(λ)受光器の照度応答度評価を実施したので報告する。
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錐体分光感度に基づく分光視感効率の導入が測光に及ぼす影響評価
二宮 博樹
近年、測光で広く用いられる明所視標準分光視感効率(V(λ))に代わるデータセットとして、網膜上の視細胞にある錐体の分光感度に基づいた新しい分光視感効率(VF(λ))に注目が集まっている。本発表では、VF(λ)を用いる場合に生じる従来の測光量との差や、既存測光器(照度計)に対するスペクトルミスマッチ補正係数を評価した結果を議論する。
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SC光源を用いた疑似単色光発生システムの波長トレーサビリティ構築
中澤 由莉、神門 賢二(応用光計測研究グループ)
近年、研究が進められている標準LEDを用いた測光・放射標準体系の確立のためには、分光測定によるLED評価の高精度化が不可欠である。このため、我々は、分光測定で用いるマルチチャンネル型分光放射計の特性評価の高精度化を目的として、スーパーコンティニウム(SC)光源を利用した疑似単色光発生システムを開発した。本発表では、開発したシステムの波長トレーサビリティ体系の構築について報告する。
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簡易分光を用いた実用紫外放射照度計測技術の開発
岩佐 祐希、木下 健一、蔀 洋司
殺菌用途に用いられる紫外光源の多様化に伴い、多様なスペクトルを持つ光源に対して測定が可能な計測器の開発が求められている。本研究では、簡易的な分光手法を活用し、同一の放射照度計で多種の光源を測定可能な測定技術の開発を行った。殺菌用紫外光源を利用する作業空間の環境測定を見据えた、実効放射照度評価への展開を目指している。
【物理計測標準研究部門 応用光計測研究グループ】
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光度標準電球のスペクトルを再現するLEDベースの標準光源
神門 賢二、木下 健一(光放射標準研究グループ)、中澤 由莉(光放射標準研究グループ)、石田 幸平(日亜化学工業株式会社)、藤木 藍(日亜化学工業株式会社)、二階 眞子(日亜化学工業株式会社)、新見 由美子(日亜化学工業株式会社)、寺西 秀貴(日亜化学工業株式会社)、西岡 哲也(日亜化学工業株式会社)
光度標準電球を用いた照度計の校正体系は、照明産業で長い期間、有効に機能してきたが、標準電球の生産中止により、この校正体系の維持が困難になっている。このため産総研を含む国家計量標準機関には、代替光源に対する強い要望が寄せられている。我々はこの要望に応えるべく、光度標準電球のスペクトルを再現するLEDを利用した標準光源(イルミナントA標準LED)の開発を行ったので報告する。
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近接場光を用いた高減衰・偏光無依存ビームサンプリング技術
徳田 将志、沼田 孝之
レーザ加工の進化に伴い、光源パワーの安定度を現場でコンパクトにモニタできる高耐力なビームサンプリング技術が求められている。従来型のフレネル反射を利用したサンプリング素子は、偏光特性や減衰量に制限があり、高出力レーザに適用するには検出器を含む光学系の大型化や応答速度の課題があった。本研究では近接場光を利用し、従来よりも大きな光減衰量と偏光無依存性を確保した小型なビームサンプリング技術を開発した。
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実用蛍光体を用いた温度分布イメージング技術の開発
清水 雄平
蛍光体の温度特性に基づく温度計測(蛍光温度計測)技術は、熱電対など電気式の温度センサでは計測困難な電磁場環境でも使用でき、エレクトロニクス分野等での活用が期待される。本研究では、白色LED照明用として普及しているY3Al5O12:Ce3+蛍光体のカメラ撮影を通じて発光強度比測定を行うことにより、0.1 K未満の高い分解能の温度分布イメージングを実証したので報告する。
【物理計測標準研究部門 量子計測基盤研究グループ】
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超低温環境をうまく使うためのサーマルマネジメントデバイスの開発
中川 久司
超低温環境が必要な超伝導量子コンピュータでは、量子ビット数の増加による大きな発熱が問題となります。一方で、そういった環境をつくる希釈冷凍機などの冷凍能力は、原理的に温度の低下とともに小さくなります。このように限りある冷凍能力を最大限に活用するには、熱負荷の低減や熱流量の制御など超低温下でのサーマルマネジメントが重要となります。我々は、伝導による熱流入量を低減する熱アンカーや効率良く排熱する熱交換器、熱流量を制御する熱スイッチなど、サーマルマネジメントのためのデバイス開発を進めています。
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光量子計算に向けた超伝導検出器の高速化のための性能評価
加藤 晶大
光量子計算の実用化に向け、計算の高速化に向けた技術開発が進められているが、超伝導検出器による光子数検出の応答速度高速化が課題となっている。我々は高周波数光源の周波数と検出器の応答の間の光子数統計の相関を調べた。その結果、現状の測定方式において光の統計を乱さない高速測定が可能であることを示すことができた。今後は本技術により、エネルギー分解能を維持したままでの効率的な高速測定手法の開発を行う。
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バイオ分析のデータ互換性を確保するための微弱光計測技術
丹羽 一樹
医療、食品などで広く利用される「バイオ分析装置」の多くは、内部で発光、蛍光などの微弱光が測定されている。このような装置の性能を評価し、適切に管理するためには、極微弱LED光源のような計量標準の使用が有効である。産総研ではこのような微弱光源を評価するための計測技術を確立するとともに、ニーズに即した新たな標準光源の開発を進めている。更に国際標準化により、それらの使用を推奨するルール作りも推進している。
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小型極低温ジュール・トムソン冷凍機開発のための細管内圧力損失の測定と解析
島崎 毅、中川 久司
ジュール・トムソン効果は、一定の条件下で流れに対して抵抗となる細孔や細管などを通して膨張させると気体の温度が低下する現象です。比較的単純な原理で冷却が出来る事から、冷却機器や液化機などで広く利用されています。これらの装置では細管を組み込んだ熱交換器を使用する事があります。その場合には、細管で生じる圧力損失が動作特性に大きな影響を与えます。本研究では、細管で生じる圧力損失の測定と解析を行いました。
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高エネルギー分解能な単一光子検出器の開発に向けた、可視光TESの応答の調査
小湊 菜央、服部 香里、菊地 貴大、鶴田 哲也、上土井 猛(G-QuAT)、城田 晃輝(G-QuAT)、鷹巣 幸子、福田 大治(物理計測標準研究部門)
量子計算やより詳細なバイオイメージングなどの達成のため、高エネルギー分解能、高検出効率な単一光子検出器が求められている。それらを達成する検出器として、我々は幅広い波長域で高い検出効率とエネルギー分解能を持った、TESの開発を進めている。産総研では世界最高のエネルギー分解能(~67 meV @0.8 eV)を達成しているが、エネルギー分解能をさらに高めるため、光子の入射位置によるTESの応答への影響を調査した。
【物理計測標準研究部門 光温度計測研究グループ】
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単一画素干渉撮像技術の撮像性能における照明光の空間コヒーレンスの影響の検証
井邊 真俊
これまでに干渉計を用いた単一画素撮像技術を開発してきた。汎用的な光学素子と単一画素受光器を用いて画像計測を実現可能であり、イメージセンサーの性能が不足するような波長域において有効である。この技術の原理上の撮像性能に影響する要因として、撮影物体への照明光が空間的にコヒーレント・インコヒーレントの場合の原理上の違いを明らかにした。検証実験をおこなった結果について発表する。
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デュアルコム分光による気体温度計測 ~RDT技術の開発~
清水 祐公子、大久保 章(光周波数計測研究グループ)、稲場 肇(光周波数計測研究グループ)、入松川 知也
光周波数コムを2台用いたデュアルコム分光により、気体分子の振動回転スペクトルを測定し、気体の温度を測定する新たな技術「Rotational state Distribution Thermometry: RDT」を開発し、本技術の高精度化を進めている。この技術は、高速に変化する動的な温度変化の測定や、分子種ごとの温度測定にも適用できる。発表では、高精度化の実現状況について報告する。
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テラヘルツ分光を用いた不透明容器内の非接触温度測定
立川 冴子、木下 基(高周波標準研究グループ)、清水 祐公子
温度計測の現場では、物体表面の温度だけではなく、内部温度や遮蔽物越しの温度計測が求められている。そこで本研究では、透過性の高いテラヘルツ波を用いた非接触温度計測技術を提案する。テラヘルツ波を不透明容器に照射し、透過してきたテラヘルツ波を分光検出することで、不透明容器内の水蒸気の吸収スペクトルを測定する。気体の吸収スペクトルの幅や強度から温度を求めることができる。
【物理計測標準研究部門 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センターとの共同研究】
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低温高周波部品・光量子部品ハードウェアコンポーネントテストベッド構築への取り組み
荒川 智紀、五十嵐 純太、則元 将太、加屋野 博幸、菊地 貴大、鶴田 哲也、岡崎 雄馬、中村 秀司、天谷 康孝、大川 顕次郎、福田 大治、昆 盛太郎、金子 晋久
量子コンピュータの大規模化に必要となる量子ハードウエアコンポーネントの系統的・統一的なテストベッドを開発している。非量子企業も含めた業種の量子産業への参入障壁を緩和しつつそのシーズを有効に量子産業に結びつけるハブの役割を担い、標準化への貢献を行う。この活動は大規模量子コンピュータシステムに向けた俯瞰図・ロードマップとサプライチェーン強靭化の取り組みとも密接に連携している。
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超伝導転移端センサ型単一光子検出器の検出効率の評価に関する研究
鶴田 哲也、上土井 猛、菊地 貴大、福田 大治
現在、光子数を識別できる検出器が光量子コンピュータやバイオイメージングの分野で大きな関心を集めている。中でも超伝導転移端センサ型の単一光子検出器(TES)は優れた光子数分解能と高い量子効率を兼ね備えており、暗計数率が極めて低いことから高精度の光子数識別器として有望視されている。単一光子計測技術を産業に応用するにあたり、光子数分解能や検出効率を正しく校正、評価することは重要な課題である。本研究では、INRiM、PTB、AISTと3機関で行なっているTESの検出効率測定比較についての取り組みや、その結果について報告する。
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リアルタイム信号処理装置を搭載した超伝導量子センサによる超微弱光スペクトルイメージング技術の開発
城田 晃輝、菊地 貴大、丹羽 一樹、福田 大治
我々は、生体試料の低侵襲イメージングが可能な超伝導転移端センサによる光量子顕微鏡の開発を進めている。本発表では、信号処理速度と波長分解能の向上を目指し、ディジタル信号処理回路(FPGA)によるリアルタイム波形分析アルゴリズムを実装した共焦点顕微鏡システムの開発に着手した。これにより、エネルギー分解能は従来の3.5倍に向上しながら信号スループットを従来比10倍で光子スペクトルを測定できるシステムの構築に成功した。
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光量子コンピューター構築に向けた取り組みと量子応用産業を支える計量標準
福田 大治(G-QuAT)、金子 晋久(G-QuAT)、菊地 貴大(G-QuAT)、鶴田 哲也(G-QuAT)、アサバナント・ワリット(東京大学・OptQC)、高瀬 寛(東京大学・OptQC)、遠藤 護(東京大学・OptQC)、古澤 明(東京大学・OptQC)
光量子コンピューターは光の連続量を用いて量子計算を行うものであり、従来技術では困難な問題を計算できる技術として期待が高まっている。本研究では、東京大学及びOptQCと共同で産総研に設置準備中の光量子コンピューター実機開発の現況について報告する。また、光量子技術の発展に伴い、光量子に関わる物理量やコンポネント評価の要望が寄せられるようになった。これら計量標準への取り組みや光子数識別技術についても報告する。
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超伝導転移端センサの検出効率向上に向けたデザインとその素子作成について
上土井 猛、鶴田 哲也、小湊 菜央、菊地 貴大、福田 大治
光量子コンピュータなどの量子光学分野では高い検出効率を有する高精度な光子数識別器の開発が望まれている。そこで優れた光子数分解能と高い量子効率を有する超伝導転移端センサの光キャビティ構造を最適化することで100 %に近い検出効率の実現を考えた。具体的には誘電体多層膜を用いた光キャビティ構造を用いてTES素子デザインを考案し、その素子作成を行う。本研究では、TES素子デザインとその製作手法について報告する。
【分析計測標準研究部門 音波振動標準研究グループ】
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高衝撃を用いた三軸加速度センサ校正技術の開発状況について
野里 英明、長谷川 暉、穀山 渉、下田 智文
高衝撃を伴う三軸加速度計測は自動車衝突安全性評価や製品落下試験などを伴う様々な状況下において行われているが、三軸加速度センサの校正方法は確立されていない。そのため、三台のレーザ干渉計を組み合わせた三軸高衝撃校正装置を開発しており、その開発状況について報告する。
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高感度加速度計の微小振動での校正技術
穀山 渉、下田 智文、野里 英明
人工衛星における振動評価や、機械の健全性診断の場面では、0.1 m/s2以下の微小振動が高感度加速度計を用いて計測されている。それらの高感度加速度計は、通常の振動校正に使用するレベル(100 m/s2)を用いると飽和してしまうため、実条件に近い微小振動を用いた校正が必要である。我々は、装置の改良によって通常の 1/10000以下、変位振幅に換算すると最小で 1.4 pm に相当する微小振動での校正に成功した。
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超低周波音センサを比較校正するためチャンバの製作と評価
高橋 弘宜、平野 琴、山田 桂輔
防災・減災のために超低周波音を利活用する研究開発が進展しており、そこでは様々なタイプの超低周波音センサが用いられている。多様な超低周波音センサの計測信頼性を向上させるべく、これらセンサを比較校正するためのチャンバを製作した。本報告では、製作したチャンバの概要といくつかの超低周波音センサの校正事例を紹介する。
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液柱型音圧発生装置を用いた超低周波音圧センサの一次校正
平野 琴、山田 桂輔、高橋 弘宜、野里 英明
大規模自然災害から発生する超低周波音を観測し、防災・減災につなげる研究が盛んである。観測に用いる音圧センサの校正を可能とするため、超低周波域に特化した一次校正装置として、液柱振動を利用して音圧を発生・計測する装置の開発を進めてきた。本装置を用い、下限0.01 Hzまでマイクロホンの感度校正を行った結果を報告する。
【分析計測標準研究部門 放射線標準研究グループ】
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元素濃度分布データによる大地からの自然放射線線量推定の不確かさ
加藤 昌弘、石井 隼也、黒澤 忠弘
本研究では自然放射線による線量率を、CdZnTe検出器を用いた測定と、地球化学図の元素濃度分布データを用いた推定法とにより求めた。日本国内20か所以上の屋外環境でガンマ線を測定し、CdZnTe検出器で得られた波高分布にシミュレーションで求めた線量率換算関数を適用して空気カーマ率を導出した。比較結果に基づき、地球化学図の元素濃度分布データを用いた推定法による線量率の不確かさを推定した。
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人体CTに対して計算した放射線線量分布を用いた機械学習2
森下 雄一郎、古山 良延(茨城県立中央病院)、安江 憲治(茨城県立医療大学)、清水 森人、布施 拓(茨城県立医療大学)、阿部 慎司(茨城県立医療大学)、生駒 英明(茨城県立中央病院)、奥村 敏之(茨城県立中央病院)
前年に報告した機械学習により人体CTに対して計算した放射線の線量計算の精度がどの程度の物であるかを評価することを目的として、病院で実際に使われているプログラムによる線量分布とモンテカルロ計算による線量分布を比較した。
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産総研放射線標準場の事業目的利用について
清水 森人、浦郷 由佳、加藤 昌弘、黒澤 忠弘
高エネルギーまたは大線量の放射線発生装置は十分な放射線遮蔽がなされ、放射線取扱主任者によって安全が管理された放射線管理区域に設置する必要がある。このため、放射線発生装置を必要とする事業に企業が新たに参入する際の初期コストが極端に大きくなり、産総研が開発した放射線計測、試験技術の社会実装を進める上での課題となっていた。そこで2024年度より、放射線標準研究グループが所有する医療用リニアック装置について、事業目的利用が可能な形での外部企業への提供を開始した。今後、この取り組みは、放射線標準研究グループが管理する他の放射線標準場にも順次拡大する予定である。当日は、高エネルギー光子線および電子線照射施設の概要と活用例について紹介する。
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1 MeV未満の小型加速器X線源による放射線防護用線量計の応答試験場の開発
石井 隼也、佐藤 大輔、藤原 健、田中 真人、加藤 昌弘、黒澤 忠弘
近年、RIの防護管理や供給不足により線量計校正施設の維持が困難となっている。放射線標準研究Gr.は放射線イメージング計測研究Gr.と共同で、校正用Cs-137γ線照射装置の代替のために小型線形加速器を用いたX線校正場を開発している。このX線場は、フィルターや加速器パラメータを変更し、用途に合わせた様々なエネルギー分布や線量率で構築できる。本発表では、小型線形加速器を用いた新たなX線線質の開発状況について報告する。
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β線線量測定のためのビーム平坦化フィルタに関する技術開発
二木 佐和子、加藤 昌弘
高速の電子の流れであるβ線は空気との相互作用を無視できない。そのためβ線線量測定は線源と電離箱との距離が近い状態で行われる。このとき線量率分布は電離箱に対して十分に均一化されておらず、線源と電離箱の間にビーム平坦化フィルタを設置することで照射場を均一化する。この際フィルタにより強度が減少するが、均一化を達成しながら強度を選択することはできない。線量率のエネルギー分布を詳細に求めるため、線量率分布および強度を共に調整するフィルタ技術の開発が望まれる。本報告では開発の第一段階として、当研究グループが所有しているβ線源に対する実測および数値計算について述べる。
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医療用リニアック装置更新による水吸収線量校正結果への影響評価
浦郷 由佳、清水 森人
医療用リニアックからの高エネルギー光子線および電子線による水吸収線量校正の標準場としてElekta社の装置が用いられてきた。装置の老朽化に伴い、Varian社のリニアック装置が産総研に導入され、2025年から新たに校正の標準場として運用が開始される。本研究では、Elekta社とVarian社のリニアック装置において、装置間の線質やビーム特性、線量計の校正結果の違いを評価した。
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放射線輸送シミュレーションを用いた放射線生物学研究 -A Geant4-DNA Nanodosimetric Approach-
坂田 洞察
放射線に誘発される細胞死は放射線がDNAを損傷することに起因する。この事実は定性的に理解されてきたが、非常に複雑な物理・化学・生物プロセスを伴うために定量的な理解が困難であった。本研究では、放射線輸送シミュレーションGeant4-DNAを用い、放射線によって生じるDNA損傷と細胞死を定量的に予測可能なシミュレーションプラットフォームの開発を行った。
【分析計測標準研究部門 放射能中性子標準研究グループ】
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BNCT施設における高強度中性子測定用の電離箱開発
松本 哲郎、増田 明彦、真鍋 征也、原野 英樹
BNCT施設で使用される109 cm-2s-1以上の高強度中性子を評価するために、新たに3Heガスを利用した電離箱の開発を行った。産総研熱中性子場及び京大ライナックの中性子源を用いて特性評価を行った。
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TDCR法によるAc-225の放射能測定
佐藤 泰、古川 理央、下段 千尋、スミス・ライアン、原野 英樹
Ac-225は前立腺癌治療等への応用が期待されている放射性核種である。Ac-225は放射平衡を成す核種であり、様々な放射線を放出するため、産総研ではCIEMAT/NIST法により、Ac-225の放射能を測定してきたが、今回、Ac-225の子孫核種が放出するβ線のエネルギーが高く、計数効率も高いことに着目して、TDCR法による放射能測定を試みた。
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医療用大強度中性子ビーム特性評価技術の開発
増田 明彦、松本 哲郎、真鍋 征也、原野 英樹
中性子を使ったがんの放射線治療であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では、大強度で幅広いエネルギーをもつ中性子ビームが使われる。この中性子ビームやその照射環境を評価するために、微小シンチレーターを用いたボナー球スペクトロメーターを開発し、特性評価やBNCT施設における実地試験を進めている。この特性評価の結果は、種々のBNCT向け中性子検出器の実地評価のリファレンスとしても利用することができる。
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通気式電離箱を仲介器とした放射性希ガス濃度の測定
古川 理央、下段 千尋、佐藤 泰、スミス・ライアン、松本 哲郎、真鍋 征也、原野 英樹
放射性アルゴン(Ar-41)は原子力施設中の排ガスのモニタリングで重要な核種であるが、日本には一次標準が確立されていない。産総研ではAr-41標準を確立するため、通気式電離箱を用いた校正システムの構築に取り組んでいる。本研究では、空気をカウンティングガスとした場合のAr-41の通気式電離箱の校正定数を暫定的に評価した。
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放射化法を用いた熱中性子場特性評価技術の高度化
真鍋 征也、原野 英樹、松本 哲郎、増田 明彦、下段 千尋、佐藤 泰
熱中性子検出器は、原子力発電所や加速器施設は勿論のこと、近年では中性子医療の現場でも用いられ、その校正は放射線安全や治療効果担保の観点から重要となる。校正のためには特性が良く評価された熱中性子場が必要である。また、校正対象となる検出器は形状・感度とも様々であり、それらの需要に応えるため熱中性子場の特性評価技術の高度化を進めている。
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核医学に資する短半減期核種の放射能国際比較のための巡回型仲介標準器の開発
下段 千尋、真鍋 征也、古川 理央、スミス・ライアン、佐藤 泰、原野 英樹
各国の計量研により、標準が互いに同等であることを確認するために国際比較が行われている。核医学で用いられるような短半減期の核種について、放射能の国際比較では国際度量衡局(BIPM)の開発した巡回型仲介標準器が用いられている。この1台のみではニーズをまかなうことができず、これと並行して運用する装置が必要とされており、NMIJではアジア太平洋計量計画(APMP)での運用に資する装置の開発を目指している。
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高いエネルギー分解能をもつ極低温γ線スペクトロメータのダイナミックレンジ拡大に向けた研究
スミス・ライアン、佐藤 泰、菊地 貴大(G-QuAT)、平山 文紀(G-QuAT)、佐藤 昭(G-QuAT)、神代 暁、古川 理央、下段 千尋、原野 英樹
超伝導転移端センサ(TES)型マイクロカロリメータを応用したγ線スペクトロメータは半導体検出器と比較して一桁高いエネルギー分解能を有する。これまで主に0.2 MeV以下のエネルギーを測定対象としてきたγ線用TESのダイナミックレンジを拡大することで、Na-22のβ+崩壊に伴って放出される0.511 MeVの消滅放射線や、Cs-137のβ-崩壊に伴って放出される0.662 MeVのγ線などにも応用範囲を広げることを目指す。
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アクティブ中性子法を用いた燃料デブリ臨界特性測定システムの開発
原野 英樹、西山 潤(東京都市大学)、真鍋 征也、松本 哲郎、増田 明彦
廃炉作業において燃料デブリ取出し作業を安全かつ効率的に行うためには、取出し直後の1次スクリーニングにより核分裂性物質の計量を含め臨界安全上のリスクを迅速に測定・評価することが必要であり、そのための燃料デブリ臨界特性測定システムの開発を進めている。プロトタイプを構築し、中性子標準場にて核分裂性物質への選択性や水分影響に関する原理実証試験を実施したので報告する。
【分析計測標準研究部門 先進ビーム計測研究グループ】
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陽電子寿命測定装置の製品化研究
山脇 正人、大島 永康
陽電子寿命測定法は、金属の格子欠陥や高分子の自由体積を分析できるユニークな手法であり、材料の劣化や機能性の評価などに利用されている。我々は、陽電子寿命測定の経験がなくても簡単に操作できる測定方法を提案し、2016年に東洋精鋼株式会社から卓上型陽電子寿命測定システムが上市された。それ以降も改良を重ね、現在はオンサイト測定用ポータブル装置の社会実装を目指して研究を進めている。
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AISTANS中性子ビームを用いたCO2固定化コンクリートのバルク定量分析の研究
木野 幸一 、藤原 健、オローク・ブライアン
産総研小型加速器中性子施設(AISTANS)では、非破壊分析法の一つである、パルス中性子を用いたブラッグエッジイメージングを行っている。産業応用として、持続可能社会に貢献するCO2固定化コンクリートへの適用を進めている。データ分析の最新結果を報告する。
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電子加速器ベース分析用中性子源(AISTANS)のビームパワー増強
オローク・ブライアン、藤原 健、木野 幸一、大島 永康
産総研は、電子加速器ベースの分析用中性子源(AISTANS)を設置して、材料評価を進めている。中性子の強度は電子ビームパワー(エネルギーが一定で)に比例する。安全で安定した運転を維持しながらビームパワーを増加させるための取り組みについて発表する。
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定点黒体炉のプラトー進行過程における金属セル内部のX線直接観察
藤原 健、清水 祐公子(物理計測標準研究部門)、石井 順太郎(分析計測標準研究部門)
金属の融解・凝固プラトーを利用する定点黒体炉は、放射温度計の校正に欠かせない装置である。しかし、経年劣化によりプラトーの安定性が失われることがあり、その劣化メカニズムはこれまで解明されていなかった。本研究では、X線イメージングを用いて、定点黒体炉による校正プロセス中の加熱から冷却に至るサイクルにおける金属セル内部の様子を観察し、その結果を報告する。
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高輝度X線イメージングシステムの開発
澁谷 達則、小川 博嗣、佐藤 大輔、黒田 隆之助、加藤 英俊、藤原 健
X線の輝度は高解像な画像を得る上で重要なパラメータであるが、標的材料と加速技術の制限を受けるため、位相イメージングやコヒーレント回折イメージングのような高輝度向けのイメージング技術を適用することができない。そこで、我々は標的及び加速器技術やその付帯技術であるレーザー技術を開発することでX線の高輝度化を目指している。本発表では、これらの開発状況について報告する。
【分析計測標準研究部門 応用ナノ計測研究グループ】
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量子ミメティックOCTの新しい構築とその諸特性
白井 智宏
これまでに量子OCT(光コヒーレンストモグラフィ)の古典的なカウンターパートとして、高分解能で耐分散性をもつスペクトル強度干渉断層イメージング法の原理とその実現法を提案した。本研究では、市販の2台の分光器を利用した安定性の高い当該イメージング光学系を新たに構築し、その諸特性を解析したので報告する。
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高分子材料の微細空隙イメージング技術の開発
満汐 孝治
高分子材料の諸特性を左右するナノ空隙構造を評価するために、陽電子空孔顕微鏡の開発を進めている。この顕微鏡を用いた微細空隙分布イメージング技術と高分子材料への適用事例について報告する。
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元素分析を活用した有機化合物定量分析法の開発
中里 雅樹
アミノ酸をはじめとした有機化合物の定量分析のため、質量分析法を用いた元素分析技術を導入し、高感度かつ迅速な定量分析法の確立を目指す。本発表では、元素分析に先立って試料前処理法の最適化に関して報告する。
【分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ】
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コヒーレントエッジ放射によるバンチ形状評価の研究
清 紀弘、境 武志(日本大学)、全 炳俊(京都大学)、大垣 英明(京都大学)
電子ビームやアンジュレータ放射を損なうこと無く観測可能なエッジ放射は、そのコヒーレント成分を測定することで自由電子レーザー発振中の電子バンチ形状を評価することができる。日本大学量子科学研究所および京都大学エネルギー理工学研究所と共同し、これらの自由電子レーザー施設にて観測したコヒーレントエッジ放射から評価した電子バンチ長に掛かる知見について報告する。
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X線回折格子を用いたイメージング法に関する研究
安本 正人、藤原 健(先進ビーム計測研究グループ)
ラボタイプX線源と複数の透過型X線回折格子を利用したX線干渉システムは、対象物の微分位相コントラスト画像が撮影できるなど既存のX線検査装置とは異なる特長を持っている。本発表では、食品の異物検査などへの実用化を目指したX線干渉イメージング装置の研究開発について報告する。
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マルチモーダルAIを用いたプロセス最適化および自動計測装置の開発
小川 博嗣、黒田 隆之助、寺澤 英知、佐藤 大輔、澁谷 達則(先進ビーム計測研究グループ)
プロセスパラメータからプロセス後の材料に付与された機能・特性を予測するマルチモーダルAIを開発している。マルチモーダルAIモデルをレーザー加工に適用した例を紹介し、単一の AIアーキテクチャとの予測精度について比較する。また、AI学習データ収集のために行っている計測装置の自動化について述べる。
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超短パルスレーザー誘起ナノ構造とポンプ・プローブ複屈折イメージング
寺澤 英知
石英ガラスなどの透明材料内部に超短パルスレーザーを特定の条件で集光すると、20 nm以下のナノ加工が可能になる。この加工技術の開発によって、超短パルスレーザー加工技術のさらなる微細化が期待される。本研究では、ナノ加工モニタリングに資するポンプ・プローブ計測技術について報告する。
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インフラ診断高度化のためのX線非破壊検査技術の開発
加藤 英俊、藤原 健(先進ビーム計測研究グループ)、佐藤 大輔、木村 大海、鈴木 良一(分析計測標準研究部門)
効率的なインフラ診断を可能にするため、我々は小型X線源、大面積高感度検出器、ロボット・AI技術を組み合わせて3次元的な画像診断を行うことができるX線検査システム、X線源と検出器を同じ側に配置して後方散乱X線により内部を画像化する技術、鉄部の残留応力を検査する技術などの開発を行っている。
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量子ビーム源の小型・省電力化に向けた誘電体加速管の開発
佐藤 大輔、吉田 光宏(高エネルギー加速器研究機構)、阿部 哲郎(高エネルギー加速器研究機構)
誘電体加速(DAA)管は、金属筐体内に誘電体セルを周期的に装荷した誘電体加速管で、既存の常伝導加速管の5倍以上高い電力効率を有する非常に高効率な加速管である。本発表では、DAA管の電力効率をさらに改善し、高い加速電界の実現による加速器の小型化を目指した、11.424 GHzの高周波で駆動する最新のX-band DAA管の研究開発の進捗状況について報告する。
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透明セラミックスによる放射線イメージングの検討
木村 大海、藤原 健(先進ビーム計測研究グループ)、加藤 英俊
近年、高エネルギーX線を用いた非破壊検査による高効率なインフラ診断が検討されている。一方現状のX線検出器は低エネルギーX線を対象としたもののみであり、高エネルギーX線に対する検出効率は約0.01 %と非常に小さく、測定時間が長くなることや空間分解能が低いことが課題である。本研究では放射線を可視光に変換するシンチレータに透明セラミックスを採用することで、高感度化の検討を行った。
【分析計測標準研究部門 非破壊計測研究グループ】
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高速デジタルホログラフィックトモグラフィシステムの開発
夏 鵬
Off-axis配置による空間多重記録技術を導入し、単一のカメラで6つの光路からの物体光を同時に記録可能な高速デジタルホログラフィックトモグラフィシステムを開発した。本提案システムは、動的気流の連続記録を可能にし、透明かつ複雑な気流の3次元変化を研究する上で大きく貢献すると期待される。
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サンプリングモアレ法による複合材料の高精度なひずみ分布計測
李 志遠
全視野ひずみ計測は、材料の機械的特性を評価するために重要である。本研究では、規則模様を利用したサンプリングモアレ技術を応用し、大変形時において高精度なひずみ分布を計測できる新手法を提案した。引張試験におけるCFRPアングルプライ積層板のネッキング変形時のひずみ分布を精度よく計測できた。
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接着貼合せ試験の残留変形FEM解析
永井 英幹、島本 一正(ナノ材料研究部門)、秋山 陽久(ナノ材料研究部門)
構造部材のマルチマテリアル化において重要となる接着剤での異材接合について、その評価・設計モデルの確立のためFEM解析を行っている。ここでは、エポキシ系接着剤での硬化時残留変形について、接着剤の硬化ならびに変形挙動モデルの妥当性を検証し、接着剤の厚さや剛性等の因子が変形挙動に及ぼす影響について評価した結果を報告する。
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超音波伝搬映像解析に特化した大規模ビジョンモデルのチューニング評価
叶 嘉星、遠山 暢之(分析計測標準研究部門)
大規模ビジョンモデルは、非破壊計測やインフラ診断でのデータ解析、診断支援、所見要約で重要な役割を期待されています。本研究では、既存のLVMモデルに対して超音波検査ドメインの独自データベースを用いたファインチューニングを行い、欠陥検出に特化したAIモデル「Wavefield MAE」を開発した。実データを用いた複数の実験を通じて、提案手法は、従来手法に比べて高精度に欠陥を検出できることを確認した。
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膜沸騰法による C/Cコンポジットの調製とその特徴
岩下 哲雄
PAN系炭素繊維の積層させた基材をシクロヘキサンまたは灯油に浸し、沸点以上のおよそ1000 ℃で熱処理することにより、炭素繊維表面にカーボン層を積層させてC/Cコンポジットを調製した。このC/Cコンポジットを常温または2400 ℃での曲げ試験を行い、試験後の組織観察し、膜沸騰法によって調整したC/Cコンポジットの特徴を考察した。
【分析計測標準研究部門】
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先端ナノ計測施設(ANCF)による研究支援:産総研独自開発の分析機器・技術の成果普及
松林 信行、徳宿 由美子、山本 哲也、中村 健
分析計測標準研究部門、物質計測標準研究部門、量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター、センシングシステム研究センターの3領域4ユニットの研究成果である分析機器・技術を「先端ナノ計測施設(ANCF)」として公開し、内外の研究開発を支援し技術課題の解決に資するとともに、データの登録・蓄積・利活用を通じたマテリアルDXの基盤構築をマテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)事業にて進めている。
【サステナブルインフラ研究ラボ】
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インフラ診断技術研究チームの紹介
豊川 弘之、加藤 英俊、野里 英明、吉岡 正裕、古川 祐光、横田 俊之、松川 沙弥果、倉本 直樹、他24名
インフラ診断技術研究チームでは、X線・電磁波・超音波等を利用した非侵襲インフラ計測・診断システムの開発、加速度センサの補正や力計の動的評価等のトレーサビリティ確立に関する技術開発を行い、信頼性の高い効率的なインフラ予防保全技術の開発および社会実装に向けた取組みを行っている。
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インフラ診断省力化研究チームの紹介
遠山 暢之、李 志遠、竹井 裕介、寺崎 正、神村 明哉、岩田 昌也
インフラ診断省力化技術研究チームは、インフラ点検時の手間とコストの削減、検査員の安全確保、熟練検査員の減少といった様々な課題を解決するための効率的なインフラ維持管理システムを開発している。具体的には、非破壊検査、AI、ドローン・ロボット、センサ・無線化に関する要素技術を融合したインフラ点検の省力化、自動化に資する技術を開発し、産学官連携体制の下での社会実装を目指している。
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インフラ長寿命化技術研究チームの紹介
豊川 弘之、穂積 篤、土屋 哲男、宮崎 広行、千野 靖正、阿子島 めぐみ、伊藤 信靖、細貝 拓也、竿本 英貴、他16名
インフラ長寿命化技術研究チームでは、撥水・防汚・耐侯性等を有する耐久性コーティング技術やマグネシウム合金成型技術などの新材料技術、および先端分光分析技術・信頼性評価技術・構造物シミュレーション技術などを駆使して、インフラ構造物の長寿命化を実現する技術の開発、および社会実装に向けた取組みを行っている。