2019年度 計量標準総合センター成果発表会
ポスターセッション 2日目

【工学計測標準研究部門 長さ標準研究グループ】

  • 干渉測長器の校正

    寺田 聡一

    干渉測長器について、依頼試験で行っている校正方法とそれとは別の校正方法について検討し発表する。価を行ったので報告する。

  • 球の2点直径校正システムの開発

    近藤 余範

    三次元測定機の形状測定の絶対精度(不確かさ)は、測定に使用しているプローブ球の校正精度(半径値及び形状偏差)が大きな誤差要因の一つである。本研究では、ブロックゲージに基づく三次元測定機用基準球の2点直径校正システムを開発したので報告する。

【工学計測標準研究部門 幾何標準研究グループ】

  • SelfAテーブルを用いたX線エネルギー高精度検出装置の原子核時計研究への応用

    渡部 司、藤本 弘之、上山 裕理

    自己校正型ロータリエンコーダ(SelfA)と高純度シリコン単結晶を用いたX線の絶対エネルギーモニターを開発した。本装置を用いて大型放射光施設(SPring-8)の入射X線エネルギーを高精度で決定することが可能となり、自然界で最小の励起エネルギーをもつトリウムの原子核状態の人工的生成実験を成功させた。

  • 任意形状の三次元測定における精度保証に向けた調査研究

    渡邉 真莉

    少ない部品点数で高機能を実現するため、複雑形状を持つ部品が増加している。複雑形状部品は三次元測定システムにより評価される。本研究では任意形状測定における信頼性担保に向けた課題と、その解決策を調査する。

  • 光学形状測定機の色依存性の検証

    横田 俊、阿部 誠、松崎 和也、佐藤 理、呂 明子、加藤 裕美、吉田 一朗(法政大学)

    パターン投影、縞投影など光学的な原理を採用する測定機において、測定対象の表面色が測定精度に与える影響が懸念されている。測定対象の表面色に関する依存性について、対象物の分光反射率を色フィルタの分光透過率により近似的に検証する評価方法について紹介する。

【工学計測標準研究部門 ナノスケール標準研究グループ】

  • 傾斜探針AFMによる半導体ラインパターンのラインエッジラフネス計測

    木津 良祐、三隅 伊知子、平井 亜紀子、権太 聡(分析計測標準研究部門)

    半導体デバイス製造における計測要求として、半導体ラインパターンのラインエッジラフネス(LER)計測がある。本研究では、傾斜探針機構をもつ原子間力顕微鏡(傾斜探針AFM)を開発し、高分解能・低ノイズなLER計測を可能にした。比較計測によって、従来の一般的なLER計測手法である走査電子顕微鏡の信頼性評価を行い、傾斜探針AFM技術の参照計測(reference metrology)としての有用性を検証した。

  • 測長原子間力顕微鏡を用いたプロファイル表面粗さ校正範囲の拡張

    三隅 伊知子、菅原 健太郎、木津 良祐、平井 亜紀子、権太 聡(分析計測標準研究部門)

    ISO 19606: 2017を参考に測長原子間力顕微鏡(測長AFM)を用いてプロファイル表面粗さ校正のサービス(算術平均粗さRa = 1 nm~50 nm)を提供している。50 nm以上の表面粗さ校正は主に精密加工業界から、1 nm以下の表面粗さは主に半導体製造業界から、それぞれ需要がある。今回測長AFMを用いて粗さ測定及び不確かさを評価した結果、校正範囲を約 0.2 nmから約100 nmまで拡張できることを確認した。

  • 走査型電子顕微鏡による大きな線幅の校正技術の開発

    菅原 健太郎、土井 琢磨

    走査型電子顕微鏡(SEM)による電子線を用いたフォトマスク線幅の校正技術をこれまで開発してきた。同じく可視および深紫外(DUV)を光プローブとする光学式の線幅測定装置(LWMI)が開発されている。今回LWMI用の測長システムをSEM向けに搭載することを検討したので報告する。

  • 顕微干渉計による段差計測の高度化

    土井 琢磨

    顕微干渉計による段差計測は、非接触、高速、高分解能等の利点がある。特に開発した装置の特徴は倍率によって異なる開口効果が補正できることにある。本装置による測定の長期安定性を示すと共に、さらなる横分解の向上やより微小な段差の測定の試みについて述べる。

  • ナノ構造測定のためのX線回折装置の特性評価Ⅲ

    堀 泰明、権太 聡(分析計測標準研究部門)

    次世代標準周期サンプルは、その周期構造ピッチが微小(50 nm以下)であることにより、光学回折装置やAFM等、既存の手法での測定は困難である。そこで、SIトレーサブルなピッチ測定を目的としたX線回折装置の開発を行っている。今回は100 nm の周期構造ピッチを測定した結果を示し、さらに微小なピッチ測定に向けての将来展望を考察する。

  • シリコンウエハーの幾何学的厚さ測定の二国間比較

    平井 亜紀子、尾藤 洋一(長さ標準研究グループ)、Jonghan Jin(KRISS)、Jungjae Park(KRISS)、Jae Seok Bae(KRISS-UST)

    長さの国家標準にトレーサブルに試料の幾何学的厚さを測定できる両面干渉計を開発し、シリコンウエハーの厚さ測定を行っている。両面干渉計では、表面反射光だけを使用して試料の幾何学的厚さを直接求めるため、試料の屈折率に影響されない。分光干渉に基づき幾何学的厚さと屈折率の両方を測定する韓国標準科学研究所(KRISS)と二国間比較を行った結果を報告する。

【工学計測標準研究部門 質量標準研究グループ】

  • 絶対重力計の国際比較による重力加速度計測の国際整合性確保

    水島 茂喜、倉本 直樹、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)

    重力加速度計測は、計測標準、資源探査、地震学、火山学、地球物理学、測地学など多くの分野で利用されている。計量標準総合センターは、重力加速度計測の国際整合性を確保するため、自由落下を測定原理とする絶対重力計の国際比較にこれまで5回参加している。絶対重力計による重力加速度計測の相対不確かさは6×10–9に達する。本報告では、絶対重力計の国際比較の方法、不確かさの評価、国際比較の結果について紹介する。

  • 1 mgから0.1 mgの質量範囲をカバーするサブミリグラム微小質量標準の開発

    大田 由一、倉本 直樹

    計量標準総合センターでは、様々な質量の分銅を校正し、国家計量標準にトレーサブルな質量標準の供給を行っている。近年、特に創薬や環境計測の分野で、高精度な微小質量標準の需要が高まっている。この需要に応えるべく、計量標準総合センターでは、質量標準の供給の下限を1 mgから0.1 mgに拡張することを検討している。本報告では、開発中の分銅自動交換機構を備えたサブミリグラム分銅校正システムについて紹介する。

  • 新しい1キログラムの作り方

    倉本 直樹、水島 茂喜、藤田 一慧、大田 由一、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)、張 ルウルウ(物質計測標準研究部門)、東 康史(物質計測標準研究部門)、黒河 明(物質計測標準研究部門)、斉藤 郁彦(物理計測標準研究部門)、中野 享(物理計測標準研究部門)、大久保 章(物理計測標準研究部門)、稲場 肇(物理計測標準研究部門)

    2019年5月20日、質量の単位「キログラム」の定義が130年ぶりに改定された。新たな定義は普遍的な物理定数「プランク定数」にもとづく。計量標準総合センターではシリコン単結晶球体中の原子数を計測することで、新たなキログラムの定義を実現する。本発表では、実現に必要な球体体積測定および球体表面分析について解説するとともに、新たな定義にもとづく質量標準供給のスキームについても紹介する。

  • 分光エリプソメーターを用いたシリコン球体表面層の吸着層の評価 

    藤田 一慧、倉本 直樹、水島 茂喜、藤井 賢一(工学計測標準研究部門)

    シリコン結晶球体を用いたキログラムの高精度な実現のためには、シリコン結晶球体表面層の評価が不可欠である。空気中および真空、水蒸気雰囲気下でシリコン結晶球体表面を分光エリプソメーターで分析し、表面層における水分子の吸着について評価を行った。その結果を報告する。

【工学計測標準研究部門 流体標準研究グループ】

  • 密度・屈折率の精密計測にもとづく海水の絶対塩分の評価

    粥川 洋平

    海洋観測において最も重要なパラメータである海水の絶対塩分は、電気伝導度に基づいた導出方法の誤差や、海水温に比べて海洋における空間分解能が不足しているといった課題を抱えている。本研究では、屈折率計測に基づく新しい絶対塩分センサを開発した。また、海水の熱力学状態方程式の信頼性向上のため、海水密度の絶対測定も行ったので併せて報告する。

  • 自己参照型格子比較器を用いた単結晶シリコンの格子定数分布評価と結晶間格子比較

    早稲田 篤

    自己参照型格子比較器を用いて、新たな同位体濃縮単結晶シリコンの格子定数分布評価を行った。また結晶間格子比較については、(100)方位結晶についてこれまで行ってきたが、(110)方位結晶についても結晶間格子比較を行ったので、これらについて報告する。

  • 理想気体分子の比熱および双極子モーメントの測定

    狩野 祐也

    分子の理想気体状態における物性値情報は、熱力学状態方程式など体系化した物性データベースの構築や分子動力学シミュレーションの開発において重要な役割を担う。本研究では、気体サンプルの音速および誘電率の精密計測に基づき、理想気体分子の比熱および双極子モーメントの導出を行っている。いくつかのフルオロカーボンサンプルでの測定を例として、理想気体分子の比熱および双極子モーメントの導出法について紹介する。

  • 新時代の液体マネジメントをIOTで支える超小型粘度センサの開発

    山本 泰之、松本 壮平(集積マイクロシステム研究センター)、小林 健(集積マイクロシステム研究センター)

    液体の粘度は、医薬品や食品、石油化学分野などの品質管理などに用いられており、普遍的な測定ニーズのある物性値である。産業界での粘度測定の実情を考慮して、インラインや機器組み込み状態で粘度の連続測定が可能な、小型で低コストな粘度センサーの開発を進めている。新たにホルダー形状を工夫して既存の機器への組み込みが容易になる粘度センサシステムを開発したので報告する。

  • 重錘形圧力天びんを用いた高精度高圧粘性測定システムの開発

    村本 智也、藤田 佳孝、梶川 宏明(圧力真空標準研究グループ)、飯泉 英昭(圧力真空標準研究グループ)、井出 一徳(圧力真空標準研究グループ)

    本研究では、高精度粘性測定技術と高精度液体高圧力発生技術を組み合わせることにより、高圧流体の流動特性を高い精度で評価する為の実験系を開発することを目的とする。高圧力/流量/差圧の発生機構に重錘形圧力天びんを採用し、従来の実験系よりも高精度で流量及び圧力コントロール (常圧 〜 280 MPa)が可能な実験系の構築を試みた。本発表では、開発した実験系及び測定手法の詳細を紹介すると共に、これらを用いて得られた各種液体試料の測定結果について考察する。

  • 粘度の基準点高精度化を目指した粘度絶対測定技術の開発

    藤田 佳孝

    粘度の国際基準値である水の粘度絶対値見直しや新たな中高粘度域の基準点設定を目指した落球法に基づく粘度絶対測定の開発を進めている。落球実験における高精度な落下終端速度決定に必要不可欠となる、試料槽内壁の境界条件による落下速度減速への系統効果評価のための新たな実験機構について、その動作検証と実験システムへの導入を進めている。当日はこの取り組みを含め落球実験システム全体の開発状況について報告する。

【工学計測標準研究部門 力トルク標準研究グループ】

  • 微小トルクおよび動トルクの計測技術と標準に関する調査研究

    木内 望早来

    医療機器等の精密機器および自動車のモーター等にそれぞれ必要とされる微小トルクおよび動トルクについて、国内外の計測技術および標準の現状を調査した。また、産業界におけるニーズ調査を行った。以上の調査結果を報告する。

  • ビルドアップ式トルク基準機の開発

    西野 敦洋

    NMIJでは、効率的かつ低コストでトルクメータまたは参照用トルクレンチの校正を実施するために、ビルドアップ式トルク基準機を開発している。ビルドアップ式トルク基準機は、基準トルクメータと被校正対象となるトルクメータを直列に接続し、モータ等を用いてそれらを同時にねじり、その時の基準トルクメータの出力と被校正対象のトルクメータの出力を比較することで校正をする。本発表では、開発中のビルドアップ式トルク基準機の構成要素と、ビルドアップ式トルク基準機に起因する不確かさの評価方法等について報告をする。

  • 2 N実荷重式力標準機の釣合い構支点感度

    朱 俊方、林 敏行、西野 敦洋、大串 浩司

    小荷重計測の信頼性を確保するため、10 mNから2 Nまでの範囲を実現する実荷重式力標準機を開発している。負荷枠の自重は最小の力である10 mNを上回るので、これを打消すため、高感度なエアベアリングを用いた釣合い機構を導入した。この範囲における力の実現の不確かさを見積るため、主要な不確かさ要因の一つである釣合い機構の支点感度を定量的に評価した。

  • ASTM E74による力計校正の不確かさに対する保持時間の影響

    前島 弘、林 敏行、朱 俊方

    我が国において、一軸試験機校正用力計の一部はASTM E74規格に基づいて校正されている。ASTM E74は、同じく一軸試験機校正用力計の校正に用いられるISO 376規格やJIS B7728規格と比べ、力計読み値の記録を行うまでの校正力の保持時間や測定シリーズ間の無負荷保持時間について、校正機関に広い裁量を認めている。これらの保持時間を変化させた場合の校正結果や校正の不確かさに与える影響を実験的に検証した。本研究で得られた結果の範囲内では、校正結果の最大の偏差は下限の力で生じ、一部の力計では校正の不確かさの範囲を上回った。校正条件と使用条件とで力の保持時間に著しい差異がある場合には、留意が必要である。

  • 20 MN油圧式力標準機と1 MNこうかん式力標準機の改修

    林 敏行、前島 弘、朱 俊方、上田 和永(標準供給保証室)、大谷 広志(前川試験機製作所)

    老朽化した20 MN油圧式力標準機及び1 MNこうかん式力標準機の動力源及び制御系の更新を実施した。20 MN油圧式力標準機では、電子制御機器による安定な力保持を実現したほか、1 MNこうかん式力標準機についても、機器更新により自動制御の導入や計測機器との連携をはかった。

  • トルクドライバテスタによるセッティング式トルクドライバの試験結果の評価

    大串 浩司

    手動式トルクドライバの中で現場使用の多いセッティング式トルクツールのうち、目盛付きトルク可変形トルクドライバについて、ISO 6789-1:2017に従って試験を実施した。参照標準には、トルクの国家計量標準にトレーサブルな校正をされた、定格容量6 N∙mのトルクドライバテスタを使用した。試験対象としては複数社の異なるセッティング式トルクドライバを用意し、試験結果を比較・考察した。

【工学計測標準研究部門 圧力真空標準研究グループ】

  • 揮発性の高い液体を圧力媒体として利用した重錘形圧力天びん及び高精度圧力計の校正

    梶川 宏明、飯泉 英昭、小畠 時彦(計量標準普及センター)

    高圧気体設備で用いられる高圧気体用圧力計に対して計量トレーサビリティを確保するため、揮発性の高い液体を圧力媒体として利用する校正方法の実証実験を行った。フロリナート(FC-40)を用いた重錘形圧力天びんの特性評価を行い、セバシン酸ジオクチルを用いた場合と同等の性能が得られることを確認した。また、高精度圧力計に対し、FC-40を含む複数の圧力媒体で行った校正結果を比較し、その整合性を確認した。

  • 圧力媒体として用いる高圧気体の密度測定

    飯泉 英昭、梶川 宏明、小畠 時彦(計量標準普及センター)

    圧力媒体の種類による圧力センサの校正値への影響について評価するため、これまでに複数の気体を圧力媒体に用いて校正を行ってきた。校正におけるヘッド差による圧力差の補正のためには、使用している気体の密度値が必要である。本発表では、ヘッド差による圧力差を測定して逆に密度値を算出する方法を用いて、実際に校正で使用した複数の気体の密度値を10 MPaから100 MPaの範囲で測定した結果について報告する。

  • 重錘形圧力天びんの動作モードによる有効断面積の違いについての検証

    小島 桃子

    重錘形圧力天びんでは、ゲージ圧力と絶対圧力のモードの違いによってピストン・シリンダの有効断面積が変わることが報告されている。しかし、その原因は十分には説明できておらず、また、違いはないとの報告もある。そこで、産総研で使用している複数のピストン・シリンダについても、実際にモードの違いについて検証を行った。その結果を報告する。

  • 将来の圧力標準にむけた光学式屈折率計を用いた気体の圧力計測装置の開発

    武井 良憲、新井 健太、吉田 肇、尾藤 洋一(長さ標準研究グループ)、寺田 聡一(長さ標準研究グループ)、小畠 時彦(計量標準普及センター)

    圧力 p と気体の屈折率 (n-1) の関係は比例式で表させる。ファブリペロ共振器を用いて真空雰囲気での共振周波数と任意圧力の気体雰囲気での共振周波数を計測し、その比から屈折率 n を求める。開発した光学式圧力計と校正済の圧力計を、10 kPa~100 kPa の範囲で比較した。その差の直線性は1 Pa 以下、繰り返し性は標準偏差 0.1 Pa であり、圧力計の校正の不確かさの範囲内であった。本発表では、開発した実験系と実験結果を発表する。

  • 熱陰極電離真空計の比感度係数の計算

    杉沼 茂実

    電子が真空計のグリッド内を半径方向に等電位ずつ飛行するとして、静電気学的に求めた空間電位の関数から導出される微小移動距離とイオン化断面積の積をたし合わせたものの比をとり、熱陰極電離真空計の比感度係数を求めた。この見積もり及び有限要素法を用いたシミュレーションにより導かれる計算値は比感度係数の文献値よりもばらつきが小さいことが示された。

  • 気体流れの全領域に適用可能な任意長さの円筒導管を通過する気体流量の簡易計算方法

    吉田 肇、武井 良憲、新井 健太

    円筒導管の形状から、通過する気体流量を計算することは容易でない。なぜなら気体の流れの特性が、圧力p、円筒導管の直径dや長さl、気体の種類等に依存して、分子流、中間流、粘性流(層流、乱流)、圧縮流(臨界流、亜臨界流)へと変化するためである。従って、先ず、気体の流れがどの領域にあるかを判定する必要がある。気体の流れの判定をするには、クヌーセン数、レイノルズ数、マッハ数を求める必要があるが、反復計算を含む複雑な手順が必要となる場合があった。そこで筆者らは、各流れ領域の気体流量式を1つにまとめることで、全流れ領域に適用可能な、即ち、流れの判定が不要な、気体流量Qの計算式を開発した。

  • 定容リーク量計を用いた溶接欠陥のリーク量の精密測定

    新井 健太、吉田 肇、武井 良憲

    溶接欠陥のリーク箇所を通過するリーク量を、定容リーク量計を用いて正確に測定した。欠陥に加えた圧力が100 kPaのときのリーク量は1.8x10-3 Pa m3/sであった。その圧力を10 kPaから100 kPaの間で変化させたとき、圧力を上げる方向と下げる方向とでは、同圧力でもリーク量に最大10 %の差があった。そのような特性は、細管を用いた標準リークでは見られなかった。

【工学計測標準研究部門 強度振動標準研究グループ】

  • ビッカース硬さ試験における深層学習を用いたくぼみサイズ測定

    田中 幸美

    ビッカース硬さ試験では、硬質の四角錐圧子を材料表面に押込み、残ったくぼみのサイズを測定して硬さを算出する。顕微鏡により測定されるが、試料表面の模様や押込みにより生じるひび割れの影響によりくぼみ角の位置を正確に決定することが難しい。本研究では、多様な試料に対応可能な汎用性の高い自動測定法の構築に向けて、深層学習を用いたくぼみサイズ測定手法を開発し、その有用性について検討した。

  • 硬さ標準片の面内ばらつきに起因する不確かさについて

    清野 豊

    硬さ試験は局所的な破壊試験であり、二度と同じ点を測定できない。また面内ばらつきもランダムかつ無相関であるという仮定は成り立たない。さらに測定点間は有限の距離離さなければならないので、測定可能な点の総数は有限である。これらの仮定の下で、面内ばらつきに起因する不確かさは測定点数nの関数としてどのような形で与えられるのか、初等確率論の範囲で考察した。1/√n則で近似してよいという肯定的な結果を得た。

  • 三次元座標計測に基づく硬さ試験用圧子形状の直接検証法

    高木 智史

    硬さ標準の実現において、使用する圧子が規格通りの正確な形状を持っていることは、試験力の正確さと同程度に重要である。しかし、試料に押し込まれる圧子の領域の寸法は極めて小さく、その形状パラメータを正確に決定することは容易でない。本研究では、微小領域における圧子表面の三次元計測の方法と、そのデータに基づき圧子形状を厳密に検証する解析法を示す。

  • デジタル出力型加速度センサの評価技術に関する検討

    野里 英明

    デジタル出力型三軸加速度センサは、インフラモニタリングから衝撃を伴う機械診断まで幅広い分野で使用されているIoTに必須のキーデバイスである。本発表では、デジタル出力型加速度センサのクロック安定性やデジタル出力型センサの動的校正に資するコンセプト・想定される技術課題について、初期的な実験結果から考察する。

【工学計測標準研究部門 液体流量標準研究グループ】

  • ISO5167-3 Nozzle and Venturi nozzles の改訂に向けて

    古市 紀之

    スロートタップ式ノズルにおける研究成果を新たに追加したISO5167-3の改訂をコンビナーとして実施した。新たな流出係数式やその精度、また改訂内容について報告する。

  • 1μL/minまで対応した秤量式液体微小流量校正装置

    土井原 良次

    マイクロナノデバイスの液体微小流量の計測制御では適切な校正装置が無いため精度は不明である場合が多い。微小流量で誤差が著しくなる蒸発影響を解決した秤量式校正装置を開発したのでこれを報告する。

  • 3液種における石油小流量標準の校正サービス開始について

    Cheong Kar-Hooi

    従来の軽油と灯油に加えて、擬似ガソリンを用いた石油小流量標準の校正サービスを今年度に立ち上げた。ニーズ背景とともに、3液種の不確かさ解析評価を報告し、今後の課題展望について述べる。

  • 水流量校正設備における微細気泡注入及び気泡径分布計測装置の適用検討

    和田 守弘

    水流量校正設備において微細気泡の注入及び気泡径分布を計測する装置の導入検討について報告する。

【工学計測標準研究部門 気体流量標準研究グループ】

  • 臨界ノズルを用いた低レイノルズ数領域における流量計測の課題と対策

    竹川 尚希

    臨界ノズルは、十分な圧力差を与えた場合、スロートでの流速が音速で一定となるため、国家標準の移転標準器として高精度な流量計測を実現している。しかしながら、臨界ノズルには低レイノルズ数領域でディフューザによる圧力回復効果が機能しない現象が報告・確認されている。本研究では、上記課題を解決するため新たな臨界ノズルを作製し、その臨界特性について実験的に検証した。

  • 台風上陸時を想定した風速値の妥当性評価

    岩井 彩

    台風上陸時に気象観測用風速計がさらされる環境条件は高温・高湿度・極低気圧であり、一般的な校正風洞設備では再現が困難である。そこで、ピトー静圧管を用いた大流速校正風洞での流速測定結果および本測定と同条件を設定したCFDシミュレーション結果を用いて、台風上陸時を想定した条件におけるピトー静圧管での流速値と不確かさを評価した。

  • 気体流速(風速)トレーサビリティの全体像について

    栗原 昇

    ISO/IEC 17025規格に基づいた気体流速(風速)の標準供給が開始されてから20年が経過した。そこで本報では当分野におけるトレーサビリティの概要を整理して示す。特に今回はJCSS校正や依頼試験の枠組みを超えて気象観測に用いられる測器まで言及し、全地球的な整合性を保つ取り組みとこれまでの実績について紹介する。

【工学計測標準研究部門 質量計試験技術グループ】

  • 自動重量選別機の標準偏差試験効率化のための取り組み

    田中 良忠、長野 智博

    平成28年11月に計量行政審議会で取りまとめられた答申を踏まえて、「自動はかり」が新たに特定計量器に追加された。自動重量選別機は自動はかりに分類され、型式承認および検定・使用中検査の対象である。検定・使用中検査において、器差の標準偏差を評価する際に最大60回の計量試験が必要であり、試験の効率化が求められている。本発表では標準偏差試験の効率化を目指した検討結果のうち、今年度の成果を報告する。

  • 充塡用自動はかりのJIS整備状況

    大谷 怜志、長野 智博

    充塡用自動はかりJISは1987年に制定され、製造現場での計量管理に活用されてきた。その後、特定計量器として計量法の規制対象となり、2018年には規制計量器としての構造検定や器差検定などの内容を追加し、JIS B7604-1、JIS B7604-2が発行された。今年度は引き続き、国際勧告であるOIML R61(2017)への整合と、静的荷重(分銅)における新たな試験/検査方法を導入するための改正作業を行っており、充塡用自動はかりのJIS整備状況を報告する。

【工学計測標準研究部門 流量計試験技術グループ】

  • 流量計のNMIJ所内比較の結果報告

    神長 亘、土井原 良次(液体流量標準研究グループ)、戸田 邦彦、安藤 弘二、西川 一夫、河田 達男

    各国の型式承認試験の結果を相互に受入・活用する証明書制度(OIML-CS)への参加を目指し、NMIJ内において自動車等給油メーターの所内比較を行った。既に国際的な同等性が確認(BIPMのKCDBにCMC登録)されている液体流量標準研究グループの測定結果と不確かさを算出している型式承認試験設備による測定結果を比較した。本発表では、所内比較の概要及びその評価結果を報告する。

【分析計測標準研究部門 音響超音波標準研究グループ】

  • 低騒音社会の実現に資する音響パワー標準の開発

    山田 桂輔、高橋 弘宜、堀内 竜三

    音響パワーは音源が1秒あたりに放出する音のエネルギーを表す量であり、機械製品等の音の評価に用いられている。当研究グループでは音響パワーの測定において比較基準となる基準音源の100 Hz~10 kHzにおける校正サービスを2015年より開始したが、その後静音化技術が向上するなかで、相対的に音響パワーが小さかったために重要視されてこなかった低周波、高周波の音が顕在化してきた。これに対し我々は、校正システムの改良及び校正設備の音響性能に基づく不確かさの低減により基準音源の校正周波数範囲を50 Hz~20 kHzに拡張し、より広い周波数範囲における騒音評価を可能にした。

  • 空中超音波の三次元的な音圧分布計測技術の開発とその現状報告

    高橋 弘宜、山田 桂輔、堀内 竜三

    人には聴こえないという空中超音波の特徴を生かした様々な機器が開発され、最近ではVR技術と組み合わせた触覚ディスプレイと呼ばれる機器の開発も進んでいる。空中超音波を利用した機器の開発過程においては、放射されている空中超音波の物理的性状を把握する必要がある。本報告では、空中超音波の音圧分布を三次元的に測定する装置の開発を進めているので、その現状を報告する。

  • ハイドロホン感度の振幅と位相の周波数特性を用いた広帯域超音波瞬時音圧計測技術の開発-感度の位相周波数特性が瞬時音圧計測値に及ぼす影響の検討-

    千葉 裕介、吉岡 正裕、堀内 竜三、梅村 晋一郎(東北大学)

    広帯域超音波の瞬時音圧をより精密に得るための技術として、ハイドロホン感度の振幅と位相の周波数特性を用いた計測法が検討されている。感度の位相周波数特性は校正で得られるが、一様と見なす方法や理論計算から得る方法も検討されている。しかし、感度の位相周波数特性を得る方法が瞬時音圧に及ぼす影響を評価した研究は少ない。本報告では、上記3つの感度の位相周波数特性を用いて瞬時音圧を計測し、その結果を比較検討した。

  • 水を発熱体とするカロリメトリ法による超音波パワー計測 -200W用超音波振動子の特性評価-

    内田 武吉、吉岡 正裕、堀内 竜三

    NMIJでは、超音波治療器などの高出力超音波を使用する機器の安全性や性能の評価のために、超音波パワー標準の校正範囲の拡張を予定している。校正範囲の拡張に必要な新型超音波振動子の特性に関して報告する。

  • 超音波利用機器の性能・安全性評価に資する計測技術の開発

    吉岡 正裕、内田 武吉、千葉 裕介、松田 洋一、堀内 竜三

    超音波診断装置や超音波洗浄機など、医療や産業の分野において超音波を発生させる機器が多く利用されている。それら超音波利用機器の性能や安全性を評価するためには、機器から発生する超音波の精密計測に基づく評価技術の確立が不可欠である。このたびは超音波利用機器の性能・安全性評価に資する、NMIJの超音波計測技術について報告する。

  • 60 MHzの超音波音圧標準

    松田 洋一、吉岡 正裕、内田 武吉、堀内 竜三

    我々は、眼科や血管、皮膚の診断で用いられる超音波の音圧振幅を定量的に評価する目的で、超音波音圧標準(ハイドロホン感度校正)の高周波化を進めてきた。今回、広帯域の小型超音波振動子を音源として、校正周波数上限を従来の40 MHzから60 MHzに拡張した。拡張した標準の不確かさや新たに開発した技術を報告する。

【分析計測標準研究部門 放射線標準研究グループ】

  • エネルギー低減β線場の補正係数と不確かさ

    加藤 昌弘、黒澤 忠弘

    ストロンチウム90線源からのβ線のエネルギーをアクリルで減弱させたβ線場について、組織吸収線量を求めるのに必要な補正係数を測定及びシミュレーション計算により求めた。さらに組織吸収線量率の不確かさの詳細を報告する。

  • 異なるモンテカルロコード(EGS5とPENELOPE)の相互比較

    森下 雄一郎、清水 森人、波戸 芳仁(KEK)、平山 英夫(KEK)

    産業技術総合研究所で供給される放射線の標準の不確かさの大きな要因の一つは、モンテカルロコードにある。各国の標準は、それぞれ異なるモンテカルロコードを使用して開発されているが、それぞれのコードがどの程度同じであるかはほとんど調べられていない。今回はヨーロッパで主に使用されるPENELOPEコードと日本で使われるEGS5を相互に比較した。

  • 診断用X線線量標準の現状と展望

    田中 隆宏

    現在、X線空気カーマ標準は、管電圧10 kVから300 kVの範囲で標準の維持・供給を行っている。その中で、診断用X線の線量標準として、IEC61267の線質を中心とした開発研究を進めている。当日は、その開発状況ならびに展望を紹介する。

  • 陽子線の水吸収線量標準の開発

    清水 森人、齋藤 拓也、山口 英俊、森下 雄一郎、石井 隼也、堀田 健二、橘 英伸、秋元 哲夫、神澤 聡、榮 武二(筑波大学)

    陽子線治療における水吸収線量計測の不確かさを低減するため、水カロリーメータを用いた陽子線の水吸収線量の絶対計測技術を開発した。ファーマ形電離箱を校正した結果は、モンテカルロシミュレーションによる計算値とよく一致していることを確認した。

  • 高エネルギー電子線に対するアラニン線量計の応答特性

    山口 英俊

    高エネルギー電子線を利用した放射線治療は広く行われているものの、高エネルギー電子線を対象とした第三者出力線量評価は行われていない。そのため、アラニン線量計を用いた高エネルギー電子線の出力線量評価技術を確立するために、アラニン線量計の応答特性を評価したので報告する。

  • X線・γ線中間エネルギー領域における放射線防護用線量校正場の開発

    石井 隼也

    産総研では、放射線防護の為のX線やγ線の線量標準として空気カーマの供給を行っている。しかし、工業用非破壊検査の分野で用いられる400 keV前後のエネルギー領域において線量計を校正する光子場が存在しない。350 kV以上の高管電圧のX線管を用いた線量校正場の開発を目指し、その校正場構築の現状として数値シミュレーションによる補正係数の計算や線量測定の結果について報告する。

【分析計測標準研究部門 放射能中性子標準研究グループ】

  • Ar-41を用いた通気式電離箱の放射能濃度換算係数試験について

    柚木 彰、山田 崇裕(近畿大学)

    原子力発電所等から放出される放射性ガスの放射能濃度を監視する、放射性ガスモニタの校正に用いる通気式電離箱の、Ar-41からの放射線に対する放射濃度換算係数を求める試験を実施したので報告する。

  • 152Euの放射能絶対測定

    佐藤 泰

    特定二次標準器の校正を行うため、152Eu放射性溶液の放射能絶対測定を4pb-g同時測定装置で行った。152EuはEC崩壊して152Smになるとともに、β-崩壊して152Gdになるが、同時に多数のγ線を放出する。152Smへ崩壊する際に放出する1408 keVのγ線を用いて同時計数を行い、放射能は1183±23 kBq/g (k=2)と測定された。

  • 通気式電離箱を用いたラドンモニタ校正システムの構築

    古川 理央

    自然放射性ガスのラドン(Rn-222)とその子孫核種による内部被ばくが肺がんの原因になるとして、ラドン濃度測定へのニーズが高まっている。このような背景を受け、ラドンモニタを校正するシステムを構築した。ラドン濃度の絶対測定が可能な比例計数管を標準とし、ラドンモニタの校正に通気式電離箱を使用する。本発表では、上記のシステムの概要と動作確認の結果について述べる。

  • 中性子放出率キャリブレータによる測定の不確かさ評価

    松本 哲郎、原野 英樹、増田 明彦

    中性子放出率標準の特定二次標準器である中性子放出率キャリブレータの測定の際の不確かさについて再検討を行い、不確かさバジェットの変更を行った。Am-Be線源及びCf線源それぞれに対して繰り返し測定に基づいた不確かさ評価について報告する。

  • 大強度中性子ビーム用ボナー球スペクトロメーターの開発と医療施設での測定

    増田 明彦、松本 哲郎、原野 英樹、熊田 博明(筑波大学)、高田 健太(群馬健康科学大学)、田中 進(筑波大学)、榮 武二(筑波大学)

    ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に使われる中性子ビームの強度とエネルギー分布を評価するために、シンチレーターを用いた大強度中性子用ボナー球スペクトロメーターを開発した。応答特性をモンテカルロシミュレーションと実験によって評価し、いばらき中性子医療研究センターの加速器BNCT施設においてデモンストレーション測定に成功した。

  • 産総研中性子標準の現状について

    原野 英樹、松本 哲郎、増田 明彦

    本年度実施されたCIPM-MRAピアレビュー審査、参加中の中性子放出率と周辺線量当量の国際比較、単色中性子フルエンス標準の開発状況、中性子標準に関連した医療応用、高エネルギー中性子標準等、産総研中性子標準の現状について報告する。

【分析計測標準研究部門 X線・陽電子計測研究グループ】

  • 高輝度ポジトロニウムビーム発生装置の開発と表面分析への応用

    満汐 孝治

    ポジトロニウム(電子・陽電子結合状態)を利用した固体表面分析法の開発を進めている。このための高輝度ポジトロニウムビーム発生装置の開発と表面研究へ応用について報告する。

  • 構造材料分析を目指した小型加速器中性子源からの中性子ビーム

    木野 幸一、大島 永康、小川 博嗣、O'Rourke Brian、加藤 英俊、黒田 隆之助、佐藤 大輔、宍戸 玉緒(新構造材料技術研究組合)、鈴木 良一、清 紀弘、田中 真人、豊川 弘之、友田 陽(新構造材料技術研究組合)、藤原 健、古坂 道弘(新構造材料技術研究組合)、満汐 孝治、室賀 岳海(新構造材料技術研究組合)、渡津 章(構造材料研究部門)、林崎 規託(東京工業大学)

    構造材料分析を目指した小型加速器中性子源の調整運転を行っている。パルス中性子透過イメージングのための中性子ビームの特性や計測例について紹介する。

  • 構造材料解析用中性子源のための電子線形加速器の開発

    オローク・ブライアン、藤原 健、古川 和朗(高エネルギー加速器研究機構)、古坂 道弘(新構造材料技術研究組合)、林崎 規託(東京工業大学)、加藤 英俊、木野 幸一、黒田 隆之助、満汐 孝治、室賀 岳海(新構造材料技術研究組合)、濁川 和幸(高エネルギー加速器研究機構)、帯名 崇(高エネルギー加速器研究機構)、大島 永康、小川 博嗣、佐藤 大輔、清 紀弘、宍戸 玉緒(新構造材料技術研究組合)、鈴木 良一、田中 真人、友田 陽、豊川 弘之、渡津 章(構造材料研究部門)

    産総研は、新構造材料技術研究組合(ISMA)に参画し、輸送機器軽量化を目指したNEDOの委託事業「革新的新構造材料等研究開発」の下、産総研つくばセンターで小型加速器ベース中性子源の構築をすすめている。開発した線形電子加速器はSバンド加速管3本で構造され、電子エネルギー40 MeV、平均電流250 mAで設計された。本発表は中性子発生用電子加速器の構築状況について紹介する。

  • 小型ビーム装置の開発

    大平 俊行、高輪 正夫(フジ・インバック(株))、北村 是尊(フジ・インバック(株))、小林 洋一(フジ・インバック(株))

    実験室サイズの薄膜対応・空孔計測装置(陽電子ビーム装置)および小型イオン注入装置の開発を行っている。今年度行った開発による装置性能向上と測定例等を報告する。

  • 陽電子ビームを用いた消滅ガンマ線ドップラー広がり測定システム

    大島 永康、オローク・ブライアン、満汐 孝治、折原 拓磨(東京学芸大学)、佐藤 公法(東京学芸大学)

    陽電子ビームを用いた消滅ガンマ線ドップラー広がり測定システムを開発しており、その進展状況を報告する。

【分析計測標準研究部門 ナノ顕微計測研究グループ】

  • 水晶振動子型水素センサ・濃度計プロトタイプの開発

    鈴木 淳

    水晶振動子の共振回路の電気的インピーダンスを利用した、水素漏洩検知及び漏洩水素濃度計測法について、実際の水素エネルギー社会における様々な場所において使用できる水素センサ・濃度計プロトタイプを開発した。この機器では所望の場所にセンサ部を設置するだけで測定が可能であり、水素の存在に応じ大気中の水素濃度が濃度表示部に数値(%)で表示される。

  • ナノ分解能赤外分光法による複合材料分析

    井藤 浩志

    原子間力顕微鏡をベースにした高分解能赤外分光装置(NanoFTIR)の測定波長域を拡張し、微細パターン等を作成して分解能をテストした。その結果、約8 nmの高分解能が得られることを確認した。また、近接場顕微鏡を利用したマッピングについても、ほぼ、同様な結果を得ている。NanoFTIR法を利用して、有機材料やゴムなどのコンポジット材料にフィラーや界面を超高分解能分析した結果、及び、材料の力学的オペランド計測の結果について報告する。

  • サンドイッチ凍結乾燥法により基板上成長したNaClナノ結晶のAFM観察

    重藤 知夫

    懸濁液中のナノ粒子を顕微鏡観察用に基板展開する技術として開発してきたサンドイッチ凍結乾燥法を基板上でのナノ結晶成長に応用し、塩化ナノリウムのナノ結晶をシリコン基板上に成長させることに成功した。これまで開発してきた実用的AFM水平サイズ補正法を用いて、非球粒子である同結晶の粒径分布計測を行ったので、あわせて解説する。

  • イオン付着質量分析法によるガソリンのプラズマ改質過程の解析

    浅川 大樹、齋藤 直昭(分析計測標準研究部門)、高橋 栄一(省エネルギー研究部門)

    バリア放電によるガソリン燃料の改質はエンジンの燃費向上などに有効であることが報告されているが、詳細なメカニズムは不明であった。今回はガソリン模擬燃料を改質し、直接イオン付着質量分析法により分析した。得られた結果に基づいて密度汎関数法による化学反応シミュレーションを行い改質の化学反応過程について検討したので報告する。

  • タングステン針を用いたプロトン性イオン液体ビーム源の開発と二次イオン質量分析(SIMS)への応用

    藤原 幸雄

    クラスターイオンビームをSIMSに用いることで有機分子の検出効率を高めることができる。しかし、面分解能や感度は未だ十分なレベルにはなく、有機材料に適した高集束性かつ高感度な一次イオンビーム源の開発が大きな課題となっている。我々は、集束性に定評のある液体金属イオン源を参考として、タングステン針を用いたプロトン性イオン液体のイオン源の開発を進めているので、その結果を報告する。

【分析計測標準研究部門 放射線イメージング計測研究グループ】

  • 3Dプリンターを用いた線量計の開発

    藤原 健、越水 正典(東北大学)、河村 一朗(東北大学)、藤本 裕(東北大学)

    放射線に感受性のある材料を3Dプリンターを用いて自由な形に造形する、新しい線量計の研究に取り組んでいる。本研究で開発した線量計はアクリル樹脂を母材にロイコ色素を添加するもので、透明の樹脂材が放射線照射によって変色する。この変色度合いは肉眼で容易に観察できるため、被曝量を容易に把握できるようになった。放射線医療において線量分布を3次元的に把握できるようになる他、廃炉作業などにおいて、ウエアラブルな線量計などへの活用が期待される。

  • 材料評価のための量子ビーム分析技術の開発

    豊川 弘之、平 義隆、木野 幸一

    高エネルギー光子ビームや中性子線を用いて、物質内部を非破壊で観察する方法について研究している。光子ビームを用いた光子誘起陽電子消滅法や、中性子ブラッグエッジイメージング法を用いて鉄鋼等の工業材料の分析を行う技術を確立し、材料物性を非破壊でその場計測することを目標としている。

  • 可視~真空紫外域の偏光分光・イメージング分析手法の開発と応用

    田中 真人、馬場 大輔、安崎 利明、小川 博嗣、佐藤 大輔、澁谷 達則、盛合 靖章、黒田 隆之助

    主に可視~真空紫外線領域での偏光を用いた分光装置(エリプソメトリ、円二色性など)や光電子顕微鏡などのイメージング装置の開発の現状ならびに、これら装置等を用いたレーザー加工用の実用材料(ガラス、高分子など)、タンパク質などキラル分子、磁性体などの応用やデータベース構築に関する紹介を行う。

  • 光学素子を用いたX線イメージング法に関する研究

    安本 正人、三澤 雅樹(健康工学研究部門)

    ラボタイプのX線源を利用して、大面積で位相情報を使ったX線検査装置について研究開発を行っている。この検査装置に用いるX線光学素子として、透過型X線回折格子を作製している。この透過型X線回折格子は、金属製で、数ミクロン周期で高さ数十ミクロンの高いアスペクト比を持った微細な構造体からできている。高精細単位露光法による大面積の回折格子作製を行っている。

  • 位相検出による楕円偏光光渦の軌道角運動量測定

    平 義隆、李 志遠(非破壊計測研究研究グループ)、藤本 將輝(分子研)、保坂 将人(名古屋大学)、加藤 政博(広島大学)

    円偏光の光は生体高分子の立体構造解析などにとって有用なツールである。また、円偏光アンジュレータの高次高調波はらせん波面を形成するため軌道角運動量を運ぶ。したがって、2次以上の高調波は従来よりも大きい角運動量をもつことを意味する。代表者は最近、楕円偏光のアンジュレータ光によって角運動量を任意の値に制御できることを理論的に明らかにした。従来よりも大きい角運動量をもち、かつその角運動量を制御可能な光は円二色性に新たな利用を引き起こす可能性がある。本研究では、サンプリングモアレ法によって楕円偏光アンジュレータ光の位相構造を測定することで軌道角運動量の測定を行い、理論計算との比較を行う。

  • 高出力レーザーピーニング加工試料の非破壊残留応力分布測定

    三浦 永祐

    高出力レーザーを材料に照射した際に発生する衝撃波を利用し、金属材料を改質、強靱化するレーザーピーニングの研究を行っている。放射光施設からの高エネルギーX線を用いて、レーザーピーニング加工試料の残留応力分布の非破壊測定を行った。レーザーの集光プロファイルの制御により、材料内部に形成される残留応力層の形状を制御できることを明らかにした。

  • 顕微ラマン分光によるレーザー加工材料の特性評価技術の開発

    小川 博嗣、澁谷 達則、盛合 靖章、黒田 隆之助、田中 真人、佐藤 大輔

    レーザー加工における加工材料の改質等の特性変化を評価する技術開発を行っている。本発表では、超短パルスレーザーによるポリマー材料加工での加工表面における化学結合状態の変化を顕微ラマン分光を用いて解析した例について紹介する。

  • 内殻分光法を利用した生体関連物質に関する研究

    池浦 広美

    内殻電子励起をともなうX線吸収分光では内殻ホールのポテンシャルによって局在化した励起状態が生じる。バンド構造を持つ場合、完全には局在化せず、内殻束縛励起子とバンド構造に由来する二種類のピークが観測され、伝導電子の非局在性についての知見を得ることができる。カロチノイド(光合成)やレチナール(視覚)に含まれるポリエンユニットの測定および解析結果について報告する。

  • 超短パルスレーザー照射による溶融・アブレーションの時間分解イメージング計測

    佐藤 大輔、田中 真人、小川 博嗣、澁谷 達則、盛合 靖章、寺澤 英知(早大院)、黒田 隆之介、豊川 弘之

    我々は、超短パルスレーザーの照射後に生じる物質の溶融やアブレーション、膨張などの現象のスナップショットを取得できる時間分解イメージング計測装置を開発し、レーザー加工の加工メカニズム解明に取り組んでいる。本発表では、代表的な物質におけるレーザー誘起構造変化の様子などについて紹介する。

  • 平面波コヒーレントチェレンコフ放射による高出力THz光源の開発計画

    清 紀弘、小川 博嗣、 早川 恭史(日本大学)、境 武志(日本大学)、住友 洋介(日本大学)、早川 建(日本大学)、田中 俊成(日本大学)、野上 杏子(日本大学)

    分析計測標準研究部門では、日本大学と共同し、日本大学の加速器施設LEBRAにおいて高強度テラヘルツ光源の開発を進めている。現在は、従来のコヒーレント遷移放射を超える出力が可能な平面波コヒーレントチェレンコフ放射(平面波CCR)の開発に取り組んでいる。本講演では、平面波CCR開発の現状について報告する。

【分析計測標準研究部門 非破壊計測研究グループ】

  • 単一カメラを用いた校正型位相シフトデジタルホログラフィの研究開発

    夏 鵬、王 慶華、李 志遠、津田 浩

    単一カメラのみで位相シフト量の校正が可能な高精度位相シフトデジタルホログラフィ計測システムの開発を目指す。具体的には、空間分割記録を利用して単一カメラによる一回の撮影で校正用の規則性の縞模様と物体情報が含まれたホログラムを同時に記録する。校正用の規則性の縞模様を用いて、位相ずれ量を定量的に検出し、物体像の再生用ホログラムを補正する。

  • 炭素繊維の横方向圧縮応力の負荷除荷の繰り返し試験 -熱処理の影響-

    岩下 哲雄、卜部 啓、永井 英幹、藤田 和宏

    炭素繊維モノフィラメントにおける横方向圧縮応力の負荷・除荷の繰り返し試験を行った。この繰り返し試験は、ピッチ系炭素繊維において熱処理の影響を強く受けることが分かった。主にピッチ系炭素繊維の熱処理にともなう炭素繊維の黒鉛結晶の成長との関連を調べた結果を報告する。

  • 炭素繊維の短試長での引張試験

    藤田 和宏、永井 英幹、岩下 哲雄

    炭素繊維は脆性材料であり、試長が短くなると引張強度が高くなる。通常の引張試験は試長25 mmで行われるが、1 mm~0.2 mm程度の短い試長で引張試験を行うための装置を試作した。試験を行った結果と課題について報告する。

  • 炭素繊維の曲げ試験応力解析

    永井 英幹、藤田 和宏、卜部 啓、岩下 哲雄

    炭素繊維単繊維の曲げ試験結果については、炭素繊維の異方性が大きく影響を及ぼすことを、実測結果に加え、FEM解析によって数値解析面からの理解を深めてきた。ここでは、三点曲げ解析での応力分布の分析から、繊維軸方向の引張と圧縮の弾性率に違いがあることが、中立軸や最大応力値の変化に及ぼす影響について報告する。

  • 時空位相シフト法による高精度な縞画像の位相解析とその応用

    李 志遠、王 慶華、夏 鵬

    従来の時間的位相シフト法と空間的サンプリングモアレ法を融合した時空位相シフト法を開発し、ランダムノイズや振動、輝度サチュレーションなどの外乱に強いことを実証した。本発表では、従来の位相ソフト法と時空位相シフト法を用いて、シミュレーションと形状計測実験の比較結果を報告する。

  • 3次元畳み込みニューラルネットワークを用いた超音波検査映像自動解析

    叶 嘉星、遠山 暢之

    本研究では局所特徴量を入力とした3次元畳み込みニューラルネットワークによる超音波検査動画像の自動解析手法を提案した。実データを用いた複数の実験を通じて、従来手法に比べて高精度に欠陥を検出できることを確認した。本提案手法によって、これまで課題であった微小欠陥の検出精度の向上および演算時間の短縮が期待される。

  • ビデオサンプリングモアレ法を用いた1s/1μmの時間・空間分解能での動的ひずみ分布評価

    王 慶華、李 志遠

    Ti合金のドウェル疲労における損傷メカニズムを明らかにするために、走査電子顕微鏡下での動画記録による動的変形を解析できるビデオサンプリングモアレ法を開発した。平滑材と亀裂材の二種類のTi-6Al-4V合金試験片を対象に、1秒の時間分解能と1ミクロンの空間分解能でのひずみ分布の計測を実現できた。

【分析計測標準研究部門 ナノ分光計測研究グループ】

  • 赤外線カラー暗視撮影技術への深層学習の応用

    永宗 靖

    従来の赤外線カラー暗視撮影技術は、物質の可視域と赤外域における反射特性の相関関係に基づいているが、その相関関係は弱く、完全な色再現を実現するまでには至っていない。本研究では、新規のディープラーニングを構築することで、赤外線モノクロ画像のカラー化実現の可能性を検討する。

  • ゴーストイメージングの原理に基づく新しい干渉計測法

    白井 智宏

    ゴーストイメージングの基本光学系にマッハ・ツェンダー干渉計を組み込んだ「ゴースト・マッハ・ツェンダー干渉法」を提案し、これによりインコヒーレント光を使ったロバストな位相計測が可能となることを理論的に明らかにした。

  • 有機半導体の本質的な光物性計測を可能とするIn situ過渡発光分光装置の開発とその応用

    細貝 拓也

    過渡発光分光計測装置は機能性材料の光反応メカニズムの理解から、有機ELに代表される発光材料の試験評価まで幅広く使われている。本発表では、最近、我々が開発した有機半導体の成膜から発光計測を真空一環で実施可能な装置と、その実際の応用例を紹介する。

  • 顕微過渡吸収イメージング分光装置の開発

    松﨑 弘幸

    微小や空間的に不均一な試料における光誘起現象、また光生成した電荷や励起子等の素励起の拡散・伝播等の時空間ダイナミクスを観測可能にするため、現在、ポンプ光をフェムト秒パルス光、プローブ光をフェムト秒パルス光または連続光とし、光学遅延法と高速オシロスコープ等を用いた直接法を組み合わせて、数100 fsからmsオーダーまで一貫して測定可能な顕微時間分解ポンプ・プローブイメージング分光装置の開発を進めている。今回、フェムト秒パルス光をプローブ光とし、光学遅延法を基に2 nsまでの時間領域で過渡吸収測定可能なシステムの開発を行ったので、その結果について報告する。

  • 真空中でのパルスレーザーによる固体表面の蒸発過程―共鳴イオン化質量スペクトルによる観測

    永井 秀和

    パルスレーザー照射により発生する中性粒子が真空中で、どのように拡散していくのか(角度分布や速度分布)物質による違いや照射条件(出力やビーム径)による変化を調べるため、共鳴イオン化質量スペクトルにより観測を行った。蒸発用のレーザー(1064 nm)を入射角45°で試料に照射後、時間差を設けて共鳴波長のレーザーが直上(1~5 mm)を通過させイオン化を行い、飛行時間型の質量分析計により質量スペクトルを観測した。

  • 高純度オゾン由来の活性種によるAl2O3薄膜の低温原子層成長:XPSによる成膜機構の評価

    亀田 直人(明電舎)、萩原 崇之(明電舎)、三浦 敏徳(明電舎)、森川 良樹(明電舎)、花倉 満(明電舎)、中村 健、野中 秀彦(分析計測標準研究部門)

    センサ応用が進むフレキシブルデバイス等に求められる低温酸化膜作製実現のため、高純度オゾンとエチレンの混合ガスに由来した活性種であるOHとトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3; TMA)を前駆体とした原子層成長(ALD)を試み、室温でのAl2O3薄膜作製を実現した。当該酸化膜の膜質向上のため、主としてX線光電子分光法(XPS)を用いた中間体の検出とその解析を行い膜成長機構を検討したので報告する。